ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~番外編(横浜アリーナ編)   作:マーケン

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昨晩は寝落ちし更新が遅くなりました。申し訳ございません。


第四十話

 誰かの夢を、誰かの物語を応援することでしか私は私を自己主張することはできない、とまでは言わないけれど、私は人に共感することで自分の好きを追い掛けている。

 今はルビィちゃんやみんなとスクールアイドルをするというのが私の一番だ。

 

「花丸ちゃんとしてさ、今日という物語をどんな風に語るの?」

 

 今までは誰かの物語を見ているだけだった。だけど、今は自分もその物語に加わることで私が物語の作り手になった。それを知っているからこそ、カナコさんは私に私の物語を語って欲しいと、そう言った。

 

「目を開いて最初に出逢ったのは、とても素敵なもう一人の私でした」

 

 私は今日という物語を語る。他の誰のものでもない、私の思った事で世界が廻る私だけの物語。

 

「その人は私と同じで運動は得意ではないけれど、私と同じで仲間と一緒に見たことの無い景色を求めてアイドルを、ううん。スクールアイドルをしていました」

 

 学生でスクールアイドルである私と声優でスクールアイドルである違いはあるけれど、私とカナコさんは本質的には同じ。アイドルであることは楽しいけれど、アイドルそのものであることを望んでいる訳では無い。

 スクールアイドルとして何を成すのか、それこそを私達は追い求め活動している。

 

「この世界のAqoursは私達の知っているラブライブとは意味合いが違うけれど、そのコンテンツの最先端を担う者として、壁を越えようとしていました」

 

 

 μ'sという光にただ憧れを抱いている私達とは違い、この世界のAqoursは一線を退いたμ'sから託された立場で、だからこそμ'sへの憧れは即ちプレッシャーと同義であった。

 そんな中でもがむしゃらに突き進んで来たこの世界のAqoursが迎えることとなった“Aqours First Love Live STEP ZERO TO ONE”と銘打たれた初の大規模ライブ。文字通りはじめの一歩と対峙するこの世界のみんなと、どんな運命か私達は肩を並べることとなった。

 

「私達もまたスクールアイドルとなって何を求めるのか、ラブライブ地区予選でその片鱗に触れたばかりで、でも一歩踏み出せたのかと言われるとそうでもない気がして。だから、九人で踏み出し切れなかった一歩も、十八人ならきっと踏み出せるって、自信を持って言えると思ったずら」

 

 みんなでスクールアイドルをするのは楽しい。けれど、楽しいだけでは満ち足りない自分達がいる。それを東京でのスクールアイドルイベントで気付かされた。

 私達スクールアイドルとは?その問いかけを続ける毎日。そして明確な答えはやっぱりまだ私達にはないけれど、漠然となら手掛かりを掴めた。

 

「私達が踏み出したところには“輝き”が待ってた」

 

 私達と、それを応援してくれる皆で楽しいを共有する。そうして待っていたのは沢山の歓声と、数多ある光でした。

 

「誰からも評価されなかった私達がこうして受け入れられたこと。私達のパフォーマンスで皆が喜んでくれたこと。とても嬉しかった。私達は輝きたかったんだって、そう確信できた」

 

 気付きを得られたこと。それは即ち一歩を踏み出せたことの証明だ。

 

「マルの物語は輝きを探す冒険だった。きっとこの冒険はまだまだ続くずら」

 

 次回予告、とか今後の活躍にこうご期待、と言いたいところだったけれど、こうして言葉を交わしたり、同じ時間を共有できる確信はなかった。強いて言うならばそれだけが今日の心残りだ。

 

「そうだね。今日の私達はきっと輝いていた。きっと見ている人にも伝わってた。みんなと一緒に居ればそれが出来るんだってことが嬉しかった。私ね、本当に細やかだけど輝くってこと、ほんの少しだけ感じたことが昔あってね」

 

 カナコさんはまだ私の知らないカナコさんの物語を語ってくれる。

 まだ業界に入る前、気の合う仲間と共に生主として活動してた時のことを。

 アニソンが、物語に寄り添う音楽が大好きで、歌が好きで、歌わずにはいられなかった頃、誰かにその衝動を伝えたいと思い始めたそれは気付けばそれなりに名の知れた活動になっていた。

 

「再生回数が増えていったこと。沢山コメントしてくれたこと。たったそれだけのことだったけど、私の知らない誰かが私達の活動を楽しんでくれていること、評価してくれていることがとても嬉しくて、今にして思えばそれが私にとっての輝くってことの一歩だったんだなって」

 

 歌の知名度の恩恵があってこそだったけど、と最後にそう付け加えて謙遜するけれど、カナコさんなら知名度のない曲を歌ったとしても、誰かの心に波紋を作れる人だと思う。

 

「その頃は顔の見れない誰かだったけど、今日はその誰かの顔が、喜ぶ顔が見られた。それがとても嬉しくて、隅から隅まで、絶対に皆の顔を見よう。できるだけ覚えて帰ろうって、目を皿にしてたよ」

 

「ちゃんと皆の顔を見てるってきっと伝わってるずら。だって目が合ったときとても良い笑顔を返してくれていたから」

 

 遠くてもちゃんと伝わるのだ。伝える気持ちと受け取る気持ちが同じならば。

 

「ねえ、花丸ちゃん。明日は花丸ちゃん帰っちゃうんでしょ?」

 

「うん。何故だか分からないけど、そう確信してる」

 

「そっか・・・ねぇ、梨子ちゃん達みたいにさ、私達もさ、一緒に何かしない?」

 

「なら歌がいいずら。マル、こう見えて聖歌隊に入るくらい歌が好きなんだ」

 

「知ってるよ、花丸ちゃんのことは沢山。でも、何を歌おうか?」

 

 カナコさんと一緒に今日という日を歌で締めくくる。それはとても素敵な提案をしたと自画自賛したくなった。

 

「アニソンがいいずら」

 

 浦女に入って、みんなと出逢い沢山のものを得た。星ちゃんから教わったアニソンもその一つだ。きっと彼女と出会わなければ知ることの無かった音楽。それをこうしてカナコさんと一緒に共有できることが嬉しい。

 

「曲は“SOMEONE ELSE”、WORKING!のオープニング曲ずら」

 

「難しいこと、細かいこたぁいいから楽しもう。そんなはちゃめちゃで前向きな曲だね。私も好きだよ」

 

 他の誰かに向けたハッピーな曲。私にとって、そしてカナコさんにとってその他の誰かとはきっと、日々とても近くにいる人達のことなんだと思う。だから、この曲の誰かに向けた底抜けの陽気さがとても好きなのだ。

 

 

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