今回は補給の為帰還。出会う人は…。
注:前回の最後で仄めかしてたもっかい行くぜー的な事…から帰ってきた辺りの時系列です。大体3日後かな?
ではどうぞ。
「……ふー、帰ってきた」
「あ、ケントー!」
「へ? ストレ――うわあぁ!?」
転移門から出てきた直後にこれである。ストレアのハグは威力が伴う事を忘れてはいけないのだ。
「いっ…たたた……」
「わわっ、大丈夫!?」
「え? ああ、まあ……」
金髪のポニーテール、若草色を基調とした装備、そしてかなり目立つ身体的特徴の少女が駆け寄ってきて、手を差し伸べてくる。その手を掴んで立ち上がると、少女はまずストレアに「危ないから駄目ですよー」と言い、次いでケントに「すいません、いきなりこんな事しちゃって……」と言った。
「ああいや、俺こそごめん。ボーッとしてて」
その顔は本当に申し訳なさそうだったが、ストレアの行動は予測不可能なので仕方無いだろう。謝るにせよ、少女に罪は無い。
「も~リーファ~、嫌がってないんだから良いでしょ~?」
「いや、そういう意味じゃないんだけど……」
嫌がってはいないが、ポーション類の補給に行かなくてはならない。ケントはそれを伝え、なんとかストレアに離れてもらうと、リーファというらしい少女に会釈して商店通りへと小走りで向かった。
―*―*―*―*―*―*―*
「あーあ、行っちゃったー…」
「えーと…ストレアさん、あの子は?」
「ケントっていう凄腕のプレイヤーだよ♪とっても強いってキリトが言ってたの」
「へぇー、お兄ちゃ…キリト君がですか?ちょっと意外かなー…」
「えー、リーファも今度見てみなよー」
「…そうですね、機会があったら見てみます」
あの時リーファは、ケントとストレアがきょうだいの様に見えた。しかも、
(……そんな訳無いか、見た目的にも全然違うし)
かぶりを振って思考を中断し、「よし!」と気合いを入れ直したリーファは、ストレアと共にレベリングへ向かった。
―*―*―*―*―*―*―*
「えーっと…あったあった、すいませーん店主は居ますかー?」
「はい、少々お待ちください。リズベットさーん、お客さんですよー!」
NPCの店員さんの呼び掛けに、リズはガチャガチャと金属音を立てながら工房に続いている扉を開け――
「きゃあっ!?」
――武具の雪崩が起きた。
「う、お、お!? …これ、全部リズが?」
「……そうよ、全部あたし。鍛冶スキルの修復の為に、ね」
「おいおい、どう少なく見積もっても100は越えてるぞ。いくらなんでも無茶し過ぎじゃないのか?」
ケントの問いに、リズベットは泣きそうな声で答えた。
「…だったら、あんたは今のアタシに鍛冶を任せられる?」
「いや任せたじゃんか。しかも見たろ、
「…あんなのただの偶然よ。それに素材が良かっただけ。だから……」
「メンテやら何やらは任せるな、ってか?」
「分かってるじゃない。ほら、鍛冶スキル上がるまで――」
「んじゃ、《朧月夜》と《ナイトメアリパルサー》のメンテ頼む」
あっけらかんとしたその言葉に、リズベットは唖然とするしか無かった。
「…話、聞いてたのよね?」
「ああ」
「理解してたのよね?」
「おうともさ」
「ならなんでよ……あたしに任せちゃ……」
「何寝惚けてんだ?リズにしか任せられないから言ってんだ」
「……え?」
「…だって、俺が知ってる鍛治屋リズしか居ないもんよ」
事実である。NPCを除けば、ケントの知っている鍛治屋は2年以上もお世話になっているリズベットだけなのだ。
「それに、さ…リズだけじゃなく、誰かが凹んでると…なんか励まさなきゃいけないって思うんだ」
これは本音である。ケントには《人の負の感情を消し去らなくてはいけない》という呪いにも似た衝動があり、それは負の感情を目の当たりにすると更に強くなるという奇妙なものだ。
「~~~~~っ……分かったわよ、メンテやるから耐久度見せなさい」
「ほんとか!?ありがとうリズ!」
「うわっちょっ、抱きつかなくても良いでしょ!」
怒られはしたもののしっかりメンテをしてくれる辺り、リズはやはり良い人なのだろう。だからこそ、客足は絶えないのだ。
改めてそれを感じたケントは、リズベットに心からの感謝を込めて「ありがとう」と呟いた。
―*―*―*―*―*―*―*
リズのメンテも終わり、ケントは満足した様子でエギルの店―リズベットに場所を聞いた―に足を踏み入れた。その第一声が――
「おーっすエギルー、儲かりまっかー?」
である。キリトも認めるぼったくりであるエギルにこれを聞くのは愚問かもしれないが、ケントは昔からエギルの店に入る時はこの台詞を言う。なのでエギルも、「ぼちぼちでんな」といつも通りに返すのである。
「今回は何だ?安く買って高く売るぜ」
「変わらないのかそのポリシーは……えーっと、この《ラグーラビットの肉》3個を3億コルで」
「おいおい、《アストラル種のコア》を15個で15000コルにしか見えねーぞ」
「そりゃ《ラグーラビットの肉》なんざ3つも4つも落ちるかって話だ」
「…ま、そうだよな。買うもんはあるか?」
「この店」
「本音は?」
「ポーション類を出来るだけ」
長い付き合いだからこそ、こうした冗談も言えるのだ。因みに用事が済んだ後は、最近どうだ? といった世間話になる。そうしていると(何故か)大抵クラインが来るので、後は女子会ならぬ男子会の始まりである。
「おう!クライン様がおいでなすったぜ!」
「よークライン、元気してたか?」
「おうともよ!」
どうやらまた遅くなりそうだと思ったケントは、フィリアに帰りが遅れる棟のメッセージを送った後で気付いてしまった。
――これじゃあ、恋人みたいじゃないか?
ぼっ、と顔が赤くなり、慌てて顔を逸らしたが、エギルは気付いたらしく、いつもの太い笑みを浮かべていた。
補足:《ナイトメアリパルサー》はフィリアの短剣の名前です。意味はそのまま、『悪夢を祓う者』ですね(安直)。
と言う訳で、補給回でした。次回、……えーと何しよう()
ではまた次回。