通常であれば深夜0時から始まる定例報告会議。
しかし今回はナザリック地下大墳墓の主である至高の存在による号令の下、通常よりも早い時間から招集がかけられていた。
第九階層の円卓の間に集ったのは、至高の三柱と五人の階層守護者と守護者統括、宝物殿の領域守護者と“五大最悪”に数えられる特別情報収集官。そしてセバスとプレアデス五人とニグン。加えて、何故か執事助手のペンギン
いつものように守護者統括の言葉と共に会議が開始される。
そしてまず口を開いたのは、至高の存在の一柱であるモモンガだった。
「皆、忙しい中この場に集ったこと、まずはご苦労。法国を無事に手中に収め、現在多くの捕虜から情報を収集している。恐らくその幾つかは既にそれぞれの耳に入っているだろうが、ここで一度この場で情報共有と現状の整理をしていこうと思う」
「まずは現状の整理からだな。アルベド、説明を頼む」
「畏まりました」
ウルベルトの言葉に、アルベドが一度深く頭を下げる。続いてこの場にいる面々を見渡すと、淀みなく元法国領土の現状について説明し始めた。
とはいえ、その殆どが戦後処理の進行状況についてのみ。
戦後処理が終わった地域と現在処理中の地域について。その割合は未だ4:6といったところだろうか。ペースとしては少し遅い様にも思えるが、しかし今回の場合、一つの地域で得られるものが多種多様且つ非常に膨大である。そのためかかる時間はそれ相応のものとなるため、現状この速度でも十分合格であるとも判断できた。
現在戦後処理を主導で行っているエルフたちは、今までは国王代理という立場だったクローディア・トワ=オリエネンスが正式に王位を継ぎ、彼女が中心となって精力的に働いてくれているらしい。
次々と報告される情報の中、この場にいる誰もが注目したのは捕虜とした“ある人物たち”についてと、現在元法国神都で発動中の
「現在、第五階層の氷結牢獄に収容されている捕虜たちの中で最も注意すべき“人物”……“死神”のルシフェルと“漆黒聖典”の“番外席次”アンティリーネ・ヘラン・フーシェですが、この二名に関しても現在ニューロニストを中心に情報収集を行っております」
「確か、その死神さんにかけてる“傾城傾国”の支配能力は期間限定だったんだっけ?」
「はい。そのため、“傾城傾国”の効果が切れるまでにできるだけ情報を収集し、その後速やかに処分する予定になっております」
「うん、分かった。アンティリーネちゃんの方はどう?」
「現在は大人しくしており、情報も素直に話しているようです。情報については都度信憑性を調査しておりますが、今のところ虚偽の情報はないようです」
「そっか……。……その子については俺も少し気になることがあるから、折を見て面談してみようと思ってるんだ。それまではくれぐれも殺さないようにしてほしい。大人しくしているのであれば拷問もなるべくしないであげてくれ」
「畏まりましたん」
ペロロンチーノがアンティリーネの情報収集担当であるニューロニストを振り返って命じれば、ニューロニストは片膝をついて頭を下げながら承知の言葉を告げる。
満足そうに頷くペロロンチーノを確認し、次はモモンガが口を開いた。
「ここで少し、現在元法国神都でヴィクティムが発動している“幻世界の揺り籠”について、皆に説明しておこう。“幻世界の揺り籠”は法国が所有していた
“幻世界の揺り籠”は使用者と同じギルドメンバーには効果を発揮せず、また通常の
であればそれ以外に対しては全て効果を発揮するのかと言うと決してそういう訳でもないらしく、より厳密に言えば“幻世界の揺り籠”は使用者が設定した
「今回の場合であれば、ヴィクティムは“アインズ・ウール・ゴウン”に所属しているため、同じく“アインズ・ウール・ゴウン”に所属している我々には“幻世界の揺り籠”の効果は発揮されない。また、エルフ王国領土と元法国領土以外の全てを
「モモンガ様、一つお伺いしても宜しいでありんしょうか?」
「うん? どうした、シャルティア?」
「先ほどのお話でいくと、例えばエルフ王国領土内にいた者がエルフ王国領土及び元法国領土内を出たら、どうなるのでありんしょうか?」
「その場合は“幻世界の揺り籠”の効果範囲に入るため、幻に支配されるようだ。逆に
「「「おおっ!」」」
シャルティアからの質問の答えに、この場に小さな騒めきが起こる。
しかしウルベルトが軽く片手を挙げると騒めきは消え、静かになった空間に次はウルベルトが口を開いた。
「これで暫くは法国滅亡の情報が外部に漏れる心配はないだろう。だが、先ほどモモンガさんが言っていたように、このアイテムの効果期間は3カ月だ。その間に出来得る限りエルフ王国と元法国領土を落ち着かせておく必要がある。……君たちにももう暫く負担をかけてしまうだろうが、どうかよろしく頼む」
「っ!! 何を仰られます! 我らシモベ一同、至高の御方々の手足となって働き忠義を尽くすのは当然のことでございます!!」
