ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~番外編(横浜アリーナ編)   作:マーケン

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次回は1/5更新予定


第三十三話

 ユニット曲が終わり、一度全員で集合してまたまた衣装替えをする。

 聴いたところによるとラブライブシリーズとしてはμ'sの頃からライブを重ねる毎に衣装替えの回数が増えていったとのことだ。

 そして、今度着るのは和をモチーフにした衣装。“未熟DREAMER”の衣装だ。

 この楽曲はAqoursにとっては本当の始まり。

 三年生達がやっていた旧Aqoursが披露することも完成することもなかった曲。そして新Aqoursが九人揃って初めて披露することとなった曲だ。

 私個人としても特別な思い入れがある。

 これまでAqoursは作詞は千歌ちゃん、衣装は曜ちゃん、作曲は私と、役割がそれとなく決まっていて、曲の方向性こそ話し合ったりしたけれど、旋律だとかは私の裁量に任されていた。けれど、この楽曲については既にある程度曲として形になっていたため、どちらかといえば編曲に近い感覚だった。

 思えば誰かと一つの曲を作曲・編曲するという作業は初めてで、新鮮な感覚だった。

 私はこれまでAqoursとして作曲した楽曲について、漠然とした言い方をすると吹奏楽部的な楽器の音をメインに据えていた。それは私がこれまでピアノを通じて触れてきた音楽の傾向がポップスよりもクラシックであったからだ。けれど、“未熟DREAMER”は今まで私が作ってきたものとは打って変わり、バンド系の楽器のロックな音をメインに作られている。特にストリングス系の音は大胆に使用されていてイントロの琴の音からエレキの音に入るところは非常に印象に残る。

 こんな音楽は私の中にはこれまで無く、私にとって新しい試みであった。基本骨子は多分鞠莉さんの趣向が反映されていたのだろうけど、それは私の中に新しい扉を開いた。これまで触れてきた音楽の種類が少ないとは思わない。けれど、それ以上に音楽の海は広く、多様性に満ち溢れていた。

 余談になるけれど、だからこそギルキスの“Strawberry Trapper” を作曲する際は攻めに攻めた。鞠莉さんに色々なロックを勧めて貰い、吸収したものを全てぶつけた。その結果かなりゴリゴリな、今までの私にはなかった音楽が完成した。

 

「どうしたの梨子ちゃん。なんだか感無量って感じだけど」

 

「リカコさん・・・うん。ピアノと向き合うことから逃げていた私がまた新しい音楽と出会えるなんて思ってもみなかったなって」

 

「ギルキス、初めて曲を聴いた時は私も驚いたよ。梨子ちゃんにこんな顔もあるんだなって」

 

「うん。私も」

 

 それもこれから披露する“未熟DREAMER”があったからこそだ。

 

「梨子、準備はいい?」

 

「鞠莉さんこそ。善子ちゃんは?」

 

「ヨハネ!ふ、私の時間圧縮があればこの程度の着替えなど」

 

「お団子がウニみたいになってるわよ」

 

「嘘っ!?」

 

 せっせと直す善子ちゃんに、どんな原理であのお団子が出来ているのか聴いてみたい衝動に駆られるけれど、それを堪えてみんなで身だしなみの相互確認をする。ユニット曲をやった直後で多少の荒が出てしまうけれど、忙しさを言い訳にはしたくない。このステージは私達のものであると同時にこの世界のAqoursのものであるのだから失敗はできない。

 

「今回のステージは私達だけだけど、あの花火大会と同等の、ううん。もしかしたらそれ以上の人がこの会場にいる。純粋に私達を見に来てくれた人達が。こんなに力強いことってないよ!」

 

「千歌ちゃん。そうね、一花咲かせに行きましょう」

 

 ライブ前に一度喝入れの掛け声をやったけれど、私達は改めて円陣を組む。

 

「0から1へ!Aqoursーーーーサーン、シャインーーー!!」

 

 みんなの指で0から1を作り気合いを再度入れ直した。旧Aqoursと新Aqoursの道が交錯し、一つになったからこその始まりの合図だ。目指すは天高い場所。その指先にあるステージという頂きに私達は昇った。

 ステージに上がった私達を迎える九色の光。改めてこの楽曲が私達“全員”の曲であることを再認識する。

 他の楽曲とは違いお客様からのコールは無いけれど、この曲の持つ力に良い意味で飲み込まれている事が良く伝わってくる。

 何故こうもお客様は私達に引き込まれるのか?そう考えると、その答えが既に自分の中にあると直ぐに気付いた。

 この世界の、今この会場にいる皆は私達のこれまでの軌跡を知っているのだ。知っているからこそ共感し、そこに生じた想いを共有している。だからこそ特別なものとして心に響く。

 

「言葉だけじゃ足りない そう言葉すら足りない」

 

 ただ良い音楽というだけじゃない。この音楽とよりそう思い出があるからこそ心に満ちる。会場の皆の反応がそれを肯定してくれる。

 ステージから客席の皆の顔は意外にも良く見える。だから躍りながらも可能な限り見るようにしているのだけれど、本当に皆良い顔をしている。

 本気でこちらを見詰める視線は熱く輝き、中には涙ぐんだり、既に泣いている人もいる。私達が本気であるのと同じくらい、彼ら彼女らも本気で私達が好きなのだ。そう思うとこう、込み上げて来るものがあるが、それをぐっと堪える。

 そう言えばと、この世界に来ている星ちゃんの居るであろう席を探すとすぐに彼女の姿は見つかった。

 花火大会の時は私達と一緒にステージに立ったからこの曲を彼女が客席から見るのは初めてとなる。

 私達のステージはどう、と一瞬交錯する瞳に問い掛けると、彼女は微笑みを浮かべて肯いたように見えた。本当ならばきっと彼女もこのステージのような大舞台を憧れているはずだ。けれど今は純粋に私達のパフォーマンスに感銘を受けている。それが嬉しくて、私はまた力を貰った。

 

「成長したいな またまだ未熟DREAMER」

 

 その貰った力を歌に込め、或いは躍る四肢に込めて今できる最高のパフォーマンスをした。

 観客の皆からは割れんばかりの拍手が送られ、私も拍手で返したいくらいだったけれど、ここからはまた特別なステージが待っている。

 

「やるよ梨子ちゃん!」

 

「やりましょう、リカコさん」

 

 最早どちらが主導権を握っているのか分からないほど体が勝手に動いてくれる。

 やれる。そう自分自身を奮い立たせ、壇上に登場したピアノへと私は向かった。

 

 

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