これからも皆さんに楽しく読んでもらえる小説を出来るだけ早く更新していきたいなと思っておりますので、これからもどうぞよろしくお願い致します!
それでは、本編をどうぞ。
12/6 花陽と和真の会話のシーンに和真の心境を加筆しました
「よう、ちゃんと寝坊せず来たようだな」
「A-RISEのライブで寝坊なんてするわけないですよ、ファンですもの」
「相変わらず照れさせてくれるな、君は...」
午前七時前、UTX学院前でにこ先輩と合流した僕は、ライブ開始直前なのに僕の元へとやってきた紅月さんと顔を合わせずに会話しながら先輩と並んで学院の壁面に付いているモニターを見上げていた。
「ところで和真君...」
「別に呼び捨てでいいですよ」
「そうか?じゃあ俺の事も気軽に呼ぶといい。
...で、和真、お前の先輩はどうにかならんのか...?」
「あれが私服って言い張って聞かないんですよ。
知り合いのよしみで見逃してあげて下さい」
「...俺は立場を隠してるから、何言っても警備員は止まらんぞ?」
「...せめてサングラスは取るように説得してみます」
僕らの話題となっているにこ先輩は、サングラス、マスク、茶色のコートという昨日の帰り道と全く同じ格好でモニターを見上げている。
よほど集中してモニターに視線を送っているのか、僕と紅月...竜音さんの会話は耳に入っていないようだ。
「それじゃ、俺はあいつらにドリンクの一杯でも注いどいてやらなきゃいかんから戻るよ、またな」
「はい、またいつか」
『UTX学院にようこそ!』
と、竜音さんが僕の側から離れようとした瞬間にA-RISEの三人がモニターに映り、歓声が上がる。
「...改めてよく見ておくといい。
A-RISEを、自分達の目指すべき場所を」
そんな竜音さんの言葉にモニターから目を話して返事をしようとしたが、そこにはもう彼の姿は無かった。
僕達の目指すべき場所、か...
『...それでは聞いてください、《Private Wars》』
曲の前奏が始まり、辺りが一気に静まり返る。
そして、突然に静かになったUTX学院の方向に、周辺で忙しなく動いていた全ての瞳がモニターへと惹き付けられ...
ライブが、始まる。
「(やっぱり、凄い)」
彼女達のライブは何度も何度も繰り返し見てきたが、その時はいつも『憧れ』を抱いていた。
それが、スクールアイドルのマネージャーとなり超えるべき『目標』となった今、大きな壁として目の前に立ち塞がる。
この地区で活動するというだけでも強大な比較対象となってしまうのに、人気になって音ノ木坂学院の生徒を増やそうとなるとUTX学院に所属する彼女達との対立は避けられない。
「(だからといって、諦めはしない)」
どのみち最高のスクールアイドルを目指す過程でいつかはぶつかるんだ、この程度で折れているようではマネージャーなんて務まらない。
ライブが終わり、自分の中で先ほどの竜音さんの言葉をもう一度思い返しながら隣で「ぐぬぬ」と唸る先輩に目を向ける。
この人と...この人
まだ色々と問題は抱えているが、それらを解決し、メンバーを集めて。
いつか必ず、あの憧憬に...
『『これだ!』』
と、胸の中で静かに決意を燃やしていた僕の耳にそんな二人分の声が入り、その方向に目を向ける。
そこには、走ってUTX学院から離れて行く二人組...音ノ木坂学院の制服を着たオレンジ色の髪の少女と、黒髪の男の姿があった。
あの人がなんでここに...彼もA-RISEのファンだったのかな?
それとも、あのオレンジの髪の人に誘われたとか?
いや、そんな事よりも気になる事がある。
「これだ...?」
何故だろう、凄く嫌な予感がする。
もし彼らがここで偶然A-RISEのライブを見て、思い付きでスクールアイドルを始めようなどと考えているのなら、僕は...
「...真、和真!どうしたのよ、ボーっとして」
「...にこ先輩」
「? 何よ」
「もし、スクールアイドルの事を知ったばかりの人が思い付きで音ノ木坂学院でスクールアイドルを始たとしたら、どうしますか?」
「はぁ?そんなの決まってるじゃない」
...僕達は、彼らを。
「絶対に認めない、強引にでも解散させるわ」
「...ええ、同感です」
絶対に、認めることは出来ない。
だから、どうかこの悪い予感が外れますように...