「デミウルゴスの言う通りです! 至高の御方々のお役に立てることこそがわたくしどもの幸せでございます! 負担など、思うはずもございませんっ!!」
ウルベルトの言葉に、デミウルゴスがすぐさま反応して声を上げてくる。続けてアルベドも否定の言葉を口にし、他の面々も大きく何度も頷いたり頭を下げたりしてきた。
押し寄せてくる激しい熱量と変わらぬ彼らからの反応と忠誠心の高さに、モモンガたちは毎度のことながら若干ひきそうになってしまう。
しかし一心にこちらを思ってくれている彼らの前でそんな反応ができる筈もない。
モモンガとウルベルトとペロロンチーノは無言のまま素早く互いに視線を交わすと、次には何とか至高の主の態度を纏わせてアルベドたちに向き直った。
「…う、うむ、お前たちの忠義に感謝するぞ」
「そ、それで、今みんなで取り組んでいる戦後処理についてなんだけど、取集できてる多くの情報についてもこの場で共有していこうと思うんだ……。こちらもアルベドから説明してもらってもいいかな?」
「はい、畏まりました、ペロロンチーノ様」
モモンガからの感謝の言葉に再びシモベたちが反応しそうになり、しかしその前にペロロンチーノが次の話題を慌てて口にする。
その行動はどうやら正しかったようで、周りのシモベたちは恐縮したような素振りを見せながらも黙って頭を下げるだけにとどまり、アルベドも一礼と共に再び口を開いて説明を始めた。
アルベドの口から語られる情報は正に膨大且つ多種多様。
法国が所有していた秘匿技術や神人の存在、
正に目を瞠るほどの情報の数と内容である。
まず秘匿技術については主に魔法の
一般的にこの世界に出回っている技術では、スクロールは第一や第二などの低位の魔法を込めた物しかなく、現在デミウルゴス率いる悪魔たちが行っている開発でも未だ第三位階までが限界だった。またポーションについても、時間と共に劣化する青色の物が一般的であり、デミウルゴスの下にいるバレアレ二名の開発で生まれたポーションも――色は紫色で少しナザリック産のポーションには近づいたものの――まだまだ完璧とは程遠い物だった。
しかし法国の保有していた秘匿技術であれば、スクロールは第四位階まで魔法を込めることができるようになり、ポーションに至っては“神の血”と呼ばれるユグドラシル産の赤いポーションとほぼほぼ同じ物が作れるようだった。
とはいえ、勿論どちらも完璧であるとは言えず、全く改善点がないわけではない。スクロールは第四位階以上の上位魔法も込められるようになるよう改良及び開発し続ける必要があるし、ユグドラシル産の赤いポーションも作製技術は確立したものの、かかる出費は膨大なものでコストがかかり過ぎるというデメリットがあった。こちらも更なる改善や改良が必要だと言えるだろう。
しかしこの技術情報の入手によってナザリックのアイテム開発技術が何十歩も進んだことは紛れもない事実であり、非常に喜ばしいことである。これだけでも法国を滅ぼしたことに十分利益があったと言えるだろう。
次に“神人”と呼ばれる存在についてだが、これはユグドラシル・プレイヤーだと思われる“六大神”の血を引く者であり、且つその中でも神の力に目覚めた者のことであるらしい。
また、“神人”はその強さから多大な影響を周りに及ぼすらしく、その存在の情報が下手に周辺諸国に漏れた場合には現在生き残っている“真なる竜王”なるモノたちが動き出すとかなんとか……。
因みに法国にはこの“神人”が複数人いたとのことだが、現在生き残っているのは氷結牢獄に囚われているアンティリーネ・ヘラン・フーシェのみのようだった。
「――……スクロールやポーションについての秘匿技術の情報については、後ほど詳細が書かれた書類をデミウルゴスに渡す。今後のアイテム作製技術開発に役立てよ」
「はっ、畏まりました。感謝いたします、モモンガ様」
「次に“神人”についてだが、これについては幾つか留意すべき点がある」
「“
「二つは合っているが、最初の一つ目は違う……! ……まったく……。留意すべき点は主に三つ。一つ目と二つ目は先ほどペロロンチーノが言った通り、“真なる竜王とかいう存在”についてと、“神人”の一人であるアンティリーネ・ヘラン・フーシェについてだ。後の一つは『神の力に目覚めた』という部分だな」
ウルベルトの言葉にモモンガとペロロンチーノが同時に黙り込んでじっとこちらを見つめてくる。
一方は表情筋のない骸骨で、もう一方は黄金の仮面で顔を覆っているため、ウルベルトには今二人がどんな表情を浮かべているのか見当もつかない。しかしそれでも二人の頭上に幾つもの疑問符が浮かんでいるのははっきりと見てとれて、ウルベルトは思わず山羊の顔に小さな苦笑を浮かべた。それでいて言葉の真意を説明しようと口を開きかける。
しかし言葉を発するその前に、控えるように立っていたデミウルゴスが一歩こちらに進み出ながら嬉々とした声を上げてきた。
