ひたすら海中に下半身が浸かっている状態で蹴りを放ったり、少し行きすぎた時は全身を海中に浸けた状態で蹴りや正拳突きをしたりと、少々修行の方向性を見失ったりしていたが、何故か分からんが結構楽しく過ごせた数日間だったと思う。
自分でもはっきりした理由は分からないのだが、途中から修行ハイとでも呼べる心境に陥っていたからじゃないかなぁとは思っている。ま、結果良ければ全て良しって感じだな。
それは兎も角、今日も朝から海中で修行をしようと思っていると、そこに丁度良く悟空がやって来た。とうとうドラゴンボール集めが終わったらしい。
その証拠に、武天老師様に修行しに来たと悟空が言っているので間違いないだろう。
で、これまた丁度良く、本当に狙っていたんじゃないかと言うレベルで船をえっちらこっちらと漕いでクリクリ頭のクリリンがやって来た。
とうとう………とうとう冒険編ではなくバトル編へと移行する時がきたんだなぁ、とクリクリ頭を眩しく見詰めながら思ったよ。
そして、そこからは何故か原作通りではなくすぐに修行を始める為に移動する事になった………いや、クリリンがエロ本を渡すところは原作と同じだったんだが、プロレスラーみたいな女性の登場とか人魚さんの登場とかなかったのはビックリした。………ブッチャケると、人魚さんはマジで楽しみにしてたんだけど、何故登場がなくなったんだろうか?
俺という異分子が居るとは言え、少し変化した部分にちょっとガッカリしたのは内緒である。
って言うか、ランチさんはどうなるんだ? まさかこのまま出会う事も無いのだろうか?
となるとかなり残念である。俺としては天津飯とくっついて欲しいので、是非知り合っておきたいのだが………いや、こうなったら自分から探しに行くべきか?
だが何処に探しに行けば良いのか不明だし、かなり無茶無謀だよな。
俺が一人考えている間に、カプセルに戻されたカメハウスを懐に入れた武天老師様の先導によってボートへと促された俺達は、自己紹介をしつつ修行場所であるそこそこの人口の島へと到着した。
そして、適当な場所にカメハウスを設置し終わると、割りと真剣な様子の武天老師様が声を掛けて来た。
「さて、早速修行を始めたいところじゃが……先ずは悟空やクリリンの身体能力の程度を調べるとしようかの」
あー、そう言えばそんな描写があったな。……確か、100メートル走の記録を計るんだったっけ?
「亀仙人様、私は少林寺でそれなりに修練を積んでいるのですが、何故私と悟空のみの身体能力の測定でブロリーはしないのですか?」
「そりゃクリリンと悟空とは鍛え方が違うからしょうがないじゃろ」
「あまり強そうに見えないのですが?」
クリリン君、なかなか辛辣な事を言うじゃないか。しかも、その怪訝な目付きも結構心にくるぞ。
でもな、俺はかなり強いんだぞ。そりゃあもう、今の君なら瞬殺出来るくらいは強いつもりだ。
まぁ、そうは言っても今のクリリンや悟空なら気で相手の強さを計る事は出来ないんだし(偉そうに言ってるが、ブロリーもスカウターがないと分からない)、ある意味では仕方ないんだよねぇ。
「今のお主では分からんじゃろうが、その内理解出来る時がくるじゃろう。
それより、さっさとお主らの身体能力を計るぞ」
「……分かりました」
「オラは早く修行したいぞ」
「まぁ、待て待て……先ずはどれだけ鍛えてるかを正確に見極めねば、過剰な修行をさせてしまうかもしれんのじゃ。順を追ってやらねば適切な修行は難しいからの」
「ふ〜ん、そうなんかぁ」
分かったのか分かってないのか、少し頼りない返事をする悟空ではあったのだが、特に不満そうな様子も見せないので本心からの返事なのだろうと察せられる。
素直な悟空なら表情に心境が出るだろうし、そう言うところは美点と言えるが少し改善させないと戦闘で不利になるかもね。まぁ、悟空は戦闘の天才だし、そこは色々な経験を積めば自然と身に付くのかもしれないが。
それは兎も角、予想通り武天老師様は100メートル走を二人に命じた。だが、そこで原作とは異なる結果が表れる事になる。
何が起きたのかと言うと、クリリンが9秒1で走り抜けたのだ。そして、悟空が7秒ジャストだった。
既に武天老師様に弟子入りする前から人間の限界を………いや、悟空は原作でも人間の壁を越えていたが、クリリンも限界を越えてるってのが驚いたよ。
確か、本来であったら10秒1がクリリンのベストタイムの筈だったのだが、何があってこんなに変化したんだろうか?
予想外の出来事にポカーンとしていると、何やら武天老師様も走り終わっていたらしく、そこからは原作の通りに石を探しに行ったらしい。
で、俺はと言うと………場所を変えたりする事もなく、そのまま気の扱い方についてのレクチャーが始まった。
まだクリリンや悟空の身体能力が原作以上になっている理由について考えていたいのだが、待ちに待った修行が始まるんだから集中しないといけないよな!
