遥か遠い未来。ある理由から過去の歴史を繰り返す“歴史再現”を行う神州・極東の空を、準バハムート級航空都市艦“武蔵”が飛んでいく。前地球時代の歴史書“聖譜”の記述が途切れ、運命が途絶える時“末世”が目前に迫る世界は大きく変化を遂げようとしていた。
 その都市艦に存在する極東の教導院“武蔵アリアダスト教導院”には一人の魔女がいた。その魔女は武蔵の仲間たちとともにいったい何をなして、世界と相対していくのか。
 ここにあるのはテスト版です。ここである程度評価がもらえたら、正式に投稿しようと思います。感想や意見などをお待ちしています。

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 さて皆さん、お久しぶりです。謹慎を終えて娑婆に出てまいりました。この作品はリハビリも兼ねての投稿となります。人気があるようならチラシ裏から表へ正式に投稿しようと思います。



【習作】境界線上のホライゾン 武蔵の魔女

翼付き

 

箒付き

 

スカート付き

 

貫く理由、それは何

 

(配点:主人公)

 

 

 

その日は、いつもと変わらない朝だった。

 

変わり映えなく、退屈にすら感じる日常。

 

いつも通り起きて、顔を洗い、歯を磨き、シャワーを浴びて寝汗を流す。

 

いつもの流れ、いつもの風景、いつもの感想。

 

こんな毎日がいつまでも続くとは思っていないけれど、続いてほしいと願ってしまう自分もいる。

 

だけれども、そんな毎日はあっけなく消えるとは、この時思いもしなかった。

 

 

 

   ●

 

 

 

 

聖譜歴1648年4月20日

 

準バハムート級航空都市艦“武蔵” 右舷一番艦“品川”低空

 

 空に音が生じていた。空気を切る音だ。大質量とまでは至らなくとも、それなりの重さを持った物体が動く時独特の圧迫感を持っていた。懸架式のフレームを接続された前後に細長いものが、そこから直方体の木箱(コンテナ)をぶら下げて飛行している。

 またその上には、細長いそれにまたがる人の姿もあった。独特の、極東式の袴ではなく欧州式のローブやドレスの様な服。風になびくそれから想像されるのは、輸送業を営む“魔女(テクノへクセン)”だ。

 跨っているのは機殻箒(シャーレ・ベーゼン)で、魔女御用達のブランドである“見下ろし魔山(エーデル・ブロッケン)”のエンブレムが刻まれ、機殻箒の持ち主が魔女であるとはっきりと示していた。また尾部には加速用の魔術陣(マギノ・フィーグアー)がいくつか浮かんでおり、ATELLを消費しながら加速を生み出しているのも、証拠となる。

 

「通りませ 通りませ------」

 

 そんな音律が機殻箒に跨る魔女の口から漏れ出ていく。いつのころからか、こうして歌を歌いながら箒で飛ぶことが習慣化してきた。昔を思い出してのことであり、失ってしまった多くのものへの思い出を大切にする態度の表れでもあった。

 煙突から仄かに上がる早朝からの炊事の煙を華麗にかわし、回頭。緩やかに減速しつつ、目的の建造物の近くへと近づけて行く。同時に、引き渡しの確認に使われる内容を記した魔術陣を呼び出しつつ、高度をさげる設定をまたがる箒へと入力していく。

 

「“本日発売『ぬるはちっ!』!!涙必須の超感動作。諸君ら、ハンカチの貯蔵は十分か?”…ほしがる人ってどんな思考回路しているんだろうか」

 

 うちのクラスの外道連中かな、と一人ごちると、魔女は着陸した。まずは降下速度を緩めつつ木箱を先に地面につけると懸架アームから木箱を切り離し、続いて少しずれた位置に両足をつける。そこは納品する品川の販売店の目の前だ。開店前ではあるが人がすでに何人か並んでおり、その店の裏側には何人かの人足が大きめの木箱を運んでいる。それに向かって軽く挨拶をすると、機殻箒から懸架アームを取り外して元の長さにする。

 

「ようよう、今日もご苦労だな!」

「Jud. よもや、新学期早々こんな仕事を押し付けられるとは、想像していなかった」

 