「なるほど、そういうことでしたか! つまりウルベルト様は、この世界でのレベルや経験値などのメカニズムにも通じるものがあるとおっしゃりたいのですね!」
「……ああ、流石は私のデミウルゴスだ、その通りだよ」
デミウルゴスの言葉に、ウルベルトはにっこりとした笑みを浮かべて一つゆっくりと頷いて見せる。しかし一方で、デミウルゴスがその言葉をどこまで考えて発したのかが分からず、内心ではダラダラと大量の冷や汗を流していた。
ここで『デミウルゴスも自分と同じ考えなんだ!』と判断を早まって自信満々に言葉を発しては致命傷を負いかねない。デミウルゴスが自分と全く同じことを考えているかは未だ不明であるし、第一この知略&勘違いカンスト悪魔のことだ、とてつもなく高い確率でこちら以上のとんでもないことを考えているに違いないのだ。
ウルベルトは満面の笑みを顔に張り付けたまま、お馴染みの正解の言葉を口に乗せた。
「デミウルゴス、お前が気が付いたことをこの場にいる全員に話してあげたまえ」
「はっ、畏まりました」
ウルベルトの言葉に、デミウルゴスは恭しく頭を下げた後に周りにいる面々に視線を向ける。笑みの形に吊り上がっている口の端を更に歪めながら、悪魔は自身の考えをこの場にいる全員に語って聞かせた。
悪魔の語る説明の内容はこの世界でのレベルや経験値の仕組みついてであり、この世界の住人と自分たちユグドラシルの存在との違い、そして“神人”が何故『神の力に目覚めた者』と認識されているかについてだった。
この世界の住人たちはその殆どが1レベルから30レベルくらいであり、稀に40台や50台くらいのレベルの者が存在している。これを、この世界の者たちは“才能”と呼んでいるらしいが、つまりそれはこの世界の者たちは生まれながらにして上げることのできるレベルの限界値が決まっているのではないかと考えられた。言い換えれば、器である肉体のレベル限界値が生まれた時から決まっているとも言えるのかもしれない。
一つのコップの中に注げる水の量は限られており、それ以上の水をどんなに注いだところで溢れて零れ出てしまうのと同じ……。
“この者はどんなに経験値を摘んでも10レベルまでしか上げることができない”“この者はどんなに経験値を積んでも20レベルまでしか上げることができない”と生まれた時から決まっている。
その考えでいけば、ユグドラシル・プレイヤーは生まれながらにして100レベルまでレベルを上げることのできる肉体を有していると言えるだろう。
レベルの限界値があるから、この世界の者はそれ以上に強くなることはできない。
しかしその理をユグドラシルの者の血は突破することができるのではないか。
つまり、ユグドラシル・プレイヤーの血を引き継ぐ者は、生まれながらの肉体のレベルの限界値が非常に高いのではないか。或いは、生まれながらの肉体のレベルの限界値自体は低いものの、単なるパーセンテージ或いは何かしらの条件で、その限界値を突破することができるのかもしれない。
故に法国は『神の力に目覚めた者』と表現したのではないか……。
「――……これらのことから、少なくともこの世界の者たちの殆どが我々ほどの
最後の方は至高の主たちに向けて語る悪魔に、至高の主たちはそれぞれ無言のままゆっくりと頷いて返した。
それでいてウルベルトがチラッと目だけでモモンガとペロロンチーノを見れば、二人は真剣な表情を浮かべながらも『そういうことか』と漸く思い至ったような納得の色も浮かべているのが見てとれた。
二人の全く同じ様子にウルベルトは思わずクスッと小さな笑みをこぼす。しかしその一方で、悪魔の語る内容が自分が考えていたものと概ね同じだったことに内心では安堵の息を吐いていた。
とんでも発言が出てこなかったことに大いに胸を撫で下ろし、ウルベルトはすぐさま笑みを引っ込めて真剣な表情を浮かべ直した。
「そうだな、お前の言う通りだ。強者の発見及び管理については、法国が導入していた“住民台帳”という仕組みが役に立つだろう。“アインズ・ウール・ゴウン”が世界に進出し、領土を持つに至った時にはその辺りも組み入れられるように考えていくとしよう」
ウルベルトの言葉に、この場にいる首脳メンバーが深く頭を下げてくる。
ウルベルトも一つ頷いてそれに応えると、この話題はこれくらいにして次の話題に移ることにした。
「次に“始原の魔法”と呼ばれるものについてだが、これは元々この世界にあった魔法であると考えられる。しかし現在は我々が扱うユグドラシルの魔法がこの世界に定着している。そのため、“始原の魔法”を扱える者は殆どいないらしい……ということだったな、アルベド?」
「はい。ウルベルト様の仰る通りです」
確認するウルベルトにアルベドが柔らかな微笑と共に一つ頷く。
“始原の魔法”は500年前に現れた八欲王がユグドラシルの魔法を広めるまでこの世界にあった魔法であり、ユグドラシルの魔法とは発動原理自体が違うのか、当時から扱える者は非常に少なかったらしい。
