「はぁ…はぁ…はぁ…ふぅ!」
ズゴックEが陸戦型リアルドの支援でティエレンを二機撃墜する。
「訓練の成果が出てきたようだな」
「曹長ーっ!」
背後からソルトを狙うアンフを見つけ、プラズママシンガンで蜂の巣にした。
「なんと!」
「無事か?曹長」
「おかげさまで。しかし、この距離で援護を受けたのは初めてです」
「私の腕もまあまあでしょ?」
「どこからだ、伍長!」
ぺパーの声にジュリアがすぐに返答する。
「山頂からだ!」
「それにしては正確だぞ!」
「っつぅ!?狙われてるぞ!」
「まさか?!」
ジュリアは耳を押さえながら笑顔で言った。
「ヤツらにも耳のイイのがいるんだよ!」
「ああ…はい!」
「隊長!敵の着弾が迫ってきます!」
「全機、捕捉された模様です!」
「くっそー、はまっちまったぜ」
ジュリアが悪態をつく。
「小隊!散開して後退だ!作戦を立て直す!」
「了解!」
カレンの指示で一旦退いた…。
その後、カレン達は地図を広げ作戦会議をしていた。
「正面にはティエレン狙撃型を配した塹壕、おまけにキツい斜面ときてるわね…あのハイウェイは?」
「は。あれは補給路を維持する上で最重要ルートとなります」
「連邦にとっても、ね。あそこまでは何とか行けるけど、問題は村ね。」
「は。人革側に取られたのは痛いですね」
「この自然をうまく使った陣営をどう攻め上げるか…援護が欲しいところですね。」
「応援を待っていたら、こちらが追い詰められます」
カレンは唇に指を当てた。
「わかってる。わかってるけど…これは?」
「滝です」
「川沿いを西側斜面に迂回し、奇襲をかけ混乱に乗ずれば…」
「言うほど容易くありません。アマゾネスも徘徊する地域です」
「アマゾネス?!」
「で、奇襲をかけるのは?」
カレンは自信を持ってこう言った。
「この滝なら、行った事があります」
この言葉にメンバーがざわつく。
「隊長が?」
「奇襲をかける?」
「ま、陽動だけなら、経験の少ない隊長が適任じゃねーのお?」
「曹長、あなたはここの指揮を執ってください」
「しかし…」
「これは命令です。」
「そう言われるのであれば」
「お願いします。さて、時間は…3時間。必ず3時間で辿り着き、奇襲をかける。皆さんは正面から敵を惹きつけておいてください!」
「は!念のために申し上げておきますが、攻撃に持ち堪えられるのはせいぜい1時間で」
「わかっています。曹長以下4名は、15時にハイウェイ高架下に前進、待機!時を待って、総攻撃をかけて!以上!」
「アマゾネスなんかにとっ捕まんなよ」
「アマゾネスって…まさか。」
「ばーか。そのまさかだ!」
「よーし!こっちも出撃準備だ」
「へいへい」
「お気をつけて…隊長!」
ぺパーはそう祈った…。
「はぁ…ふぅ…。あった!!確かここから…。」
と、地図を見ながら辺りを見回していた時、突然コクピットが開き、筋骨隆々とした女性が一斉に槍を向けてきた…。
「あうっ!?」
コクピットから引きずり下ろされ手足を木に縛られるとどこぞの豚の丸焼きよろしく吊り下げられ連行された…。
カレンはアマゾネスの里に連れて行かれた。たくさんの屈強な女たちがいる中…カレンは族長の前に連れて行かれた。族長は褐色の女性だった。何やら現地語の訳の分からない言葉を連発してくる。…と、通訳のアマゾネスが話始めた。
「貴様、よくも我が縄張りに土足で入ったな。その罪は重い。」
「お願いです……私には時間が無いんです!!」
「…時間だ。ジュリア!」
「上は静かなもんですよ。ヤツら、 ティータイムだったりして」
