まだまだ駆け出しの残念な文章ではありますが、どうか暖かい目で見ていただけると幸いです。
それではどうぞ!
『君、一人なの?』
『ぇ...?』
これは遠い日の思い出。
親の仕事の都合上、転校ばかりでいつも一人だった僕に声をかけてくれた彼女は、唐突に話しかけられた事で固まっていた僕に天真爛漫な笑みを浮かべた。
『一緒に遊ぼう?』
『っ...うん!』
その後、彼女は僕に自らの友達...心優しい少女と、恥ずかしがり屋で寡黙な少女を紹介してくれた。
彼女達は僕と毎日一緒にいてくれた。
彼女達は僕に友達といることの楽しさを教えてくれた。
彼女達は僕に笑うことの喜びを教えてくれた。
彼女達は僕に自身を持たせてくれた。
彼女達は、
俺は、いつまでも彼女達と一緒にいたいと思っていた。
...しかし、現実はいつだって無情に襲いかかってくる。
『すまない、父さんはまた転勤することになった』
物心のついた頃から幾度となく聞いてきたその言葉に絶望したのは、その時が始めてだった。
無意識に涙がこぼれ、俺が始めて見せた反応に家族が狼狽える。
彼女達と、やっと出来た友達と、大切な人達と、離れたくない。
しかしその思いが家族に届く事はなく、引っ越し...転校が、決まってしまうのだった。
『転校することになった』
彼女達にそれを伝えたのはそれから数日後、引越しで町を去る前日の事だった。
それを聞いた彼女達の反応はーーー
『うっ...ぐすっ...』
一人は俯き、目を押さえながら。
『そんな...なんで...』
一人は呆然として呟きながら。
『うわぁあああああんっ!行かないでよぉおおおっ!』
一人は俺に抱きついて胸に顔を押し付けながら。
ーーー皆揃って涙を流していた。
俺の為に、たった数ヶ月一緒にいただけの男の為に。
三人もの少女が涙を流してくれている。
それが嬉しくて、やっぱり別れたくなくて。
気付くと俺の目からも涙が溢れ出していた。
『絶対、戻ってくる!』
俺はその涙を拭い、再び溢れ出そうとする涙を堪えて笑みを作り、言う。
『だから次に会えた時は、また一緒にいてくれるかな?』
その言葉を聞いた彼女達は、俺と同じ様に涙を拭い、笑みを作って、元気よく返事をするのだった。
『『『もちろん!』』』
☆☆☆★
「父さんは転勤する事になった」
時は流れ、来週から高校二年生になる俺こと
「...今回はどんな酷い環境の学校に転校する事になるんだ?」
「おいおい、どうして酷いなんて決めつけるんだよ」
「そこの鏡で自分の顔を見れば分かるよ」
俺が指を指した鏡には、
「親父が笑顔の時にはいつも変な学校に転校させられるってもう学んだんだよ」
「ったく失礼な、俺がいつ笑ってたって言うんだ?」
「周りは皆ムッキムキのスポーツ校に転校した時。
授業に一ミリも付いていけないガリ勉校に転校した時。
何故か生徒も教師もみんなオネェのオネェ校に転校した時...」
「...偶然だろ」
「目を合わせろ、目を」
「と、とにかくこれを見ろ」
顔を近付けて威圧する俺に親父が渡してきたのは綺麗な校舎の写真が載っているパンフレット。
「国立音ノ木坂学院...これが今回の転校先か?」
「ああ、今年から共学になる伝統のある高校だ」
「へぇ、今年から共が...今年から!?」
親父の言葉にパンフレットから勢いよく顔を上げて反応する。
今年から共学になるって事は二年生の俺が転入する学年は女子しかいないという事で...
「そう、要するにハーレムだな」
そう言うと親父は俺がさっきまで読んでいたライトノベルを手に取ると、華やかな衣装に身を包んだ女子に囲まれる主人公が描かれた挿絵を見た後、俺に向かって爽やかな笑みを浮かべ。
「楽しめよ」
そう言い放った。
「こんっの...クソ親父ぃぃいいい!」
「まぁ落ち着けや(ボグッ」
「ごっふ!?」
怒りに任せて振るった拳は最小限の動きで避けられ、俺の鳩尾には強烈なカウンターが叩き込まれる。
「じ、実の息子に本気でカウンターとか...この鬼...」
「実の親を殴ろうとしたお前にだけは言われる筋合いはない、それにーーー」
と、続けながら親父は再びパンフレットを手に取ると、それをパラパラとめくり、床でうずくまる俺に手渡す。
「折角苦労して入学にこぎつけたんだ、もっとしっかり読んでから文句を言って欲しいもんだな」
そう言った親父が開いていたのは、『南理事長のお言葉』という大きな見出しのあるページ。
「...南?」
俺はその苗字に大きな引っかかりを覚える。
南、という苗字は昔別れたあの三人の内の一人と同じでーーー
「っ!」
まさか、と思った俺は急いでページをめくり、学校の住所を確認する。
『東京都千代田区神保町』
そこに書かれていたのは、あの日彼女達と約束を交わした町の名前。
必ず戻ると心に刻み込んだ町のーーー
「音ノ木坂の理事長さんとは昔に誰かさんを通して会った事があってな...」
頭上から聞こえた声に顔を上げると、ニヤニヤと笑みを浮かべる親父が目に入る。
「聞いてみた所、三人とも仲良く通ってるってさ」
その言葉を聞いた瞬間、俺の瞳には輝きが宿る。
ずっと願ってきた再会がようやくーーー
「母さんは先に行って引っ越しの用意をしてる。
俺たちはこっちで転校の手続きやら片付けやらクソ面倒臭い作業だ、それも始業式が始まるまでの一週間でな」
そこまで言った最高の親父は、俺を試すかのように不敵な笑みを浮かべ、一言。
「やれるな?」
それに対する返答は、当然もう決まっていた。
「当たり前だ!」
かくして、長く時を止めていた物語が再び動き出すーーー
「あ、親父」
「ん?礼なら後でもいいぞ?」
「いや、そうじゃ無くて...
さっきの一撃がまだ効いてるから、肩貸してくれ」
「...力、入れすぎたかな」
...動き出すのだった!
いかがでしたでしょうか...?
この物語は二つに分かれておりますので、良ければ次の話ボタンを押して《緑の物語》も読んで見て下さい。
それではどうぞ!