...ああ、いつ低評価がついてしまうかと心配で胃が痛い。
それでは本編へどうぞ
『ねぇ、ヒロ君』
『ん?どうかしたか?』
それはあの思い出の続き。
少女達が泣きやみ、いよいよ別れの時を迎えようとした蒼い瞳の少年に一人の少女が声をかける。
『私達、また会えるかな?』
『...ああ、絶対にまた会える』
少年が声をかけた少女ーーー南ことりに返事をすると、自分もともう一人少女が前に出る。
『また同じ学校に通うことは出来ますか?』
『きっと君達のいる学校に転校してみせる!』
少年が二人目の少女ーーー園田海未に笑顔で答えると、三人目の少女も前に出る。
『またこの四人で一緒に過ごせるかな?』
『次は絶対に離れない、また会えた日にはこの四人で過ごしてみせる!』
少年が三人目の少女ーーー高坂穂乃果に強く言い放つと、三人の少女は笑顔を浮かべ、それぞれの小指を差し出した。
少年もそれに応じて差し出された小指に自分の小指を絡ませる。
『...約束だよ』
『ああ、絶対に守ってみせる』
そう言って指切りをした四人は約束の叶う日を想って成長し、八年が経った今。
ようやくその約束が叶う日が訪れる。
今日は、音ノ木坂学院の始業式。
☆☆☆★
「行ってきます」
俺は玄関から家の中に向かってそう言うと、親父と母さんの返事を待たずに外へ飛び出した。
転校初日といえば、親父のにやけ顔の真意に怯えながら登校するというのがいつもの事だったため、こんなに元気に学校へ行くというのは初めてかもしれない。
まぁ、あの親父のお陰でこうして音ノ木坂学院に通う事が出来るのだし、少しは感謝しなきゃーーー
と、ここまで考えた所で額がズキンと痛む。
...前言撤回、絶対許さん。
昨日の夜、バットと拳による熱い戦いが行われ、両者数ヶ所傷を負った辺りで母さんが激怒して引き分けになるという出来事があり、現在俺の体には複数の傷が残っている状態だ。
「全く、折角好印象を抱き始めてたのにな...」
そうため息をつきながら学校への道を急ぐ。
というのも、俺は学校が始まる前に理事長室へ行くようにと昨日ことりからメールで伝言を預かったのだ。
「っと、この階段の上か...」
音ノ木坂学院下と書かれた看板の下にある階段をトントンとリズム良く登る。
すると、パンフレットに載っていたあの綺麗な建物が見えてきた。
「「これが、音ノ木坂学院...」」
そう口から零すと、正門の前にある信号を渡って...
ん?今自分以外の声がしたような...?
学院から目線を外して横を見ると、こっちを見ていた緑の瞳と目が合った。
「「あ、どうも」」
再び重なる声。
自分より背の低いこの少年とは思考回路が似ているのかもしれない。
「もしかして、この学校の新入生ですか?」
「いや、この学校に転校して来た二年生だよ」
「えっ?」
俺が質問して来た少年にそう返事をすると、彼は驚いた顔をする。
「この学校って、今年から共学になったんですから二年生には女子しかいないんじゃ...」
「あー、そうみたいだね...」
「もしかして、変態...?(ボソッ」
「聞こえてるけど変態ではないよ!?」
「あ、ごめんなさい...」
「まぁ、そう思われても仕方ないからいいよ」
俺の言葉を聞いた彼はホッとした様子で胸をなで下ろす。
それにしても、彼は新入生なんだよな?
「君はなんでこんな時間に学校に来てるんだ?」
「あ、それはですね...ちょっと、早起きしすぎて」
「そっか、まぁ新学期の始まりは早起きしちゃうものだよな」
「そうなんですよ、はは...」
そう話ながら校舎に入り、辺りを見渡す。
おお、中も綺麗じゃないか。
しっかりと掃除されているあたり、いい人が集まっているんだろう。
「それでは先輩、僕はそろそろ行きます」
「ああ、じゃあまた」
俺が感心していると、彼はさっさと歩いて行ってしまった。
あ、彼の名前聞き忘れたな...
「まぁ、また会えるだろ。
それより今は理事長室へ急がなきゃな」
そう呟くと、近くにあった階段を登る。
するとすぐに理事長室が見えた。
コンコン、とそのドアをノックし、返事を待つ。
『う、嘘でしょぉおおおおお!?』
すると、下から悲鳴が聞こえてきた。
今の声は、さっきの...?
『はい、どうぞ』
彼の事心配していると、理事長室の中から女性の声がしたので、慌てて中へ入った。
「真拓くん、久しぶりね」
そう僕に向けて微笑みを浮かべるのは、この音ノ木坂学院の理事長である、ことりのお母さん。
「はい、昔はお世話になりました」
過去に友達の母として何度か会ってはいるが、今は生徒と理事長の関係なのでかなり緊張している。
「ふふ、昔に会っているのだし、そんなに固くならないでいいのよ?」
「いえ、流石に八年も経っているので...」
「それでもことり達とは以前のように接っせたのでしょう?」
「あー...なんかあいつらは全然変わってなかったというか、軽く話せたというか...」
「そうみたいね。
ことりも『ヒロ君は変わってなかった』って喜んでたわよ」
「そうなんですか?」
「ええ、なんで転校して来る事を教えてくれなかったのって怒られちゃったわ」
まさかことりがそんなに俺との再会を喜んでくれていたなんて...