 にこやか、というよりはにやにやが止まらない表情の、三本角の魔神族の店主に苦笑しながらも、表示枠を通じて伝票を切る。

 

「ところで、店長。私にわざわざここまで箒の輸送をさせたのって…どうしてです?」

 

 ひらひらと舞うローブや取り外せなかったフリルをあしらう魔女服を手で指しながら、その魔女は不意に言い出す。あそこまで大きい荷物は箒だけよりも、魔女服に着替え、機殻箒を召喚し、フレームを繋げた方が早く、実際に時間がなかったためにそうしたのだ。他方の魔神族の男は親指を上に向けて拳を突き出し、

 

「漫研のOB・OGが素描した!いや、やっぱモノホンは違うなぁ!こう、ひらひら具合とか、最高だぜ!」

「…ほほう」

 

 思いだせば、誰かが自分をじっと見ているような居心地の悪さを感じていたがまさか、黒髪翼の先輩たちが自分を題材にするとは。ホモになるのか、百合になるのか、どっちにしろ、やることは一つだ。

 

「なるほど…話をしようか」

「アレ?その箒って、飛ぶためだろうよ、コトーちゃん。なんで振りかぶってんのかな?」

「Jud.梅組(ウチ)の担任なら言うでしょう。そこに殴る道具と、対象があるんだから仕方がない、と」

 

 振りかぶった箒は、機殻を纏うその先端の先に、六角型の魔術陣を数枚広げていた。

 

 《強化術式:面倒者の墳怒:発動》

 

「どっとはらい」

 

 早朝の品川の倉庫街に激音が鳴り響いた。

 

 

 

  ●

 

 

 

 

 武蔵アリアダスト教導院――――曰くつきの名を持つ、この神州、いや極東では最も新しい教導院の校舎。朝の清澄な空気の中、その校舎前には多くの人陰が集合していた。

 例えば、忍者の様な格好をした男子。例えば、左目が右目とは色が違う、弓を携えた少女。例えば、バケツヘルムをかぶったマッチョな男。例えば、それぞれ黒と金の六枚の翼を揺らしそれと同じ色の髪をした少女たち。あちらには巨大なロールヘアをたらし装飾付きの制服を着たお嬢タイプ。こちらには、巨大な訓練用の槍を持つというよりは支えている眼鏡の少女。そっちにはターバンを頭に巻いたどう考えてもテンプレなインド人が。その間には、なんと巨大な竜…というよりは何処となく人間に近いフォルムをした半竜がいる。他には、スライムだったり、インキュバスだったり、据わり目の少年だったり、眼鏡のオタクだったり、会計だったりと多種多様。

 そして、装甲付きジャージを着て肩に長剣を引っ掛けた教師が、声を張り上げていた。

 

「これより、体育の授業を始めまーす」

 

 三年梅組担任のオリオトライ・真喜子は、濃いメンバーに臆することなく、“授業”内容を告げる。

 

「先生、これから品川にあるヤクザの事務所に、ちょっとヤクザ殴りに全速力で走っていくからみんなついてくるように。そっから先は実技ね」

 

その声を聞いていたのは彼らの後ろにいる、一人の生徒もまた同様であった。

 

「Zzz…」

 

 立ち寝をしていたが。銀色の髪の毛を頂く頭には、つばが広く先端がとがった魔女特有の帽子をかぶっているのがわかる。カクリ、カクリと頭が倒れては戻りを繰り返し、極東の女子制服特有の長い袖と裾が揺れている。それは小さな動きだ。だが、教師に特有なスキルで持って察知したオリオトライは、手にした出席簿を放る。素晴らしい初速と軌道、そして威力で以て頭部に直撃する。

 

「痛ッ!?」

 

色気もない声とともに覚醒したその生徒は、頭部を抑えてたたらを踏む。しかし地面に倒れるような無様なまねはせず、目をこすりながらも姿勢を正した。

 

「こらこら、そこー、朝から仕事をこなしたのは知ってるけど居眠りしない」

「Jud. …すみません。ちょっと“運動”する羽目になりまして。そのせいで今日は箒はなしです。番屋に持ってかれたので」

 

ほほう、とうなずく教師にその生徒は言う。

「六回、叩きました。報復じゃありません」

「それは報復だよ!」

 