俺の為に武天老師様が修行内容を考えてくれたんだし、集中してないと失礼にあたる!!
そうして武天老師様による詳しい説明がなされ、俺はそれを真面目に聞き入った。
「………………さて、ここまで分からぬ事はあるかの?」
「正直に言えば、理論は分かりましたが……」
「ふむ、まぁそりゃそうじゃろうな。自身で試してみねば、頭だけでなく身体で理解しているかは分からぬからの」
「精進します」
「ふぉっふぉっふぉっ、そう無理して畏まる必要はないぞ」
いやいや、そう言われても何故かこうなっちゃうんですよねぇ。……多分、普段のおちゃらけた武天老師様ではなく、ピッコロ大魔王に死ぬと分かっていても立ち向かっていく本来の武天老師様を知っているからこそ、こうやって畏まった口調になっちゃうんだと思う。
俺だったら絶対に勝てぬと分かっている敵に、面と向かって啖呵を切る自信はないぞ。
まぁそうは言っても、時には武天老師様をおちょくったりするんだけどねwww
だが、ズッと馴れ馴れしい口調で接するのは無理だよ。自然と畏まってしまうんだから、こればっかりは仕方ないだろう。
「すみません。善処します」
「まぁ、それは追い追い慣れて貰うとしようかの」
ニカッと笑う武天老師様は、そう告げるとカメハウスへと入って行った。そして俺は、説明されたばかりの理論を実証してみようと考え、修行を始めるのだった。
▲△▲△▲△▲△
気の扱い方の修行を始めて一ヶ月が経過した頃、俺の一日のトレーニング内容は一人山籠りしての修行となっていた。
最初の内は武天老師様に逐一見て貰いながらであったのだが、少しコツを掴み始めると一人で修練しなさいと言われた為に、こうして山に籠っている訳だ。
で、そのトレーニングの結果はと言うと…………
「か〜め〜は〜め〜………波ぁーーーーーーーーー!!!」
突き出した俺の両手から、ブロリーの特徴でもあった緑色の気の塊が放出され、次いで一気に前方へと飛んで行く。そして俺の視線の先にあった巨大な岩に着弾し、とてつもない爆発音と共に激しい粉塵が舞う。
そう、俺は”かめはめ波“を会得したのだ。しかも、それだけじゃないぞ!
まだ不完全ではあるが、ノロノロとしたスピードなら空を飛べるようになった。……つまり、舞空術をマスターしたのだ。
一旦コツを掴んだら面白いように上達していて、今は修行が楽しくて楽しくて仕方がないと言うのが正直な心境である。
となると当然、俺としては一日の修行時間が少しずつ増えて行き、結局山籠りしてしまった。
いやぁ、ハマりすぎも駄目だよね。分かっちゃいるんだけど止められないのだ。………だって楽しいんだもん。
ま、それはそうと、ここ最近の日課である“かめはめ波”の素早い発射訓練の後は、これまた日課にしている舞空術の訓練だ。
気功波関係の技と違って、舞空術は少し難しいのでまだまだ訓練が必須だろう。
「良し………行くぞ!!」
気合いの掛け声と共に空へと浮かび上がる俺。だが、気合いとは裏腹にその浮かび上がる速度は非常に遅い。
客観的に今の俺を例えるなら、フワフワと頼りない様子からするに風に舞う風船のようなものだと言えるだろう。………つまり、少し気を抜くと簡単に風に煽られる風船のようになってしまうのだ。
うむ、要練習だな! でも、これでも結構上達した方だったりするんだよね。
で、空へと浮かび上がった俺は、取り敢えずそのまま空中散歩へと出掛けて行く。
「今日は隣の島まで行こうかなぁ」
昨日までは、舞空術の訓練では島の上空のみだったのだが、今日から少し離れた島を目指そうと思ってる。まぁ、今居る島の上空だけでも充分修練になっているんだけど、見慣れた光景ばかりだと新鮮さが無くなってくるから、少しでも新鮮な気持ちを持って修行を行った方が気分的にも良いからというのが理由な訳だ。
集中を切らさぬように、フワフワとしたまま一定の高度を保って飛び続けていると、とうとう海上を抜けて隣の島の岩石地帯に辿り着いた。
少し休憩する意味も込めて地面へと足を付けた俺は、グルリと周囲を見渡す。
「……何もない場所だな」
見渡す限りに広がるのは、岩岩岩岩岩岩、岩山だらけだ。……ただし、その岩影には見慣れぬトカゲとかが居て少し面白い。
前に居た地球では見受けられないこの世界での地球ならではの生物だ。
そんな初めて見るトカゲを楽しげに見ていると、ふと気付けば遠くから車の音が響いているのが耳に入る。……多分、一台や二台じゃなく、数十台規模になるだろう。
少し気になったので、その音の発生源と思われる場所へと走って移動してみると、赤い蝶ネクタイが特徴のマークがある軍服を着た男達が沢山の車から降車していた。
……またレッドリボンかよ。ちょっと面倒だなぁ。
そう思うものの、何を目的に此処に居るのかは気になるのが本音で、俺は少しだけ調査する事に決めた。