なんか、ちょっと照れ臭いな。
「さて、それではそろそろ本題に入りましょうか」
と、理事長の言葉で現実に引き戻される。
「蒼陽真拓君、改めて貴方の転入を歓迎するわ」
「ありがとうございます。
その事ですけど...本当に俺が転入して良かったんですか?」
「というと?」
「いくら共学になったとはいえ、去年まで女子校だった学校に、それも女子しかいない事が確定な学年に、男である俺が転入して大丈夫なんですかね...?」
「...えぇ、クラスの席に余りがあったのよ。
逆に、真拓君は男一人で転入する事はいいの?」
「まぁ、不安であるのは確かですが...
皆がいますし、これは約束ですから。
それに、後輩に男子はいるんですよね?」
「...まぁ、いるといえばいるわね」
なんだろう、この含みのある言い方は。
でもさっき会った彼はしっかりしていたし、男子と仲良くなれなくて女子としか話せないって事は、ない、よね...?
「と、とにかく、学年に自分だけ男っていうのは気にしませんよ」
「そう、それは良かったわ。
それと、もう一つ言っておかなければいけない事があるのだけど...」
「はい?」
「...いえ、これは後で全校生徒にも言う事だから、今はまだいいわ」
「...そう、ですか」
今、理事長の顔が少し曇っていたような...
「今からその事を話すための集会を行うから、真拓君も今から講堂へ向かってもらってもいいかしら?」
「あ、はい...失礼しました」
理事長の様子に後ろ髪引かれながらも、その理由を聞けるほど強い心を持っていない俺は、理事長室を出て講堂へ向かうのだった。
★
転入したばかりの学校の講堂を探すというのは意外と大変で、俺が講堂内に入った時にはもう既に少しずつ生徒が集まり始めていた。
その中には、見覚えのある後ろ姿が三つあった。
「おはよう、みんな」
「あ、ヒロくん!おはよう!」
「おはようございます、真拓」
「おはよう、ヒロ君!」
俺の声に笑顔で反応する三人。
ああ、これがあの日からずっと想い続けた瞬間なんだ。
「...やっと、叶ったな」
「いえ、まだまだこれからですよ」
「そうだよ!これからはずっと一緒に、ね!」
「ヒロ君、これからもよろしくね!」
「っ...ああ、絶対にあの日の約束を守り通してみせるっ!」
そう、これから。
何があっても、どんな事があっても、絶対に...
と、講堂の舞台袖から理事長が現れる。
「あ、お母さんだ!」
「どうやらもう始まるようですね」
海未がそう言うと同時に、理事長がマイクに向かって口を開く。
『皆さん、おはようございます。
...今日は、皆さんに大事なお話があります』
理事長がそう言うと、辺りからはざわざわと話し声が聞こえた。
「なんの話だろうね?
...授業の時間が減る、とか?」
「ありえない」
「即答!?」
穂乃果を適当にあしらいながら、少しだけ不安を感じる。
理事長の言う『大事な話』というのは、さっき俺にしようとした話の事だろう。
...つまり、理事長の顔が曇るような内容の話ということだ。
『この学校、音ノ木坂学院は、近年少しずつ生徒数が減少していっていることが問題視されていました』
「へー、そうだったんだ?」
「うん、今の三年生は三クラスしかなくて、二年生は二クラスだけしかないんだ」
「はー、道理で...」
そう言いながら周りを見ても、はっきりと分かるほど生徒の数が少ない。
というか、今気付いたのだけど、この場には全校生徒が集まっているはずなのに...
『そんな状況を打破する為にこの学院は今年から男子生徒の募集を開始し、共学校となりました。』
その理事長の言葉とは裏腹に、男子の姿が見えない。
『しかし、共学化することでこの学院に通うことになった男子生徒の数はーーー
ーーー二人』
「なっ...!?」
「二人!?」
「ヒロ君がその中の一人だとして、新入生の男の子は...」
「一人だけしか、入学してないのですか...!?」
驚愕する俺たちを尻目に、理事長の話は続く。
『そして、男子生徒だけでなく女子生徒すらも去年の半分ほどしか入学せず、作ることの出来たクラスの数は一クラスのみとなり、会議の結果、早くて三年後には..,』
そこで理事長は一呼吸おいて、俺のほうを見た...ような気がした。
そして、その瞳からは。
『(ごめんね、真拓君...)』
そんな思いを感じたーーー
そして、その口は開かれる。
『音ノ木坂学院は、廃校を検討する事となりました』
「嘘、だろ...」
その知らせは、再会を果たし幸せな未来に向かい進むはずの俺たちの高校生活を大きく変えてゆくのだったーーー
ここからは書き貯めではなく投稿を開始してから追加しましたので、誤字脱字や分かりにくい表現が目立って来てしまうかもしれません。
出来るだけそれらが無いように頑張っていきますので、どうか暖かい目で見ていただけると本当に幸いです。
それでは緑の物語をどうぞ。