海底基地から海中へと身を脱した俺は、ノンビリとしたペースで泳いで行く。もう海底基地の危険性が皆無となったので、俺としてはイルカさん達の懸念を払拭出来たと思えているので焦りは一切無い。
勿論、スネーク達が失敗する可能性も………いや、それは有り得ないだろう。だが、もし万が一にもそんな事があったのなら、俺が行って全力で暴れれば良いだけだし、やはり問題無いと言えるだろう。
で、ノンビリ海中を進んでいると、亀やイルカさん達が待ち受ける場所へと辿り着いた。すると、俺を視界に入れた途端、亀が焦った様子で必死に海中を泳ぎながら近付いて来るのが目に映った。
どうやら、かなり心配していたようだ。
俺は亀やイルカさん達を安心させる為、海上に顔を出すとすぐに声を掛ける。
「大分待たせたみたいで悪いな」
「いえ、それは良いんです。それより、怪我はありませんか?」
「掠り傷一つ無いよ」
「そうですか! ホッとしました」
ふぅぅぅ、と大きく息を吐く亀を見ていると、少し罪悪感が湧いて来た。まぁ、別に俺が悪い事をしている訳じゃないんだけどね。
でも、心配を掛けたのも事実であるし、罪悪感を抱くのも仕方ないだろう。
「海底基地はどうなりました?」
「あぁ、あそこは兵器製造所だったみたいだ」
「そんな危険な施設だったんですか!?」
「レッドリボンって知ってるか?」
「反政府組織ですよね? ……まさか!?」
やはり亀はかなり頭が良いよ。少し話すだけで、その内容の先を容易く読み取るからな。
一を話して十を理解する亀は、流石は武天老師様の側近だと頷ける。マジで優秀すぎるよな。
俺は亀を安心させるように、意識して何でもないかのように言葉を発する。
「少なくとも、海底基地については問題無い。恐らく、そろそろ爆発でもして崩壊するんじゃないかな?」
「爆発、ですか?」
まぁ、本当に爆発するかどうかは不明だが、使用不可に陥る程のダメージは受けるだろう。何せ伝説の男が居るんだからな。
実際、歴代メタルギアでは悉くが爆破されているし、俺の予想は的外れとも思えない。
そう思っていると、俺の言葉が真実へとなる。何が起こったのかと説明すると………
「わ、わわわわ!!?? 爆弾でも仕掛けていたんですか!?」
俺達が今居る海上から少し離れた場所に、巨大な水柱が爆音と共に発生したのだ。どうやら本当に爆発したらしい。
恐らく、スネークやメリルがメタルギアと闘った末に、ロケットランチャーとかで爆破したんだろう。或いは、基地自体の破壊を目的に爆破した可能性もある。
だが亀よ、慌てるのは理解出来るのだが、何故俺が爆弾を仕掛けたと思うんだ? 俺はそんな物騒な事はしないぞ。
俺が苦笑しつつ首を横に振ると、亀は怪訝そうな視線を水柱が起きた方向へと向ける。多分、俺の発言を信じていないのだろう。
でも俺の発言は真実であり、それは変わらないし変えられない。
爆発させたのはスネークですからね。もしくはメリルですよ。
俺は無実だ。
だが再び俺へと視線を向ける亀の表情は、明らかに俺を疑っていた。心底心外である。
▲△▲△▲△▲△
カメハウスへと戻って来た頃には、既に空の色は漆黒となり夜に変わっていた。となれば当然、晩御飯の時間帯である。
もう腹ペコである俺が目にしたのは、武天老師様が沢山の食材を庭に用意している姿であり、それを見て察するのはBBQなのだと言う事実。
イヤッホーーイ!! BBQだぜーい!!
満面の笑みを浮かべながら炭を燃やす武天老師様に近付くと、タオルケットを手渡されたので礼を告げて受け取る。そして濡れた身体を拭き終わる頃になると、武天老師様が声を掛けて来た。
「亀と出掛けておったようじゃが、何処に行っておったんじゃ? この辺りには何も無かったじゃろう?」
「レッドリボンの海底基地があったので、調査してきました」
「何っ!? レッドリボンじゃと!?」
「でも大丈夫ですよ。もう施設は爆発して跡形もありませんから」
「お主、意外とアグレッシブじゃの」
何やら勘違いされているが、爆破したのは伝説の男達ですよ。俺は無関係です。
だがそれを指摘するよりも、今の俺が大事なのは目の前のBBQだ!
俺が網の上で焼かれる肉にズッと視線を向けていると、武天老師様は呆れた様子で苦笑しつつ食事を進めてくれる。
「頂きます!!」
「うむ。成長期じゃからの、沢山食べると良い」
「ウメェーー! 肉も良い肉だけど、タレが旨いですね!」
「わし特製のタレじゃ」
「武天老師様は料理も出来るんですね!」
「いやいや、簡単な料理だけじゃよ。手の込んだ料理は出来んしの」
武天老師様は照れたようにそう告げるが、このタレはマジで旨い! 多分、黄金のタレと同等レベルだ!
