ラブライブ!〜二色のマネージャー物語〜   作:紅翼 天奈

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これまで毎週二話同時投稿をしていたのですが、あっという間に書き貯めが無くなり、供給が追い付かなくなった為にこれからは毎週一話ずつ青と緑を交代で投稿していくことにしました。
物語の進行が遅くなってしまいますが、何卒よろしくお願い致します。

それでは本編をどうぞ。


青 1-2話 この四人で

【廃校のお知らせ】

 

 式が終了し、その空気の重さから一言も発する事なく校舎に入った俺達はその張り紙の前で立ち尽くしていた。

 

「...本当に、廃校になるのか」

 

「...そのようですね」

 

「...せっかくまた会えたのに、こんなのって...」

 

 俺が零した言葉に、海未とことりが反応する。

 

 ことりの言う通り、やっとの思いで再会を果たして一緒に通えるようになった学校が三年後には無くなるかもしれないなんて、余りにも辛く、悲しい。

 

 転校してきたばかりの俺がこんな気持ちになるんだ、一年間俺より過ごしてる三人...特に、母親がこの学院の理事長があることりは尚更辛いことだろう。

 

「...の、...活が...」

 

 と、ここまで柄にもなく一言も喋らずに俺達の後ろを歩いていた穂乃果が、ブツブツと小さく何かを呟きながら俺を軽く押して張り紙の前に出る。

 

「「「...穂乃果(ちゃん)?」」」

 

 そして、俺達の呼びかけに対する返答の代わりに...

 

「ふぁっ...」

 

 後ろ向きに倒れ始めた。

 

「お、おい穂乃果!?」

「穂乃果ちゃん!」「穂乃果!」

 

 丁度後ろにいた俺がその体を受け止め、慌てて三人で声をかけると、どこか遠い所を見ている穂乃果の口が小さく動き...

 

「私の輝かしい、高校生活が...!」

 

 そう呟くと、ガクッとその首が折れた。

 

 嘘だろ、気絶した!?

 

「ふ、ふふふ二人とも!ほけ、保健室はどこだ!?」

 

「落ち着いて下さい真拓!穂乃果の脳が揺さぶられてます!」

 

 はっ!?

 あまりの突然の出来事に支えていた筈の穂乃果をガクガクと揺さぶっていた!?

 

「ヒロ君、保健室はこっちだよ!」

 

「わ、分かった!...よっと」

 

 ことりに返事をしながら穂乃果をおぶり、駆け出す。

 全くこいつは、転入早々迷惑かけさせやがって...!

 

 

 

 ★☆☆☆

 

 

 

「初めまして、今年からこの学院に通うことになった、蒼陽真拓です。

 新しいクラスに緊張していますが、楽しく過ごせたらなと思っています。

 一年間よろしくお願いします!」

 

 転校続きの生活に慣れてきた頃に編み出した、『大体どこでも通用する自己紹介のテンプレ』を言い終わった俺に向かってクラス...穂乃果を除いたクラス全員から拍手が起きる。

 

 穂乃果を保健室に預けてクラスの確認に向かい、四人全員が同じクラスであった事を知った俺達は揃って教室に飛び込み、なんとかホームルームに間に合う事が出来た。

 

「さて、蒼陽の自己紹介も終わったところで、私は職員会議に行ってくる。

 今からは自由時間にするから、各自新しいクラスに馴染んでおくといい」

 

 そう言うと先生は教室を出ていき、教室が少しだけ騒がしくなる。

 

 自己紹介を無事に終えて少し緊張の糸が切れた俺は、ことりの隣の窓際の席に座り、息を吐いた。

 

「ヒロ君、お疲れ様」

 

「真拓にしては凄く落ち着いた自己紹介でしたね。

 てっきり緊張して噛むのではないかと思っていました」

 

「ふふん、俺を今までの俺と一緒にしないことだな、俺はこの八年で様々な技能を身につけてきたんだ、毎日を驚きの連続にしてやる」

 

「...何故でしょうか、さっき見直した筈なのに、真拓が失敗の連続を味わう未来が容易に想像出来てしまいました」

 

「失礼な。

 俺は本当に色々な技能を完璧にだな...」

 

『ねぇ、先生が今行ってる職員会議って...』

 

『やっぱりあの事だよね...』

 

『この学校、本当に無くなっちゃうのかな...』

 

 と、俺が海未に反論しようとすると、周りからそんな会話が聞こえ、少しだけ空気が重くなる。

 

「廃校、か...」

 

「正しくは廃校を検討、ですが...理事長の言っていた事は本当ですし、今の中学生はみんなUTX学院を志望していると聞いたので、ほぼ確定ではないかと...」

 

「UTX学院?」

 

「秋葉原に最近出来たビルみたいな大きな学校の事だよ。

 確か凄い人達が通ってる高校って聞いたけど、詳しくは知らないな...」

 

 へぇ、そんな学校があったのか...

 秋葉原って事はここからもかなり近いし、音ノ木坂と比べられた場合に新しい方を選ぶという人が多いのだろうか?

