ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~番外編(横浜アリーナ編)   作:マーケン

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次回は1/26更新予定。


第三十九話

 アイドルのライブの特徴としてファンが良く語るのは一体感だ。それはコールであり、心であり、空気感である。スクールアイドルもまた“アイドル”である以上その例に漏れない。

 そんな面で語るならば今日のライブは間違いなく会場は一つだった。

 けれど、その要因の大きな一つである私は諸手を挙げて喜ぶ気にはならなかった。

 

「失敗しちゃったね、梨子ちゃん」

 

「失敗しちゃいましたね、リカコさん」

 

 “想いよひとつになれ”でのピアノパフォーマンスで痛恨のミスタッチ。それを未だに整理仕切れないでいるのが私達の本音のところだった。それでもライブを最後まで駆け抜けられたのはメンバーのみんなとファンの皆、そして文字通り一心同体となった相方のお陰だ。

 

「どうしてミスしたのかな?」

 

「多分だけど、直前のコンディションが良すぎたのかもしれない」

 

「・・・確かに。未熟DREAMERが終わった直後は今なら何だってやれるって気になってたかも」

 

「慢心、とはちょっと違うけど、感情って良いものも悪いものも指に出やすいから」

 

 ライブ直後だというのにこうして反省会をするのは単に引き摺っているというだけでは無い。次に同じ失敗をしないためだ。私もリカコさんもその辺りのストイックさは似ているようだ。寧ろリカコさんの方がグイグイと検証を進めようと思考している。

 

「後は私達の認識の違いかな。二人とも自分の体のように体を動かしていたけど、指の長さ、太さはやっぱり梨子ちゃんの体とは一致しないだろうし。二人とも同じ動きをしているつもりで少しのズレがあったんだと思う」

 

「大きな所ではその二点ですね」

 

「次は良かった点を考えよう」

 

「え?失敗したのにですか?」

 

「100%失敗したわけじゃないもの。良いところがあれば次はそれを広げて良いところが増えるじゃない」

 

 本当にリカコさんはプロ意識が高い。

 元々ピアノは素人だから、と割り切るのではなく、素人であっても人前で披露する以上はプロとして完璧にこなす必要があったと自覚しているのだ。

 

「良かった点は、やっぱり演奏に感情が乗っていたところですね」

 

「・・・そうね。あの時は全身全霊でピアノと向き合ってたからね」

 

 演奏に感情を乗せる、というのは実は素人には中々できないことだったりする。というのもミスなく弾くことに精一杯になってしまうからだ。

 一度失敗してから再チャレンジをした時、私もりさんも、もう後がない、というものあったけれど、一度不安に曇らせてしまったメンバーのみんなやお客様の皆を笑顔にしたいという一心で演奏していた。

 体は心に響くメロディーを再現する楽器の一部として素直に動いた。

 

「あとはやっぱり、二度目は成功させられたってことかな」

 

「それですね」

 

 失敗の後に大切なのは処置だ。それはライブに限らず社会においても通じることだ。

 失敗を変に取り繕おうとするとどこかで歪みが生じる。それが次の失敗に繫がったりするのだ。

 今回私達はスタッフのサポートもあり、一度リセットした状態から再開できた。だからこそリカバリーできた。

 

「そう考えるとチームワークも良かったですね」

 

「本当に。メンバーだけじゃなくてスタッフさんも合わせてね。こんな風に粋な計らいをしてくれてるし」

 

 今私達はお客様が去った後のメインステージに居る。そこにはあの時のようにピアノが置いてあった。

 

「リカコさん、スタンバイOKです」

 

 スタッフさんが音響チェックし、関係者各位がアリーナ席で固唾を呑んでこちらを見守っていた。

 そう。私はみんなへの感謝を込めてもう一度この場でピアノを弾きたいと我が儘を言ったのだ。それをみんなは快く引き受けてくれてこのステージに戻ってこられた。

 

「みんなありがとう。撤収作業もあるというのに手を止めてまで集まってくれて」

 

 一度の失敗で諦めてはいけない。けれど、一度の成功で出来た気になってもいけないのだ。だから私は、私達はここで弾く必要があるのだ。

 

「今から弾くのは“海に還るもの”。私達にとって大切な、忘れてはならない曲です」

 

 私達がみんなに一礼すると、ピアノコンクールの時のようにみんなから拍手という形でエールを送られた。

 ステージでミスした時、直ぐに駆け付けてくれた千歌ちゃん。励まし続けてくれた鞠莉さんに果南さん。そして私を信じてポジションをキープしてくれた曜ちゃんに善子ちゃん、花丸ちゃん、ルビィちゃんがあの時と同じ、心底私を信じた目でこちらを見詰めてくる。ふと、客席を見ればこっそりと星ちゃんも顔を覗かせているのには驚いた。でも、それが私から力を良い具合に抜いてくれた。

 

「では聴いてください」

 

 これが最後の連弾になるかもしれない。そう思うと少し寂しかったけれど、それ以上に今はピアノを弾くことが楽しいと、心の底から思えた。

 

 

 

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