ラブライブ!〜二色のマネージャー物語〜   作:紅翼 天奈

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緑 0-1話 合格発表と出会い

 昔からアイドルが好きだった。

 

 観衆に囲まれながら歌って踊るその姿が。

 誰にでも分け隔て無く接するその心が。

 引退を迎え涙を堪えながら浮かべるその笑顔が。

 

 僕にはとても眩しく、輝いて見えて。

 

 

 いつしか僕の夢は彼女達が見せてくれるその輝きを支えることになっていたーーー

 

 

 ★

 

 

「おちた」

 

 東京秋葉原にあるオフィスと身間違うほどの巨大な高校、UTX学院。

 そのUTX学院の合格発表を見に来た僕、翠星(すいせい) 和真(かずま)は張り出された合格者一覧に自分の受験番号が抜けている事を確認し、手に持っていた受験票を落とした。

 

 この学院に入ることが難しいのはよく分かっていた。

 と言うのも、僕と同じような理由でこの学院を受験する人が多いのを知っていたから。

 その理由とはーーー

 

『合格者の皆さん、UTX学院へようこそ!』

 

 その声が聞こえた瞬間、辺りから大きな歓声が上がる。

 歓声を上げる人達が見つめるのは、建物の壁面に備え付けられた大型モニター。

 それに映っているのは、三人の女性。

 

『綺羅 ツバサ』

『統堂 英玲奈』

『優木 あんじゅ』

 

 彼女達のグループ名は、『AーRISE』

 

 この日本国内における『スクールアイドル』の中で頂点に君臨する者達。

 

 僕が憧れ、支えたいと夢見た、

 最高に輝く本物の『アイドル』の姿がそこにはあった。

 

 そう、彼女達が通う学校こそ...この、UTX学院。

 

 そして、その学院に入学して彼女達に近付きたいと考えてこの学院を受験する者達が、僕を含めて数百人。

 

 ただのアイドルオタクが付け焼き刃の勉強をしても簡単には合格出来ないというのは自分が1番分かっていた事だった。

 

「あの...」

 

 ただ、いくら落ちるのが分かっていたとしても夢を追いかけたかった。

 

「これ、落として...」

 

 この学校に合格する事が出来れば、少しでも夢に近付く事が出来たというのに。

 

「うぅ、誰か助けて...」

 

「かーよちん、何やってるにゃー?」

 

「あ、凛ちゃん!これ、この人が落として...」

 

 元より何も出来ない弱虫が、夢に近付く事すら出来ないという現実が悔しくて、虚しくて。

 俯いた僕の目からは涙が...

 

「ねぇ君っ!」

 

「ぐはっ!?」

 

 と、突然の横からの衝撃によろめき、転びかける。

 何事かと衝撃を受けた方向を向くと、そこにはショートカットの少女と、メガネをかけた少女がいた。

 

 どうやらショートカットの少女が僕の事を押したらしい。

 

「な、何でしょうか...?」

 

「さ、さっき、これを落として...」

 

「ぁ...受験票...」

 

 突然の女の子との会話に緊張する僕に、メガネの少女がさっき手から落ちた僕の受験票を渡してくる。

 

 でも、折角拾ってくれたのだけれど...

 

「ごめんね、これはもう僕には必要無いものなんだ...」

 

「あっ...その、ごめんなさい...」

 

「いやいや!君は何も悪くないよ、拾ってくれてありがとう!」

 

 僕の言葉の意味を理解して謝ってくれた少女に慌ててお礼をする。

 

「ねぇねぇ君、それいらないって言ってるけど...」

 

 と、今まで黙っていたショートカットの少女が僕の肩を叩き、学院の方を指さして、言う。

 

「今発表された第二志望はもう見たのかにゃ?」

 

「あっ」

 

 その言葉で、UTX学院(第一志望校)を落ちた悔しさですっかり忘れていた第二志望校の存在を思い出す。

 

 そうだ、夢に近付けなくても、高校に通う事は出来る...