それは兎も角、俺は最高に旨いBBQを堪能し用意されてあった食材だけでは足りなくなったので、真夜中の海にダイブして新たな食材を確保して更に食べまくった。
因みに、武天老師様は俺の食欲に呆れていたが、それはサイヤ人の特性なんで仕方ないんですよ。うむ、しょうがないんだ。
で、そんなこんなで楽しい晩御飯が終わると、カメハウスで初めての一夜をすごした。十一年間をすごした家とは違うので、少し寝づらかったのは事実だが充分に眠る事は出来たよ。
そうして、それからカメハウスでの生活が数日経過したとある日、突然玄関先で悟空の声がした。その事に少し驚いたが、それもすぐに納得出来た。
それと言うのも、原作でフライパン山の火を消す為に武天老師様の持つ芭蕉扇を借りに来るという出来事があるのを思い出したからである。
そして、フライパン山のドラゴンボールを手に入れたとしたら残りは一つであり、悟空が大猿化する時が近付いているという事だ。勿論、神龍が見れる瞬間があるという事でもある。
悟空やブルマは着々とドラゴンボールを集めているようだと確信しつつ玄関に顔を出すと、未来のお嫁さんであるチチの姿も当然ながら見受けられた事に安心し、その夫である悟空へと視線を向ける。
「よう、悟空」
「オッス、じいちゃん居るか?」
「あぁ、今は丁度日課のドラマも見終わったところだから、武天老師様の手も空いて……」
俺が悟空との会話をしている途中に、背後に気配を感じたので視線を向ける。すると、話題の張本人である武天老師様が誰と話しているのかと聞いて来た。
なので俺は、玄関から自身の身体を退けると武天老師様に場所を譲る。
「ん? 誰かと思えば、この間の子供ではないか」
「オッス、じいちゃん。実はさぁ、じいちゃんに頼みがあんだよ」
「……ふむ、取り敢えずその頼みとやらを聞かせて貰うかの」
何やら思案するような仕草で話しの先を促す武天老師様。すると、悟空がチチを紹介した後で頼みとやらの説明を始めた。
それから、暫く要領を得ない悟空の雑な説明に手を焼いたものの、チチが合間合間に合いの手を入れる事によりちゃんと武天老師様へと詳しい事情が説明される。
そうして、芭蕉扇が既に消失している事が判明して亀と武天老師様のコントが予定調和のように発生し、その後は当然ながらチチによる突然の凶行によって武天老師様の頭部が割られるが、比較的原作と同様の流れを辿る事となった。
勿論、チチの凶行を止めようと思ったら簡単に出来たのだが、楽しみにしていたので手は出さなかったよ。……仕方ないだろ? 原作を読んだヤツなら気持ちは理解してくれる筈だ。
それは兎も角、結局芭蕉扇が無いのだから苦肉の策として武天老師様直々に出られる事となり、俺は移動手段が無いのでお留守番となった。
ま、話し相手の亀が居るので暇にはならないし、俺としては問題無い………いや、強いて言うなら、悟空が“かめはめ波”を放つ瞬間は見たかったな。無論、武天老師様の”かめはめ波“も同様である。
しかし移動手段が本当に無いので、こればっかりは諦めるしかなかった。
まぁ、修行が始まったら俺も“かめはめ波”を出せるようになるだろうし、それまでの辛抱だと我慢しとこう。
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武天老師様が帰って来てから色々と話を聞いて原作と変わりなく進んだ事を確認すると、そこからは愚痴を聞くはめになった。
何でも、俺がフライパン山まで来なかった事にブルマから滅茶苦茶文句を言われたらしい。しかも、結構辛辣な発言を受けたらしく、武天老師様がかなり凹んでいたよ。だが、それは俺のせいか?
確かに会いに行かなかったが、正確に言い表すと会いに行けなかったのだから仕方ないと思うだろう? だって移動手段が無いんだからしょうがないじゃん。
俺としては武天老師様から愚痴を聞きつつ、終始頬を引き攣らせるしかなかったよ。
で、その後は俺の修行の話へと話題が移行したのだが、フライパン山での悟空との遣り取りによって孫悟飯の孫である事などが判明した事から悟空を弟子にする事に決めたと報告があり、ついてはそれまでノンビリしてくれと言われてしまった。
まぁ、悟空と一緒に修行出来るのは良いのだが、今日からまた数日間を暇な時間と闘う事になるのかと思うと少し憂鬱である。亀と一緒に海中散歩するのもそこそこ楽しいのだが、そろそろ気功波関係の修行をしたいと言うのが俺の本音なのだ。
とは言っても、修行内容を決めるのも何時修行を始めるのかも、それを決定するのは師である武天老師様なので弟子である俺は師の決定に反論する立場にいない。それ故に、また数日間をノンビリするしかなさそうだと俺は覚悟するしかなかった。
だが、何もせずにジッとしているのは辛いので、海中でのトレーニングでもしようかと思っている。
トレーニングの内容は、史上最強の弟子に登場した修行方法で水中で蹴りを放つというものだ。重いランドセル型の岩を背負うのとは違って、新鮮な感覚で修行出来るんじゃないかと思っている。
身体に掛かる負荷は少ないが、バランス感覚などを鍛えられるだろう。………多分、きっと、メイビー。
さぁ、悟空がくるまで自主練を頑張るとしましょうか!! 自分、ガンバ!!