ラストファラオ   作:蕎麦饂飩

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月は沈む日に代わり、若しくは太陽が吠えろ

私は見た。カーやバーといった言葉の意味は未だ良く解らないが、そこに青年の祈り(願い)に容が宿りし様を。

私は聞いた。そこに何があるのかは認識できないが、確かにそこに在る(・・・・・・・・)神とも語るべき存在の余波を。

私は理解した。その代償として青年の存在が急速に薄まっていく事を。

 

 

「カエサリオンッ!!」

 

私は最近になって漸くその素顔を知った、やたらと太陽やファラオに拘る変わり者の美しい青年の名を叫んだ。

 

「……」

 

青年は答えてくれなかった。いや、答えられる状態では無かった。

首がずれる様に深い切断面が生じ、いっそ翼の様に吹き出る血と共に存在感が失われていく。

 

「カエサリオンッ!!」

 

私はもう一度その名を呼んだ。

そこで彼はようやくこちらに手を振って見せる様に動かした。

きっと彼に言わせれば、「民の言葉に応えないでファラオは名乗れないからな!!」と自慢げにいう所なのだろうか?

…ようやく彼と言う青年が理解できて来たと思ったらこんな終わりだなんて私は認めたくない。

いえ、絶対に認めない。

 

「――案ずるな。

余はまだ自身の手でピラミッドも建てていない。

余はまだ建てたピラミッドに洛書も手形も記していない。

僕はまだ、この手で民を笑顔にできていない。

まだ、――――――まだ落日には一刻の時間があるのだと理解せよ」

 

 

そう強がっているが、この尊大でみみっちくて見かけ倒しな太陽に日没までの時間が一刻さえない事は明白だった。

 

「黄昏前の夕陽では世界を照らすには至るまいが、お前達を照らすには充分だ。

…余を信じぬとは不敬の極みだぞ」

 

自身の生命力を注ぎ込んだ代償で、掠れながらも明瞭な声質で届けられる黄金の意志。

そこにはエジプトの民が慕う神の系譜、そしてローマの民が憧れた雄弁者の系譜があった。

 

 

「…僕は、信頼した者に刺された男の信頼を受けて尚、その男を刺した。

僕は、愛深き女の愛を受けて尚、その女が向けた愛を疑った。

せめて、その二人に恥じぬ息子でありたいって、…そう、思えるんだ」

 

 

最早、尊大な仮面が剥がれかかって尚、その仮面の下にも真に王足り得る意志がある事を私は充分に知った。

これはもう、頭を下げたくなる太陽(ファラオ)だって。

 

 

「さようなら」

 

 

 

彼がそう言った瞬間、その右手首が消滅した。

代わりに首から溢れる血が収まった。

だが、再びその血流は速度を増した。

 

それに呼応するようにその場に顕れようとする神気ともいえる存在力は増していく。

 

 

彼の右側の腕が根元まで消滅し、一時的に収まった首からの血流が少し間をおいて再び吹き出す。

そして更に神気の充足速度が加速した。

 

 

 

「…円卓に居りし女神よ、貴様に寛大さを持って、我が女神が貌となる前に選ばしてやろう。

相討ち(DRAW)降伏(surrender)かを」

 

「…見た所、それを為す前にお前が消滅しそうだが?」

 

 

円卓側の女神は冷たく事実を突きつける。

カエサリオンが自身の腕を代償に神気の充密速度を加速させたのも瞬間的な話で、

今では、その出力は急速に低下し、

呼び出そうとした神気は薄れ始めてさえいる。

彼が命がけで無そうとしたことは只の無駄な自殺だと女神と化したアーサー王が突きつけた事実が現実に追いついてくる。

ハリボテの太陽には所詮何も為せなかったと冷たく世界は言い放つ。

それでも―――

 

 

「命を諦める事には納得した。

だが、ファラオが民を幸福にすることを諦めてはならぬ。

諦めなければ、夢想は叶うのだと、胸を張って、天から降り注ぐ眩しき光を浴びて歩いていけるのだと、

標を示すのが(太陽)である故にっ!!」

 

 

彼が祈りを、誓いを、咆哮を上げる中、再び神気の充足は高まっていった。

そしてその代償として彼は完全に消滅し―――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――消滅しかけた時に、二人の男女の声が響き渡った。

 

「息子よ、私は『来た』ぞ」

「だから『勝つ』しかないわ」

 

それは―――大声で頑張る息子の応援をする恥ずかしい夫婦だった。

それは―――子を想う両親だった。

それは―――二つの国家の王たちだった。

 

 

「…良く頑張ったわ。カエサリオンちゃん。

もう一人前のファラオね。

でも、1人の力でピラミッドは作れない。

今回も同じこと。力を束ねれば壮大な夢物語であっても為せない事は無い。それが『ピラミッド』の証明よ」

 

「礼は要らない。寧ろ後継者争いから逃がすために認知を遅らせる為にそのまま死なせてしまった事を詫びよう。

だが、そんな理由が無くても私は此処にいたはずだ。

理由が解るか? とてもとても単純な理由だ。

そう、『父サマ』だからだ」

 

 

1人の消耗を彼よりも膨大な力を持った二人が肩代わりをすることで、

神気は、満たされ、満たされ、満たされ―――彼の意に、彼の理に従い、その命運を守護する『女神』が降臨する。

 

 

 

そこに真昼の太陽よりも尚眩しい()の女神が降臨した。

 

「カエサリオン。良くやりました。

これが未熟な身が目指していた私の真なる高みの姿……」

 

 

 

 

 

降臨したホルアクティ(天空神ニトクリス)の姿…

それは―――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――露出過多気味で、ちょっと胸部が増量された姿だった。

……その脅威を認識した女神ロンゴミニアドとは別に、ファラオファミリーには気まずい空気が流れる。

 

 

 

あっ、これ知ってる。

切抜きのグラビア写真が見つかった少年が居た堪れなくなってる状況と同じだ。

若しくは、優しい親戚のお姉さんに拗らせた事が両親にバレてしまった少年って所だ。

 

「成程、大きい方が良いのだな…」

 

「大人になっていくのね。子供の成長を感じるわ…」

 

 

「………」

 

もうやめて、(色んな意味で)カエサリオンのライフはゼロよっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなアレ過ぎる空気が流れたが、

自己犠牲という言葉が裸足で逃げ出すレベルの献身により生み出されたこの場に出でた二人目の女神による、

『ありとあらゆる光を完全に反射する光』で収束した『夕焼けの光』とを薙ぎ払うべく行われた、

女神ロンゴミニアドの槍から振るわれた光を反射する事を前提とした作戦が実行された。

そして彼自身も生み出した悪夢染みた蜃気楼によって光を屈折させていた。

 

光を屈折させて反射させる二人に対して、光を攻撃手段とする獅子王の相性は最悪だった。

結果として彼らの活躍を主軸にルキウス――――いえ、騎士ベディヴィエールは聖剣の返還を果たしこの世界での物語は完結した。

 

 

 

 

…また、私は何処かで彼に出逢う。そんな予感がする。

その時までに牛乳を少しでも多く飲んでおこう。私はこの世界を去る時にそう心に誓った。




FGOでカエサリオン出てきちゃった…。
と言う訳で(元々でしたが)ここで本編完結です。
お付き合い頂きありがとうございました。
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