「それにしても、急にそんな事聞いてどうしたのよ」
「ああ、それは...」
と、ここで「音ノ木坂学院の制服を着た二人組が...」、と続けようとした僕は、忘れてはいけない大切な事を思い出す。
「...先輩、ここから音ノ木坂学院までって、どのくらいの距離ですか...?」
「何言ってるのよ、ここからじゃ結構遠いに決まって...」
ここで、先輩もそれに気付いたのかサッと顔が青ざめる。
そう、A-RISEのライブに気を取られすぎて頭から抜け落ちていたが、今はまだ始業前。
あと少しで音ノ木坂学院の始業の鐘が鳴るーーー
「ち.....」
「「遅刻するーっ!?」」
☆★
「はぁ...ただでさえ注目を集めてるのに、遅刻するなんて...」
「大変だったね...」
昼休み。
昼食を食べ終えた僕は、小泉さんと一緒に飼育委員としての初仕事でアルパカ小屋までやって来ていた。
「私も中学校の頃に何回か遅刻しちゃった事あるんだ、朝のライブはこれが大変だよね...」
ため息混じりに呟いた僕に、小泉さんが同情の目を向けながらそう言う。
あの後、にこ先輩と一緒に走って学院を目指したのだが、運動不足で足が遅いのも相まって結局僕が教室に到着したのはHRが始まった5分後のことで、新入生初の遅刻者という不名誉なレッテルを貼られることになってしまった。
「そういえば、小泉さんもライブ見に来てたんだよね?」
「うん、凛ちゃんと一緒に見に行ったよ。
やっぱりA-RISEは最高だね...!」
朝のライブを思い返しているのか、瞳を輝かせてそう言う小泉さん。
『何回か遅刻しちゃったことあるんだ』と言いながら、今でも朝一番でライブを見に行っているあたり、やっぱりこの子はアイドルの事が本当に好きなんだと分かる。
そう、それは僕やにこ先輩と同じくらい...
「ねぇ、小泉さん」
「? どうしたの?」
アルパカに餌をあげ終え、小泉さんの方に向き直った僕は、昨日出せなかった勇気を振り絞って言葉を紡ぎ出す。
「アイドルになってみたいと思わない?」
「...え?」
僕の問いかけに間の抜けた声を漏らす小泉さん。
そんな彼女の事をじっと見つめながら答えを待つ。
「...無理だよ」
数秒後、小泉さんは小さな声で話し始める。
「私、背は小さいし、声も小さくて、人見知りで...
アイドルには、向いてないんだ」
目を伏せて、悲しそうに答えを出してくれた小泉さん。
...彼女に対して「そんな事ない」と言ってあげたい。
でも、僕が彼女と言葉を交わしたのはたったの数回。
まだ彼女の事をただの「アイドル好きの優しい子」としか認識出来ていない僕に、気の利いた事なんて言えなくて。
「...そっか、ごめんね、急にこんなこと聞いちゃって。
星空さんも待ってるだろうし、戻ろっか」
「うん、そうだね」
結局、僕は彼女に対して何か言ってあげることが出来ず、自分がまだ早すぎた勧誘をしてしまったという事を悔むのだった。
☆★
「おぉ...立派なピアノだ...」
五、六時間目の授業を終え、放課後。
僕は昨日得た知識を早速使って音楽室へやってきていた。
その理由は、現状最も必要な人材...作曲者を探すためだ。
この学院には昔、県内でも実力のある吹奏楽部が存在していたらしく、その名残で音楽室にいけば一人くらい作曲の出来る人がいるかもしれないという考えをしていたのだけれど...
「...少し、生徒不足を舐めすぎていたようだね。
まさか吹奏楽部が無くなっているとは...」
そう、吹奏楽部が存在していたのは昔の話であり、今では深刻な生徒不足によって一曲演奏できるほどの人数が集まらずに廃部になってしまったそうなのだ。
「せっかくこんなに立派な設備があるのに、勿体無いな...」
僕はそう呟きながらピアノに背を預けて室内を見渡す。
廃部になってしまっているのが分かっていながらもここにやってきているのは、部活動が無くとも音楽室にやってきて楽器を演奏している人がいるかもしれないと考えたから。
しかし、静かな室内には僕以外誰もおらず、開け放たれた窓から運動部の声が聞こえてくるだけだった。
「...やっぱり、誰もいないか」
さて、これからどうしよう。
作曲者がいないとなると、歌う曲がないという最悪の状態に陥ってしまう。
かくなる上は、掲示板に作曲者募集のポスターを貼るか...いや、それで誰かが来るとも思えないし、たとえ来たとしてその人をにこ先輩が認めてくれるかどうか...
