「帝国に……俺が?」
唯依の言葉を聞いた直哉は、不思議そうに首を傾げた
すると、唯依は
「今の私は、篁家の当主だ……家臣の者達からは、早く世継ぎをと言われている……」
と語りだした
確かに、それが彼女の立場になるだろう
今の篁家は、彼女しか居ない
父親は早くに亡くし、母親はユーラシア連合の侵攻時に死去している
しかも彼女は、軍人
軍人は、何時死ぬか分からない
ならば、早く世継ぎたる子供を残すのが道理となる
「しかし、私とて女だ……誰でもいい訳ではない……」
唯依はそこまで言うと、直哉を見て
「だから直哉……私と帝国に来てくれ……」
と言った
すると、直哉は
「……しかし、俺は初音島の軍人で、強化人間だぞ?」
と問い掛けた
確かに、一般の軍人ならば問題は無いかもしれない
しかし彼女は、栄えある近衛の軍人だ
しかも、今や名が売れている篁家の当主
普通は、許されないだろう
「そこは、斑鳩様に話を通してある……優秀な軍人の血が入るならば、寧ろ歓迎する……だそうだ」
現帝国の政威大将軍
斑鳩古城が許可したならば、誰も文句は言えないだろう
「特に今は、帝国四軍は建て直しが急務だ……」
帝国陸、海、航空宇宙、近衛軍
この四軍は、以前のユーラシア連合の侵攻から続く戦闘でその戦力は大幅に低下
約一年経った今も、その戦力は以前より少ない
特に数が少ないのは、近衛軍だ
元々近衛軍の数は、他の三軍に比べて少ない
だから、近衛軍の建て直しが最優先事項の一つに挙げられている
しかし、そう簡単にはいかない
近衛軍は、要求される技能が他の三軍より高い
よしんばその要求技能をクリアしても、一般軍からの選抜だけでは成り立たない
だから、長い歴史を持つ家が上に立つ必要がある
その一つが篁家となる
その篁家を、絶やす訳にはいかないのだ
「だから……」
そこまで言うと唯依は、俯いた
自分が無茶を言っているという自覚が、確かにあったからだ
そんな唯依を見て、直哉は
「……流石に、直ぐに返事は出来ないな……」
と呟いた
そして、唯依の頭に手を置いて
「だがまあ、何にせよ……この戦争を互いに生き残ったらだな……」
と言って、撫でた
「俺たちは、軍人なんだ……生き残ることも、大事だ……先のことも大事だがな……だからな、唯依……生きよう……生きて、地球に帰ってくるんだ……」
「ああ……そうだな……」
直哉の言葉を聞いて、唯依は頷いた
そうして二人は、ゆっくりとさくら祭りを見て回った
自分達が守っている光景を、再確認するために……