機動戦士ガンダム 英雄黙示録   作:京勇樹

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遅くなりました


驚愕の配属日

「ふざけるなよ……」

 

訓練生から正規の少尉になった稟は、数日前に行った面接を思い出して呟いた

 

回想開始

 

「あー……実は、君に会いたいという子が居るんだがな……どうする? 望むなら、実戦部隊から外れて学校に通えるが?」

 

と、義之(伊達メガネと変声器を使ってるので、稟は気づいてない)から問い掛けられて、稟はすぐさまに実戦部隊を望んだ

 

回想終了

 

そして今日、いよいよ運命の配属日である

 

前日に訓練校の卒業式を終えて、配属先を書かれた紙を渡されたので、そこに向かってる最中である

 

その時だった

 

「土見! なーに背中曲げて歩いてんの!」

 

と、稟と同期の柏木が稟の背中にくっついた

 

稟と柏木の身長はほとんど同じであり、その証拠にズルズルと引きずる音が稟の耳に聞こえた

 

だが、稟には別のことが気になっていた

 

(胸! 胸が当たってる!)

 

柏木が稟の背中にくっついたことで、豊満な彼女の胸が稟の背中に押し付けられているのである

 

すると、二人の後ろから

 

「晴子、土見の背中に胸が当たってるわよ?」

 

と、涼宮茜の声が聞こえた

 

すると、柏木はニヤリと笑いながら

 

「ん? 当ててるの」

 

と断言した

 

つまりは、確信犯だった

 

それに稟はムッとすると、意趣返しをすることにした

 

「柏木……そこから突き落としてやろうか?」

 

と、指差した先は海

 

「えー……土見、酷くない?」

 

稟の言いように柏木は抗議するが、稟は無視した

 

その時

 

「稟じゃねーか」

 

「なにやってんだ?」

 

稟は声の方向に視線を向けた

 

そこに居たのは、同期の白銀武と織斑一夏だった

 

正確には彼らだけではなく、彼ら同期の元訓練生達が全員居た

 

さらに、近くの隊舎からは元ドイツ軍のメンツも現れた

 

全員それぞれに挨拶すると、同じ方向に歩きだした

 

「そういやぁ、稟達はどこの配属だ? 俺は第9機動師団だ」

 

武からの問い掛けに稟は驚きながら、口を開いた

 

「俺も第9機動師団だ」

 

すると、稟に続くように一夏とクラリッサ・ハルフォーフも

 

「俺も第9機動師団だ」

 

「私もだ。これは、なんかの偶然か?」

 

まさか、こんなにも同じ部隊に配属するとは思わず、全員歩みを止めて首を傾げた

 

とその時、シャルロットが腕時計を見て

 

「ねえ、そろそろ時間が危ないよ?」

 

と警告をだした

 

それを聞いた稟と一夏、武は腕時計を見た

 

確かに、配属予定時間まであまりなかった

 

「確かにな、急ぐか」

 

「だな、えっと……地図だとこっちだな」

 

稟が頷くと、一夏が地図を見て、指差した

 

一夏が指差した方向に、全員歩き出した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

数分後

 

「あれー……こっちのはずなんだけど……」

 

稟達は、軽く迷子になっていた

 

「ねえ! 本当にシャレにならない時間なんだけど!?」

 

切羽詰まった様子で、シャルロットが一夏を高速で左右に振った

 

「待て待て、わかったから落ち着けシャル!」

 

一夏はそんなシャルロットを落ち着けようとするが、尚も振られている

 

その時、周囲を見回していた武が指差して

 

「なあ、あの人に聞いてみないか?」

 

と、全員に問い掛けた

 

武が指差した先には、岸壁に腰掛けて釣り竿を持っている整備兵の男が居た

 

すると、代表してか鈴が近づき

 

「あの、すいません!」

 

と、声を掛けた

 

「ホイホイ?」

 

声を掛けられた整備兵は軽い調子で、振り返った

 

メガネを掛けていて、かなり若い印象の男だった

 

「僕達、第9機動師団に行きたいんですが……迷ってしまって……」

 