“始原の魔法”を発動する際に消費するのは
故に“始原の魔法”は強力なものが多く、法国の上層部の認識と見解では、“真なる竜王”とは“始原の魔法”を使うことのできるドラゴンロードのことであり、また恐らくは“真なる竜王”には
「ですが、先ほど説明させて頂いた通り、“始原の魔法”の使い手の数自体は少ないとはいえ、その力は非常に強力であると思われます。また、
「そうだな。“始原の魔法”がどういった魔法でどれほどの威力があり、防ぐ方法があるのかどうかも現状不明だ。アルベドよ、やり方はお前に任せるので“始原の魔法”についてと“真なる竜王”について調査せよ」
「畏まりました」
「ニューロニスト、お前も法国の連中からできるだけ多く且つ詳しい情報を収集するのだ」
「畏まりましたん」
モモンガの指示に、アルベドとニューロニストが再び深々と頭を垂れる。
モモンガが誰にも気づかれないように小さな息を吐く中、隣に座るバードマンが何にも憚れることなく大きなため息を吐き出した。
「はぁぁ……、漸く警戒すべき強者の存在が薄っすら見えてきたって感じですね。取り敢えず、“神人”の存在がチラついたら“始原の魔法”が使えるっていう“真なる竜王”が出てくるらしいので、アンティリーネちゃんの扱いは気を付けていかないといけないですね。後は……、ああ、“100年の揺り返し”についてもでしたっけ」
「……ああ、そうだな……」
ペロロンチーノの言葉に、モモンガとウルベルトはほぼ同時に重々しく頷く。
彼の言う通り漸く警戒すべき対象が見えてきたことはある意味喜ばしいことではある。しかし未だ漠然としていて警戒する方法も明確ではないし、また“100年の揺り返し”といった意味不明な言葉と現象も二人の頭を悩ませていた。
“凡そ100年ごとに神が降臨する”という“100年の揺り返し”という現象。
この“降臨する神”とは十中八九、ユグドラシル・プレイヤーのことだろう。
何故そんなことが起きるのか、その理由も目的もメカニズムも未だ不明。
また、きっちり100年ごとにユグドラシル・プレイヤーが来るわけでもないらしく、自分たちがこの世界に来た現在から遡って100年前は神の降臨は確認されていないようだった。
本当にユグドラシル・プレイヤーが転移してきていないのか、はたまた転移はしてきたがうまく隠れていたのか、それすらも分からない……。
非常に重要な情報であることは確かだが、この情報から自分たちがこれからどうしていくべきなのか、モモンガもウルベルトも未だ頭を整理することができずにいた。
しかし二人の苦悩など何のその、ペロロンチーノだけはあっけらかんとした様子でこの場に集まっているナザリックのシモベたちを見回していた。
「取り敢えず、新たな脅威が来るまでに少なくとも100年は猶予があることが分かっただけでも御の字だ。それまでにできるだけナザリックを強化、および現段階でこの世界にいるであろう強者の存在確認を進めていかないとね。それらを一気に進めるのは難しいだろうから段階的に取り組んでいこう。みんなにも力や知恵を貸してもらうことも多いかと思うけど、その時はよろしくね」
「はい、ペロロンチーノ様!」
「勿体ないお言葉でございます、ペロロンチーノ様」
「この心この身全てが至高の御方々のものでありんす! 御身は必ずやわらわがお守りいたしんす!」
「勿論です、ペロロンチーノ様! 絶対にお役に立ってみせます!」
「ぼ、僕も頑張ります……!」
「必ズヤスベテノ障害ヲ滅シテミセマス」
「うんうん、すっごく心強いよ。ありがとね」
口々に言葉を発して意気込む守護者たちに、ペロロンチーノが明るい声で言葉をかけながら何度も頷いている。
何とも呑気でありながらも心強くも感じるその様子に、モモンガとウルベルトはチラッと顔を見合わせた後に小さな苦笑を浮かべ合った。
「……では次の議題に移るとしよう。確か、ペロロンチーノから皆に伝えたいことがあったのだったな」
「あっ、そうでした!」
小さな咳払いと共にモモンガが次へと話しを移し、ペロロンチーノがそれに気が付いて大きく頷く。
改めて居住まいを正すシモベたちに目を向けると、ペロロンチーノは無意識に背筋をピンッと伸ばして胸元の羽根を大きく膨らませた。
「えー、まずは改めて、みんな法国侵略お疲れさまでした! 法国の神都に侵攻した際、三チームに別れてより多くの都市を陥落したモノにご褒美をあげるって約束したと思うんだけど、ここでその最優秀者を発表しようと思います!」
ペロロンチーノの突然の言葉に、この場にいる全てのシモベたちが一様に背筋をピンッと伸ばす。
特に当事者であるアウラ、コキュートス、パンドラズ・アクターの三名が緊張したような素振りを見せ、ペロロンチーノはフフッと小さな笑い声を零した。
「それでは発表します! エクレア、ドラムを頼む!」
「畏まりました、ペロロンチーノ様! ドラムっ!!」