 みんなのツッコミを笑ってかわし、しかし担任の教師に眉をひそめて言う。

 

「だけど先生、それも思いっきり、報復じゃ…」

「違うわよー、たんに腹が立ったからストレス解消に仕返すだけだし」

「なるほど、仕方ないですね。つまり私が朝やったことと同じですね」

「それを報復というんだよ!」

 

皆の息があったツッコミに、はいはい、とオリオトライは返事をすます。

 

「そういえば、あなた今日は自由出席じゃなかったの?」

「Jud.ですが仕事もないので一限の体育くらいは出ようかと」

 

勤勉でいいことね、とオリオトライはうなずいた。

 

「じゃあ、あと他に欠席者はいる?」

「トーリと正純がいませんね。正純に関しては今日は自由出席で、ついさっき、小等部の講師に向かってました。あと…」

「あと?」

 

しばらく迷った後、教師の問いに生徒は答えた。

 

「たぶん、トーリについては品川に行けばわかるかと…ここで言ったら、とばっちりは私たちが喰らいますから」

「そっか、じゃ、早いとこ品川に行きましょうか。品川のヤクザの事務所につくまでに攻撃を当てることができたら出席点を五点あげる。いい?つまり五回サボれるの」

「五回…それだけあれば…」

「一限を五回もサボれるのか…」

 

 それぞれが算段を始める中で、教師はにやりと笑う。そして、帽子とスカーフで顔を隠した男子生徒が手を挙げた。

 

「先生、“通す”ではなく、“当てる”で構わないので御座るか?」

 

“第一特務 点蔵・クロスユナイト”と書かれた腕章をつけたその生徒の問いに、オリオトライは応じた。

 

「戦闘系は結構細かいわね…いいわよ、あてればオッケーにするわ」

 

でも、と先ほどまで居眠りをしていた生徒の方を向いて言った。

 

「あなたは副長なんだから、ちゃんと攻撃を通しなさい。いい?これくらいのハンデはあってもいいじゃない」

「…わかりました。通しましょう」

 

よろしい、とうなずいた教師は軽くステップを入れる。

 

「授業開始よ!」

 

 くるりと舞う体は教導院前の階段を飛びおり、そのまま跳躍していく。身動きが取れない皆をよそに、すでに教師の体は中央後艦“奥多摩“の表層をかけ出していた。

 

「あー、行っちゃった…」

「おえ!」

 

目をこすりつつ、出席簿が直撃したところをさする生徒をよそに皆は動き出した。少し遅れたその生徒は、しかし、目を細めると手袋をつけて準備をした。

 

「なら、追いかけようか。品川に入ったあたりで仕掛ける」

 

手袋に付けられた装飾と賢鉱石が光を一度放ち、手の動きに合わせて術式呼出に入った。

 

 

 

  ●

 

 

 アマゾネスもかくやという身体能力を以て、オリオトライの体は跳躍し、疾走する。はるか後方、思い思いの方法でこちらを追いかけ始める生徒達。あるものはゼリー状の体を跳ねさせ、あるものは箒にまたがり、あるものは翼を広げ、あるものは単純に走り出す。

 と、オリオトライの目は道路の片隅に立つ石碑…というよりは慰霊碑を捕らえる。高さ五十センチほどの苔が生えたそれには、文字が刻まれている。

 

“少女 ホライゾン・Aの冥福を祈って 1638年 武蔵住人一同”

 

 …ホライゾン、か。きっとあの子たちのすべての始まりになる名ね。

 

 

 

  ●

 

 

 極東。

 重奏統合争乱の責任によって、この航空都市艦のみ独立領として存続する、かつては“神州”と呼ばれた土地を持つ国家だ。

 その極東の代表校である武蔵アリアダスト教導院の所在地であるこの武蔵には、極東側だけでなく世界各国側からも多くの住民が搭乗している。所謂、あぶれ者、欠落者、或いは放逐者。居場所なきものの居場所となっているのだ。

 そういう経緯を持つ船であるため、おのずと生徒会や総長連合、行政機関や軍部に当たる組織においても多種多様な人材が集まり構成されている。

 

