今回は補給帰還……と、ゲームでもあったイベントです。流石に《ホロウ・エリア》終わっても76層終わってなかったら遅すぎor早すぎなので、最低でも何層かは進めます。ご了承ください。あと今回(いつもに比べて)めっちゃ長いです。
ではどうぞ。
「………帰ってきたぁ……」
「オッ、お帰りケン坊」
「その声は……アルゴ!来てたのか!」
「ニャハハ、オレっちも来ちゃったゾ」
満面の笑みでVサインする情報屋──アルゴは、76層に登ってから攻略組が戻って来なかった事、それで原因を探りに来た事、もう戻れないと分かったから前に進む事を話してくれた。
「そっか……でも、アルゴが来てくれたのは嬉しいな」
「ホー、オネーサンが恋しくなったのカ?」
「ある意味ではな。頼れる《鼠》が居るだけで、攻略組はグッと安定するだろ」
「トッププレイヤーにそこまで言ってもらえるとは、オネーサン照れちゃうナー」
「だぁからトップじゃないっての……あ、そうだ」
どうせだから、この機会にあの《岩砕きのマトック》──正確にはそれが持つ《岩石特攻》の効果について聞いておく事にした。早速ストレージから500コル硬貨をオブジェクト化し、指先でピンと弾いてアルゴに渡した。
「調べてほしい事があるんだが──」
「ほーう?ケン坊からの依頼は久々だナ。それで、何が聞きたいんダ?」
ストレージから、今度は《岩砕きのマトック》をオブジェクト化した。
「こいつの持ってる《岩石特攻》……これが効くのが、ゴーレムとかのモンスターじゃなくてホントに岩限定なのか。それを調べてほしい。期間は……なる早で」
「アイヨー……と、言いたい所だケド。実はナ、42層の隠しダンジョンに岩のオブジェクトがあったんダ。そいつは打撃武器でも壊せナイ代物だったケド、たまたま《岩石特攻》がついてた
「壊せた、のか。となるとやっぱり岩限定なのかな……」
「だろうナー、そいつも『ゴーレムには何も変わらなかった』って言ってたシ」
「そっか……」
ゴーレム系に効果が無いのは確定したが、その名の通り岩が砕けるというのは大きい。勿論破壊可能オブジェクトのみだろうが、障害物を壊すという点では大いに活躍することだろう。
「うん、十分だ。ありがとな、また何かあったら教えてくれよ」
「ニャハハ、毎度アリー」
ヒラヒラと手を振り、クエストボードに向かうアルゴに手を振り返し、僕は僕で鍛冶屋に向かう。今は鉱石素材が豊富に残っているが、無くなったらどうしよう。割と笑えない。
「……ッ!」
「ケーンートっ♪」
「おわぁやっぱり!驚かさないでくれよストレア……」
「えーっ、良いじゃん別にー」
むぅ、と頬を膨らますストレアに抱きつかれたまま、商店通りにあるリズの店へ。
「リズー、居るー?」
「リズベットさんなら、先程出て行かれましたよ」
「あ、そうですか……となると、先にエギルの所行ってこようかな」
「私も行くー♪」
「言われなくても着いてくだろうに……まあ良いけど」
これだけ見てると《弟が大好きな姉》の構図だが、性格の点では恐らく真逆だろう。どうしてちぐはぐなのかは置いとくとして、胸が頭に当たって気になるんだけどどうしよ。向こうから触れられた為ハラスメントコードも動かないが、これはこれで問題ありなんじゃなかろうか。
「おお……相変わらず繁盛してんなぁ。っと、大丈夫かい?」
「は、はい。申し訳ありません、ぶつかってしまって……」
「いやいや、俺の方こそごめん。……って、あれ?キリトかアスナは?」
誰かにぶつかったと思ったら、なんとユイだった。いつもはキリトかアスナと一緒に居る─もしくはエギルの店でマスコットをしている─が、今日は居ないのだろうか。と思ったら居たわ。なんかしてるけど。
