ラストファラオ   作:蕎麦饂飩

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幾重に重なる日輪

最盛期のファラオたるオジマンディアスと最後のファラオたるクレオパトラは私達を待ち構えていた。

 

「よく来た、旅の者たちよ……ん? ふん、面白い客人だ。余は貴様らを歓迎しよう」

 

何だか凄く聞き覚えがあるオジマンディアスの『余』という一人称。

まさか、親戚とかそういうのじゃないかとフードの青年を見るが、彼は何時もの通りだ。

それはフードで顔が見えないという意味であり、何時もの表情を知っていると言う訳でもないけど。

 

そしてクレオパトラがオジマンディアスに続いて名乗りを上げた。

 

「妾こそが最後のファラオ、クレオパトラよ。

正当な手段で此処に至ったのである以上は歓迎するわ」

 

 

――そう彼女は言ったが、その言葉は他でもない太陽王オジマンディアスによって否定された。

 

「クレオパトラよ、最後のファラオと言う言葉だが、それは違う。

――そうだろう? 旅の者よ」

 

 

 

その声を聞いた私達は見た。

初めて、青年がフードを外して素顔を見せるのを。

 

 

「流石はファラオを極めた王の中の王。この変装を見破るとは」

 

変装と呼んでいいかは置いておいて、その素顔を見て思った事は一つ。

―――びっ、美形だ。設定年齢19歳な蟹座じゃないけれど美形だーっ。

実際は正体を隠したかっただけなんだろうけれど、筋肉なプロレス漫画的な理由だと言われても納得できる美形だーっ。

 

…正直、此処までとは想定していなかった。

その時、私の中に電流が走った。それ程の衝撃だった。

だが、衝撃は二段構えで、内部に無駄なく衝撃を浸透させて破壊する極みに至る類のものだった。

 

 

 

 

クレオパトラが叫んだ。

 

「カエサリオンちゃん!?」

 

……カエサリオンちゃん?

 

まて、私。このカエサリオンちゃん(・・・)って誰だろう?

この状況でその可能性があるのは只一人。

それにしても、

 

「カエサリオン、ちゃん?」

 

思わず噴き出した私を責める様に睨むとフードの青年もといカエサリオンちゃんはクレオパトラに訂正を依頼し始めた。

 

「母サ…母よ、ここには客人と先代のファラオ達がいる故に、少々その呼び方は恥ずかしーーーー」

 

今一瞬母様と言おうとしたのだろうか?

しかし、それにしてもここで感動の再会と言う状況で母親の情熱が止まる筈が無いのは太陽でなくても見抜ける明白さだった。

ふと視界を逸らせば太陽王は満面の笑みで、

ニトクリスは眼がうるうるしていて何処かの誰かみたいにフードを被った謎の妖精さんみたいな何かにハンカチを渡されていた。

…カオスだ。

 

 

「カエサリオンちゃんっ。」

 

尚も、クレオパトラが叫ぶ。

最早、息子の尊厳を護る為に空気を読むつもりは微塵も無いようだ。

 

「…はっ、はい。母サマ…。」

 

あの尊大な青年が遂に折れた。

感動の再会に親子が抱き合う。

っていうか、初めて彼の素顔を見るけれど、この何処かショタ感がする彼と普段の彼のギャップは中々に良いものだと思う。

何だか解らないけれど愉悦の様な物を感じられる。

私は不敬かもしれないが思わず太陽王に握りこんだ拳から親指だけを突き立てて見せた。

同じポーズが帰ってきたのには驚いた。案外ノリが解る人オジマンディアスは良い王だと思う。

 

それとファラオたちを見て思った事がある。

尊大な態度、アレ、遺伝だ。

 

 

その後、何故かクレオパトラがエジプトの民に命じて料理を持ってこさせた料理をあたかも自分が用意したように、

 

「飲むがよい、喰うがよい、それによってカーが根付くだろう」

 

と振る舞いだしたカエサリオンちゃんはやたらと良く解からない言葉を使い始める様になった。

 

「カーって何なの?」

 

健全な肉体には健全に宿るやつだろうか?