 …結構、カオスなんだけどねー

 

《生徒会》

 

生徒会長:葵・トーリ

副会長:本多・正純

会計:シロジロ・ベルトーニ

会計補佐:ハイディ・オーゲザウェラー

書記:トゥーサン・ネシンバラ

監察:マルス・コトー

 

《総長連合》

 

総長:葵・トーリ

暫定副長:マルス・コトー

第一特務(諜報):点蔵・クロスユナイト

第二特務(裁判):ウルキアガ・キヨナリ

第三特務(実働):マルガ・ナルゼ

第四特務(実働):マルゴット・ナイト

第五特務(実働):ネイト・ミトツダイラ

第六特務(実働):直政

 

 授業を欠席したり、いろいろ問題行動を起こす…というか問題行動しかしていないようなクラスだが、担任としては面白いのでまあ許そう。

 特にマルス・コトーだ。武蔵を象徴するような複雑な立場にいる生徒。担任としては楽しくもあるのだが色々抱え込まれても困るのだ。なにしろ、

 

 …男だけど魔女だもんねぇ。

 

そう思った次の瞬間、頭のすぐわきを貨幣弾弾が通り抜けた。跳躍の直前のわずかな硬直を狙った一撃だ。外れたのは運が良かったからとしか言いようがない。

 

 …おっと危ない、ワンヒットであの子たちの勝ちだったんだから。

 

というか、プラスとマイナスの力を両方纏って飛んできたということはこちらを狙撃したのは、梅組では、いや極東に所属する魔女の中では一人しかいない。

 

「気が早いわね、コトー!!」

 

間違いなく、あの魔女だ。

 

 

  ●

 

 

 

 

 オリオトライの声に応じる声があった。

 

「Jud.! 」

 

 その声はオリオトライを追いかける集団より少し上空から発された。そこでは、風を受けてはためくつばの広い帽子と改造された制服があった。また左腕には二つの腕章がある。緑色の生徒会のものには『生徒会監察』、青色の総長連合のものには『総長連合暫定副長』と書かれている。また二つの腕章にはどちらも同じ名前がある、『マルス・コトー』と。

 そのコトーは狙撃をした魔術陣を展開しながら、前方の教師に返答を放った。

 高高度から、しかも飛翔したところからの狙撃というのは案外難しい。ウルキアガの様な滞空が楽な半竜でもなく、同性カップルの魔女たちの様に箒にまたがっているわけでもない。あくまで翼を使って飛んでいる。だが、なんとなくだが撃った方がいいと判断し、硬貨弾丸を放った。しかし、結果は目に見えている。

 

 …妙な幸運でそれていった

 

 頭狙いになったのは仕方がないが、しかし当たらなかった。まあ偶然だろう、超蛮族パワーの担任ならば空気の流れすら操りそうだが多分今回は違うだろう。しかし、だ。

 

「男だが、私は魔女だ」

 

 突っ込まないといけない、なんとなく。

 元々極東語に直す過程で“魔女“となっただけで、原義の“Witch”では男性も女性も同様だ。聖譜の傍論でも、そして欧州の所謂魔女狩りに関する記述でも、旭東語では混乱するが男の魔女はいたと記されている。これは魔法使いや魔術師などとは異なる存在であるとコトーは解釈し、誇りと矜持を以て、あえて魔女を名乗るのだ、男だが。

 まあ、同じクラスの白魔女にはさんざん同人誌的な意味でネタにされ、歴史オタクの書記にもネタにされる・まあこれは武蔵では平常運転なので許容の範疇だろう。

 とにかく、自分はそういう存在であり、割とレアな精霊系有翼種族で、魔女の用品を扱う“見下ろし魔山”の唯一の男性テスターもやっている。ごく稀に女用も来るが誤差の範疇だ、後で担当者に呪いをかけるが。

 自分が扱う魔術は白魔術と黒魔術の両方。どちらかと言えば、黒魔術の方がわずかに得意だ。

 六角形の魔術陣にプラスとマイナスの力が凝縮する。元々白・黒魔術と言うのは、Tsirhc教譜の迫害を逃れるために、魔術の特定分野を特化させた形で生まれたもの。より多くの属性を内包するための分裂だった。白はプラス、黒はマイナス。加速と減衰。付加と反発、という具合に。だが、もともと単一の魔術であったために両方の特性を生かした魔術も使える。

