ラブライブ!〜二色のマネージャー物語〜   作:紅翼 天奈

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青 1-4話 UTX学院

俺達は俺達のやり方でこの学校を救ってやる。

 

...そう決意したのが、三時間前の事ーーー

 

 

「これは酷い」

 

俺は机の上に広げられた資料に一通り目を通した後、ため息混じりにそう呟いた。

 

 

放課後、昼休みに決めた通りに学院中を歩き回り、この学院のいい所やアピール出来る所を探したのだが、その成果は...

 

『歴史がある!』

 

『そうだな...他には?』

 

『伝統がある!』

 

『同じだよ!』

 

『だってそれしかないんだもん!』

 

といった具合に、残念ながら外見的な良い所は見つからなかった。

 

ならば今度は内面的な良い所を探そう!という事になり、ことりが作ってくれた最近の部活動の目立った活動をまとめた資料を見ていたのだが...

 

 

『珠算、関東大会6位!』

 

『合唱部、地区予選奨励賞!』

 

『ロボット部、書類審査で失格!』

 

 

「これは酷い」

 

失格が混ざってるのはことりが天然なのか、それくらいしか目立った事が無いということなのかは分からないが、とにかく酷いとしか言いようがない。

 

「そもそも、良い所を探すというのが根本的に間違っていた気がしますね」

 

「探さなきゃ見つからない良い所をアピールしても人が集まるとは思えないもんね...」

 

海未とことりが言う通り、俺達が探して(・・・)ようやく見つけられるような事をアピールした所で、人が集まることは無いだろう。

 

もちろん、音ノ木坂には良い所こそ少ないが、悪い所も殆ど無いため、普通ならアピールなんてしなくとも自然と人は集まってくるだろう。

 

...普通なら。

 

「そんなに凄いのか?そのUTX学院ってのは...」

 

「はい、私も詳しくはありませんが、人気であるというのは間違いありません」

 

この学院が廃校の危機を迎えている最大の理由。

それは、朝に少しだけ会話に出た学校、UTX学院の存在だ。

俺は名前しか知らないが、この辺りだけでなく全国にその名を轟かせている有名校らしい。

 

そんな学校がすぐ近くにあるこの町では尚更で、この町に住んでいてその名前を知らない人なんて一人も...

 

「ゆーてぃーえっくす?」

 

...穂乃果を除いて、一人もいないという程。

 

なので、現在この町にいる中学生の大半がUTX学院を志望するため、音ノ木坂に人がやってこないという事だ。

 

つまり...

 

「そのUTX学院よりも音ノ木坂を選ぶ理由を作らなきゃいけないんだろ?」

 

「...そうなりますね」

 

「俺と穂乃果はUTX学院の名前すら知らなかったし、海未とことりでもなんで人気かも分からないがそれを超える、か。

参ったな、前途多難だとは思っていたがまさかここまで酷い状況だとは...」

 

「うぅ...穂乃果、この学校好きなんだけどな...」

 

俺の言葉に穂乃果がそう答える。

好きな学校だからこそ無くなって欲しくない。

でもその好きな理由を伝える事が出来ないという悔しさや悲しさが大きいのだろう。

 

「...とりあえず、もう夕方だし今日は解散しよう」

 

「うん...私、家に帰ったらもう少し調べてみるよ」

 

「そうですね、家でそれぞれがもう一度考え直して、明日の朝に案を持ち寄りましょう」

 

話ながら立ち上がり、教室を出て、階段を降りる。

 

 

『ダメって言ってるでしょ!』

 

『そこをなんとか!』

 

『ダメよ!』

 

『お願いします!』

 

『ダメ!』

 

『お願いしまぁあああす!』

 

 

一階まで降りたところで、そんな男女の声が聞こえてくる。

男の声がするということは、朝にあった彼がいるのだろう。

 

よかった、男一人という環境でも元気に過ごせているようだ。

 

...って、あれ?

