妖精のいる飲食店   作:ふくちゃん

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閑話 ベラの早とちり

 

 

〜これはリョウが公爵家へ出かけている時の宿のお話し〜

 

「ローズ!さっきの約束忘れないでよね!」

 

「はいはい、わかったよ。はいこれ、8番様に届けて。」

 

「はーい!〜〜♪〜♪〜〜〜♪」

 

ーーーー

 

「お待たせしました〜!はい、中華丼です♪」

 

「ありがと、ベラちゃん。今日はルンルンねぇ。何かいいことあったの?」

 

「はい!リョウが帰ってきたら膝枕してあげるんです!」

 

そーなのー、いいわねー、頑張ってね!などなど、ベラを応援する言葉が周囲の人からあがる。

 

盛り上がる中に、ある声が響いた。

 

 

いや響いてしまった。

 

「でも今日出かけた理由って姫騎士様関連なんでしょ?リョウってあのマーリンさんの孫だしもしかしたらそのまま姫騎士様と結婚とかしちゃったり…。」

 

言った冒険者風の男も気がついたのだろう。

 

これは言ってはいけなかったと。

 

沈んでいく空気と周りのご婦人からの冷た〜い視線に耐えられなくなったのか「す、すいませんでしたぁー!」っと言いながらお代を多めにおいて行ってしまった。

 

ーーーーーーーー

 

ずーん。

 

そんな言葉が似合う空気があの発言の後続いてい……

 

「うえ〜ん〜〜〜、リョウがリョウがぁ〜。」

 

なかった。

 

ベラ、大泣きである。

 

あの発言の結婚の部分が特に響いたらしい。

 

すでに頭の中の想像ではラブラブの二人が の間に子供ができているくらいには。

 

「はいはい、ベラちゃん大丈夫だからねぇ〜。」

 

お昼時も過ぎ、お客さんも少なくなってもまだ泣きっぱなし。流石のローズもお手上げであった。

 

と、そんな時にーーーー

 

バァン!

 

勢いよくドアが開いた。

 

「お、おい!公爵家の馬車がきたぞ!」

 

先ほどの冒険者風の男だ。

なんでもさっきのことを負い目に感じていたらしい。

 

「ほ、ほんと⁈」

 

「ああ、本当だとも。だから出迎えてやりな。」

 

 

「うん!」

 

ダダッ

 

ベラは駈け出す。大切な男の子を出迎えるために。

 

店を出るとそこには……。

 

 

「あ、アミィ。」

 

女の子を愛称で呼んでいる彼がいた。

 

ーーーー

 

そっか、そうなんだね。

 

なんでだろう。ねえ、どうして涙が止まらないの?足が動かないの?ねえ、震えてないで動いてよ。

 

リョウを出迎えてあげなきゃいけないのに、

 

リョウに膝枕してあげるのに、

 

リョウと姫騎士様におめでとうって言ってあげなきゃいけないのに、

 

キス、されてる…。

 

でも唇同士じゃない…ね。

 

言ってるだけ無駄かな、私はしたことないし。

 

姫騎士様行っちゃった。

 

あれ、リョウほっぺおさてえるだけだよ?

 

もしかして突然されたの?

 

もしかして、そういう仲じゃないの?

 

コツコツ

 

 

あ、ローズがリョウのとこに…。

 

うわあ、ローズ怒ってるよ。怖い…。

 

ここまで声聞こえてくるもん。

 

ん?

 

んん?

 

はぁぁ〜〜〜〜⁈⁉︎⁉︎

 

突然キスされただけ⁉︎

 

呼んでくれって頼まれただけ⁉︎

 

なにそれ⁉︎

 

ーーーー

 

ベラはもう一度駈け出す。

 

リョウを叱るために。

 

あんたのキスは私の物なのだと、

 

ドロボウ猫なんかにとられてるんじゃないと、

 

ちょっと瞼腫れてるけど笑顔で跳んで……

 

「リョウ!おかえりなさい!」

 

ドコォ!

 

ドロップキックを決めるために。

 

 

ーーーー

 

これが理由でリョウは怪我をした。自前の治療薬どころか市販品すらローズに禁止され、安静にするのであった。

 


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