「パパとママは、ポーカーで遊んでます。優勝商品は、パパの独占権なんですよ」
「そりゃまた凄いのが商品になったもんだ。……でも、商品抜きにしても久々にやってみたいなぁ」
「面白そうだね~、入れてもらおうよ!」
「そうしようか。ユイはどうするんだ?」
「私は見てます。まだルールが理解出来ていないので……」
「そっか。じゃあ俺が優勝したら、ユイに独占権をあげるよ」
「ホントですか!?やったー!」
多分キリトも同じ事を言ったんだろうけど、まあ気にしない。……あ、《ホロウ・エリア》の攻略手伝いに独占権使えば──いや、独占せずともしてくれるか。
「おーいキリトー、俺も混ぜてくれよー」
「アタシもー♪」
「ん、大丈夫だぞ。皆もそれで構わないよな?」
参加していた全員が頷き、椅子を2人分持ってきて座らせてもらう。エギルがディーラーで、テキサス・ホールデムのルールらしい。
軽く説明しておくと、場の5枚と手札の2枚で役が決まるルールだ。役の内容は分かると思うので割愛させてもらう。分からなかったらゴメンね。
「それじゃ、改めてルールの確認だ。手持ちのチップを使い切ったら脱落……最終的に一番稼いだ奴が優勝だ。これ以上やりたくなかったらFold、受けて立つ時はCall。掛け金を上乗せしたい時はRaise!と叫ぶんだぞ。──それじゃ、ゲームを始めよう」
「ゲームの中だけどね」
「そいつは言わない約束だぜ」
―*―*―*―*―*―*―*
手札は……うん、Aとキングのツーペア。ツーペアとしては強過ぎるレベルだけど、所詮はツーペア。スリーカードなんて来たら即負ける。僕はちびちび賭けるタイプだけど、だからこそ負けは痛いのだ。
「うーん……辞めとくか、レイズ」
「俺もだ、レイズ」
「うーん、手札は十分……えーい、オールイン!これで負けたら脱落なんだから、なんとかなってよー!」
「コール!」
「コールぅ!?」
「Show down。手札を見せてくれ」
「……ストレート!?」
「あはは、残念でした♪キングのスリーカードも強いんだけどね。勝ちを確信しちゃダメだよ、何事も失敗の可能性はあるでしょ?」
「く、くやしー!」
リズ脱落。敗因はオールイン。いやまあ、誰もストレートなんて来ると思わないだろう。
その後、シリカも脱落。少ししょんぼりしていたが、楽しめたので良かったそう。
リーファはと言うと、キリトに自信無い時の癖を見抜かれて脱落。兄妹って凄いね。
「ふっふっふ……来たぜ来たぜ、オレの所にも運が巡ってきたぜ!勝負だキリト、オールイン!」
「チップを全賭けか。……本当に良いのか?」
「ああ良いとも。俺の手札は最強だ、キリトに勝ち目はねぇぞ。降りるなら今のうちだぜ!?」
「分かった、レイズだ」
「俺はオールイン」
「なんで降りねぇんだよー!」
「……Show down」
「……おいクライン、ブラフにしても4のワンペアで全賭けとはよくやったな?」
「あ、良かった……」
2のスリーカードだった為、ブラフじゃなかったらホントに危なかった。キリトは2と7のツーペア。
「ひゅう、嫌な汗掻いた……ゴメンなクライン」
「…………くっそーーーー!また美味しい所を全部キリトに持ってかれるのかよぉー!!」
「持ってかれたくないならもう少し頭を使えって……」
あの、僕の事完全にスルーされてるんですが。今明らかに僕のチップ一番多いのに。
「なんかもう寝ててもバレない気がしてきたなぁ……」
「きゅるぅ♪」
「わっ、えーと……ピナ。どうした?お前の好きなナッツは持ってないぞ?」
「きゅー!」
「わっ、擽ったいから、ちょ……あはははっ」