 

「...この学校は私達のおばあちゃんの時代からある学校だから、新しくて綺麗なUTX学院に人が行っちゃうのも分かる気がするな...」

 

「確かに、そうですね。

 音ノ木坂学院とUTX学院を見比べた場合、殆どの人がUTX学院を選ぶでしょうし...」

 

 二人はそう言うと、下を向いて悲しそうな顔を浮かべる。

 

「なんとかできないのかな」

 

 そんな二人を見て、自然と口から呟きが漏れた。

 

「なんとか、とは?」

 

「海未が言った通り、廃校はまだ『検討』されている段階なんだ、それが『決定』になる前に、何か出来ることがあるんじゃないかな」

 

「確かに、そうですが...」

 

「何かいい案があるの?」

 

「あー...それは、今から考えるってことで...」

 

「そこが重要なんじゃないですか...」

 

「と、とにかく!

 何か考えて、それを実行して、ダメだったならまた考え直す。

 それを繰り返せば、きっと音ノ木坂に興味を持ってくれる人が現れるはずだろ?」

 

 これが俺の思い付く精一杯の『今出来ること』。

 

 ただ下を向いて廃校を待つだけなんてつまらない。

 どうせならそれを阻止する計画を建てる方がいい!

 

 俺の言葉を聞いた二人は、少しだけポカンとしたかと思うと、その顔に笑顔を浮かべた。

 

「ヒロ君は、やっぱりヒロ君なんだね」

 

「ええ、少しだけ印象が変わったように思っていましたが、穂乃果が二人に増えたようなこの感じは紛れも無く真拓ですね...」

 

「...なんだよ、悪口か?」

 

「いえ、喜んでいるんですよ。

 いつも穂乃果と一緒に私達を引っ張ってくれたあなたが変わっていなかったことを。

 ...さぁ、それでは今から考えましょう。

 私だってただ黙って廃校を待ちたくはないのです」

 

「折角またみんなで通えるようになった学校が無くなっちゃうなんて嫌だもんね!」

 

「二人とも...!

 よし!じゃあまずは...」

 

 と、言おうとしたところで、教室の後ろにあるドアが開き、がっくりと肩を落とした穂乃果が入って来た。

 

 その纏っている空気の重さに話しかけられないでいると、穂乃果はふらふらと歩いて来て俺の後ろの席に座り、顔を手で覆った。

 

「...あの穂乃果がこんな状態になるなんて、よっぽどこの学校が好きだったんだな」

 

「うん...私、穂乃果ちゃんがこんなにこの学校の事好きだったなんて、知らなかった」

 

「...いえ、それはどうでしょう?」

 

「...え?それってどういうーーー」

 

「どうしよぉおおおおおっ!」

 

「ぐふっ!?」

 

 海未が言った言葉の意味を聞こうとした瞬間、俺の首に穂乃果の腕がかかり、息が詰まる。

 

「げほっ!?ちょ、お前何を...」

 

「ねぇどうしよう!

 学校が廃校になるって事は、他の学校に転入することになるんでしょ!?

 転入試験とか、勉強してないのに受からないよぉー!」

 

 俺の首を絞めながら体を揺らす穂乃果は、早口でそう言ってくる。

 

 

 ああ、こんな元気の塊みたいな奴が何でこんなに落ち込んでるのかと思ったら...

 

 

「そんな事で気絶なんかしたのかこのアホ乃果!

 俺の心配を返せ!」

 

「そんな事!?

 ヒロくんは頭がいいのかもしれないけど、穂乃果にとってはショートケーキの上の苺くらい大事な事なんだよ!」

 

「全然大事そうに聞こえねーよ!

 それに、もし廃校が決定しても転校する事にはならない!」

 

「はぇ?」

 

「...その様子だと、理事長の話を全く聞いていなかったようですね」

 

「全く...まぁ、これが穂乃果だよな」

 

「ど、どういうこと?分かんないよ!」

 

 素っ頓狂な声を上げる穂乃果に向けてため息をつく俺と海未。

 それを見て慌てる穂乃果の肩にことりが手を置いた。

 

「穂乃果ちゃん、お母さんも言ってたけど、廃校になるのは早くても三年後で、今の一年生が卒業してからだよ」

 

「そうなの!?

 よ、よかったぁー、勉強しなくていい...」

 

「「勉強はしろ(しなさい)」」

 

「ご、ごめんなさい〜!」

 

 穂乃果は耳を押さえ、俺達から目を逸らす。

 

「...でもさ」

 

 そして、ポツリと呟く。

 その顔は、さっきまでのおバカな子とは思えないような真面目なもので、和らいでいた空気が再び緊張したような気がした。

 

「それって、今の一年生には後輩が出来ないってことでしょ?」

 

「ああ、このまま行くとそうなるな」

 

「...なんとかできないのかな」

 

 そんな穂乃果の呟きを聞き、顔を合わせる俺たち。

 

 なるほど、穂乃果が二人に増えたような感じってこういう事だったのか。

 

「考える事は同じだな」

 

「...え?」

 

「私たちも今、なんとかしたいって話してた所なんだよ」

 

「そ、そうだったの?」

 

「はい、当然穂乃果も含めた四人で、ですよ」

 

「...うんっ!」

 

「よし!それじゃあ放課後に学校を回ることから始めよう、俺だってこの学校の事を知っておきたいし、新しい発見があるかもしれないしな」

 

 俺の言葉に頷く三人。

 この子達とならきっと出来るはずだ。

 

 

 折角やるんだ、救ってやろうぜ、この学校を、この四人で!




次回の青の物語は三年生のあの二人が登場します。


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