お気に入りとモチベが欲しい...
ということで本編をどうぞ。
『ただいまッ!この俺が帰ってきたぜッ!』
...違う。
『お、俺の事...覚えてる...よね...?』
...違う。
『べ、別に会いたかった訳じゃないんだからねっ!』
違う........!
「俺、あいつとどう接すればいいんだ?」
スーパーを出て数分後、俺は穂むらに向かって歩きながら頭を抱えていた。
その理由は、俺が『変化』を恐れているからだ。
俺の知っている彼女は『昔の彼女』であり、『今の彼女』の事は何も分からない。
...従って、『今の彼女への接し方』も分からない。
「あの元気の塊みたいな子がしおらしくなってるイメージなんか全く湧かないけど、何年も空いてるだけになぁ...」
ここまで悩むのには、彼女達と数ヵ月接しただけで変わった自分という前例があるからで...
「人は変われるって身を持って知ってるだけに気が重い...」
だからといって今更逃げる訳もない。
そう...これは八年越しの待ちに待った再会なんだから。
「そんじゃ、まぁ...」
そう呟くと同時に、起動していた地図アプリが案内を終了し、目的地への到着を告げる。
「行きますか」
そして小さく自分に喝を入れ、目の前に現れた店...穂むらの戸に手をかけ、開く。
「あ、いらっしゃいまーーー」
「ただいまッ!
お、俺の事...覚えて...なくてもいいんだからねっ!」
「待ってください、色々大丈夫ですか?」
おっと、焦りすぎて挨拶が混ざってしまった。
気を取り直して...
「だっだだだだいじょうブイ。
みんな大好き真拓くん、八年ぶりに降臨だぜ!」
「ほ、本当に大丈夫ですか!?」
心配そうに言う女の子の声を聞いて少しだけ我に返る。
はっきりしてきた視界に映ったのは、栗色の髪の少女。
確か、僕の記憶にある彼女の髪の色はオレンジの筈。
そして、栗色の髪といったらーーー
「君は...もしかして、雪穂ちゃん?」
「真拓さんって...あの、ヒロ兄?」
彼女の反応を見るに、どうやら当たりのようだ。
この子の名前は、高坂 雪穂。
僕の幼馴染みである彼女こと高坂 穂乃果の妹である。
「久しぶりだね!大きくなったな〜!」
「い、いえ...!」
昔は『ヒロ兄、ヒロ兄』と後をついてきていたあの子が大きくなって店番をしているっていうのは感慨深い事だな...
そう思うと同時に、八年という時の長さを強く感じる。
「それで、雪穂ちゃん。
穂乃果は...?」
「あー...お姉ちゃんは、ですね...」
「まさか、何か大変な事でも...?」
少し目を逸らし、何かを言いにくそうにする雪穂ちゃんを見てドキッとする。
彼女の身に何かあったのだろうか、と不安になっていると、雪穂ちゃんはゆっくりと口を開く。
「その...春休みの宿題が終わってなくて...」
「はい?」
「今急いでやっている、というか...やらされてます」
「...やらされてるってーーー」
『うわぁーーーん!もう無理だぁーーー!』
『あっ!こら、穂乃果!諦めてはいけません!』
『穂乃果ちゃん、もうちょっと頑張ろうよ〜!』
俺が雪穂ちゃんに言葉の意図を聞こうとすると、タイミング良く頭上から三人分の声が聞こえる。
ああ、そういうことね...
全てを察し、額に手を当てる。
俺の隣では、雪穂ちゃんも同じ様に疲れた顔をしていた。
ああ、本当に。
さっきまで変化が怖いだの八年も空いてるだの思っていた自分が馬鹿らしい。
「...ちょっと手伝いに行ってもいいかな?」
「はい...残念な姉ですいません...」
「残念なのは八年前から知ってるから、大丈夫だよ」
そう言ってレジの横にあるのれんをくぐり、階段を上る。
『こら!出てきなさい!』
階段を一段上がるごとに声が近くなるのを感じる。
確か奥の部屋だっけ...
