黒い少年と影の世界   作:ユキノス

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何十日ぶりの更新だろうか。広げた風呂敷が処理出来ないとこうなります()

さて、前回唐突に倒れたケントですが、今回はどうなんでしょうか。


31:《犯罪者》

──暗い。

 

意識が泥の中に沈んでいる。思考も濁っている。

 

1人の男が現れた。こちらを向いて笑っている。

 

その男に触れる。すると男は、恐怖に叫びながら硝子の破片と消えた。

 

1人(独り)になってしまった。

 

次は、3人組の男女が現れた。手を差し伸べてくれている。

 

その手を掴む。……3人の身体を、リザードマンの剣が次々に貫いた。

 

また1人(独り)

 

沢山の人が、現れ、硝子のように砕け散っていった。そうしてこの2年で、実に4000人近くの人間が、2つの世界から消えた。

 

昨日笑顔で話していた人間が、今日滅多刺しにされて死んだ。さっき会話した人間が、トラップによって死んだ。1層に篭っていた名も知れぬ人間が、好奇心に殺された。

 

そう、これはゲームだ。ゲームでは、「人が死ぬ」なんてよくある事だ。笑い話だ。……この世界でそう割り切れたら、どんなに楽か。

 

***

 

「よぉ、フィリア。答え聞きにきたぜェ」

 

「…………」

 

「おいおい、そんな怖ぇ顔すんなよ」

 

わたしは、ワタシを殺した。突然転移させられて、突然出てきて、混乱して、──気付いたら、相手はその身体を四散させていた。

 

その時の感覚が、頭にこびり付いて離れない。人を殺す、その瞬間の、言いようのない感情。焦り? 安堵? それとも──快楽? それは無い。絶対に。

 

だから今、こうして笑う棺桶(ラフコフ)の首領と対峙しても、仲間意識を持たれても、決して乗る気は無かった。だけど、たった1つの言葉で、私の決意は粉々に砕かれてしまった。

 

「俺たちは《ホロウ》。あいつは《人間》。決して相容れねぇ。住んでる世界が違うんだからなぁ。あいつらはこの《ゲーム》をクリアするだろう。そうしたら、《ホロウ》の俺たちはどうなる? 丸ごと一気にパーだ。つまり──殺されるって事だ、自分を支えた人間に。嫌だよなぁ? 死にたくねぇよなぁ? あのガキ……《死神》と一緒に居たいよなぁ? なら……やることは1つしかねぇんじゃねえかぁ?」

 

「…わたし……わたし、は……───」

 

 

──ねえ、ケント。この時わたしは、なんて答えるべきだったのかな。……なんて、キミなら間違いなくわたしを選んじゃうよね。……キミは、優しいんだね。でも……わたしはキミと、一緒に居たい。だから、わたしは───────。

 

 

***

 

「う、ん……」

「……おはよう、ケント。よく眠れた?」

「まあ……丸1日寝てればね。おはよう、フィリア。いや、1周回っておそようかな?」

「そうかも。どうする? もう次のエリア行く?」

 

休んだのは丸1日。多分無理が祟ったのだろうが、割とよくある事なのでもう慣れてしまった。

それはそれとして、何だかフィリアに元気が無いように見えるんだけど……何かあったのかな?

いや、今は思考の端……いや真ん中から4分の1くらいのとこに追いやっとこう。

しかし、次のエリアか……ええと、確か次は……

 

「《ジリオギア大空洞》……か」

「うん。わたしはいつでも行けるから、行ける時に声かけて」

「分かった。じゃあ今……と言いたいけど、メンテはしとこうか。もう5分の3(折り返し)は過ぎてるんだし、万全の体制で挑みたい」

「了解。それじゃあ、お願い」

「承りました。……防具もやっとく?」

「うーん……」

 

ぴっぴっ、と耐久値の確認をしたフィリアが顔をしかめた。どうやら思ったより無いらしい。

──と思っていたんだけど、小さく「そう言えば」と呟いてアイテムウインドウを開いた。ただの紫の板が、可視化モードに設定されたことで見えるようになっ……て……

 

「何これ!? え、え、何このプロパティ……ぶっ壊れも良いとこじゃん……どしたのこんなん」

「ケントも? 実は私もよく分かってなくて……情報屋の、えっと……」

「アルゴだね。ついでに聞いてみるよ」

「うん、お願い」

 

