黒い少年と影の世界   作:ユキノス

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畜生!やっぱり遅くなった!俺はいつもそうだ。


29:目指す先は

「ねぇフィリアー」

「うん?」

「いつから天井歩けるようになったのー?」

「えっと………ケントが逆さ吊りになってるだけ、じゃないかな」

「だぁよねぇー、無理に繕わなくていいよー」

 

どうしてこうなった。 答えは簡単、僕が先走ったから。 自己解決はいいから、早く抜け出さないとだよね。

 

「ふぬっ……。ふぎぎぎ……。ぐぬぬぬぬ……ていっ! 切れ……だっ!」

「だ、大丈夫……?」

「あうぅ、星が見えるぅ……」

 

逆さ吊りから落っこちたら、体を床に打ち付けた。 よく良く考えれば当然だよね、ダメージ的にも痛い。 ペイン・アブソーバがあって良かった……。

なんて思いながら、頭を振って立ち上がる。 少しだけ立ちくらみはあるけど、それはただの寝不足。 気にすることは無い。

 

「いよっと。 ごめんね、先走っちゃって……」

「ううん、私もレアアイテム見付けたら先走ることあるから……」

「いやいやそんな……………やっぱやめとこ、これじゃ無限ループだ」

「言われてみれば、確かにね。 お互い、傷舐め合ってるだけ……」

 

ぽつりと悲しげに呟いて、すぐにハッとして訂正されたけど、割と間違った事は言ってない気がする。

《ホロウ・エリア》に1ヶ月近く閉じ込められているフィリアと、攻略組から疎まれている僕。 なるほど、確かに(精神的に)ボロボロだ。 傷の舐め合いだってしてるだろう。 だが、だからと言って不快かと言われればそうじゃない。 こう、もっと違う……なんというか……

 

「あっ、2層の階段が見えてきたよ!」

「おっほんとだ……んん? ……待って、あの階段違う。 確かあっち、宝箱しか無かった筈だよ。 えっと、確か……なんだっけ」

「えーっと……あ、思い出した。片手剣があった場所だね」

「あーそうだそうだ、そこ。 だから僕らが目指すのはー……あっち!」

 

ビシッと指さしたは良いものの、その先にはコボルドが居て、「何か用?」と言いたげに首を傾げていた。 と言うかアクティブモンスターじゃなかったのかお前。

 

「ふふふっ……コボルドを目指す、ね」

「だぁぁもう、そんなんじゃないってぇ」

「分かってる分かってる、行こっ」

「むぅ……それはそうとさ、階段付近のアクティブモンスター多くない? なんでぐるっと囲まれる程度に居るの?」

「あはは……明らかにおかしいよね、この配置」

「……しゃーない、いっちょやりますか。最短距離で、抜けるよ」

「うんっ!」

 

互いに得物を抜き、まずは近くに居るリザードマンの盾を思いっきり叩きつける。作用反作用の法則で、どっちも跳ね返されてしまう。

ここまでは想定済みだ。あとは──

 

「スイッチ! ──ハァッ!」

「ナイス連携! この調子で行こう!」

 

体勢を崩したリザードマンの皮膚に、斬撃を叩き込んでやればいい。ゲームにおけるトカゲ類は、斬属性が弱点な場合が多いよね。

それはそうと、今のでかなり削れた。群れが状況の変化に順応するまで、あと数秒といった所か。

 

「ッ……!」

「ギュイィ─────」

「……ふぅ。危なかったぁ」

 

ノックバックの、手がジーンとする衝撃から抜け出し、硬直が解けた瞬間に放った《辻風》だが、ギリギリ首を捉えてくれたようだ。クリティカルヒットとなったそれは、半減していたリザードマンのHPを消し飛ばした。

獲得コルとドロップアイテムのウィンドウを消去し、次の標的に狙いを定める。健全な男子たるもの、ここで少しカッコつけたいが、今は1人じゃないので自粛。見られたら黒歴史確定だもんね。

 

「さぁて、長丁場になりそうだけど、っと! どんくらいで逃げる?」

「うーん……どのくらい、って言われても……。スイッチ!」

「はいはーい今行くよー──うげっ」

 

突進しながら体当たりとかいう刀使い失格クラスなスイッチだけど、でも意外とヘイトは持って行けるから馬鹿に出来ない。体術スキルってほんと便利だね。

で、これ当たり所によってはめっちゃ痛いんだよね。例えば、剣の先とか。

 

「い゙っ……たいなぁもう!」

「……いや、それ自爆じゃ……」

「気にし……ないっ!」

 

貫通継続ダメがどれぐらいかと思ったら、3割減ってた。案外多いなぁ、嫌な汗かいた。

 

POT(これ)飲んで、走るよ!」

「えっちょむぐっ、飲みながら走れないって!」

「ごめーん!」

 

群れを置き去りにして、兎に角走る。階段で何匹か蹴落としたけど、流石に学習したのか足を掴まれた時はヒヤッとした。即振りほどけて良かったよ……。

 

「はひぃ、キツい……」

「ふぅ……。ところで、ケント?」

「はいはい、何でしょ?」

「ケントって、私よりAGI(アジ)高かった筈だよね?」

「あー、多分。フィリアのがいくつか分かんないから、何とも言えないけどね。……んくっ、んっ、んっ……」

 

AGI云々は確か、セルベンディスの神殿辺りで実証されていた気がする。……多分。

つい1ヶ月前の事なのに、もう遠く昔の事に思えるのは、恐らく沢山の事を連続でこなしてきたからだろう。

 

「……ぷはぁーっ、やっぱそんなに美味しくない。味覚エンジンとかもうちょっとどうにかならなかったのかなぁ……」

「うん……えと、さっきからちょっと気になってた事、良い?」

 

首を傾げつつも頷くと、フィリアは重厚な扉をぺちんと叩いた。何をしているのか分からず、更に首を傾げると、少し膨れ顔でぽかぽか叩いてきた。

 

「いたったったっ、痛い痛いよー……」

「もうっ、この扉! これ、ボス部屋のじゃないの?」

「……へっ!? え、だってここ来てから数日しか……」

「1週間と4日は経ってるよ。ケントは、アインクラッドのマッピングとかしてたかもだけど……」

「……そっか、フィリアは……」

 

ずっと《ホロウ・エリア》に居たんだ。の言葉を飲み込み、頬を叩く。ぺちんとやや情けない音だが、目を覚ますにはこれくらいで十分だろう。……肉体的な痛覚は一切無いから、何とも言えないけど。

 

「それじゃ、行こっ」

「……うん!」

「「……せーの、っ……!」」

 

ゆっくりと、確実に石扉を開けると、中には巨大な玉座があった。硬そうだから登って遊ぶ気にもなれないけど、その前にボスを倒さないと、でも一体どこに……

なぁんて思ってると、意外な所から出てきた時に反応しづらいんだよね。

 

「グルルァァァ!」

「は? ……裏ぁ!? おいおい嘘だろ、そんなスペース……で……」

「収まり、きるね……っ、来るよ!」

 

なんで。なんでお前が、ここに居る。名前が違うから、別のモンスターなのは分かる。しかし、その見てくれはそっくりだった。

 

 

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色々用事が重なってコメント出来る余裕があまり無い為、後書きはこれで終わりとさせていただきます。

ではまた次回。
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