ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~番外編(横浜アリーナ編)   作:マーケン

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次回は1/19更新予定


第三十七話

 最後のMCの言葉は果たして私、高海千歌の言葉なのかアンジュさんの言葉なのか、最早私達ですら判別出来なかった。それ程私達は心も体も一体となり、この世界のスクールアイドル高海千歌となっていた。いや、私達だけではない。メンバーのみんなもそうだと思う。

 私達はやりきった。それは始まる前に思っていた、この世界のAqoursの代わりとしてとか、失敗できないとか、そんな義務感を忘れて精一杯楽しんでやれた。

 

「「楽しかった!!」」

 

 私もアンジュさんも、ライブ直後に出た言葉はそれだった。

 二人揃ってお互いがお互いを労い、気付けば自分で自分の体をハグしていたのだから可笑しくて、また笑ってしまう。

 私の居る世界ではまだ見たことのない景色。本来は私の居るべきでない場所。借り物の体。それでも私は、私達は輝いていたと思う。初めてアキバのスクリーンで見たμ'sの様に。自分達が楽しみ、人を楽しませたいと心から思い、みんなが楽しさを共感して、それがまた楽しくて。私が一番最初に感じた輝きって多分これなんだろうなと思える様な、そんな時間と空間だった。

 こんなに現実感があるのに夢を見ているような、そんなフワッとした感覚だ。

 

「私ステージに立つとき、私自身が千歌ちゃんなんだって思ってやってるんだけど、それと同時に千歌ちゃんが見てるってそう思ってたんだ。変だよね。私が千歌ちゃんとしてステージに居るのに、千歌ちゃんが見てるなんて・・・ってそうじゃなくて、つまり、千歌ちゃんが見てるだけじゃななくて一緒に話したり、ステージに立てたりして凄く嬉しかった」

 

 私にとってはアンジュさんとは今日が始めましてだったけど、アンジュさんにとっては高海千歌とは一年以上前から考え続けていた半身と言える存在だ。だからもしかしたらアンジュさんの考える高海千歌とは私は一致していないかもしれない。人の中にある他人の人物像なんて大なり小なり認識の一致しないことは分かってる。けど、それでもアンジュさんの想う高海千歌と私が一致していたらとても嬉しいなと、短い付き合いだけどそう思ったのだ。だからアンジュさんのこの言葉はとても、とーてもっ、嬉しかった。

 

「千歌ちゃんってやっぱり千歌ちゃんなんだね。世界が違っても、体が違っても」

 

 ただ貴方らしいと、これ以上の褒め言葉は今日、この時において他には無い。

 

「ライブが終わった今だからこそ改めて聴くね。千歌ちゃんは何でこの世界に来たの?」

 

「私は、多分確認に来たんだと思う」

 

 世界も違えばその成り立ちも違う。同じなのはパフォーマンスだけだ。けれど、これもAqoursの持つ可能性の一つであることに変わりは無い。

 その可能性の世界ではこんなにも多くの人がAqoursのことを好きでいてくれるのだ。0だった私達が一万以上もの人に支えられているのだ。それがどんなに力強いことか。

 

「それで分かった。私達は進み続けてて良いんだって」

 

 辛くて立ち止まりそうになったこともあった。けれど、進むことをみんなで決めた。それが間違いではないのだと、今ならそう自信を持って言える。

 

「私達も進むよ。ツアーだよツアー。なんかもう意味分かんないよね」

 

「何かだいぶ先越されちゃったな」

 

「私達としては漸く追い付いたって感じなんだけどね」

 

 追い掛けて、追い付いて、また追い掛けての二拍子の私達。

 

「いつかまた、私達が同じ場所に立てるように」

 

「お互いに進もう。前を向いて」

 

 もうこんな風にお邪魔することはないかもしれない。けど、例えそうだとしても私達が辿り着く場所が同じであるならば、こんなに素敵なことは無いだろう。

 

「見て、こんなに沢山」

 

 私達はスタッフに無理を言って会場の上層から退出する観客を見ていた。

 ぞろそろと出てくる人達はある人は足早に駅に、ある人は待ち合わせなのか集団を作り、ある人は会場等の写真を撮っている。

 みんな共通しているのは来たときよりももっと笑顔だってことだ。

 

「あの人アリーナで凄くサイリウム振ってた人だ」

 

「あんなに楽しそうだったのに、凄い泣いてる。あのスーツの人確かスタンドに居たよね?」

 

「急いでるけど、スーツぐしゃぐしゃ。精一杯応援してくれてたんだね。あれ?あの子って別の人の隣だった気がするんだけど」

 

「彼氏とは連番は取れなかったみたいだね。でも二人で来られて良かったね。もう、喜び過ぎて彼氏もたじたじになってるし」

 

 全員の顔を覚えている訳では無い。けれど、沢山の人の顔を覚えている。その時の表情も、声も、動きも良く見えている。だからそんな知ることのできた顔の人が帰るのは少し寂しくもあるけれど、それを見送ることが出来て誇らしくもあった。

 

「いつかまた、別のステージで」

 

 例えこの世界に来られなくても、私達の活躍は形を変えてこの世界に現れる。だから今日知った人達とこの世界のAqoursとどんな形であれまた出会えるように、私は別れを告げた。

 ばいばい。ありがとう。また逢おうね、と。

 

 

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