と、シャルロットが恥ずかしそうに言うと、男は立ち上がり

 

「第9機動師団? それだったら俺の目的地だから、案内してやるよ」

 

と言った

 

「え? いいんですか!?」

 

男の言葉に、一夏が問いかけると

 

「ああ。どうせ、目的地は同じなんだ。案内したほうが確実だろ?」

 

と男は、釣り竿を片付けながら言うと

 

「付いて来な。こっちだ」

 

と、歩き出した

 

稟達は、その整備兵の後を付いていった

 

「そういやぁ、君たちは第9機動師団ではパイロットかい?」

 

整備兵からの問い掛けに、稟達は頷き

 

「はい。新しく着任することになりました」

 

と、整備兵に応えた

 

「そうかい。無事に卒業できて良かったな」

 

「ありがとうございます」

 

整備兵からの言葉に、稟達は感謝を述べた

 

そんな中、ラウラを含めた元ドイツ軍のメンバーは僅か後方で整備兵の男を睨むように見ていた

 

(あの男の身のこなし、それに放たれるプレッシャー……ただの整備兵ではないな……)

 

ラウラ達はこの中では,唯一の実戦経験者故に、整備兵の男に違和感を感じていた

 

(隊長、あの男、ただ者ではありませんね)

 

隣に寄ってきたクラリッサが、ラウラの耳元で囁くように言ってきた

 

すると、ラウラは苦笑いを浮かべ

 

(クラリッサ、今の私は隊長ではない)

 

と、首を振って否定した

 

だが、クラリッサは笑みを浮かべ

 

(いえ、我々の隊長は隊長だけです)

 

と、断言した

 

ラウラが後ろを見てみると、他の元ドイツ軍のメンバーも頷いていた

 

(ヤレヤレ……頑固だな……)

 

ラウラはそう首を振るが、どこか嬉しそうだった

 

そして軽く深呼吸すると、整備兵の男を見つめて

 

(確かに、あの男はただ者ではない。あの雰囲気は歴戦の猛者のソレだ)

 

(はい。私が知る限り、あの雰囲気は七英雄と同じです)

 

ラウラの言葉にクラリッサは、整備兵が放っている雰囲気と同等の例を上げた

 

七英雄とは

 

それは、前タイタン戦争の際にEU首都のベルリン攻防戦の時に活躍したパイロット達である

 

そのパイロット達と同等の雰囲気を放っている整備兵の男を見て、ラウラは首を捻った

 

(あの男……何者だ?)

 

ラウラは整備兵に、疑惑の視線を向けた

 

その整備兵の男は、ラウラの視線に気づき

 

(ふむ……さすがは、元ドイツ軍の特殊部隊の隊長だ。俺に疑いの目を向けてる)

 

と、ほんの僅かだが、口端を上げた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

それから数分歩き、稟達の目の前に巨大な建物が建っている

 

「ここが、第9機動師団隊舎だ」

 

整備兵はそう言いながら、ドアに歩み寄った

 

すると、自動ドアが開き

 

「義之! どこに行ってたの!!」

 

そこには、メガネを掛けた少女が怒り心頭といった様子で仁王立ちしていた

 

「やっべ!?」

 

整備兵は踵を返して逃亡しようとしたが、横から伸びた手が襟を掴んで阻止した

 

「勝手に外に出ては困ります。大佐」

 

整備兵の襟を掴んだのは、ショートカットの赤い髪に170近い長身の女性だった

 

「「「「「大佐!?」」」」」

 

稟達は赤い髪の女性が言った階級に驚いていた

 

すると、逃げるのを諦めたのか整備兵は大人しくなり

 

「むぅ……いつ、気付いた?」

 

と、メガネを掛けた少女に問い掛けた

 

「二十分前よ! まさか、マネキンに士官服とカツラを被せて座らせるなんて、思わなかったわよ!」

 

「ふむ。思ったよりかは早かったか……あ、ちなみに、協力者はあちらに居る楯無少佐だ」

 

少女の言葉を聞いて男性は呟くと、ある方向を指差した

 

そこには、扇子を開いている水色の髪の少女が居た

 

