「すっごい匂いですねえ、緑の」
「ええ…やっぱりキツイです、地球は」
「じきに慣れますよ」
長い髪の男『ソルト・アレグロ』曹長は淡々と車を運転する。
「エアコンかけっぱなしのコロニーとは違うぜ」
さっきからヘッドホンを着けて何かを聞いている赤い髪の如何にも不良そうな少女は『ジュリア』伍長。
「ええっと、あなた。なんて名だっけ、曹長」
「は、ソルト・アレグロ曹長であります」
「あ…。そうだった、ソルト・アレグロ曹長。あなたはここ、長いのか?」
「…かれこれ3ヶ月になりますが、それが何か?」
「いやあ、別に他意はないんだ。ま、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
その時、重装甲のリアルドが視界に現れた。
「うわあっ、モビルスーツだあ!」
「陸戦型か…」
「私も、あれ貰えるんですね…すごい」
エミリーは満面の笑みを浮かべた…。
「カレン・シノミヤ少尉、第08小隊着任の挨拶に参りました」
「ごくろう。私が部隊長のタカギだ。 ま、楽にして。いや~、私はどうもエアコンというものが苦手でなあ。日中はこんな所に退避している」
「あの士官か?ポンコツで人革とやり合った奴は…。」
「しかも半分近く女の小隊だ…いいなぁ…毎晩とっかえひっかえできるぜ…?」
「キミたちも、人革側が秘密工場を隠し持ったという情報は耳にしとるだろう。しかし、何をしようとしているのかが、皆目わからん。また、絶対防衛線が我が方に伸び出すという事実により、我々は動き出したという訳だ。 ま、いずれにしても、この防衛線を突破し、敵を叩き潰さねばならん………え~、それから、ジャングル内の民間人だが、これは刺激するな。ま、そんなトコだ。後は曹長に聞け。いいな、ソルト」
「はっ!」
「さあ、どいたどいた!」
「新隊長ご到着のようだな」
テンガロンハットを被った老兵『ヤマト・オロチ』大尉はウィスキーを飲んだ。
「ああ、一応ね」
「で、どんな女だ?」
「へっ、今んとこ未知数」
ジュリアは隣に座ると曲にあわせて踊り出した。
「これでお前たちも忙しくなるのお~」
「─という所が大筋です」
ソルトが報告する。
「どうだい、父っつあん?いつまでもつか賭けねえか?あの隊長よお」
「こくんじゃねえ、バカたれ!…じゃが、のった!」
「6小隊の支援要請が出た。武器・弾薬 のチェック、補充を急げ。ぺパー軍曹は3 号機!」
「はっ!」
「いいか、人革はこっちの都合に合わせて来ちゃくれないんだ。1号・3号!各機の偽装網を外せ」
「はっ!」
「カッコいい人だなあ。あ…あの、私のモビルスーツは?」
その時、ドヨヨンとした空気とともにジュリアがエミリーの肩を叩いた。
「オメーはオレの支援だよ、嬢ちゃん」
「え?!」
「コイツの砲手兼オレの助手」
ジュリアはまるで『お前も道連れだぜ』と言わんばかりに隣にあったホバートラックを指差した。
「ええ~!?助手!?」
「銃口を引っ掛けるなよ!」
「3号機、100ミリキャリバーに換装終了!」
「同じくカートリッジ!」
「おおし!」
整備班が忙しなく動く。
「これが…これが私のモビルスーツ…」
「いえ、隊長のモビルスーツはその隣の」
ソルトはその隣のデカイ甲殻類のようなモビルスーツを指差した。
「え…。いやあ、よく整備してあるようですね、ソルト曹長(なにこれ…)」
「光栄であります」
「ではただいまより、出撃を前に隊長の訓示がある」
「ん。私はまだ諸君らの全てを知った訳ではないのが残念ではあるが…これだけは言っておきます。絶対に死なないで!私も戦死させることのないように、一層努力します。戦闘中いくら英雄的な行動をとっても、死んでしまっては何にもならない。隊長として、 小隊一人でもかけることなく生還し、勝利の喜びを、共に勝ち取ることを切望してやまない! 以上でしゅ!」
カレンは最後に盛大に噛んだ…。
「総員、出撃体制に入れ!解散!」
「…よく言うよ。ま、とりあえず腕前を見せてもらおうか」
「誰だって死にたかあないぜ。アマちゃんの隊長さんよお。泣けるぜ」
「でも、腕は確かです」
「へっ、今にわかるよっと!」
エミリーとジュリアはホバートラックに乗り込んだ。
「生き残って欲しいもんだな…全員な」
「ぺパー軍曹は右翼!ソルト曹長、あなたは左翼に着いて!!私がトップを取る!」
「?!」
「了解!」
「08小隊、出るぞ!」
甲殻類のようなモビルスーツ…ズゴックEが起動し、同時に陸戦型リアルドとホバートラックも動き出した…。
***********************
「隊長」
「なんですか?」
「そろそろ防衛ラインから出ます。ここから先は無線封鎖を」
「…わかってる!以後の通信は、指向性通信で行う!ライトは消して!レーザーセンサーと赤外線モニターに切り替えて!」
「せいぜい背伸びをしてるがいいさ」
「は?はあ…?!あ!」
ソナーを使い、ジュリアが索敵する。
「近い!嬢ちゃん、アマちゃんに連絡だ!」
「あ、はい!」
「音を立てさせるなよ…2時の方向…距離、2300…モビルスーツ、2機」