「...あなた、そこで何してるの?」
と、腕を組んで唸っていた僕にそんな言葉が投げかけられる。
声のした方向に目を向けると、そこには音楽室の扉に寄りかかる赤髪の少女の姿があった。
胸元のリボンが水色と青であることから、同級生...同じクラスなのだろうけど、正直全く見覚えがない。
赤髪なんて珍しいし、一度見たら忘れなさそうなのに...
「えっと...そう言う君は何をしに来たの?」
「...ピアノ、弾きにきたのよ」
突然現れた名前も知らないクラスメイトに緊張しながら聞くと、彼女は僕が背を預けているピアノに目を向けてそう言った。
そっか、ピアノを弾きにきたのか...
...ピアノ!?
「ねぇ君!」
「ゔぇえ!?」
「作曲!出来るの!?」
「...何でそんな事聞くのよ」
目の色を変えて詰め寄った僕に、彼女は独特な声を上げた後、半眼でそう聞き返してくる。
ああ、こんなに冷たく反応するってことは..
「なんだ...出来ないのか...」
「!? ちょっと待ちなさい!作曲くらい出来るわよ!」
ため息混じりにボソッと呟いた言葉が聞こえてしまったのか、今度は彼女が僕に詰め寄ってくる。
でも、こんなに強く言われると今度は本当かどうかを疑ってしまう。
「...本当?」
「本当よ!
...ああ、もう!そこ座って!今から聞かせてあげるから!」
僕が自分の言葉を信じないのがじれったかったのか、彼女は授業を受けるための席を指差して僕にそう言った後、ピアノを開いて演奏の準備を始める。
意図せずしてやってきた彼女の実力を図る機会に、席につきながら少しだけ緊張してくる。
もし、彼女が本当に作曲が出来るならば勧誘しない手はないけれど、その出来が微妙だったりピアノが下手だったりとなるとにこ先輩が認めるわけもないし、僕だってあまり喜んで勧誘出来るとも思わなーーー
「(ーーー凄い)」
前奏が始まり、頭の中にあった悪い考えが全て吹き飛ばされる。
ピアノに関しては無知もいいところの僕だけれども、彼女の奏でる音色はあのA-RISEの曲の前奏よりも強く僕の心を惹きつけ...
「愛してるばんざーい!」
彼女の綺麗な歌声を更に引き立たせていく。
作曲が出来て、ピアノが弾けて、容姿が良くて、歌声も綺麗...
この人が。
僕が求めていた作曲者のハードルを大きく超えて現れたこの人が、作曲者に...いや。
スクールアイドルの一員になれば...!
曲が終了し、彼女は息をつきながらドヤ顔でこちらを見る。
「どう?」
彼女は僕に向けてそういうと、もう一言...
「これで満ぞ...」
ガラガラガラッ!
「すごい!」
「ゔぇえ!?」
...言おうとしたところで、突然音楽室の中に入ってきた少女の言葉がそれを遮った。
声の主に目を向けると、そこにはあのオレンジの髪の先輩が。
「感動しちゃったよ!」
「べ、別に...」
その先輩は興奮していて僕に気付いていないようで、こちらに見向きもせずに続ける。
「歌、上手だね!ピアノも上手!」
先輩の言葉に、うんうんと頷く僕。
なんだ、彼女の魅力が分かるなんて、この人とは気が合うかもしれない。
「それに、アイドルみたいにかわいい!」
そうそう、アイドルみたいに...
...アイドルみたいに!?