なお、その扇子には《イタズラ成功》と達筆に書かれている

 

それを見たメガネを掛けた少女は、額に指を当てて

 

「もう……楯無少佐!!」

 

と、怒鳴りつけた

 

「キャー♪」

 

楯無と呼ばれた少女は、一目散に別の通路へと駆け込んだ

 

手に持っていた扇子には《逃走中》と書かれている

 

メガネを掛けた少女はため息を吐くと、我に帰ったのかシャルロットが駆けより

 

「あの、僕達、第9機動師団に配属することになったんですけど……」

 

と、メガネを掛けた少女

 

沢井麻耶に聞いた

 

聞かれた麻耶は眉をひそめて

 

「第9機動師団? 間違いないのね?」

 

と、シャルロットに問い返した

 

問い返されたシャルロットは頷きながら

 

「はい……これが配属書です」

 

と、脇に抱えていたケースから一枚の紙を麻耶に渡した

 

渡された紙を麻耶は一読して

 

「間違いないわね……」

 

と呟いてから、視線を整備兵に向けて

 

「義之、変声機を外していい加減に着替えなさい!」

 

と、持っていた士官服を投げつけた

 

士官服が顔に掛かった整備兵こと、義之は首のチョーカーを外して

 

「はいよ」

 

と、端的に返答して上着を脱いだ

 

その声を聞いて、稟と柏木は驚愕した

 

「今の声は!?」

 

「英雄!?」

 

その声はかの、総合戦闘技術演習の時に聞いた声だったからだ

 

稟と柏木の言葉に、新人達は固まってから

 

「「「「「え!?」」」」」

 

全員驚愕して、義之に視線を向けた

 

すると着替え終わった義之が、ポンと手を叩いて

 

「ああ、そういやぁ自己紹介してなかったな。俺の名前は桜内義之。階級は大佐だ」

 

義之は自分の名前と階級を言いながら、襟の階級章を指で叩いた

 

そこから数秒間、新人達は固まっていると

 

「「「「「なんだってーーー!?」」」」」

 

と、驚愕の声を入り口ホールに響かせた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

十数分後、ある大広間に新人を含めて六十人近く集まった

 

すると、義之がスクリーン前の壇上に上がり

 

「これで、呼んだ奴は全員だな」

 

と、部屋を見回した

 

新人達は全員中央に居て、周囲に他の部隊員が居る

 

「さて、改めて自己紹介しよう。俺は初音島統合防衛軍特務部隊隊長の桜内義之だ」

 

義之が改めて自己紹介すると、新人達は驚いた

 

「特務部隊?」

 

「すいません。自分達は第9機動師団と聞いたのですが……」

 

配属先が違うと思い、新人達は首を傾げた

 

しかし、それを予想していた義之は頷き

 

「沢井少佐」

 

傍らに立っていた恋人に視線を向けた

 

麻耶は頷くと、端末を操作した

 

すると、義之の背後のスクリーンに映像が映った

 

そこに映っているのは、初音島統合防衛軍の全体図だった

 

その全体図を見て、新人達は気付いた

 

「あれ? 第9機動師団がない?」

 

「だな、第8までならあるけど……」

 

そう

 

その全体図には、第9機動師団の枠が存在しなかったのだ

 

「第9機動師団というのは、このワルキューレ隊の隠れ蓑だ」

 

新人達の戸惑いに義之はそう説明すると、一拍置いて

 

「ここワルキューレ隊は朝倉元帥と芳野大統領の直轄部隊だ」

 

と、宣言した

 

その宣言を聞いた新人達は目を見開き

 

「朝倉元帥と芳野大統領直轄部隊!?」

 

「それはつまり、精鋭部隊ってことですか!?」

 

まさか、訓練生上がりの新人が精鋭部隊に選ばれるとは思わなかったのだろう

 

新人達の言葉に義之は頷き

 

「その通りだ。この部隊の任務は多岐に渉り、その任務は過酷だ」

 

そこまで言うと、義之は周囲に立っている隊員を見て

 

「今ここに居るのは、君たちを含めて六十名余り。だが、設立当初は百名近く居た」

 