 

「カーはカーだと感じるものだ」

 

もう訳が解らない。

というか一気にエジプト臭隠さなくなったなこの外見美形覇王なショタ属性カエサリオンちゃん。

 

「…そう。もうそれでいいや。

所で、ピラミッドをやたら気にしてたけどどうかしたの?

ピラミッドが欲しいとかなんとか言ってたよね?」

 

「…っ、聞いていたのか。

仕方ない、答えてやろう。

ああ、マイピラミッドを持つことはファラオとして一人前になるに大事な事なのだ。

神の化身で、ピラミッドを持って、民を笑顔にして初めて一人前のファラオだ。

それと、…ピラミッドは18歳未満購入禁止だったからな、

母に隠れてこっそり買っても建てる時に露見する故に、我慢したまま死を迎えた事が心残りだ。」

 

 

…ピラミッドってお酒や車みたいなものなのだろうか?

若しくはバブル期のマイホームみたいなものでもあるかのように語られるピラミッドに、

ファラオのスケールってスゲーと素直に思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして宴の終盤、

 

「カエサリオン、あなたはどうしてそのように自信が持てるのですか?」

 

酔いつぶれたニトクリスが、彼女へのリスペクトを留める事を知らない男に絡みだした。

見ればどことなく緊張しつつもウキウキしているのが解る。お前は憧れのアイドルに出逢ったドルオタか。

…似たようなものかもしれない。

 

「ニトクリス様、貴方にもあるだろう。貴方は太陽より眩しく月よりも美しい。

その自負をこのぼ…余に示しているでないか」

 

それは最早口説いていると言っても良いセリフのオンパレードだった。

正直羨ましい。

 

 

「それは、年若い後輩のあなたが相手だからに過ぎません。私は未熟なファラオ故に」

 

酔いが回ったのかファラオには珍しい謙虚なニトクリス。

そんな彼女に急に立ち上がったカエサリオンはその肩を掴むと熱弁を始めた。

その勢いに彼を除くすべての人間が話すことを止め、彼の声だけが響き渡る。

 

「それは多分に可笑しな事を言われるものだ。

貴女がおられなければそもそも余も母も、最早ファラオとして存在していなかったかもしれぬ。

地に落ちた太陽を再び昇らせた貴方こそがエジプト王家中興の祖。

余が目指すべきであった至高の太陽。」

 

「そっそうかしら」

 

美形な後輩ショタファラオ(見た目は非ショタ)の思わぬ熱意に押され気味のニトクリス。

そんな彼女に畳み掛けるカエサリオン。

どこか空気が読めずに好きなアイドルやアニメへの熱意を語るオタクのようにも思えるが、

彼の善性と類稀な美形属性がそれを感じさせない。

 

 

「当然である。

寧ろ、再び太陽を昇らせるに力及ばなかった余の方こそ貴方には合わせる顔が無いと言うものよ。

だが、この身はファラオ故にその落ち度をして頭を下げる事も出来ぬが」

 

 

やたら顔が近い。そして彼の顔を至近距離から見るニトクリスの顔を見て私は確信した。

 

あっ、オチたな。

 

 

 

 

 

そんな、宴だったが、それで宴は終わらない。

 

「新たなる客人が来た。彼を存分に祝福するがよい」

 

 

太陽王の覇気のある声がそのラブコメ空間をぶち壊した。

うん、良くやった。

 

 

そしてオジマンディアスに紹介された男が姿を現した。

 

 

 

「私は見た。私は来た。そして私は望みを得た。

私は―――――――――――――終身独裁官ガイウス・ユリウス・カエサルであるっ!!」

 

 

ああ、また一波乱がきそうだ。

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