「曹長。隊長は無事に着いたでしょうか?」
「あれだけ自信を持って確約したんだ。 行くぞ!」
「は!」
「…どう言えば、わかってもらえるの…あなたたちと、ユニオン共通の敵は人革連のはずです。占拠した村に設置された基地を潰せば、あなたたちにとって損ではないでしょう。作戦実行のため、仲間たちは私を待っている! 村を人革から解放すれば、あなたたちの仲間だって自由になれるんです!頼む、私を行かせてください!」
カレンは冷静に訴えた…。いきなり老婆が現れ彼女にひれ伏したのはその後だった。
「さあっ、どんどん撃ってきな!」
「…隊長…」
「え…あの……」
いつの間にかアマゾネス達は豪華な食事を並べ踊り出した。通訳曰く、カレンは戦神の生まれ変わりらしく…お祭り騒ぎになっているのだった。
「(そうだ!!今ならやれる…頑張れ…私!!)皆さん!!聞いてください。」
カレンの声にアマゾネス達が集まる。
「今こそ…皆さんの同志を救うべきです。私は人質になった同志を救う使命を帯びてここへやってきました。立ち上がるんです!!このまま人革の好きにさせてはいけません!!」
アマゾネス達は一斉に咆哮をあげた…。
「…遅い!隊長の動きは?!」
「いえ、まだ確認できません!…!お客さんだぜ…」
ジュリアがスナック菓子を食べながら呟いた。
「どうしたんです?」
「静かに!」
ジュリアが菓子を置き、神経を尖らせる。
「隊長か?」
「…いや…ヘリだ…1機、いや、2 機!」
「戻ってきたのか…!全隊、上空警戒を厳にしろ!」
「は!」
「勘弁してくれよな!これも死神のせいかあ!?」
「死神?」
「おめーだよ!」
「へ?!」
エミリーは頭を軽くひっぱたかれた。
「グスコー大佐。這い上がろうとしているネズミどもは、我が隊がすぐに始末します」
「ティエレン2機は痛かったな」
運転手は威圧感を放つ男に振り向いた。
「…まあ、首相にはよしなに。 よりによって特別査察の日に、とんだ事になりまして」
武人の威圧を放つ男は人革連のエース『グスコー・スミルノフ』大佐。
「フン!」
「ああ、妹君のロマリー様はたいそうお美しい方と聞きますが…いえ、失礼
しました」
運転手の男は余計な事を言ったと反省した。
「くっそー…厄介な隊長を信じたばかりに!ぺパー、限界だ!ハイウェイ高架下に退がる!」
「しかし!」
「もうこれ以上は無理だ!」
「曹長!」
その時、砲撃が基地に撃ち込まれた。エミリーがそれに笑顔を見せた。
「間違いありません、隊長ですよお!」
「いよーし、いよいよおっ始まったかあ!掴まってろよ!」
「はい!」
ホバートラックが前進する。
「ふっ!待たせてくれるじゃないか」
「隊長は何事も完遂する人だ」
ぺパーは感心するように頷いた。
「どこからだ!」
「あそこからです!川からの攻撃です!」
「挟撃する気か!?すぐ降ろしてくれ、 私はティエレンで出る!」
グスコーはヘリに用意していたティエレンに乗り込んだ。
「やった!弾薬庫が吹き飛んだ!」
「あんた、ホントに少尉?」
さっきの通訳の女の子が怪訝な目で見ていた。この子にはバレていた。でもカレンを信じ、有利になるよう通訳してくれたらしい。
「悪いですか?あなた、降りるなら今です」
「案内した手前、最後まで付き合うよ」
「勝手にしなさい。」
人革連はこの奇襲で総崩れ。おまけに…
「うわあああっ!」
「早く出せー!」
「ほら、ティエレンが2機行くよ」
「ええ!」
「そうりゃああっ!行くぜえ!」
一斉にティエレンにアマゾネス達が襲いかかる!!