『穂乃果ちゃん、早くしないと間に合わないよ...?』
『結局間に合わないならやらないほうが楽!』
『なんですかその考えは!いいからやりなさい!』
部屋に近付くごとにギシギシという音が近くなる。
きっと穂乃果が布団の中にでも籠城して争っているのだろう。
『出てきなさいっ!』
『いーやーだー!』
深くため息を吐いて部屋の戸に手をかける。
不思議と緊張感は無く、何の躊躇いもなく戸を開くことが出来た。
「あ、ごめんね雪穂ちゃん、うるさかった...って、え?」
「?どうしたのですか、ことり...え?」
部屋に入ると、中にいた二人の少女と目が合う。
彼女達は、俺の記憶の中のクールで寡黙な少女...園田 海未と、心優しい少女、南 ことり。
八年の時を経て姿こそ変わっているが、纏っている雰囲気はほとんどあの時のままだ。
そんな二人の横を通り、ベッドの上にこんもりと盛り上がった布団を掴み、勢いよく引っ張る。
「うわぁ!?」
すると、オレンジの髪の少女がベッドから転がり落ちた。
「いったたたた...酷いよ海未ちゃー....ん?」
床にぶつけた腰をさすりながら俺の事を見上げるこの少女こそ、あの天真爛漫な笑みを見せてくれた少女、高坂 穂乃果だ。
「本当に変わらないよな、お前らはさ」
「...ヒロ、くん?」
「穂乃果が何かやらかして、海未が怒って、ことりが宥める...」
唖然としながら昔呼ばれていた渾名を呟く穂乃果に向かって懐かしがりながら言う。
「そこには俺がいなきゃいけないな?
...ただいま、八年ぶりーーー」
「ヒロくぅーーーーん!」
「どわっ!?」
うっすらと微笑みを浮かべながら放った挨拶は、勢い良く飛びかかってきた穂乃果によって止められる。
「おかえり!久しぶりだね!いつから帰ってきてたの?転校先では友達できた?おみやげとかある!?」
「ええい、質問が多いわこのバカ!折角の感動の再会が台無しじゃないか!」
「えーっ!?酷いよヒロくん!急だったんだから仕方ないじゃん!」
「いくら急でも質問攻めから入る再会があるか!
ただいま!久しぶり!今日帰ってきた!お陰様で友達出来た!おみやげは無い!」
「文句言いながらも答えるんですね...」
穂乃果が俺に抱きついたままの姿勢で顔を近付けて言い合いをする俺たちに冷静にツッコミを入れるのは海未。
「海未も久しぶりだな、お前もまた冷静な事で。
もっとこう、クールキャラを捨てて抱きついてきてもいいんだぜ?」
「穂乃果は抱きついてるじゃん!」
「お前の何処がクールだ!」
「そんなコントを見てると感動も無くなりますよ...」
海未はそう大きくため息を吐きながら言って額に手を当てる。
ああ、俺が部屋に入る時に緊張感が無かったのと同じか。
よく分かるぞその気持ち。
「それはそうと穂乃果、そろそろ重い」
「あっごめん...って、重いって女の子に言う言葉じゃ無いよ!?」
「おっとそれはすまん反省してる」
「かなり棒読みな気がするんだけど...?」
そう言いながら俺の上からどく穂乃果。
あー、やっと軽くなったーーー
「ヒロ君っ!」
「うっ!?」
穂乃果から解放され、楽な体勢になろうとした瞬間に横からもう一度衝撃を受け、床に倒される。
どうやら今度はことりが抱きついてきたようだ。
「久しぶり、ことり。
元気だったか?また会えて嬉しいよ。」
「うん、久しぶり!私も嬉しいよ!」
「そう言ってくれると嬉しいな、ははは」
「待って!穂乃果と扱いが違いすぎない!?」
「違うよ?だって穂乃果とことりだもん」
「説明になってないよ!?」
「...まるで真拓がさっきからずっといたかのような順応感ですね」
俺に抱きついて笑顔を浮かべることりを撫でながら穂乃果と再び言い争いを始める俺を見て海未が呆れたように言う。
「俺がこうしてスッと会話出来てるのはそれだけお前らが変わってないって事だよ」
「ええ、その通りですね。
...穂乃果には、もうちょっと変わって欲しいですが」
そう言う海未が見るのは、積み上げられた宿題の数々。
ああ、そういえば春休みの宿題をやってたんだっけ...