つまり、新人達を抜いた四十名はその生き残り

 

それは、半数を割っている

 

「この部隊の人員損亡率の高さは、なにも最近の話ではない。この部隊は初音島が独立した直後から、その任務の過酷さ故に定員割れを起こしている。最近では、二年前のタイタン戦争でこの人数まで減った」

 

それを聞いた新人達は視線だけで、周囲の先任達を見た

 

そのほとんどが、悲しい光を瞳に宿していた

 

「故に、君たちのようなスタープレイヤーは大歓迎だ! これからの活躍に期待する!」

 

義之の激励の言葉を聞いて、新人達は背筋を伸ばし

 

「「「「「はっ!」」」」」

 

全員同時に敬礼した

 

それを義之は満足そうに見ると

 

「それでは、我が隊の隊訓を教える」

 

と深呼吸して

 

「死力を尽くして任務に当たれ!!」

 

指揮官らしい通る声で、言葉を発した

 

すると、隣に立っていた麻耶が

 

「先任、復唱!!」

 

と、周囲に立っている先任達に復唱を促した

 

すると

 

「「「「「死力を尽くして任務に当たれ!!」」」」」

 

先任達が一字一句間違えずに

 

「生ある限り、最善を尽くせ!!」

 

「「「「「生ある限り、最善を尽くせ!!」」」」」

 

タイミングを合わせて

 

「決して犬死にするな!!」

 

「「「「「決して犬死にするな!!」」」」」

 

義之が言った言葉を復唱した

 

「新人一同、復唱せよ!」

 

義之が復唱を促すと、新人達は深呼吸して

 

「「「「「死力を尽くして任務に当たれ!! 生ある限り、最善を尽くせ!! 決して犬死にするな!!」」」」」

 

新人達が復唱すると、義之は満足そうに頷き

 

「その言葉、胸に深く刻み込んでおけ。いいな?」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

新人達の返事を聞いた義之は頷き

 

「それでは最後に、我々の上官の朝倉元帥の言葉を伝える」

 

そこで一旦区切り、咳払いをすると

 

「『かったるいから、敬語及び敬礼は無しで』以上」

 

軍としてはどうかと思える言葉を言った

 

それを聞いた新人達は数秒間固まり

 

「「「「「は?」」」」」

 

全員同時に、首を傾げた

 

その様子を見た義之は笑い

 

「まあ、普通はそんな反応だわな」

 

と言った

 

気付くと、周囲に居る先任達も笑っている

 

「まあ、我々の上官の朝倉元帥はな凄い面倒くさがりやでなぁ。かったるいが口癖なくらいだ。故に、隊の人間だけだったら、敬語や敬礼はしなくていい。わかったな?」

 

ポカンとしている新人達を見て、義之が笑いながらそう言うと、新人達は呆気にとられながら

 

「「「「「は、はい……」」」」」

 

頷くしかなかった

 

全員が頷いたのを確認すると、義之は笑みを浮かべて

 

「そんじゃま、かたっくるしいのはここまでにしといて……我が隊の先任達を紹介する。まずは、副官を勤めてる沢井麻耶少佐だ」

 

そう言いながら義之は、隣に立っている麻耶を見た

 

「よろしくね」

 

麻耶は微笑みながら軽く会釈した

 

「あと、俺の恋人でもある」

 

「そういうことはいいの」

 

義之が補足すると、麻耶が持っていたファイルで義之の頭を叩いた

 

その光景を見て、新人達は苦笑いした

 

今の麻耶の行動は、本来だったら上官侮辱罪に当たる

 

だがあまりにも慣れた様子から、本当に普通の軍とは違うとわかった

 

「痛たた……まあ、次を紹介しよう。MS隊副隊長の一人。伊隅みちる中佐だ」

 

と義之が紹介したのは、義之が変装していた時に襟を掴んだ女性だった

 

「MS隊副隊長の伊隅みちる中佐だ。よろしく頼む」

 

とみちるは微笑みながら敬礼してきたが、キリッとした雰囲気を新人達は感じた

 

