黒い少年と影の世界   作:ユキノス

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大ッッッッッッッ変お待たせ致しました……




36:真相

《ホロウ・エリア管理区》

 

「っ……!」

 

あれから数日。大空洞で行けそうな所は軒並み……文字通り隅々まで行き尽くした。その結果明らかに怪しい所はあったが、眠気が限界だったので一度管理区まで戻って睡眠を取った…という所までは覚えている。覚えてはいるが………フィリアがPoHと一緒にいる、という事実が心に爪を突き立てて落ち着かない。

 

「……起きないと、なっ」

 

適当に敷いていたクッション類の山から、えいやっと身体を起こす。時間は無いが、たっぷり5時間眠ったおかげで頭痛も消えた。足取りもしっかりとした。視界のぐらつきも無い。……皮肉なことに、ここ最近で一番調子が良い。

 

「……よし。確か……ここだ、エリアシステムコンソール……」

 

ダンジョンマップと全体マップを照らし合わせながら、エリアシステムコンソールへの最短ルートを組み立てていると、後ろで誰かが転移してきた音がした。

 

「キリト!クライン!」

「ようケント! 元気そうじゃねえか!」

 

自分でも分かるぐらい明るい顔をしてしまってから、先程の行動を思い出してしまって申し訳無くなる。理由はあれど、本気で攻撃しなければ退かないであろう事は目に見えていたので──ん?ちょっと待って?

 

「……えと、なんでココに?」

「ああ……まず、この《ホロウ・エリア》で得られるスキルやアイテムは攻略に役立つと思ったからだ。もう1つは、お前の手助けをしたいからだよ。お前はどうしたい? フィリアを助けたい、っていうのは前提として」

「俺は………」

 

フィリアを助けたい、というのは前提。つまり、そんな分かりきった事は言うな、ということ。……色々あるな。フィリアがこんな事するに至った経緯、PoHが何故フィリアに近付いたのか、そしてそもそも《ホロウ・エリア》とは何なのか────

 

「……俺は、真相を知りたい。フィリアだけじゃなく、PoHの……この世界の。何故そうしたのか、何故出会ったのか、何故この世界が出来たのか。それら、全部引っ括めた全部知りたい」

「お、おお……また大きく出たな。じゃあ、ユイを連れてくるよ。クライン、来たばっかで悪いけど……」

「あー……分かった。ぜってえ帰ってこいよ!2人ともな!」

「分かってるよ。じゃ、1回戻るよ」

「ああ、ありがとう。……それとごめん。あんな事した後で、こんな事頼んで……」

 

返答は、力強い笑みとサムズアップだった。

 

***

 

「お待たせ、ケント。連れてきたぞ」

「お待たせしました! ケントさん、よろしくお願いします!」

 

少々張り切っている様子で、ユイちゃんが転移石から現れた。

後ろでキリトが父親のように微笑んでいるのが何とも言えない気分になるが、まあ……我慢しようか。元々来てもらっている立場な訳だし。

 

「うん、よろしく。コンソールはこのマップだから……戦闘、はしない方が良さそうだよね」

「ああ。ユイ、ナビゲートをお願いしてもいいかい?」

「分かりました!お任せください!」

 

***

 

結論から言うと。ユイちゃんはマップデータを一度見ただけで戦闘回数を最低限に出来るルートまで割り出し、その結果想定よりも数十分早くエリアシステムコンソールまで辿り着いた。

 

「──こんな早く着くか……あちこち駆けずり回ってルート考えてたのがバカらしい気分だよ」

「いやぁ、ははは…。でも、ケント達がある程度マップを開けてくれてただろ? 俺はそこまで行ってなかったからさ」

「……ありがと。そう言って貰えると報われるよ」

 

ユイちゃんが慣れた手つきでコンソールのキーパッドを操作しているのを横目に、少し考えを巡らせる。……この世界についてだ。前にも考えたような気もするが、こんなとこ何回考えても足りない。

 

この世界は何か。こうして行き来出来ている以上、SAOの……ひいてはアインクラッドの中であることは確かだ。だがどこだ?……スペース的には、一層の下の土台部分の中があり得そうだが。まあこれに関しては割とどうでもいい。権限が無いと入れないということは、隔離された空間であることには変わりないだろうから。

 

問題はこの世界の存在理由だ。没データの寄せ集めで構成された世界を《カーディナル》が上手く整えた……というのがパッと浮かぶが、どうも違う気がする。もしそうなら、《実装エレメント》なんて項目があること、そして《ホロウ》のプレイヤーが彷徨いている理由について説明がつかない。となれば、ここは……

 

「開きました!」

「……! なにか分かりそう?」

「少し待ってください……これは、プレイヤーデータとAIデータのチェックシークエンス……! 中でエラーが発生しています!」

 

エラー? ……それより、フィリアはその実験の為に閉じ込められたと? こんな危険な所に?