「イーっ!」
ペロロンチーノの指示に、今までずっと部屋の隅に控えていたペンギン・バードマンのエクレアが大きく反応する。すぐさま自身の傍らに立つ男性使用人に指示を出すと、男性使用人は奇妙な声と共に肩に吊るしているドラムをダダダダッ!と打ち鳴らし始めた。
暫く続く、ドラムの連打音。
ペロロンチーノは溜めに溜めた後に男性使用人に手だけで合図を出し、それによってダダンッ!とドラムの音が途絶えたとほぼ同時に最優秀者の名前を高らかに告げた。
「アウラ!!」
「っ!!」
ペロロンチーノがアウラの名前を告げたと同時に、ババーンっ!とばかりにエクレアがどこからともなく取り出したクラッカーを鳴らす。
軽快な音と共に色とりどりのリボンや紙吹雪が飛び出し、驚愕に目を見開いているアウラまで届いて彼女を祝福した。
「あめでとう、アウラ。よく頑張ったね」
「……! あ、ありがとうございます、ペロロンチーノ様!」
ペロロンチーノに褒められ、途端にアウラの顔が歓喜に染まる。
満面の笑みを浮かべて頬を染めるアウラに、ペロロンチーノは腰かけていた椅子から立ち上がると、アウラの前まで歩み寄って空中にアイテムボックスを開いた。
「最優秀者だったアウラには二つご褒美があります! 一つ目はこの“リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン”。改めておめでとう、アウラ」
「あ、ありがとうございます!」
ペロロンチーノがアイテムボックスから取り出したのは、美しく光り輝く一つの指輪。
もう一度祝福の言葉を口にしながら指輪を差し出せば、アウラは一気に緊張した様子ながらも両手で恭しく指輪を受け取った。
両掌の上に指輪が乗せられたことをしっかりと確認し、ゆっくりと慎重に両掌を自身に引き寄せる。
アウラは自身の手の中にある指輪を見つめると、感極まったように色違いの双眸を潤ませ、まるで宝物のように大切に握り締めて胸元に押し当てた。
そのまま地面に片膝をつき、至高の主たちに向けて深々と頭を下げる。
「このような身に余る褒美を賜り、本当に感謝の言葉もありません! 至高の御方々のため、このアウラ・ベラ・フィオーラ、これからも誠心誠意お役に立てるよう頑張っていきます!」
「あー、うん、ありがとう。よろしくね……。……そう、それと、もう一つご褒美があるんだ」
アウラのいつにない畏まった様子に、ペロロンチーノは思わずドギマギしてしまい口調が少々おかしくなる。
しかし一つ咳払いすることで何とか気を取り直すと、ペロロンチーノは改めてアウラを見つめた。
「前にモモンガさんの命令で、褒美として何を貰ったら嬉しいかみんなで意見を出し合って俺たちに報告してくれたことがあっただろう? 今回はその中の一つをご褒美としてあげようと思うんだ」
「ペ、ペロロンチーノ様! それは……!!」
「そう、アウラにあげるのは、この『騎獣で相乗りデート券』だ!!」
「「「っ!!」」」
何かに気が付いたように焦った声を上げるアルベドに、ペロロンチーノは一つ大きく頷いて嘴を大きく開く。そして高らかに響き渡った言葉に、この場にいる全守護者たちが雷に打たれたような反応を見せ、他の面々は不思議そうな表情を浮かべた。
しかしそれは無理からぬことだろう。
先ほどペロロンチーノが提示した『騎獣で相乗りデート券』とは、以前モモンガがアルベドに命じて給金に代わる守護者たちの要望をまとめさせた時に出てきたものの一つだった。当然、これらの存在を知っているのは至高の存在と守護者たちと一部のメイドたちしかいない。
ペロロンチーノは再び空中にアイテムボックスを開くと、そこから一枚のピンク色の紙切れを取り出した。
紙の表面には『騎獣で相乗りデート券』という文字がポップな字体で書かれており、その下には少し小さな文字で『( モモンガ / ペロロンチーノ / ウルベルト・アレイン・オードル )』と記載されていた。
「誰とデートしたいのかはあの時の報告になかったから、取り敢えず三人の名前を書いておいたんだ。勿論全員でも良いし、もし『この人とデートがしたい!』ていうのがあれば、その人の名前に○を付けて提出してくれ」
「え、あ、あの……」
「うん? どうしたの?」
てっきり喜んでくれるものとばかり思っていたのに目の前のアウラはいつになく戸惑っている様子で、ペロロンチーノは思わず首を傾げる。『騎獣で相乗りデート券』はその内容からアウラからの要望なのだろうと思って今回の褒美に選んでみたのだが、もしかして違ったのだろうか……と急に焦りが湧き上がってくる。
『どうしよう、どうしよう』と心の中でアタフタし始める中、何故か非常に戸惑っている様子だったアウラが恐る恐るこちらを上目遣いに見上げてきた。
「こ、このような身に余るご褒美を……ほ、本当に頂いても良いのでしょうか……?」
「うん? 当り前じゃないか。大丈夫じゃなかったら、そもそもこの券を用意して渡したりしないよ」