「そして、もう一人の副隊長。高坂まゆき中佐」

 

と義之が紹介したのは、快活そうな女性

 

「よっろしく~♪」

 

紹介された高坂まゆきは軽い調子で、ピッと指を動かした

 

「さて、次に……」

 

人数が多いので、以下略

 

設定を書く予定なので、そちらをお待ちください

 

 

閑話休題

 

一通り自己紹介が終わると、義之が手を叩き

 

「そんじゃあ、お前らは仕事に掛かれー、新人達は俺に付いて来い」

 

義之が命令すると、先任達は三々五々散っていった

 

そして義之が歩き始めると、新人達も付いていった

 

そこから新人達は、色々と施設を案内された

 

ロッカールームに始まり、執務室、遊戯室、食堂

 

そして最後にMS格納庫(ハンガー)

 

新人達はそこに入り驚いた

 

「あの機体は!」

 

「総戦技演習で襲撃してきた新型!?」

 

「それに、ガンダムアストレイ!」

 

MS格納庫で整備されている機体は、まさしくその機体だったからだ

 

「新型の名称はアストレイ3型。今後、お前らが乗る機体だ」

 

新人達が驚いていると、義之が説明を始めた

 

「アストレイ3型の特徴はパイロットに合わせて、機体自体をカスタマイズ出来るんだ」

 

義之の説明を聞いて、クラリッサは納得した

 

「なるほど……それで、一機ごとに特徴が違い、動きも違ったわけか」

 

クラリッサの言葉に義之は指を鳴らして

 

「イグザクトリィ、流石は、元ドイツ軍特殊部隊副隊長さん」

 

カッカッカと笑いだした

 

すると、義之に視線が集中して

 

「あの機体があるってことは……」

 

「あの襲撃は、大佐達が?」

 

「大正解」

 

義之はどこから出したのか、扇子を開いた

 

その扇子には、《御名答》の文字

 

「姉さんみたい……」

 

そう呟いたのは、今まで沈黙していた簪だった

 

すると、義之が視線を向けて

 

「そういえば、君は更織少佐の妹さんだったな……更織少佐、居るんでしょ!」

 

義之が大声を出すと、横の通路からひょっこりと

 

「呼んだ?」

 

呼ばれた更織楯無が現れた

 

「ヤッホー、簪ちゃん。大分強くなってて驚いちゃった」

 

「え? 姉さん……それって、どういう意味?」

 

楯無の言葉に簪が首を傾げていると、楯無は微笑んで

 

「私が乗ってる機体はね、ガンダムアストレイBF2ndLなのよ」

 

「あの青いアストレイですか!?」

 

「そ♪」

 

と、一夏達が会話していた時だった

 

「うほ! かわいこちゃん発見!」

 

全員の頭上から、そんな声が聞こえた

 

全員が上を向くと、キャットウォークにサル顔の少年が居た

 

「かわいこちゃーん!」

 

サル顔の少年はそんな声を上げながら、某怪盗三世跳びをしてきた

 

その直後

 

「香里中尉! 修少佐!」

 

「「はっ!!」」

 

義之が名前を呼ぶと同時に、二つの影がサル顔に向けて跳んだ

 

「天誅!」

 

「教育的指導!」

 

メガネを掛けた少年が腹部を殴り、赤い髪の少女が頭を蹴り上げた

 

「がふぁ!!」

 

二人からの攻撃を受けたサル顔の少年は、クルクルと空中で回転した

 

その間に二人の少年と少女

 

天見修(あまみしゅう)少佐と奈月香里(なつきかおり)中尉は、見事に着地

 

サル顔の少年

 

照屋匡(てるやただし)軍曹は、頭から落ちた

 

「「「「「死んだーー!?」」」」」

 

頭から落ちた照屋匡を見て、新人達は驚きの声を上げるが

 

「あー、大丈夫だ。何時もの事だから」

 

と、義之が呆れ顔で首を振った

 

「「「「「日常茶飯事!?」」」」」

 

義之の言葉に新人達が驚いていると

 

「匡ったら、本当にバカなんだから!」

 