 

「ご、ごめん!ちょっと見てくる!」

 

「待って!凛たちも一緒に探すにゃ!」

 

 と、ショートカットの少女...凛?が走り出した僕の腕を掴む。

 

「ありがとう!助かる!」

 

「別にいいにゃ!ねっ、かよちん?」

 

「うん!それに、私が受験票持ってるから...」

 

「ありがとう!僕は覚えてるから、二人はそれを見て探して!」

 

「分かったにゃ!えっと...25253?」

 

「なんか惜しい気がするね...」

 

 そんな二人の声を聞きながら、人混みでよく見えない合格者一覧を背伸びして見る。

 

「25253...25253...」

 

「にっこにっこ...さん...」

 

「...!二人とも、あそこ...!」

 

 そう言うメガネの少女...かよちんって呼ばれてた?が、ある一箇所を指差す。

 

 そこにはーーー

 

 25250

 25251

 25253

 

 ーーーと、僕の受験番号が書いてあった。

 

「や....」

 

「「「やったぁーっ!」」」

 

 それを見た僕らは、揃って声を上げる。

 

「おめでとうにゃー!」

 

「良かったね...!」

 

「っ...二人とも、ありがとう...!」

 

 今会ったばかりの男の合格を心から喜んでくれている様子の二人に礼を言う。

 本当に、こんな心優しい人達に会えて良かった...!

 

「ところで、第二志望はどこにしてたの?」

 

「え...あ、えーっと...」

 

 と、内心で諸手を挙げて喜んでいた僕は、突然の質問の返答に詰まってしまう。

 実はUTX学院のことしか考えて無くて第二志望は適当に決めたんだよね...

 

「えっと...確か今年から共学になる...」

 

「えっ?もしかして音ノ木坂学院?」

 

「オトノキ...うん、確かそんな名前だったね」

 

「「ほんとっ!?」」

 

「う、うん」

 

 二人の食いつきに少し後ずさる。

 音ノ木坂ってなんか変なの...?

 

「実は凛達も音ノ木坂に通うんだ!」

 

「えっ、そうなの!?」

 

「うん!来週から同級生だね!」

 

 二人の口から出てきたのは、僕の心配とは真逆の吉報だった。

 こんなに優しい人達と一緒なら、UTX学院じゃなくても悪くないかなー、と内心で不合格だった悔しさを押し潰している自分に苦笑いをしつつ、二人に向き直る。

 

「じゃあ来週からよろしくね、...えっと」

 

「そういえばまだ言ってなかったね、

 凛は星空 凛にゃ!」

 

「小泉 花陽です...!」

 

「僕は翠星 和真!改めてよろしくね、星空さん、小泉さん」

 

「むっ...凛って呼んで欲しいにゃ!」

 

「えぇ!?いや、初対面の女の子にそんな馴れ馴れしくは...」

 

「お、女の子...!?う...わ、分かったにゃ...」

 

 僕の言葉に何故か赤面する星空さんと、それを見てこれまた何故か嬉しそうな小泉さん。

 

 まさかこんなに可愛い二人と高校に入る前から知り合えるなんてーーー

 

 と、ここで一つの疑問が生まれる。

 二人はもう音ノ木坂に合格している、なら...

 

「なんで二人はUTX学院の合格発表に...?」

 

「あ、それはねーーー」

 

 

『今、全ての合格発表が終了しました!』

 

 と、小泉さんの声を頭上からの声が遮る。

 顔を上げると、あの大型モニターに再び『A-RISE』の三人が映っていた。

 

『この学院に通う事になった人、惜しくも合格出来なかった人』

 

『新しい環境に不安を覚える人、大きな期待を寄せる人』

 

『そんな全ての人に聞いてもらいたくて、今日はサプライズでライブを行います!』

 

 わぁあああああああっ!と大歓声が巻き起こる。

 あのA-RISEのライブが、目の前のモニターで行われるなんて...