 

「今日って、部活見学会は中止になったんじゃなかったのか?」

 

「はい、確かそのはずですが...」

 

海未も俺と同じく不思議に思っていたようで、足を止めて返事をしてくれた。

 

部活見学会が中止になったのに、一年生である彼の声がするのは何故だろうか。

 

「よっぽど入りたい部活でもあったのかな?」

 

「そうでしょうね...

でも、この辺りに部室なんてありましたっけ...」

 

『ヒロくーん、海未ちゃーん!どうしたのー?』

 

海未と二人揃って足を止めて考えていると、外から穂乃果の声が聞こえてきた。

 

「まぁ、きっと彼はこの学院でやりたい事を見つけたんだろうな。

さ、行こうぜ、穂乃果が拗ねちまう」

 

「そうですね。

...彼ら一年生の為にも、頑張らなくてはいけませんね」

 

「...違いねぇ、責任重大だな」

 

走り出した俺達の後ろでは、騒がしい声が聞こえ続けていた。

 

 

 

「もう!遅いよ二人とも!」

 

校舎を出ると、穂乃果とことりが待っていてくれた。

わざわざ待っていてくれているとは、悪い事をしたな。

 

「ごめん、待たせて悪かったな...ことり」

 

「ううん、そんなに待ってないよ」

 

「そっか、じゃあ行こうか」

 

「うん!」

 

「...穂乃果は!?」

 

「あー、すんませんですた」

 

「適当!」

 

怒る穂乃果を適当にあしらいながら歩く。

 

男一人の学年という事で少しプレッシャーを感じていたが、それほど不自由でもなく、なかなかに快適だった気がする。

 

...快適なのは、穂乃果達(こいつら)がいるからかもしれないが。

 

ただ、一つだけ残念なのが男友達が出来ないという点だ。

一応、一年生にさっき声が聞こえた彼がいるが、学年が違うだけに殆ど接点は出来ないだろう。

まぁ、そこは元女子校だし、割り切っていかなきゃな...

 

「なぁ、そこのあんた、ちょっといいか?」

 

と、校門を過ぎた辺りで突然横から聞こえた声は、この場所で聞くと思っていなかった男の声。

 

声のした方向を見ると、そこには俺と同じくらいの身長で黒髪紅眼の男が立っていた。

 

「はい、何でしょう...?」

 

「この学校に今日入学した筈の翠星和真という男を知っているか?

ずっと待っているんだが、なかなか出て来ないんだ」

 

突然現れた知らない男に緊張していると、彼はそう言って肩をすくめた。

 

翠星和真という名前は知らないが、男というならあの一年生の彼の事だろう。

 

「さっき声が聞こえたので、まだ中にいますよ」

 

「おお、そうか、ありがとな!

っと、申し遅れたが、俺の名前は紅月竜音。

UTX学院に通う、高校三年生だ.

以後お見知り...」

 

「UTX学院!?UTX学院に通ってるんですか!?」

 

「うおっ!?」

 

紅月さんの自己紹介を遮り、穂乃果がUTX学院という言葉に食いつく。

UTX学院の事を知りたい時に、丁度UTX学院に通っている人間がやって来たのだからそれは飛びついて当然だろう。

 

「UTX学院って、去年くらいから急に生徒が増えて、凄い人気校になりましたよね?」

 

「に、人気校...!

い、いや〜?まぁ、確かに、人気だよねぇ?」

 

穂乃果の言葉に、右手で後頭部をシャカシャカとかいて照れる紅月さん。

 

...なんでこの人がこんなに照れるんだろう。

自分の通っている学校が褒められるのが嬉しいのだろうか。

 

「それで、UTX学院って、なんで人気なんですか?」

 

「...はい?」

 

と、穂乃果の真っ直ぐすぎる質問に、紅月さんの手が止まる。

 

「...え、君たち、A-RISEって知らない...?」

 

「あらいず...?ヒロくん、知ってる?」

 

「うーん...?聞いたこと無いな?」

 

「ま、マジか、UTX学院を知っててA-RISEを知らないのか...」

 

「え、えっと...なんか、ごめんなさい」

 

さっきまでの嬉しそうな姿はどこへやら、呆然として小さな声でそう言う紅月さんに、自然と謝罪の言葉が出てしまった。

 

「いや、謝らなくていいよ、君たちは悪くない。

うーん...そうだな、A-RISEを知らないってことは、スクールアイドルの事も知らないだろ?

