黒い少年と影の世界   作:ユキノス

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こんにちは、ユキノスです。
実はVitaのPSNアカウントでメアド入力をミスりまして、初期化せざるを得ませんでした。わぁキッツい。
しかしながら、逆に言えば一度しか出来ない《ホロウ・エリア》の攻略編を並行してプレイ可能ということになります故、少しは頻度が上がる……かなぁと思うとります。
ではどうぞ。


25:笑う棺桶

「あれ、結構弱い……」

「……だね、ちょっと拍子抜けしたかな」

僕がヘイトを稼ぎ、フィリアが遊撃しまくった結果、割と簡単に《アルファルド》を倒してしまった。でもこれで水位が下がり、通れなかった所が通れる様になっている筈だ。

「なーんか物足りないけど……行こっか」

「うん、そうだね」

のほほんとした雰囲気で行こうとしたが、ケラケラという複数の笑い声が聞こえた事により、一気に緊張が走った。

「……!フィリア、あれ……!」

「あれ……って……大人数で、1人を……」

「くそっ!」

「あっ、ケント!」

間に合え、間に合え、間に合え───!

「その手を離せぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

「……チッ」

抜刀と同時に斬り掛かったが──間に合わなかった。攻撃されていたプレイヤーは、青い硝子の欠片となって消えた。

「ターゲットは倒した、ずらかるぞ!」

数人のPKer(殺人者)が走り去って行く中、ただただ悔しかった。もっと早くに気付けていたら。見た瞬間、即座に動いていたら。あのプレイヤーは、助けられたかもしれない。

「っ……!待て、あのプレイヤー……()()()()()()()()()()()()()()……状態異常の重ねがけ……集団で殺すやり方……」

「……どうしたの、ケント……怖い顔してるけど……」

「去り際一瞬だけ見えた、あのタトゥー……フィリア、今日は早めに引き上げよう」

「え……うん、分かった」

このままだと、いつか()()に襲われる。だが、だからと言って同じ《ホロウ・エリア》に居る以上、恐れていても始まらない。

しかし、奴らが──殺人ギルド《ラフィン・コフィン》が、アインクラッド史上最も危険である事には変わりない。

「あいつら……こんな所に隠れてやがったのか……!」

「ケント、……気持ちは分かるけど、落ち着いて」

言われてハッと気付き、一度忘れる事にする。どうやら、思っていた以上に怒っていたらしい。

「……ごめんねフィリア、あいつらは……あのギルドは──」

 

―*―*―*―*―*―*―*

 

「そんな……!人を殺すって……この世界だと、ほんとに死んじゃうんでしょ!?」

「うん……でも、あいつらは殺人行為(それ)を楽しんでる。控えめに言って、狂ってるよ……。だからこそ、大規模な討伐隊が作られた。僕もその1人として呼ばれた。でも……どこからか情報が漏れて、待ち伏せされてた。後は血(みど)ろの乱戦さ。我慢出来ずに武器を捨てる人。躊躇無く刃を振り下ろす人。何も出来ず、あたふたしてる人。……皆、攻略組の話だよ。《ラフコフ》は……むしろ、自分の命すらどうでもいいような感じだった。傷を負っても、どれだけHPが減っても、恐怖どころか快楽に感じてるみたいで……怖かっ………」

突然、その時の記憶が全て引っ張り出された。どれだけ死にかけても止まらない、猟奇的な眼をギラつかせて襲いかかってくる奴らの──命を、僕は────

「……ケント?」

「あ……ぅあ……あっ……やだ、来ないで、やめろ、やめろ来るな来るな来るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「ケントッ!」

嫌だ、思い出したくないと思えば思う程、どんどん溢れてくる。PoH本人から、《ラフコフ》に誘われた事。初めてPKされそうになった事。気配に気付いて、戦わなければならなくなった事。HPが尽きかけ、言い様のない恐怖を味わった事。今までに関わった《ラフコフ》の面々の顔が、次々に浮かんでは笑って消えた。

「やだ……やだ……死にたく、ない……」

宙を掴む。胸を掻き抱く。現実で嘔吐でもしそうなレベルのトラウマが、一挙に押し寄せた。

そして、その手は──フィリアが、そっと掴んでくれた。

「ケント……キミに何があったのか、全部は私には分からない。だけどね……少しずつでいいから教えて?そして……乗り越えて行こう。1つずつ、一緒に」

ああ、僕はやっぱり大馬鹿だ。

助けるなどと宣っておいて、助けられているのだから。《慈悲深い死神》と呼ばれた男の、血に塗れた手を握ってくれているのだから。──近々、彼女もアインクラッドからもリアルからも去るのだろう。僕と関わっているのだから。

でも、今は。今だけは。そんな事、全部どうでもいい。

「お姉ちゃん……助けて……!」

涙が止めどなく溢れた。コードが反応しようと、今は……この暖かさに、全てを委ねていたい。




ケントそこ変わ(殴
という訳で、ケントのアインクラッドでの過去に触れてみたの回でした。お互いに傷を持っているケントとフィリアですが、どう癒していくんでしょうか。
ではまた次回。
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