安心させるように明るい声音で言ってやれば、徐々にアウラの表情がぱあぁぁ…と明るく輝きだす。
アウラは『ありがとうございます!』と大きな声で感謝の言葉を口にすると、次には跳ねるようにペロロンチーノが未だ差し出している『騎獣で相乗りデート券』を受け取った。
「あ、あの、ご迷惑でなければ……至高の御方々皆さまと一緒にお出かけできればと、思うのですが……。よ、よろしいでしょうか……?」
「うん、勿論それでも大丈夫だよ。あっ、でもそれだと俺たちそれぞれのスケジュールを調整する必要があるから、少し待ってもらうかもしれないけど……」
「そ、それでも大丈夫です! 至高の御方々のご迷惑にはなりたくありませんし!!」
「迷惑だなんて思ってないよ。折角のご褒美なのに待たせちゃうのがちょっと心苦しいだけだから」
「そんなっ! だ、大丈夫です! お気遣い下さり、ありがとうございます!」
「うん、それじゃあ俺とアウラとモモンガさんとウルベルトさんの四人でデートしようか。良いですよね、モモンガさん、ウルベルトさん?」
「ああ、勿論だ。なるべく早く出かけられるようスケジュールを調整するとしよう」
「私も勿論構わないよ。楽しいデートにしよう、アウラ」
「は、はいっ!」
果たして四人で出かけることを“デート”と呼んでいいのか、どちらかというと“散歩”や“ピクニック”と言った方が正しいのではないか……とペロロンチーノとしては思わないでもなかったが、しかしモモンガやウルベルトからも優しい言葉をかけられたアウラは全く気にしていない様子だ。ほにゃっと頬を緩めて、とても嬉しそうな笑みを浮かべて『騎獣で相乗りデート券』を大切そうに握り締めている。
まぁ、アウラが気にしないのなら良いか……と内心で判断すると、ペロロンチーノはそろそろこの話題は終わらせて次に移ろうと嘴を開いた。
「それじゃあ、モモンガさんとウルベルトさんはスケジュールを調整して、良い日を俺に教えてください。それをまとめてアウラに伝えるね」
「はい、畏まりました! ありがとうございます!」
「うん、なるべく早く伝えるから。……それじゃあ、次に移りましょうか。次は……なんでしたっけ?」
「今後の我々の動きについてだな……」
思わず大きく首を傾げるペロロンチーノに、モモンガが次の議題について口にする。するとペロロンチーノは『そうだった!』と大きく頷き、モモンガとウルベルトはほぼ同時に苦笑を浮かべた。
ペロロンチーノが再び椅子に腰かけるのを待ち、その後に改めてこの場に集うモノたちを見渡す。
先ほどまでのどこか湧き立つような雰囲気が引き締まり誰もが真剣な表情を浮かべてこちらを見つめているのを確認するとモモンガは再び口を開いた。
「先ほども言ったように、次の行動としては一年に一度行われるリ・エスティーゼ王国とバハルス帝国との戦がある。以前も計画について話したことがあると思うが、そこで我々“アインズ・ウール・ゴウン”の
「駒も全て準備でき、種蒔きも計画通り進んでいる。現段階までで何か不測の事態などは起きていないか、アルベド?」
「はい、何も問題は起きておりません。全てが順調に進んでおります」
「よろしい。であれば、取り敢えず計画通りエ・ランテルまでは手中にできそうだな」
「いやいや、油断は禁物ですよ、ウルベルトさん。全ては
「大丈夫だろう。そこは“八本指”たちに上手く誘導させるさ」
「ふむ、だがペロロンチーノさんの心配も分かる……。アルベドよ、“八本指”に対して失敗がないよう徹底させよ」
「畏まりました、モモンガ様。元より至高の御方々のご計画に泥を塗るなど、決して許されぬこと。日頃より言い聞かせてはおりますが、より強く指示及び管理いたします」
どこまでも真面目な表情を浮かべて一礼するアルベドに、自分が言い出したこととはいえペロロンチーノは“八本指”に対して少しだけ同情心を湧き上がらせた。
ナザリックのモノたちはその殆どがナザリック外の存在に対して非常に冷たい。アルベドもその例外ではなく、彼女からより強く指示及び管理をされるなど“八本指”からすれば地獄以外の何ものでもないだろう。
しかしペロロンチーノも元は美少女や幼女以外には興味のない男……『まっ、いっか』と軽く思い直すと、どんどん話を進めているモモンガやウルベルトたちに意識を戻した。
今はエ・ランテルまでの侵攻計画や、都市を陥落させた後の“冒険者モモン”の使い道についてなどを話し合っているようだ。
以前の定例報告会議でも言っていた、ラナー王女から提案された計画とデミウルゴスの壮大な勘違いによって構成された計画。
ペロロンチーノからすれば、どうしてここまでこんな勘違いができるのか不思議でならない。そして、そこから繰り出された計画の内容の見事さに戦慄が走って止まらなかった。
(エ・ランテルを侵略した後の“冒険者モモン”の使い道なんて、デミウルゴスが言ってくるまで全っ然思いつきもしなかったもんな~。そもそも、どうしてそんな考えが思い浮かぶんだか……。)