「全く、悪い所も変わらないのは関心出来ないな」
「うっ...」
「ま、まぁ二人とも、穂乃果ちゃんも頑張ってるし...」
「頑張ってこれなら一体どうすればいいんだろうな」
「文字通り死ぬ気で頑張るしかないんじゃないですか?」
「そうだな、じゃあ死ぬ気になって貰おうかな」
「ひっ!?海未ちゃんだけでも怖いのに、ヒロくんまで...助けてことりちゃん...」
「あはは...頑張って、穂乃果ちゃん」
「そ、そんな...」
「さぁ、やりましょうか?」
「ひっ!?やぁーめぇーてぇー!」
頼みの綱のことりにさえも見捨てられてしまった穂乃果は、海未の手によって教材の広げられたテーブルの前に座らされる。
「ふふ、こうやって見てると八年なんて開いてなかったように思えてくるな」
「そうだね。
...あっさりしてるけど、二人ともヒロ君がいなくて寂しがってたんだよ?もちろん私も。」
ことりはそう言うと、僕を抱きしめるのをやめて海未と穂乃果に寄り添った。
「そっか、それを聞いて安心した。
...まぁこれからはこの町にいる予定だからな」
「そうなの!?やったぁーーー!」
「それでは、またこの四人で過ごす事が出来るのですね...!」
「でも、高校はどうするの...?」
「ああ、転校して来ることになったよ。
...音ノ木坂学院に」
「「「!?」」」
三人が同時に驚愕の表情を浮かべる。
そりゃ当たり前だろう、なにせこれまで女子高として過ごしてきた学校に突然男である俺が転校してくるのだから。
「そういえばお母さんが共学化するって言ってた!」
「新入生だけでなく学校がまるごと共学化するから真拓が転入することが出来るのですね...!」
「ということは、ヒロくんとは学校でも一緒なの?」
「あぁ、そういう事になるな。
...って事だから、改めてこれからもよろしくな!」
満面の笑みで再会を喜ぶ俺に飛び付き喜ぶ三人の幼馴染み。
これは、そんな三人の少女と蒼い瞳を持つ少年が栄光を目指し輝いていくーーー
ーーー青の物語。
☆☆☆★
「って感じで、無事に再会出来たよ」
「そうか、そりゃ良かった」
数時間後。
日が落ちるまで宿題の手伝いをした俺は後を海未とことりに任せて家に帰ってきていた。
「ふふ、これで明日からは安心して学校に行けるわね」
「あぁ、一番の不安が解決して良かった」
優しく微笑む母さんに笑顔で返すと、心から会いに行って良かったと思う。
「まぁこれもきっかけを作ってくれた親父のお陰だよな」
「ふん、出来の悪い息子を持つと大変だな」
「出来が悪くてすまなかったな」
「おう、それでその出来の悪い息子よ」
「うん?」
「穂むまんは?」
「あ゙」
「『あ゙』じゃねーよ阿呆、今から行ってこい」
「いや、ちょっと待ってくれよ親父。
あんた俺にちゃんとした金渡してないだろ」
「普通はきっかけを作って貰った礼とかで買ってくるだろ」
「礼はこども銀行への借金で相殺されました」
「表出ろ阿呆息子」
「上等だクソ親父」
「止めなさい。
二人とも明日から学校と仕事でしょ?」
二人揃って外に出ようとした俺達を母さんが止める。
「ちっ...命拾いしたな真拓」
「母さんに感謝しろよ親父」
「全く、本当に仲が悪いんだから...
ほら、真拓は早く寝なさい。
転校初日から遅刻なんて格好悪いわよ?」
「はーい、じゃあおやすみなさーい」
「はい、おやすみ」
簡潔に挨拶を済ませ、母さんから聞いている自分の部屋に向かう。
母さんいわく前の部屋の内装に出来る限り寄せて家具を配置してくれているらしい。
「全く、あのクソ親父に見習わせたい優しさだな」
そう呟きながらドアを開く。
ひゅんっ!ゴッ!
「ぐは!?」
俺がドアを開けたことによって何らかの罠が発動したようで、天井に吊るされた木製のバットが俺の顔面に向かって飛んできた。
突然の激痛に額を押さえる俺の脳内には、この罠を仕掛けた男のしてやったり顔が浮かんだ。
「おいコラこのクソ親父ぃいいい!」
「はーっはっはっは!その様子だと引っかかった様だなぁ!」
「てめぇマジで表出ろやあああああ!」
「うお!?バット使うのは反則だろ!」
「こっちはこのバットで頭打ってんだよド畜生!
一発でいいから殴らせろやぁあああ!」
後日。
引越してきたばかりの家族のうち父親と息子が初日から傷だらけになっていた事がご近所の噂となるのだった。
今回でプロローグであるオリジナルの0話は終了し、次回からはアニメ準拠である1話に入っていきます。
...入って、いくんですが...
正直、不安ではあります。
ここまで書き貯めておいた六話分がこの三週間で一気に蒸発したにも関わらず、UAやお気に入り登録者数はそこまで伸びず...
いや、投稿サイトの基準が分からないので今の状況が本当に悪いのかも分からないのですが、それより続けられるかが心配です。
自分、少し折れやすいもので...
とにかく、人気とかではなく続ける事を考えてこれからも頑張っていくのでこれからもよろしくお願い致します!とりあえず目指せ20話!
それでは、続けて緑の物語をどうぞ!