この調子でこれから頑張っていくので、どうか応援をお願いします!
次に目指すはUA10000だ!
それでは、本編をどうぞ。
「...あの、小泉さん」
「むぐ?」
お昼休み。
教室でお弁当を食べようとした僕は、小泉さんと机を合わせていた星空さんに『お弁当にゃ?一緒に食べようよ!』と誘われ、そこにお邪魔したんだけど...
「それ...おかずは無いの?」
「ないよ?」
「ふりかけは...」
「ないよ?」
「かよちんは白いご飯が大好きだから、昔からずーっとこれにゃ」
「そ、そうなんだ...」
小泉さんの前に置かれていたのは、両方にぎっしりと白米が詰まっている二段式のお弁当箱だった。
「...あのさ、それ...」
「むー?」
「...美味しそうだね」
「うん!」
幸せそうに白米を頬張る小泉さんに、そんなに炭水化物ばかり食べていると太るよ、とは言えなかった。
「そういえば、翠星くんはこのクラスに慣れた?」
「あー...うん、みんないい人だし、面白いし」
朝から四時間このクラスで過ごし、僕の心から最初に感じた緊張感はほとんど消えていた。
みんなが笑顔で過ごしていて、授業は受けていて楽しい。
そう、とても...
「この学院が廃校になるなんて思えないくらい、楽しい」
僅かな沈黙。
口をついて出てしまった言葉が空気を悪くしてしまった事に、後悔を覚える。
「...ごめん、暗くなるようなこと言っちゃって」
「気にしないで、廃校になっちゃうのは本当なんだもん」
「そうだよ、翠星くんは悪くないにゃ」
「...二人とも、ありがとう」
二人はそう言ってくれたけど、重くなってしまった空気は変わらない。
廃校という現実は、変わらない。
「どうにかして、止められないのかな」
「...え?」
下を向いていた僕の耳に、そんな言葉が入ってくる。
顔を上げると、星空さんが出会ってから一度も見たことのない真面目な顔をしていた。
「凛ね、今日入学したばっかりなのに、この学院には無くなって欲しくないって思ってるの」
「うん...私もそう思う、でも...」
「一年生の僕らじゃどうしようもないよ...」
「...それでも、何か出来ないのかな...」
再び沈黙が訪れる。
こんな状態の学校で、スクールアイドルを生み出すなんて事が出来る筈もない。
A-RISEのような、通っている学校の評価すら変えてしまうようなアイドルが出来る筈、が...?
「(待てよ)」
ふとした気付きに心臓が跳ねる。
そうだ、確か...
「(A-RISEの通うUTX学院は、A-RISEが人気となる事で入学希望者が爆発的に増加した)」
つまり、この音ノ木坂学院に誕生したスクールアイドルが人気になれば、この学院にも入学希望者が増える可能性は十分にある。
...スクールアイドルを誕生させることは、決して無駄ではない。
むしろ、スクールアイドルこそが廃校を阻止する最後の希望になるかもしれない。
「ねぇ、星空さん!小泉さん!」
諦めかけた夢に、もう一度手を伸ばす。
まずは、彼女達を勧誘してーーー
「どうしたの?」「どうかしたにゃ?」
と、こっちを向いた二人と目が合い、考えたことが全て吹っ飛んだ。
真っ白になった頭を必死に回し、口を開く。
「と、トイレに行ってくるね!」
☆☆★
翠星和真という人間は、音ノ木坂学院に入学するまでは比較的普通の人生を送ってきた。
普通に学校に通い、普通に勉強し、普通に遊んでいた。
しかし、彼が女子と話す事はほとんど無かった。
稀に話しかけられて、一言二言返事をする。
その程度の関わりはあったものの、彼自身から話しかけたことは一度も無かった。
そんな人間が、女子に話しかけるどころか、その女子をスクールアイドルに誘おうとするとどうなるかは、言わずともわ分かることだろう。
「この...意気地なしッ...!」
僕はそう呟きながら、震える腕を押さえながら廊下を歩いていた。
別に封印された魔獣が飛び出すわけでもなく、秘められた何らかの能力が覚醒したわけでもない。
ただ、二人をスクールアイドルに誘う事への不安と緊張と羞恥心で震えが止まらなくなってしまったのだ。
「なんだよ、トイレ行ってくるって!