 

 例え落ちたとしても、この学院を受験して良かったーーー

 

「わぁーっ...本当に始まったにゃー...」

 

「やっぱり、A-RISEならサプライズすると思った...!」

 

 と、そんな会話が横にいる二人から聞こえ、自分の耳を疑う。

 

「まさか、このサプライズライブを予想して...!?」

 

「うん!ちゃんとペンライトも持って来たよ!」

 

 凄い、と内心で驚愕する。

 

 僕も一端のアイドルオタクとしてA-RISEの事はよく分かっているつもりだったけど、小泉さんはきっと僕よりも彼女達の事をよく理解している。

 

 だから今日もライブがあるという確信を持ってUTX学院の合格発表に来る事が出来たのだろう。

 

「アイドルが、好きなんだね...」

 

「え?」

 

「あ、いや、なんでも無いよ....

 ところでそのペンライト、もう一本ある?」

 

「うん!もしかして翠星くんもA-RISEのファン?」

 

「おうっ!折角のライブなんだ、今日は不合格の事なんか忘れてガンガン盛り上がってやる...!」

 

「キャラ変わり過ぎにゃー!?」

 

「あはは...凛ちゃんも、はい、ペンライト」

 

「あっ、かよちん、ありがとうにゃー!」

 

「じゃあ皆で盛り上がっていこー!」

 

「「おー!」」

 

 

 ☆☆★

 

 

「いやー、流石はA-RISE!凄く楽しめたよ!」

 

「だよねだよね!やっぱりA-RISEって...」

 

「「最...高ッ...」」

 

「息合いすぎにゃー!」

 

 ライブが終わり、僕達は近くの公園のベンチに座ってライブの感想を言い合っていた。

 

 話してみると、小泉さんはA-RISEだけでなく他のアイドル達の事も良く知っていて、凄く話が合うことが分かった。

 

「それじゃ、僕はそろそろ帰るよ」

 

「えー、折角仲良くなったんだから、遊ぼうよー」

 

 星空さんが立ち上がった僕にそう言う。

 それは凄く嬉しいお誘いなんだけど...

 

「僕って一応第一志望校落ちてる身だからね、あんまり遅く帰ると何を考えてるんだって事になっちゃうから」

 

「そうだよね...ごめんね、ずっとお話しちゃって」

 

「いや、僕自身凄く楽しかったし、今の内から同級生の友達が出来て良かったよ、ありがとう」

 

 僕自身今日何度目か分からない礼を二人にして、少し頬を赤くする彼女達に手を振る。

 

「じゃあ、また始業式の日にね」

 

「うん、またね!」

 

「バイバイにゃー!」

 

 二人から離れ、公園を出て、駅に向かって歩きながら、これからのことを考える。

 

 音ノ木坂学院にスクールアイドルが存在しているという情報は聞いた事が無いため、アイドルを支えるという夢を追いかけるのは難しくなってしまった。

 

 でも、夢を諦めるなんて事はしたくない。

 

 例えば、音ノ木坂学院にアイドルに関する何かを作ってみようか。

 例えば...『アイドル研究部』とか?

 

 それか、小泉さんと星空さんがスクールアイドルになって、僕がマネージャーをするとか?

 二人とも可愛いし、後は曲があればもしかすると...

 

 などと考えていると、自然と笑みがこぼれ、まだどんな高校かも分からない音ノ木坂学院に通うのが待ち遠しくなってきた。

 

 新しい環境に不安はあるけれど、何故か楽しく過ごせそうな気がする。

 

「...楽しみだな」

 

 僕はそう呟くと、まだ見ぬワクワクに心を踊らせ、少しだけ早足で帰路につくのだった。

 




いかがでしたでしょうか!?

もし感想などございましたらコメントで言っていただけると作者は狂喜乱舞します。

御閲覧ありがとうございました!
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