屋敷の主は取り引きや同盟を求めてくる他の
それはまさに、一家の命を左右する極めて慎重を要する作業だった。
そこへ、完全なる第三者が断りもなく、恐れも知らずに、彼と書状の間に割って入ってきた。
クスクス、クスクス――――
耳にした瞬間、男はまず窓へと目を走らせた。
しかし、狙撃や襲撃に備えた
今しがた部下の出て行った扉にも、
クスクス、クスクス――――
「
男には死に別れた妹がいた。男が彼女を
当然、男は妹を
クスクス、クスクス――――
男は、犯罪大国『イラリア』でも恐れぬ者のいない『怪物』だった。影に
今回もまた、男の
クスクス、クスクス――――
ところが、笑い声ばかりが部屋に
男の、狼男のように意地汚い耳も、
「……クソッ、何処にいやがる。」
クスクス、クスクス――――
さらに、
不快極まる怪物の
クスクス、クスクス――――
――――そう、まるで好奇の視線に命を削り続ける「見世物」のよう。
クスクス、クスクス――――
「オイッ、誰かいねえのか!?マッテオ!ジョバンニ!ルカ!」
笑い声は、まるで針飛びするレコードをように
それはまるで、同じ
クスクス、クスクス――――
それは怪物の腰に手を当て、部屋の中を
ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!
取り乱し、荒れ狂う怪物は
少女の
「どこだ……、どこだ、クソッ、クソックソォッ!」
クスクス、クスクス――――
「止めろ……、止めろ、止めろ――――、」
クスクス、クスクス――――
「ヤメロォォォオオオオッ!!」
――――こんばんは、オジサマ
「オッ、ウッウワアァアァァ!!」
前触れなど無かった。足音はおろか、気配や空気の
しかし、目の前に現れた瞬間、少女からは
男の声は裏返り、乱れ撃つ。しかしその一つとして、少女を捉えることはない。
一歩、男が
男は窓に飛び付く。しかし、唯一の出口は雨に
逃げ場を失い、男の足は彼の体を支えるの力さえ
少女の細く
「あぁ、オジサマ。オジサマはこの目で今まで何を見てきたのかしら。」
「私はね、もぅ、何も見えないの。だから――――、」
「――――私に、教えて下さるわよね?」
※逆鱗=中国故事に由来する言葉。天子、目上の人間の怒りを買うこと。(目下には使えないらしいです)
初め、「琴線に触れる」と書いてしまいましたが、これは良い意味での感動でしか使えないのだとか……知らなかった(@_@;)
※針飛び=レコード再生時に、瞬間的に音が途切れたり、同じ場所を繰り返し再生し続ける状態のことです。今回は後者の意味で使ってます。
※寝物語=男女が同じ寝床でする会話。
※翠緑=緑色。「翠緑玉」は鉱石のエメラルドのこと。
※香草(ハーブ)=薬草。強めの芳香を放つ食材。ローズマリーやセージなどのこと。
本編では「古明地こいし」の服(スカート)に描かれたラナンキュラスの花の香りを書こうと思っていたんですが、一概にラナンキュラスと言っても、品種改良のおかげで、沢山の種類のラナンキュラスがある訳で、その分、匂いも色々ある訳で……。
レモンのような清涼感のある匂いが多いようですが、レモン?柑橘系?……なんとなく雰囲気に合わないような。でも、せっかくの「こいし」特徴だから使いたい……。そんなこんなで「香草(ハーブ)」という曖昧な線を選んでしまいました。(^_^;)
※針孔=糸を通すために開けられた針の穴。「めど」や「みぞ」とも言うそうです。
本編では「瞳」の比喩で使っています。