マルチでレベル上げした方がめっちゃ早いことに今更気づいてしまった……。
さておき、今回遂に入り江編完結!……に、なるのかな?
流石にプロット用意しないと、って言うのも何度目でしょうねぇ……。
グレスリーフの入り江、エリアボス。どんな奴なのかな、やっぱり海関係のボスなのかな、と少しだけ楽しみにしていたが、玉座の前に立ち、ボスが出現した時、その楽しみは粉々に打ち砕かれた。
……『
僕にとって、コボルトというのはこのゲームで最&高に嫌いなモンスターに位置する。1層からわんさか出現し、沼に武器を落とされたり、後ろからぶん殴られたり、落とし穴にハメられたりとロクな思い出が無いのもそうだが、個人的に犬が苦手なのもあるかもしれない。
いや、それ以前に《ホロウ・エリア》に来た時の『
──大丈夫、落ち着け。あの時とは違う。隣に居るのは、《ホロウ》なんかじゃない!
パチンと頬を叩いて、深呼吸。目を閉じ、抜刀。隣で同じ音がしたのを確認し、玉座に座ったいけ好かない
「……フィリアは後ろからお願い。斧は僕が止める」
「でも……」
「大丈夫、斧持ちには慣れてるんだ。それじゃ──」
「待って。条件、2つだけ。……ある程度したら、
「……分かった。じゃあ、行こう!」
「了解!」
同時に走り出した僕らを見て、コボルト王がニヤリと笑った。続いて、たった2人で何が出来ると言わんばかりに吼えた。……絶対に泣かせてやる!
まさか感情に呼応した訳では無かろうが、腰だめに構えた愛刀を包むライトエフェクトがいつもより強い気がした。
「ぜぇあああああっ!」
「フン!」
「ぐっ……っうう!」
「はぁぁぁぁぁっ!」
《辻風》は盾で弾かれたが、後ろから繰り出された《フィニット》は通った。3段あるHPゲージが僅かに減り、内心ガッツポーズ。辛くも着地し、フィリアに行っている筈のターゲットを引き剥がすべくピックを投げる。一直線に飛んでいったそれは、コボルト王の右目に刺さり、赤いライトエフェクトを散らした。
「グォオオアアアア!」
「ハッ、ボサっとしてっからだ! 悔しかったら俺を倒すんだな!」
「……グルルルル」
「ちょ、煽り過ぎじゃ……?」
「こんぐらいでちょうど良いんだよ、こいつら総じて馬鹿だからさ!」
「なんか性格変わってない!?」
え、そう? と首を傾げた横で、緑の光が輝いた。振り向いて見ると、コボルト王が下品な笑みを浮かべて斧を振り上げているのが見えて、慌てて指示を出す。
「垂直振り下ろし、正面に立たないで! 空振らせたらソードスキル!」
「り、了解!」
「同時に行くぞ! 3、2、1、今!」
ズガァン!と地を揺らした音は、なるほど雷のようだ。でもそれがどうした、こちとら刀を持った死神だ!
驚愕で顔が歪むコボルト王に、ざまーみろ! と言わんばかりに舌を出す。ギリギリと牙を剥き、睨みつけてくるその顔へ向かって、斧を足場にして──跳ぶ!
「天っ…………誅────!」
「ハアッ!」
コボルト王の顔と腰で派手に光るライトエフェクトを後目に、ブーツの底で火花を散らして停止。向こうも硬直は解かれている筈なので、反撃に備えて構え直す。
HPゲージは……1段目の85パーセントくらいか。他のボスではこうならないのに、何故かコボルト系統だと妙にこう思ってしまう。
全然削れない。
勿論、
いや、違和感がある。でもどこに? そんな刹那の疑問を、怒りに満ちた唸り声が掻き消した。
片手斧を肩に担ぎ、腰を低くし、体を捻る──この動作から、予測出来る動きは? ──決まってる!
「ウゥグルルルル……!」
「右から横薙ぎ、右後方退避! 追撃来るかもしれないから避けても迂闊に寄らないで!」
「了解!」
「ヌガァーーーッ!」
またも避けられて頭に血が昇っているらしく、顔を真っ赤にして地団駄を踏んでいる。……いや、顔赤くしてるのか? 元から赤いから分かんないなぁ。
いやそんな事はいい。追撃は来ない。技後硬直で動かない。ならやるべき事は1つ。
「ゴー!
「了解! ──ハアアァァァアッ!」
「……っと、オォォォォリャア!」
ちょうどそこにあった柱を駆け登り、上から首目掛けて《辻風》を放つ。コボルド王を挟んで反対側でもソードスキルの輝きが見え、その連撃回数を見て衝撃が走った。
──9回だって!?
「ケント、ノックバック切れるよ!」
「……あ、ああ! 悪い! 硬直解けるまでタゲ貰う!」
「ありがと、頼んだよ……ッ!」
「ッ………ラァ!」
《辻風》は単発技なので、硬直はかなり短い。それを活かせば、9連撃の硬直ぐらいは余裕で耐えられる。
「《ヘイトチェンジ》……こっち来いよ、クソ犬」
「ウゥグルルル…………グラァッ!」
「ぜぇあああ───」
咆哮は、長くは続かなかった。横から、鈍器で殴られた衝撃が来たから。前からではない。横から。
──護衛か!