***

 

戻って、アークソフィア。いつも転移門近くにいるというアルゴを見つけ、100コル硬貨を5枚オブジェクト化する。

 

「よっ、アルゴ。またお願いがあるんだけど、いいかな」

「オッ、今度はなんだイ? キー坊の弱点カ? それとも色恋沙汰カ?」

「うん、全然違う。この前言ってた《ホロウ・エリア》って覚えてる?」

「アア、覚えてるヨ。未知のアイテムが大量ダーってキー坊も言ってたしナ」

「あ、キリトも入れたのね。ああいや、それじゃなくて……物凄いぶっ壊れ防具が、いつの間にか相方のストレージに入ってたらしくてさ。何か知らないかなって」

 

すると、鼠の情報屋は眉をひそめて唸り始めた。片っ端から記憶を探っているのだろうか、凄い記憶力だ。

 

「フーム……ぶっ壊れ防具、ネェ。プロパティ見ても良いカ?」

「そりゃ勿論。だけど、ちょっと移動しようか。人目につかない方がいい」

「アイヨ。じゃあそこの路地裏だナ」

「了解。……あと、場合によっては報酬金上乗せするけど」

「ホウ、じゃあ10倍ニ……と言いたいとこだケド、オレっちも初めて聞く話だからナァ。情報提供料とシテ、逆に払うこともあるゾ」

「それもあったか」

 

歩きながら話していても、この「アルゴ」という鼠の魂胆というか真意というかが全く読めない。恐ろしい鼠である。思えば、彼女(?)が情報屋をする義務はどこにも無いわけで。それでもアルゴは、情報屋としてアインクラッドでの地位を確立した。何故?

改めて問いただそうとしても、差し出される手に多額の金を積むことになるのは明白なのでやめておく。1人で生活するには十分なコルが貯まっているが、笑顔で「10億コル」と言われたらもうお手上げである。

 

「……と、この辺で良さげだナ。さ、見せてもらおーカ」

「はいはい、ちょっと待ってておくんなまし…はいっ」

「フム、フム、フム……ちょっとシバいてもいいカ?」

「ダメです。でも実際強力でしょ? これを色んな人が装備出来れば、生存率はグッと上がる筈だよ。……きっと」

「そこは言いきレ、ヘタレのケン坊」

「う、何も言い返せない……」

「マァそこは良いとして、ダ。入手方法が確定してナイってのはナー」

「それなんだよなぁ……『いつの間にかストレージにあった』なんて言ったって意味不明だし、そもそもそれだと情報発信する意味も無いし」

「マ、そーゆーのがあったって情報は貰えタからナー。今回はそれで満足しておくコトにするサ」

「………ありがと」

「どいたまー。じゃ、オレっちはこの辺デ」

「うん、またね」

 

手を振りながら路地裏の闇に消えていく《鼠》を見送って、やっと本題の鍛冶屋に行こう。思ってたより経ってた。

 

***

 

下層に戻れなくなって、スキルが落ちた状態で新装開店することになったリズベット武具店も、客は減ったとはいえそこそこに繁盛していた。

 

「こちらですか? そちら2000コルになります」

「うむ、じゃあそうしよう」

「ありがとうございます!」

 

キリトやアスナ、その他攻略組も常連になってきているぐらいには回復したけど、やっぱり前よりはスキルの落ちが痛い。……まあ、そんなの関係なしに来る客は居るんだけど。

 

「おいっすー、研磨よろしくー」

「はいいらっしゃい、また刀と短剣?」

「うん、最近消費が激しくてさ……相手も強敵揃いになってきたし、気が抜けないねぇ」

「そんな無理に笑わなくていいわよ、出来るまで休んでなさい」

「……いや、向こうでも休めるとこあるからいいよ」

「嘘おっしゃい。明らかに疲れ抜けてないでしょ」

「研磨に時間かかるよね僕は街ぶらぶらしてるから終わったらメッセ飛ばしてそれじゃ!」

「あっ待っ………はぁ、こっちが胃痛起こすわ…」

 

一体何を食べたらあんな馬鹿ムーブが出来るのか。私はそんなもの到底食べる気は起きないけど。

 

「……さて、研磨しちゃいますかねーっと」




2月も終わり、出会いと別れが忙しいシーズンになってきましたね。………これ今年初投稿ってマジですか?遅筆レベル高いですね俺()
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