まずはそこから...」

 

 

『うわ!なんですかその格好!?』

 

『私服よ!悪い!?

アイドルはプライベートを隠さなきゃいけないの!』

 

『悪いというか完全に不審者のそれですよ!

そんな格好してるといつか通報されますよ?』

 

『...通報されても、隠さなきゃいけないの』

 

『手遅れッ!?』

 

 

と、紅月さんが説明を始めようとすると、遠くからさっきの騒がしい二人組の声がしてきた。

 

「...悪い、説明してる暇が無くなっちまった。

そうだな...もし興味があるなら、明日の朝七時にUTX学院の前まで来てくれ!それじゃ!」

 

「あ、はい...」

 

『おいコラそこの翠星和真ッ!

廃校とはどういう事だーッ!』

 

『え!?紅月さ...わああああ脳が揺れるぅー!?』

 

『ちょっ、和真!?』

 

校舎から出てきた茶髪の少年に向かって走っていった紅月さんは、彼の肩を掴むと、ぐわんぐわんと大きく揺さぶった。

 

...あの人、入校許可証持ってたっけ?

 

「海未ちゃん、もう大丈夫だよ」

 

「な、なんだったのですか、あの人は...」

 

俺と穂乃果が呆然と揺さぶられる少年を見ていると、後ろの茂みから海未とことりが出てきた。

 

「海未、ことり、どこに行ってたんだ?」

 

「あはは...あの人がヒロ君に話しかけた時に、海未ちゃんが走って逃げちゃって...」

 

「だ、だって、男の人が急に話しかけてきたんですよ!?

怖いに決まってるじゃないですか!」

 

そう言って自分を抱くように腕を交差させる海未。

 

ああ、そういえば海未は異性に対する耐性が低いんだっけ。

 

「確か俺に初めて会った時も逃げてたな」

 

「海未ちゃんは恥ずかしがり屋さんだからねぇ〜」

 

「わ、私の事はもういいでしょう!

ほら、早く行きますよ!」

 

「わわっ、海未ちゃん、待って〜!」

 

穂乃果にからかわれて拗ねた海未をことりが追いかける。

そんな二人について行こうとすると、後ろから袖を引かれた。

 

「ヒロくん、あの人が言ってた、スクールアイドルって何だろうね?」

 

穂乃果が見ている方向には、一年生の彼と、そんな彼より背の低い女の子と話す紅月さんの姿があった。

 

...あ、先生に見つかった。

 

「...それを知りたいなら、あの人が言ってたように、明日の朝にUTX学院に行かなきゃな」

 

「そうだよね。

ヒロくんは行くの?」

 

「ああ、それが廃校を阻止するヒントになるかもしれないしな。

というか、当然穂乃果も行くだろ?」

 

「うん!

そこで、ヒロくんにお願いがあってね、聞いてくれる...?」

 

「何だよ、改まって。

ああ、いいよ、昔からお前のお願いなんか数え切れんほど聞いてきたからな」

 

「...明日、家まで起こしに来てもらってもいい?」

 

「...嘘だろお前、まさかまだ寝坊してんのか?」

 

「う、海未ちゃんとことりちゃんを追いかけなきゃ!」

 

「おい!返事しろよ高校二年生!」

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

UTX学院に行った俺達が見るものが、俺達の日常を大きく変えていく事を、逃げ出した穂乃果を追いかける俺はまだ知る由もなかった。




突然ですが、この話を書き終わったのは30分前の事です。

...あ、危ない...

物語の展開を考えながら書くのは楽しいのですが、楽しみすぎて時間がなくなってしまう事がよくあります。

前書きが無かった時は、「あ、こいつギリギリで書き上げたな」と思って、誤字脱字を探しながら読んでみて下さい、多分あります。


次回の青の物語は、あの三人組を見た穂乃果と真拓がようやく『スクールアイドル』を知る、この物語の大きなターニングポイントとなります。

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