気付いた所で、ようやく合点がいった。最初の
「あぐっ、がっ、ぐぅ……! ンの、やろ、っ……!」
「ゲヒャヒャヒャヒャヒャ……」
「ケント! 下がって回復して!」
「まだやれ……!?」
「スタンだよ! あと体力も、2割減ってる!」
「っああ、クソッ……マジかよ……」
立てた膝がガクンと落ち、頭がチカチカして目の前が霞む。無様に倒れ伏している間、護衛兵たちがドカドカ と殴ってくる為、容赦なくHPが減っていき、イエローに落ちた。途端、冷たい恐怖に腕を掴まれた気がして、回らない舌で喘いだ。その声に快楽でも覚えたのか、より一層攻撃は苛烈になり───護衛兵が、一瞬にして消滅した。
「っはぁ、はぁ……」
「え、あ、あ……」
「《ヒール》。……無事?」
「……あり、がと……」
「ううん、私こそ……ほんとに、良かった……」
フィリアの防具にも、柔肌にも、いくつか切り傷が付いているのを見ると申し訳なさが溢れ出る思いだが、今はそう言っている場合じゃないと立ち上がる。
「……心配かけてごめん。──代わりに、速攻でコイツぶっ飛ばす!」
「うん、その意気! ……行くよ!」
「応!」
***
「──ラスト1本! こっから刀!」
「避け方は指示して、それまでは……」
「2人とも遊撃、てかそれしか出来ないでしょーが!」
「だよね!」
あれからの集中力は凄まじく、2人ともドットダメ以外ほとんど喰らわず、更には護衛兵すら踏み台にして、義経の八艘飛びよろしく大立ち回りを演じた。
その時間、なんと30分。その間ずっと、2人は気を張り、互いのフォローを極限まで減らし、それでいて妨げないように動いた。
──だが。そんな均衡も、いつかは崩れる。
「わ、っとやべ──」
「ケント前!」
不安定な体勢なので、ソードスキルは使えない。横薙ぎにされた刀が前から迫ってくる。──どうする?
それを考え、瞬時に行動に移す事の難しさくらいは知っている。でも、ここは仮想世界。なら、現実で出来ない事くらい出来たって良いじゃない?
……あと強いて言うなら、そうだな……
「当たるのを全力で祈る、かなぁっ!」
「えっちょっ……え?」
既に回復していた筈の、爛々と光る目に標準を向ける。横から来る刀は、とりあえず無視。そしたら、刀をぶん投げる、以上! 終わり! んで刀避け──
「っあ、畜生……!」
「ああもう、ほんとにっ!」
ほんのちょっと、爪先辺りがギリギリ掠め、HPゲージががくんと減る。……おいウソだろ、爪先掠めてこれなら直撃だとほぼ即死じゃん。怖っ!
なんて呑気な事を言う間も無く、もう
互いの獲物が、同じ目標へ向けて投擲されるというのは、実際かなり危ない。邪魔になるとかザラだからね。
「当たれ……っ」
「──いや、動く!」
「ウッソだろざけんなちくしょーめぇい!」
「……おじさんみたいな言い方するね」
《閃打》。《体術》スキルでは恐らく最速の出だが、果たしてこれで止まってくれるだろうか? ……無理だな。
まあでも何もしないより良いかな、と恐らく今までで1番消極的なグーパンチが当たる直前で、
キィィン!
という甲高い金属音が聞こえた。間違いなく、刀と短剣がぶつかり合った音だろう。流石にスタンまでは行かなかったが、音爆弾的な効果があったらしく、怯みはした。してくれた。
その数瞬があれば、十分だ。
互いの得物を掴み取る。
「これでラスト! 行くよ!」
「勿論!」
駆け出す。振りかぶる。
「せえぇあああぁぁぁああっ!」
「ハァアアアアアアアアアッ!」
ザシュッ、と最後にしては、あまりに短く、呆気ない音を立てたコボルドの身体にヒビが入った。そこから青い光が漏れ、次第にヒビも増えてきて──硝子片となって、砕け散った。
「───、終わったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「お疲れ様、ケント。……ちょっと休んでく?」
「そうするー……」
《グレスリーフの入り江》エリアボス、撃破。
戦闘時間、2時間。死傷者、0(まあこれは当たり前か)。
「……あと2つだね、頑張ろ」
「勿論。……どうする? 1回補給に帰る?」
「そだねぇ、
「私としてはケントが一番消耗してると思うんだけど……」
「いやぁ、僕はまだま」
だ、の言葉は続かなく、代わりに目の前が真っ暗になった。耳鳴りがする。頭も痛い。身体の感覚も、ふわふわしている。
「ケント? ……ケント! ねぇ、ねぇったら!」
入り江編、完っ!
サクサクどころか進行が泥沼化しそうな気もしてますが……まあ、少なくとも《ホロウ・エリア》編はこんな感じで進みます。申し訳ありませんがお付き合い下さい。
ではまた。