わざわざ宣言する必要無いでしょ変態ですか!?」
四時間も女子に囲まれて過ごして、『案外男子一人でも大丈夫じゃないか』とか思い込んでいた自分が馬鹿らしい。
「ぐぬぬ...やっぱりもっと慣れてから誘うしかないか...」
勧誘しようとするだけでこんな状態になるんだ、例え二人がスクールアイドルになってくれたとしても、マネージャーとしての活動がまともに出来るとはとても思えない。
普通に会話することは出来るのに、肝心な所でヘタれる自分が情けないな...
まぁ、悔やんでいても仕方ないし、今はこの環境に慣れる事を最優先に考えていこう。
と、自分の中でこれからの方針が固まった所で、現在直面している問題に向き合う。
さっきからずっと校舎をうろうろしているにも関わらず、いつまでも見つからないそれは...
...この学院、男子トイレはどこにあるんだろう?
★
「き、君たち...男子トイレ、知らない...?」
「メェー?」
十分後。
男子トイレが見つからないという焦りが生まれると同時に突然強烈な尿意に襲われた僕は、女子にトイレの場所を尋ねるなんて事が出来る筈もなく、校舎中を駆け回った後に小さな小屋に行き着き、そこにいた白と茶色の二匹のアルパカに話しかけるという奇行に及んでいた。
あと二時間も耐えることなんて出来ないけど、こんな環境で漏らすなんて事があれば、今度こそ本当に夢が砕け散る。
「うぅ...かくなる上はそこの茂みで...」
「メェー」
「ん...?どうした、の...!?」
茂みに向かう僕の足を止めたのは、白いアルパカの声。
その目が見つめる先には、工事現場などでよく見かける仮設トイレが...!
「ま、まさか、僕に教えてくれたの...?」
「メェー」
「ああ、救世主...救世パカ...」
「メェ」
さっさと行け、と言わんばかりに鳴いたアルパカに深々とお辞儀した僕は、仮設トイレに向けて駆け出した。
この恩は、絶対に忘れないよ...!
★
「それじゃ、委員長をやりたい奴はいるかー?」
緊張の職員会議が終わったようで、五時間目になってようやくクラスの色々な事を決めるLHRが始まり、黒板に次々と生徒の役職が書かれていく。
「次、飼育委員をやりたい奴はいるかー?」
「はい」
先生の声に、僕は迷わず手を上げた。
その目的はただ一つ、飼育委員となって、僕の事を助けてくれたアルパカに恩返しをするんだ!
「分かった、じゃあ飼育委員は翠星と...小泉な」
「え?」
と、呼ばれた名前に隣を見ると、小さく手を上げていた小泉さんと目が合う。
「翠星君、アルパカが好きなの?」
「好きというか...さっき好きになったんだ。
小泉さんもアルパカの事が好きなの?」
「うん!初めて見たときから、お世話してみたいな〜って思ってて...それじゃあ、よろしくね!」
「うん、よろしく!」
軽く頭を下げて、黒板に文字を書いていく先生の方を向く。
これはかなり好都合な状況になった。
同じ委員として行動する事で、彼女との仲を深める事が出来るかもしれない。
「(よし、まずは小泉さんをスクールアイドルに引き入れる為に行動していこう!)」
気合を入れて、止まっていた足をもう一度前に出す。
絶望的な状況は変わらない、でも、だんだんと状況は良くなってきている。
「(スクールアイドルを誕生させて、廃校を阻止する。
簡単な事じゃないけど、出来ない事でもない!)」
ようやく見えた小さな希望に向けて、少年はまだ孤独な一歩を踏み出すのだったーーー
1-3話を終え、真拓も和真も廃校という壁に屈することなく希望を抱き続ける覚悟を決める事が出来ました。
彼らが『廃校を阻止する』という同じ終着点を見据え、ここから物語は急展開を迎える事になります。
次回の緑の物語では、ついにあの黒髪の三年生と和真が!?
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