「相手は新人とはいえ、少尉なんだぞ? 上官侮辱罪になりたいか?」

 

と、修と香里が倒れている匡に対して説教を始めた

 

すると、倒れていた匡が起き上がり

 

「お前ら! 俺に対する謝罪は無しか!?」

 

と、二人に詰め寄った

 

「「ない!!」」

 

「断言された!?」

 

三人が漫才をやっていると、義之が匡の背後に立ち

 

「照屋匡軍曹!」

 

大声で匡の名を呼んだ

 

「はい!!」

 

呼ばれた匡は直立不動の姿勢で、固まった

 

「今はまだ整備中の筈なんだが……?」

 

「え、えっと……」

 

「今戻るなら、見逃してやる」

 

「失礼します!」

 

義之の言葉を聞いた匡は、疾風のごとく駆け出した

 

その直後、義之のほうに布仏虚が近寄ってきたが、義之が手を振って制した

 

つまりは、お咎め無しという意味である

 

とはいえ、虚からは無いとは限らない

 

「そんじゃま、機体をカスタムするか」

 

義之の言葉を合図に、新人達に合わせてカスタムを始めた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

数時間後、新人達と義之は義之の執務室に居た

 

「それじゃあ、新人諸君は今日はここまで」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

「明日からは、バリバリ働いてもらうから、そのつもりで」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

義之は新人達の返事に頷くと、引き出しを開けて

 

「えっと……どこに仕舞ったっけ……ああ、あった」

 

中から、茶色い封筒の束を取り出した

 

「ほい」

 

義之はその封筒を机の上に置いた

 

「あの、その封筒は?」

 

と、直哉が問い掛けると

 

「ん? お前らの自宅通勤許可書」

 

義之は、なんでもないように答えた

 

すると、新人達は驚き

 

「自宅通勤許可書は確か、佐官からだったと思うんですが……」

 

と、義之に問い掛けた

 

「ん? それはな、もう一人の上官のさくらさんの言葉でな『みんなにだって家族が居るんだから、仲良くしたほうがいいでしょ』とのことだ」

 

その義之の言葉に、新人達は唖然とした

 

すると、義之が手を叩き

 

「ほれほれ、こっちはまだ仕事があるんだ。自分の名前が書かれてる封筒を取って、帰った帰った」

 

と、新人達を促した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

夕暮れに染まる街角の一角で、稟は黄昏ていた

 

「自宅通勤許可書って言ってもな……家なんてないんだが……」

 

稟の家族は幼い頃に事故で亡くなっていて、稟を引き取っていた家も娘が死んでしまった

 

そう思いながら、見つめていた書類を封筒に仕舞うと

 

「ん? もう一枚ある……」

 

中にもう一枚、書類があるのを見つけた

 

そのもう一枚を取り出すと、その書類には

 

「この場所へ行け?」

 

その書類には、一カ所の住所が書かれていた

 

稟はその書類に首を傾げながらも、近くを通った無人電動タクシーを見つけると片手を上げて止めた

 

無人電動タクシーに乗ると稟は、端末に住所を入力した

 

住所を入力すると、無人電動タクシーは静かに発車した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「なんで……この家が……」

 

稟の目の前には、ある一軒家が建っている

 

その家に稟は見覚えがあった

 

約二年前まで稟が住んでいた、光陽町に建っていた家だったからだ

 

「は、はは……偶然だよな……」

 

稟はそう思いながら、表札を見た

 

そこには《芙蓉》の文字

 

「まさか……そんなはず……」

 

稟はそう呟きながらも、震える指でインターホンを押した

 

すると、家の中からピンポーンと聞こえて、その数秒後、パタパタと走る音がしてから

 

扉が開いた

 

中から出てきた人物を見て、稟は驚愕で固まった

 

「か、楓……?」

 

「はい、稟君。お帰りなさい……」

 

それはまるで、奇跡のような再会だった

 

死んだ筈の少女と自分の無力感に涙して、自ら軍に入った少年

 

一時は分かたれた二人は、二年という時を経て再び出会った

 

ここからどうなるのかは、誰にもわからない

 

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