 

…だけれども、オリオトライ先生にはまだ攻撃当たらないし。

 

 教導院に入り、自分の担任となってから幾度となくこういうことは“体育”でやってきた。ときには連射式で、ときには地雷式魔術や半流体素材で作った使い魔による連動攻撃も行ったが、

 

…蛮族最強で肩がついたという…

 

 冗談抜きで自信喪失になったこともある。大体、どう鍛えたらああなるのか、見当もつかない。ぶった切られた使い魔は数知れず、そのたびに出費が痛かったのは良い思い出だ。なにしろ、拝気はともかくその材料は意外と高い。性能が高いものは、新大陸の野生のスライムなどから抽出される半流体素材を使うので、四桁後半から五桁はする。輸送と、供出する種族への報酬のためだ。

 

…今年こそは、当てる!

 

 今はまだアマゾネスの猛ダッシュに追いつくでいっぱいの状況で、まだ本格的には狙っていけない。

 だが、うちのクラスには近接攻撃系もいればズドン系の巫女もいるし今回は左舷の先端の品川までなのだから、攻撃チャンスは多いはず。

 翼をはばたかせながら飛ぶ眼下では、運動系や妖物退治を経験した組が戦闘を行き、やや遅れる形で文系の面々が追いかけ て行く。自分の焦点具は逆さまになった十字架型の装飾が入った手袋だ。右は黒で左は白。十字架の色はそれぞれの地の色と逆。白と黒の相克だ。

 六角形の魔術陣を重ねて展開しつつ、硬貨弾を投じていると、箒にまたがった黒と金が並走してくる。

 

「あら、コトー。なんだか今日は張り切ってるわね、先週の授業で使い魔ぶった切られた意趣返しなのかしら?当たってないけど」

「ガッちゃん、使い魔ぶった切られたのは先々週、先生が放課後酒場に寄り道して、回収に使い魔行かせたら結果だけ言うと先生番屋で朝ご飯食べたらしいら、それじゃない? 先週はとっさに回収したんだよね」

 

 いきなりの皮肉めいた口調の黒の翼に、のんびりした口調の金の翼。箒にまたがった状態で並走してくるのは第三、第四特務を預かるマルガ・ナルゼ、マルゴット・ナイトの魔女のコンビだった。

 

「Jud.ぶった切られる前に拝気供給止めて形状崩壊させたのは財布的にも戦術的にも正解だったな。回収するのが大変だったが」

「うんうん、側溝に詰まってかなり困ったんだよね~、アレ、責任の押し付け合いになって、喧嘩両成敗で機関部に絞られて先生がまた暴れたっていう結末だったよね」

 

 ナイトの箒の柄に、後ろにまたがるナルゼが手にしたペンで加速の白のラインを引くと、ナイトが棒金をデンと置く。魔女お得意の加速術式を利用した射撃術。コトーのそれとは違うスピードメーター型の魔術陣が幾枚も重なり、

 

「Herrlich!」

 

 発射する。狙うのは走るアマゾネスことオリオトライ。軽い音を立てて甲板に当たる音も軽やかに、魔女三人の射撃は断続的に降り注いでいく。と、後方を走る団体からだぶだぶの制服を着込み、巨大な槍を構えた少女が素晴らしい脚力で飛び出す。

 

「ナルゼ、ナイト。貧従士が仕掛ける」

「一番槍ってことね。でもそのネタはもう使ったから無しよ。目新しいのお願い」

「ガッちゃんガッちゃん、今はネーム切ってる場合じゃないよ~」

 

 などと言い合いながらも、彼らは動く。射撃をいったん止め、それぞれの方法で以て加速する。ナイトは箒の後ろに二つの魔術陣を、モンドは主翼の内側に一旦空気を圧縮して取り込み、

 

「「追いかける!」」

 

加速した。

 

 

 

 

  ●

 

 

 

 

「イトケン君!ネンジ君とで救護して!」

 

 激しい剣戟の音と、激突音が数回した後に響いた声の内容は、あちらとこちらでのびている従士とインド人の助けを指示するものだった。要するにアレか。

 

