「グスルグ!」
『クルト!』
二人は互いの名前を呼びながら、砲撃を放った
グスルグ機は、複合ランチャーのビームを
クルト機は、試製のビームランチャーを撃った
クルト機に装備されている、MMIーER65Aビームランチャー
ユーラシア連合からの解放後に、政府主導で開発が開始された
初音島からの技術提供もあり、EU初の携行式ビーム兵器となった
それを、ネームレス隊の整備士
カリサ・コンツェン(年齢不詳)が、自身の伝を使って入手
クルトの操縦の癖に合わせて、改修・調整したのだ
クルト機の放ったビームは、グスルグ機の撃ったビームを飲み込み、グスルグ機に迫った
『ちいっ!?』
しかし、それをグスルグは機体を上昇させて回避
クルト機に、実弾を放った
それに対してクルト機は、増加装備
アサルトシュラウドの弾幕を展開
グスルグ機が撃ったバズーカのロケット弾を迎撃した
はっきり言えば、クルトの不利は否めない
機体の性能差は、如何ともしがたいものだった
しかしそれを、クルトは自身の戦略で覆そうとしていた
クルトはそうやって、何回も不利を覆してきた
諦めずに
『流石はクルトだな! 俺の動きを、予測しているな!?』
「半年間、近くで見続けていたからな!」
クルトはそう言いながら、ビームランチャーを撃った
グスルグはそのビームを、ドム・トルーパーに装備されているビームシールドで防御した
そして気付けば、グスルグはクルト機を見失っていた
『クルトは!?』
グスルグはそう言いながら、周囲を見回した
そこに
「ここだ、グスルグ!!」
とクルトは、真上の隕石の裏から現れて重突撃機銃を撃った
その攻撃をグスルグは回避し、ビームを撃とうと構えた
その直後、グスルグ機の背後で爆発が起きた
『ぐっ!?』
爆発を起こしたのは、グスルグ機の後ろを漂っていたMSの残骸
クルトはグスルグが避けることも予想して、予想回避先の残骸を撃ったのである
クルトはとことんなまでに、理詰めで戦っているのだ
最小の損害で勝つために
『こ、これは!?』
「グスルグ……!」
機体の性能差を埋める、理詰め
あらゆる状況を冷静に分析し、最適な行動を割り出し、行動する
そして、ネームレスで最初にクルトの能力に気づいたのは、他ならぬグスルグだ
そのグスルグは、少しずつだがクルトに追い詰められていた
回避軌道先を読まれ先回りされ、離脱しようとしたらその先に弾幕を形成された
これもまた、戦争の一面なのだろう
友と認めあった二人が、互いに銃口を向けあって、命を奪い合う
クルトとて、出来れば戦いたくなかった
だが、ネームレス隊の隊長として、脱走したグスルグに対処しなければならない
そして何より、グスルグと向き合うのが自分の役目だと思っていた
友だから
『クルトぉぉぉ!!』
グスルグは雄叫びを上げながら、複合ランチャーを撃った
ランチャーから放たれたビームは、クルト機にグングンと迫り、直撃
爆発を起こした
『……』
それを見たグスルグは、不思議とある確信があった
それを証明するように、爆煙の中から無事なクルト機が現れた
それを見たグスルグは、今度はロケット弾を撃った
そのロケット弾を、クルト機は機体を旋回させて回避
そして
「オオォォォォ!!」
クルトは、長刀を突き出した
その一撃は、グスルグ機の胸部
正確に言えば、コクピットハッチの隙間に突き刺さった
それを見たクルトは
「俺の……勝ちだ……」
と呟いた
そして、動きを止めたグスルグ機に取りつき、コクピットハッチを強制解放させた
そして中を見れば、グスルグが力なく座っていた
よく見れば、腹部に鉄片が深々と突き刺さっている
恐らく、先の攻撃でコクピット内の資材が刺さったのだろう
それを見たクルトは
『……グスルグ……』
と声を震わせながら、グスルグの名前を呼んだ
すると、ゆっくりとグスルグの顔が動いて
『そんな声を出すな……クルト……』
とグスルグが言った
『だが……!』
クルトとしては、捕まえたかったのだ
しかし、今の傷ではそう長くは保たないのは明白だ
『誇れ……お前は、勝ったんだ……そして……こんなことを頼むのは……筋違いかもしれない……だが、俺の最後の頼みだ……』
『なんだ……』
クルトがそう言うと、グスルグは震える手でジェネシスを指差し
『あれに……地球を撃たせるな……』
と言った
『第三射……それの照準は……モスクワだ……』
『なっ!?』
ユーラシア連合首都、モスクワ
そこに、ジェネシスの照準が定められているという
『ダハウは……二射目でユーラシア連合が降伏しなかったから……モスクワを照準に定めた……幾らユーラシア連合とは言え……首都を撃たれたら……降伏するしかない……』
確かに、その通りだろう
幾ら大国と言っても、首都を撃たれたら、どうすることも出来ない
『だが……そんなことをしたら……どれだけの人が死ぬか分からない……だから……アレを……止めて……』
そこで、グスルグは息絶えた
『グスルグ……!』
友の死に、クルトは唇を噛み締めながら涙を流した
だが、何時までも泣いていられない
頼まれたのだから
クルトはグスルグの遺体を放し、身を翻した
そして、愛機のコクピットに入ると
「グスルグ……その頼み……果たしてみせるっ!」
と言って、機体を加速させた
友の頼みを、果たすために