悪魔の高すぎる叡智に大きな恐怖心すら覚える。
一人小さく身震いする中、モモンガたちの話はエ・ランテル侵略後の統治や他の国々への対応にまで進んでいた。
「――……そこで、少し相談なのだがね……。世界征服をする以上、いずれは全ての国を吸収或いは属国化させていくことになるだろう。……しかし、帝国については少し対応を待ってほしいのだよ」
「ほう、ウルベルトさんがそんなことを言うのは珍しいな。理由を聞かせてくれるか?」
ウルベルトからの意外な言葉に、モモンガが小さく首を傾げながら問いかける。
いつもであれば余裕綽々とばかりの態度をとることの多いウルベルトは、しかし今回はどこか迷っているような素振りを見せ、また彼にしては珍しく口調までもがどこか頼りないものだった。
「……これと言って理由らしい理由はないのだけれどね……。……言うなれば少し見極める時間が欲しいと思ったのだよ」
「見極める? 何をです?」
「勿論、鮮血帝と呼ばれている現皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスについてだ」
ペロロンチーノの問いに、ウルベルトは短く答える。
山羊の顔にはいつにない神妙な表情が浮かんでおり、ペロロンチーノとモモンガは思わず互いに顔を見合わせた。
ウルベルトの話によると、鮮血帝は思っていた以上に優秀な為政者であるようだった。デミウルゴスやアルベド……そしてこの世界で言えばリ・エスティーゼ王国の第三王女ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフには及ばないものの、それでも頭が非常に回り、智謀にも優れ、何より生まれや身分よりも才能を重視する考え方もできる人物。もしこちら側に引き入れることができれば大いに役立つことが予想され、非常に利用価値があると言えるだろう。
しかしウルベルトの話を聞くモモンガとペロロンチーノは、彼が鮮血帝を気にしているのは皇帝が優秀な人物で利用価値があるという部分よりも、むしろ帝国の民から慕われているという部分にあるのではないかと何となく予想できた。
ウルベルトは
いや、この場合ウルベルトだけでなく現実世界にいた貧民層の殆どの者がそうであっただろう。
そんな環境の中で暮らしていたウルベルトにとって、
『あの頑固なウルベルトさんの考えを少しでも変えるなんてすごいな~』とモモンガとペロロンチーノが内心で感心する中、そんなことを思われているとは露知らないウルベルトが、まるで言い訳を並び立てるように言葉を吐き出していた。
「――……幸い、皇帝はワーカーの“レオナール・グラン・ネーグル”を非常に頼りにし、信頼し始めている。もしこの関係性を上手く使うことができれば、“レオナール・グラン・ネーグル”という存在によって、より良い形で帝国を手に入れることができると思うのだよ」
まるで何かを言われることを恐れているかのように少し顔を俯かせて捲し立てるウルベルトに、久しぶりに人間らしいウルベルトの姿を見たような気がして、その懐かしさに自然とモモンガとペロロンチーノは場違いにも和やかな気持ちになってしまう。
しかし、それがマズかったのかもしれない。
ほんわかとした心持ちで柔らかな笑みと共に無言でウルベルトを眺めていたモモンガとペロロンチーノの隙を突き、勘違いカンストの悪魔が突然ハッとしたような素振りを見せた。
「……っ……!! ……ま、まさか! いや、ウルベルト様ほどの御方であれば……っ!!」
「「「っ!!?」」」
悪魔からの鋭い呟きに、ウルベルトとモモンガとペロロンチーノはほぼ同時にビクッと肩を跳ねさせる。
急に湧き上がってきた嫌な予感に三人が戦慄する中、しかしそんなことは知らぬ悪魔は嬉々とした笑みを浮かべて感極まったように両腕を広げてきた。
「……嗚呼、ウルベルト様……! これまでの“レオナール・グラン・ネーグル”としての言動やゲヘナ計画でのあのアイテムの利用は、全て帝国掌握のため……法国の
「………は……?」
悪魔が並べ立てる言葉の意味が分からず、ウルベルトが呆けたような声を小さく零す。
しかし幸か不幸か、その声は悪魔の耳には届いていないようだった。
そして再び始まった、悪魔による壮大な勘違いから導き出された計画の説明。
だからどうしてそんな勘違いをしてそんな壮大な計画になるんだ、と声を大にして言ってやりたい。
加えて、話を聞いてみれば関係ないあれそれが綺麗なまでに一つの計画にちゃんとした意味合いを持って納まっており、その偶然と悪魔の思考が恐ろしくて仕方がなかった。
(うっわーい、またすっごいことになってるー……。)
(おい、そもそも何で俺が“幻世界の揺り籠”の存在を想定できてたことになってるんだよ。普通に無理だから! そんなこと考えつきもしてなかったから……!!)