「進めー!わあああっ!」
「みんな来てくれたんだ!」
「!残りの1機が来たぞ!」
「退散!!う、うわああー」
アマゾネス達は散り散りになった。
「へっお前ら全員取っ捕まえて?!ぐあああっ!」
いつの間にか掘られていた落とし穴にティエレンが落ちた。
「今だー!突っ込めー!」
出てきた人革連の兵士にアマゾネス達が槍を向けた…。
「何?!アマゾネスどもも加わっただと?! フン、落とされるのも時間の問題だな。撤退だ!オレは時間を稼ぐ!」
「は、北側斜面は私が食い止めます」
「そうしてくれ。オレは西側のモビルスーツを叩く」
「は!」
ヘリから密林潜行型の迷彩柄ティエレンが下ろされ、一気に斜面をかけ降りる!!
「きゃー!」
「ジュリア!民間人の誘導を頼むぞ!」
「やってますよ!」
ジュリアはスナック菓子の袋をもう1つ開けた。
「よーし!…なんだ、あれは?」
「うわあああああー!」
アマゾネス達が一斉に人革の男達をリンチにする。
「アマゾネスが?!」
「曹長、聞こえる?」
「隊長!」
「遅くなってごめん!みんな無事!?」
「は!」
「村を解放する!民間人には特に注意!」
「了解!軍曹!聞いたな?」
「は!…?!」
「行かせん!」
突然現れたヘリから機銃が発射されるが、ぺパーは冷静に陸戦型リアルドに搭載されているマシンガンで両翼を破壊した。
「…!う、うわああああああああっ!」
ヘリは墜落し、安全地帯で爆発した。
「ユニオンはアマゾネスと共同作戦を…!」
グスコーはティエレンでズゴックEを捕捉、襲いかかってきた。
「来るよ!」
「!」
ズゴックEとティエレンが取っ組みあい、川に沈む際にティエレンが蹴りを入れる!!
「あ…きゃああああっ!」
「ああっ!」
「ぬうう…ぬうう、敵ながらやるではないか!だが、これまでだあ!」
ティエレンの拳がズゴックEに何度も打ち込まれる。
「だあっ!」
「きゃ!」
「じ、邪魔ですよ!」
少女が転がりカレンにぶつかる。
「んな事、無理だよ!ああ!」
「ぐあ!ぐう!」
「ぎゃあ!ぎゅう!」
「!目を閉じてーっ!」
ズゴックEの魚雷コンテナから閃光弾を発射する!!閃光がティエレンを襲う!!
「ぐあああっ!だあっ?!」
「くらえ!」
その隙に頭部バルカンをティエレンに撃ち込む!!
「ふおおおお!」
「…はぁ、はぁ、はぁ…仕留めた?」
「わかんないよ…はっ!」
水面から穴だらけのティエレンが這い出す。如雨露のように水が出て滑稽だ。
「へっ、水中戦ができるヤツがいたとはな…」
ティエレンはよたよたと逃げ出した…。
「ほら、あっちだ!逃げちゃうよ!」
「いや、もういい。深追いできるほどの状態じゃない。はぁ…はぁ…」
「チェ!もうちょいだったのにい!むぅ…」
「…はああ…」
カレンは大きく息を吐くと座席に身を沈めた…。
「と、言うわけで軍曹。一日だけよろしく♪」
「え、ちょ!?隊長~!!」
実は内緒でアマゾネス達と交わした契約…それは『手を貸してもらう代わりにいい男を一人、一日レンタル』というものだった。
「軍曹は犠牲になったのだ(棒)」
ジュリアはスナック菓子を食べながら呟いた。
「隊長~!!」
「許してね~!!」
「(アマゾネスを味方につけるとは…な)」
ソルトは感心するようにカレンを見ていた。
「そうだ、まだあなたの名前を聞いてなかったですね…。」
少女はその言葉に笑顔で応えた。
「あたし、ミネ。よろしくね♪」
「私はカレン・シノミヤ。」
二人は固く握手した………。