 

「……ふざけてる。こんなとこでエラーまで吐くようなものなんて……」

「いえ、このエラーは想定外のようです。《ホロウ・エリア》では、実在するプレイヤーのデータを元にAIのIDを作成しています。ただ、《ホロウ・エリア》には実在のプレイヤーとそのAIが同時に存在しないように──IDの重複チェックを行っているんです」

「なぁユイ、それは普通消えちゃうんじゃないのか?」

「はい、パパ。AIを優先的に削除する仕組みになっていますので、《ホロウ・エリア》では同じプレイヤーが存在した瞬間──AIが同時に居ることをNGとし、IDを削除します」

「なるほどねぇ……理屈は分かった。でもそれだと、俺とフィリアのAIがすぐに消えなかった理由が──」

 

そう。僕らのAIはすぐには消えなかった。僕が共闘、フィリアが敵対とはいえ、そんなに長い間チェックの機能が作動しないなんてことは……

 

「重複チェックの最中に、エラーの原因が発生したみたいです。パパ……その原因ですが……」

「ああ……原因は恐らくあの時だと思う……」

 

あの時? そんな分かりやすいことが起きていただろうか……

 

「ああ、ケントは知らなかったっけ。75層の戦いの時に、色んなエラーか起きて……」

「へえ……ボス戦でなんかあったの? あ、もしかしてアイテムが文字化けしたりとかのアレコレ?」

「それだ。多分そのタイミングと重なって……」

「……AIが消えなかった、と。……そっか。あ、誰のデータでエラー出てるかは分かる?」

「はい……分かりました! これは……フィリアさんです」

 

その言葉を聞いた途端、フィリアに関する色々な謎が解けた。僕と一緒に居たフィリアはAIじゃない。これは確定。本人は自分が人かAIかの認識が曖昧になっているが、これでようやく確信を持って人であると伝えられる。何せ確固たる証拠があるのだ。

とにかく、イレギュラーが重なった結果、《存在しないプレイヤーを攻撃した》という本来決して有り得ない出来事がフィリアを特殊なステータスに変え、それがエラーとして認識されている。()()()()()()()()()()()()()()()()()。それがフィリアだ。

 

「ですが、このコンソールではエラーを解除出来ません。この《ホロウ・エリア》のどこかにある中央コンソールにアクセスする必要があります」

「……そこで、フィリアのカーソルが……」

「お前のソレもな」

「ぐっ……まあそうか……。最悪《ホロウ・エリア》に骨を……ああいや、攻略専門にするよ、うん。その方が、アインクラッドの攻略も楽になるだろうし」

 

76層に来てから色々おかしくなっている関係上、僕かキリトのどっちかは《ホロウ・エリア》で色んなスキルや武器を片っ端から実装していった方が良いだろう。そしてそれは、攻略組最強格のキリトよりも僕の方が適任だ。決して、皆からの視線が痛いからという訳ではない。……決して。

 

「……そうだな。じゃあ、《ホロウ・エリア》の方は任せることにするよ。でもそれにはまず、フィリアを探さないとな」

「うん。それなんだけどさ……俺が見て回った時、中層エリアに封印があったんだ。……多分、PoHの仕業だと思う」

「……本当にPoHが封印をしたのなら……」

「その先に進まれると、何か不都合なことがあるということだと思います。実際、封印は中層エリアだけでなく、ボスが配置されている部屋にもあるようですが……今、このコンソールから中層とボス部屋の扉の封印を解除しておきました」

「うん、ありがとう」

 

……待て。今なんて言った? ついでみたいに封印解除した?

 

「? は、はい……」

「ユイは凄い子だからな。偉いぞユイ」

「え、えへへ……」

 

声に出てた。というかキリトの父親ムーブは何なんだ本当に。そういうプレイ……いや辞めようか。人には人の事情がある。……これは声には出てない、筈だ。

 

「……えー、あー……とりあえず、ユイちゃんの仕事はこれで終わりかな。それじゃ、俺は先に中層で待ってるよ。だけど……ほいっ」

「……っと、転移結晶(クリスタル)か。良いのか?」

「いーよいーよ、俺はまだ余裕あるし。それに、来て貰った立場だし? これぐらいのことはさせてくれよ。どっちにしろ、俺も一度管理区は経由するからさ」

「じゃあ…有難く使わせてもらうよ。ただ、ケント……」

「わーってる、勝手には行かないよ。……あんまり長いと分かんないけど」

「なら、大急ぎで戻ってこないとな」

 

本当なら今すぐにでもフィリアの元へ行きたい。焦りは隠したつもりだが、どうだろうか。上手く隠せているだろうか。最近本心(感情)を隠せなくなってきたから不安だけども。

 

「ケントさん……」

「……大丈夫、必ず助けよう。だからそんな顔しないでくれよ」

 

──隠せてなかったらしい。現実に戻った時、影響が無いと良いけど。




えー、大変情けないことに言い訳をするとですね……シンプルに筆が進まなかったです……。俺にしては珍しくプロット、というよりかセリフ云々のメモまとめたりはしてたんですが、逆にそこから先が中々……という状況をズルズルと引き摺った結果、こんなに更新が空いてしまいました。
ただ今後ペースが上げられるかと言われたら何とも言えないので、毎度毎度のことではありますが気長にお待ちください。

……裏話をすると、溜まってたメモ分だけでも書き進めないと、流石にサブデータでフィリア救出後のホロウ・エリア編が進められないのでホロウ・エリア編だけでも年内……来年末には終わらせたいなぁ、という理想論でした。長々と書き連ねましたが、次回お楽しみに〜。
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