(これって俺とウルベルトさんはまた演技する必要があるやつですよね……。……俺、演技苦手なんですけど……。)
(心配するところはそこですか、モモンガさん? 演技はウルベルトさんに見てもらいましょう!)
あまりのことに思考が追いつかず、最後には投げやりになって現実逃避に陥る。三人ともがもはや『もう、どうにでもしてくれ……』という心境だった。
先ほどからこの場にいるシモベたち全員から向けられるキラキラとした尊敬の眼差しが非常に痛い。
『違うんだ、全くそんなことは考えていなかったんだ。その眼差しはむしろデミウルゴスに向けるべきものだよ』と言えたならどんなに良かっただろう。
しかしたとえ本当に口に出して言えたとしても、決して聞き入れてはもらえなかっただろう。
三人ができることは、彼らの口にする言葉に全肯定することのみだった。
「………デミウルゴスの言う通りだ……」
「「「おおっ!!」」」
「……流石だな、私の考えを全て読むとは……。……えらいぞ、デミウルゴス」
「恐れ入ります!」
「た、ただ、計画通りに動いたとしても本当に結果がその通りになるとは限らない。その際はまたお前たちの助けが必要になるだろうから、その時は頼むぞ」
「至高の御方のご計画が外れるとは到底思えませんが……、畏まりました」
(お~い、最初の一言が余計だぞ、デミウルゴス~……。)
厚すぎる悪魔からの信頼と崇拝に思わず遠い目になりながら、至高の主たちは何とか頷いて返す。
漸く今回の議題の大部分が終わり、ドッと精神的疲労が襲いかかってきたような気がした。
しかしあと一つ、最後の議題が残っている。
モモンガは『もうひと踏ん張りだ!』と何とかやる気を振り絞ると、無意識に小さく背筋を伸ばした。
「さ、さて、では最後に、今まで法国を中心に動いていたパンドラズ・アクターとニグンに対し、今後の動きについて命じる」
「はっっ!!」
「はい」
モモンガの言葉に、パンドラズ・アクターは大袈裟なまでの素振りで礼を取り、ニグンも畏まった様子で片膝をついて頭を垂れる。
モモンガは
「パンドラズ・アクターはこれより“クアエシトール”のメンバーと合流し、新たな地で情報収集を行え。場所は竜王国だ。……何故かは分かるな?」
「はっ! 一つは、周辺国で未だ情報が不確かな国が竜王国、アーグランド評議国、ローブル聖王国の三つであること。その内、聖王国は既にデミウルゴス殿が情報を収集し始めておりますし、評議国は多数の竜王が統治しているという噂があるため危険度が高いと思われます。そのため、まずは竜王国を……というご判断であると愚考いたしましたっ!!」
「その通りだ。また、評議国は亜人の国らしいからな。人間のチームである“クアエシトール”だと行動も制限される可能性がある。竜王国に潜入し、情報を集めよ!」
「はっっ! お任せくださいっ!!」
テンション高いパンドラズ・アクターの反応に、モモンガは耐え切れなくなったのかガクッと大きく項垂れる。
まるで力尽きたようなその様子に、続きはペロロンチーノが彼に代わって話すことにした。
「えっと、それでニグンの方は法国に留まって、戦後処理と統治に関してエルフたちの助けになってあげてくれ」
「はっ、畏まりました」
恭しく頭を下げたまま承知の言葉を発するニグンに、ペロロンチーノは一つ頷く。
取り敢えず全ての議題が終わったことにペロロンチーノもモモンガもウルベルトも小さく息を吐くと、改めてこの場にいる全員を見やり、モモンガが代表して椅子に座った状態のまま小さく身を乗り出した。
「それでは皆、行動を開始せよっ! 解散っ!」
「「「はっ!!」」」
モモンガの言葉に従い、この場にいる全員が一斉に頭を下げる。
すぐ近くに待ち受けている新たな段階に向け、モモンガたちは改めて気を引き締めながらナザリックのモノたちを見つめていた。
*今回の捏造ポイント
・“幻世界の揺り籠”:
幻を世界規模でもたらすことのできる世界級アイテム。アイテムの使用者は、アイテム発動時は飲食はできなくなる。幻は使用者が設定する範囲に効果をもたらす。効果期間は最長三カ月。