ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~番外編(横浜アリーナ編)   作:マーケン

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第五話

 朝目覚めたら誰か別の人になっていたり、目前にライブが控えていたりとてんやわんやだけど、概ね状況は理解できた。このライブを越えた先に何があるのかは分からない。けど、乗り越えなくてはならないというプレッシャーはひしひしと感じた。私がアイさんの代わりに頑張るのだ。頑張らねばならないのだと。

 

「ねぇ、ルビィちゃん」

 

「な、なんでしょう?」

 

「写真撮らない?」

 

「写真、ですか?」

 

 そう、とアイさんは私に提案する。アイさんに促されるまま私はスマホのインカメラを顔の正面に向け自撮りした。

 

「見て。正直こう見ると私ってルビィちゃんとは似てないでしょ?でもーーーー」

 

 今度は角度を付けてやろうか、とアイさんの指示に従って再度自撮りをした。するとどうだろう、些細な違いでしかないのに、そこに写し出された写真には本来別人の筈なのに私らしさが滲み出ていた。

 

「私ね、このプロジェクトが始まってルビィちゃんをやるぞってなった時に、ルビィちゃんになろうって思ったの。少しでもルビィちゃんに近づいて、みんなにルビィちゃんの良いところを見せられたらなって。だから、ルビィちゃんはルビィちゃんでいいんだよ。無理に私を出そうとしなくても」

 

 その言葉はいつか花丸ちゃんが私の背中を押してくれた時のことを思い出させた。

 スクールアイドルをやりたかったけど、回りのことを気にしすぎて本心を隠して。でもその本心に従うことを諦めては駄目だと、花丸ちゃんが私を叱咤激励してくれたその時のことを。

 変に考えすぎていたのかもしれない、と私は思った。

 よくよく考えたらアイさんは私に、私はアイさんになろうとしていたなんて素敵なすれ違いだなと思った。だってそれってお互いがお互いを想い合っていたってことだから。

 

「アイさんは写真撮るのが上手なんですね」

 

「フォトジェニックだね」

 

 どうだ、と促されるままスマホの画像フォルダを見ると、かなりの枚数の写真が収められていた。色鮮やかに写されたそれは宝石箱のようだった。中にはなんでもない日常の一コマがこんなに栄えるものなのかと驚くほどの化けかたをしているのもあった。

 そして、特に私の目にとまったのはこの世界のAqoursメンバーの写真だ。

 この世界のAqoursメンバーは私達と違って同じ町に住んでいる訳でもなければ同じ学校に所属している訳でも無い。だから同じチームとして纏まるのは私達よりもより大変だったはずだ。けれど、写真に写る彼女達にはそれを乗り越えたような一体感があった。最初の頃から順番に見ていくと、徐々に徐々に同じような空気を纏うようになっていくのがよく分かる。

 

「私達は経歴も育った環境もばらばらだけどね、みんなラブライブが大好きなんだ。その一つだけの結びつきで十分なんだ」

 

 アイさんは自信満々に、自慢するように言った。そこには誇らしさを感じているようでもあった。

 きっとその大好きが原動力で、だから私はアイさんの大好きを応援したいと思った。何故なら私もラブライブが大好きだから。それはアイさんの言うラブライブとは意味合いが違うかもしれないけれど、根底は同じだと思う。

 

「がんばルビィ」

 

「がんばルビィ」

 

 私達はお互いを鼓舞しあうと同時に笑い出した。いつから言い出すようになったか覚えていないこの言葉はアイさんと一緒に言うとチューニングが合うかのようにしっくりと来る。

 

「ルビィちゃーん。もうすぐご飯だよー」

 

「もう出るよ」

 

 トイレの扉越しに花丸ちゃん役をやっているカナコさんが私を呼んだ。とは言ってもカナコさんにも私同様に花丸ちゃんが乗り移っている状態だ。

 朝一番に起きた千歌ちゃんに緊急招集をかけられ、Aqoursメンバー全員が別世界のAqoursメンバーに乗り移っていることが分かっている。

 私は事態を自分なりに整理しようと、一時解散した後でトイレに篭もってアイさんと対話していたのだ。

 

「ごめん、お待たせ」

 

「大丈夫?結構長く踏ん張ルビィしてたみたいだけど」

 

 心配そうに私を気遣う花丸ちゃんには申し訳ないけど、何だか勘違いしてるみたいだから私も慌てて否定してしまう。

 

「違うよ。アイさんと長話しちゃっただけだよ」

 

「そういうことにしておくズラ」

 

 流石付き合いが長いだけあり、花丸ちゃんは私の言うことが本当だとすぐに気付くと、冗談めかしてそう言った。

 

「朝ご飯。のっぽパンが・・・」

 

「ないの?」

 

「あるずらー」

 

「あ、そうなの。でも、折角横浜にいるんだし、横浜っぽいもの食べたいかもシウマイとか」

 

「いやいやルビィちゃん。横浜と言ったらラーメンずら」

 

 ん、と私は疑問に思った。花丸ちゃんは麺を啜るのが下手であまりラーメンは好んで食べない。けれど食べにくさを抜かせばラーメンは嫌いでは無いらしい。その上、花丸ちゃんが推しているμ’sメンバーの星空凛ちゃんはラーメン好きらしいので、その影響も少なからずあるのかもしれない。

 

「とにかく、朝ご飯はホテルの料理でしょ?なら我が儘は言えないね」

 

「レッツ、バイキングずら」

 

 嬉しそうにはしゃぐ花丸ちゃんを見て、体が変わっても花丸ちゃんは花丸ちゃんなんだと妙に安心してしまった。

 皆が皆であるかぎり今日は大丈夫かもしれない。そんな程度には心に余裕ができた。

 

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