「識別できるか?」
「音紋照合…陸戦型ティエレンだ!」
ジュリアが要領よく指示を出す。
「6小隊の動きは!まさか、全滅?!」
「敵の攻撃は続いてるんだ。全滅のはずはない!」
「…確かにな」
「今から突っついてみる!」
ズゴックEが前進する。
「陽動する気?そんな事ができる腕なのか?」
「かかった!うわっ?!うう…まずい、宇宙とは違う!」
突然の機銃にカメラアイを守る。
「着任早々死ぬ気か!」
「うう…重い!」
「ライトを消して!」
「?!ジョシュア曹長!何のつもり!?」
「無茶です!あなたの腕では無理だと言ってるんです」
「何?あなたは私を侮辱する気ですか!」
「どう取られようと結構です」
「あれは私が必ず仕留める!見ててください!敵と渡り合うのは無理だと…上等だ」
「アマちゃんがティエレンを追ってる…あのソルトがケツに着いたぞ?!」
「隊長より連絡。敵を追い込みつつ、防衛拠点外へ追い払う、とのことです」
「何てこった、エライ事ですよコレは!軍曹に連絡だ!」
「はい!」
「ティエレンは2機いたはずだ…隊長ーっ!近すぎる!うっ!」
「軍曹!」
ぺパーの乗る陸戦型リアルドが砲撃を受けるがびくともしない。
「宇宙型とはケタ違いだ…コイツが陸戦型か…」
「ティエレンはどこ?!」
「隊長!深追いは危険です!」
ティエレンが視界に見えた瞬間にズゴックEの掌のリニアキャノンがティエレンを撃墜した。
「出たな!見ろ、やったぞ!えっ?きゃっ!」
ズゴックEが木の根に絡まって転ぶ。
「はあ…ど、どこへ行った?!」
「ん…があっ…!」
「♪ヒュ~ヒッデェもんだぜ」
ジュリアが耳を押さえながら呟く。
「衛生兵、こっちだ!」
「ジュリア伍長。隊長は戻ったか?」
「あれ?一緒じゃなかった?」
「エミリー伍長、何をしている。早く隊長を捕まえろ!」
「あ、はい!隊長、シノミヤ小隊長、3754 で応答願います!」
「ションベンでもしてんじゃねえの?」
ジュリアは毒舌を吐いた。
「…どこ…どこに消えたの?」
一方のカレンは必死にティエレンを追いかけていた…。
「どうやらレンジ外に出ちまったようだぜ」
「レスキュー要請、出しましょうか?」
「バァーカ!着任早々そんなモン出してみろ。全部隊の笑い者にされちまう」
「(隊長…)」
「…ナビゲーションシステムが壊れちゃうなんて! 参りました…」
「…生きてるんなら、救難信号ぐらい打ちゃいいのに…」
「く~、こんなモン着てたら汗に溺れちゃう!んええい。え~…しっかし、暑いなあ…。」
次の日…
「ハァ、ハァ…明け方だってのに、なんて暑さ…ハァ、ハァ…んん!素敵だよ…とっても素
敵…」
カレンはズゴックEから降り、水を探しにいっていた。と、途中でドブで転んでしまった。起き上がってドブを払っていると…何やら服にヒルみたいなものが…。
「はっひゃあああああああああああああああああああああああああああああ!?」
カレンは服を脱いでブンブン振り回すとヒルを全部追い払い走った。
「 …ハァ、ハァ…なんてトコなの!こんなトコで暮らしてるヤツがいるなんて、信じられな…」
その時、目の前に綺麗な水が流れる滝を見つけた…。
「やった~♪」
カレンは服を脱ぎ捨てると服を洗ったり、肌に冷たい水を浴びていた。
「ふんふふーん♪」
綺麗な白い肌が水で艶っぽい雰囲気を醸し出す…。
「よし、気分転換終了。」
カレンはびしょ濡れの服を絞って着ると来た道を戻った。
「いた…昨日のティエレン!!」
スコープを覗くと狙撃に入る…。
「一撃だ…一撃で仕留めて見せる。さあ来い!あっ!?」
その時、鳥が飛び立ち危うく引き金を引きかけた。
「はあ…落ち着いて…落ち着いて、カレン。下手には下手なりの戦い方があるわ。早く私の視界に入って来て…来た!鼻持ちならないソルト曹長、見ていてください…私にだってできるってことを…!」
視界に入った瞬間、引き金を引き、ズゴックEのリニアキャノンがティエレンを穿つ。
「…はあ…はあ…はあ… ん!まだやる気なの?!うわああああああああっっ!」
ズゴックEのリニアキャノンを連発し、蜂の巣にするとティエレンは動かなくなった…。
「はあ…はあ…はあ…で、できるじゃないですか、地上でだって…ああ…やった~♪1機撃 破、これより帰投する」
「(パパ…ママ…、地球に着いて間もないというのに、私、初陣を飾りました。それはもう、 見せたかったくらいです。でも、とんでもない事になっちゃったんです。隊長がはぐれちゃったま ま、戻らないんです。地球っていうのは実は結構過酷で、私が生き残れたのは…)」
「おい、嬢ちゃん!戻ってきたぜ、アマちゃんがよおっ!」
ジュリアが指差した先には確かにズゴックEがいた。自動操縦で動いているが…。
「ええっ?!隊長!」
「ったく、驚きだよなあ!」
ジュリアは鼻を擦った。
「宇宙のときも、こうでした!」
「この運の強さに賭けてみるか…」
「ふっ、モビルスーツの性能に感謝するよ」
「うん…ああ…う、もうお腹いっぱい…うへへへ」
みんなが感心する中、一人腹一杯ご飯を食べる夢を見ていたカレンだった…。