「なっ...!?」
そんな先輩の言葉に、つい先ほどまでクールに振舞っていた赤髪の少女は顔をボッと赤く染め上げて立ち上がり、音楽室を出ようとする。
「あ、あの!」
「...?」
そんな少女を引き止めた先輩は、少し息を吸って強く言い放つ。
「あなた...アイドルをやってみたいと思わない?」
「...何それ、イミワカンナイ!」
「だよね...」
先輩の言葉に顔を更に赤くした少女が音楽室から出て行き、ぽつりと寂しそうに呟いた先輩一人だけが部屋に残される。
今、あの人はあの赤髪の少女をアイドルに誘った。
つまり、彼女はスクールアイドルになろうとしているのだろうか?
...違ってくれ。
そうじゃないと、僕は...!
「穂乃果」
と、部屋に残された彼女に声をかける人物が一人。
それはこの学院における僕以外の唯一の男子生徒である黒髪蒼眼の先輩。
彼は、オレンジの髪の先輩に何やら過去の話をすると、彼女を音楽室の扉のほうに向けながら言う。
「...だから穂乃果は穂乃果のやりたい事で俺達を引っ張ってくれたらいい。それが...
スクールアイドルであっても、そうでなくてもーーー」
その言葉は、僕の祈りを嘲笑うかのように、無慈悲に僕の胸へと突き刺さってくる。
...やっぱり、彼らはスクールアイドルになろうとしていたのか。
...まだだ、まだこんな現実認めたくない。
もう一回、ちゃんと確認しなくては。
「...悪かったね、あの子と二人で話していたようなのに割り込んじゃって」
と、ジンジンと痛む胸を押さえながら彼に目を向けていた僕に、彼は申し訳なさそうにそう言う。
どうやら彼は僕の存在に気付いていたようだ。
「...別にいいですよ、もう目的は果たしてましたし」
「そっか、なら良かった。
...こうして顔を合わせて話すのは入学式の日ぶりかな?」
「えぇ、あの時はまさかこんな状況になるとは思っていませんでしたが...」
「はは...同感だな...」
彼は笑いながらも疲れた表情で僕の言葉に賛同してくれる。
やっぱり、この学院内で唯一の同じ境遇を過ごす人と話すのはすごく楽しい。
...だからこそ、この人と争いたくなんてない。
「確か、翠星和真君だったかな?」
「? 名前、言いましたっけ?」
「いや、紅月竜音っていう人に聞いた」
「...なるほど、ようやく理解できました」
昨日、竜音さんは校門のほうから走ってきた。
彼が僕の帰る時にタイミング良く学院にやってきたとは考えにくく、きっと校門の近くで僕のことを待っていたのだろう。
そして、そこで偶然にもこの先輩に出くわし、ライブの来るように誘った...
つまり、彼はあのオレンジの髪の先輩ではなく竜音さんにライブに来るよう誘われて今朝に初めてA-RISEのライブを見に行ったという可能性が出てくる。
...彼に、最後の確認をしよう。
「あの、先輩...」
「蒼陽真拓だ、真拓でいいぞ」
「...真拓先輩、さっきのオレンジの髪の先輩と話してた事についてなんですが...」
僕の考えている事が本当ではありませんように、思い過ごしでありますように...と、精一杯の祈りを込めて口を開く。
「あの先輩は、スクールアイドルを目指しているんですか?」
だが、現実は。
「...ああ、多分そうなると思う」
非情に、無情に。
「ッ...じゃあ、真拓先輩はマネージャーに?」
僕の祈りを、ことごとく打ち砕き。
「まぁ...どんな形であろうと、マネージャーのような役回りになるだろうな」
目の前に、立ち塞がり続ける。
「...なるほど、分かりました」
それならば、抗おう。
例えそれが他の人の想いを踏みにじる事になろうとも。
「ならば、僕は...」
例えその相手が唯一の理解者であろうと。
僕がずっと渇望してきた目標を。
やっと掴んだ希望を。
半端な想いで邪魔をするのならば...
「あなた達をスクールアイドルとして認める事は出来ません」
「...え?」
強い覚悟と決意を持って、彼を睨み言い放つ。
僕が、僕達が、この音ノ木坂学院のスクールアイドルだ...!
今回の緑も、前回同様に結構苦労しました。
やはり、アニメで見えていない裏の部分を想像で書くのは凄く難しく、それでいて考えていて楽しいです。
今は緑で苦戦していますが、アニメ4話辺りでは青で大苦戦しそうですね...
前回の後書きでも書いたのですが、次回は青と緑の合同回となっております。
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