「こらピナ!……すいません、ピナがご迷惑をお掛けして……」
「ああ、大丈夫大丈夫……え、僕の番?えー……どうしよ、ベット」
「うーん、うーん……勝負よ、オールイン!」
「俺は……少しだけベットしようかな」
「アタシはレイズー」
「私も。この勝負は勝てる気がしないわ」
「Show down。手札を見せてくれ」
……いやまあ、勝てるの確定したんですが。あのさ、ストレートフラッシュ以上って無いよね?ロイヤルストレートフラッシュはこの場だと出ないし。
「はい、俺の勝ち。乗ってくるとは思わなかったなぁ」
「……うぅ、勝ちたかったなぁ……」
「ケント、お前何考えてるのか分からせないの得意だろ」
「まさか、俺にそんな能力無いよ」
一応ホントに無い。でも強いて言うなら、
「えーと、後は……ストレアとシノンと、キリトと俺か。あーそうだ、リズー!後で武器の研磨頼むー!」
「今言うのそれー!」
「店に居なかったからだよー!」
「あーゴメーン!」
「……さて、始めよ始めよ」
「お、おう……カードを配るぞ。これで最後だ」
配られたカードを見てみると、まさかのノーペア。笑うわこんなん。
「コール」
キリトは手札が強いのだろうか。ゲーマーとの勝負というのは、これを悟らせない人が多いから面白い。
だからこそ、不安を煽ってみる。
「オールイン」
「なっ……」
「え……!?」
僕が今持っているチップは、ちびちび儲けた分と、クラインとシリカのをごっそり持っていった分があるので物凄い量になっている。それをオールイン。僕でもされたら驚く。
「……コール」
「アタシもコール!」
「私もコール」
「Show down」
「じゃーん!キングのスリーカードだよ♪」
「Jと2のフルハウスだ。……危なかったな」
「フルハウス~~!?そんな強い手札が、最後の手札に来るのぉ!?」
「……で、ケントは」
「ん?ノーペア」
「は?」
「だから、ノーペア。ブラフだよ」
「恐ろしいブラフ掛けたな……シノンはどうなんだ?」
「…………」
「…………残念だけど、私の負けよ」
「えっ……」
「凄いです!パパの優勝です!」
……でも、景品にさせられてたキリトが優勝ってどうなるんだろ。自由?
同じ事を皆も思った様で、それについてはユイを独り占めという事で話が纏まった。……それはともかくとして。
「シノン、1つだけ良いかな。……あの勝負、ホントに負けてた?」
「……じゃあ、勝ってたら私がキリトを独占する事になるわね」
「俺の事じゃないからまあまだマシだけど……片付けの時、フォーカードだった気がしてさ。気のせいだったみたいだ、それじゃ」
「……分かってるんじゃない」
店から出る直前、シノンは何かを言いかけた様だったが聞き取れなかった。
研磨が遅れた為、翌日の朝に帰る旨のメッセージをフィリアに送信。エギルの店の2階にある宿屋の一室を貸してもらい、久々のベッドの感触に感動していた──が、すぐに目が醒めた。
「……そうだよ。フィリアが辛い所で待ってるのに、僕だけがなんで楽するんだよ……!」
《朧月夜》は預けている為曲刀を装備し、77層のフィールドへ向かう。深夜な上に疲れもあるが、ただ寝ているよりマシだろう。
「転移。……トリベリア」
この世界に月は無い。無くはないが、外周部に行かないと見えない。光は少ない。都合が良い。
「おぉぉぉああああ─────ッ!」
既に攻略されていようと、少しでも強くならなければいけない。そうでないと、誰も助けられない。
闇夜の中、僕は狂ったように敵を惨殺していた。
イベント丸々ってかなり長いんですね(今更)。
いやでもマジで早く進めたい……!
という訳で(どういう訳だ)、ではまた次回。