「蛮族ってば最強で肩がついたと…」

「うわ~、悟ってるねぇ」

「企業区画からが勝負だと、そう思えば無駄な犠牲じゃない。アデーレは失うもの少ないし」

「…暗黙裏に貧乳ってこと言ってないソレ?」

「カースト最下位だったし。カースト第一位は失うものが大きすぎる。オパーイとか背丈とか、酔い知らずの肝臓とか」

「こらー!そこ勝手に人の体ネタやらない!」

 

 数十メートル先、なんか叫んでるが、無視一択。まあ、揺れているのは結構眼福眼福。

 

「ただまあ、大きければいいものではないな」

 

 同じクラスで異端審問官志望のウルキアガ曰く、中道がいいとのこと。まあ、賛成する。

 前方を見やっていたナイトが、魔術陣を開いて再加速の準備をしつつ声を飛ばしてくる。

 

「テンゾー仕掛けるから、先行くね」

「Jud.こっちが先生の足元を狙うから非加護射撃での牽制よろしく」

 

 皆が突入したのは企業区画。比較的平らな屋根が続くので近接攻撃系の出番となる。そして遠距離系の自分たちのするのは、一つだ。

 

「射撃と牽制!いっくよー!」

 

 ナルゼとナイトが企業区画の屋根の上へといったん降りると、二人はナイトの箒を用いた砲撃の用意をする。その一方でコトーは魔術陣をいくつも展開して狙撃態勢をとる。滞空状態からの箒なしでの精密狙撃。難しい、だがやる価値は十分にある。

 

「さて、行くか」

 

 コトーは静かに両手の焦点具におおわれた手を、手にした硬貨とともに構えた。まだまだ授業は始まったばかりだ。

 

 

 

    ●

 

 

 

-------Dum spiro, spero.

 息を吸い込み、自分を認識すれば、幸福が感じられる。いかに苦しく、つらい過去があろうとも、今に生きれば明日への糧を得られる。

 極東という、未来を制限された場所でも、彼らはたくましく生きている。

 

 

 

 

 




 まず一言。いつから魔女が文字通り女だと思ってた?縞瑪瑙の罠だよ。や、やめてくれ!石は投げないでくれ!
 境ホラの二次創作を書こうと思ったとき、まず思いついたのは松平の家臣の家系。けどこれは原作との被りを回避すべく没としました。というか、日本の偉人たちはたいてい襲名されていますし、戦闘とかも書きたいので商業や文化人はなしだろうと結論。それならいっそ世界各国側から流れてきた人にするかと、いろいろ調べて目に留まったのは“魔女”でした。ナルゼとナイトの二人が目に留まったわけです。女性主人公なんて書けねぇよ!と投げ捨てかけましたが、そういえば魔女って男性でも魔女っていうんだよな、と史実を確認。しかし双嬢と対をなすみたいに男の魔女二人出してもBでLな展開は書きたくないので、いっそ一人でいいや、と割り切り。その結果生まれたのがマルス・コトー君でした。
 ですが、こんなのいきなり投稿しても果たしていいものなのか?と疑問は尽きませんでした。『いっそ魔法使いとかにしろよ』『魔女にする意味なくね?』みたいな声が、脳内に再生されたのです。そこで天から声が!『じゃあ、ネタバレ覚悟でチラシ裏行こうぜ?』それに従い、結論に至りました。
 ただし、これを書くにあたっては作者の解釈が多分に含まれています。資料や説は様々あると思いますので、ここにあるのは縞瑪瑙なりの解釈だと割り切って楽しんでください。
 この作品を書くにあたりWikiやいくつかの参考サイト、書籍などを利用させてもらいました。この場を借りてお礼申し上げます。
 それでは、意見感想お待ちしています。この話の続きもちゃんと書いてあるから、別に投稿してもいいんだよ?(チラッ
 続きが読みたい人は、その旨を活動報告に書き込むか、メッセージで送ってくれるとありがたいです。感想欄に書き込むとアンケートになるかもしれないので、注意してください。
 それでは長くなりました。これで失礼します。

7月23日、指摘に基づいて歌の部分をカットしました。



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