機動戦士ガンダム 英雄黙示録   作:京勇樹

123 / 136
ジェネシス攻防戦1

『クルト!』

 

『……グスルグは?』

 

ジェネシスに向かっていたクルト機に問い掛けてきたのは、クルトの副官をしてくれている、リエラ・マルセリスとイムカである

 

『……グスルグは、死んだ……そのグスルグの最後の頼みを、果たしに行く……』

 

二人からの問い掛けに、クルトはそう返答した

すると二人は

 

『最後の、頼み?』

 

『……まさか、あの巨大兵器?』

 

とクルトの進路上にあるジェネシスを見た

 

『ジェネシスの次の照準は……地球、モスクワだ!』

 

『つっ!?』

 

『なっ!?』

 

クルトの言葉を聞いて、リエラだけでなく、冷静なイムカですら驚きの声を上げた

もしジェネシスが地球に照射されたら、その被害は甚大

動植物は七割が死に絶えて、地球は莫大な放射能に汚染されてしまう

 

『そんなこと、させるか!』

 

クルトはそう言うと、機体を加速させた

 

『クルト!』

 

『待て!』

 

その後を、二人は追い掛けた

そして、三人がある程度ジェネシスに近づいた時

 

『それ以上は、行かせないわよ?』

 

と声が聞こえた

 

『つっ!?』

 

『オープンチャンネル!?』

 

『散開!』

 

クルトが指示すると同時に、三機は散開し、降り注いだ砲撃を回避した

そして、見つけたのはグスルグ機と同型機

ドム・トルーパー

リディア・アグーテだった

 

『クルト、先に行って!』

 

『あいつは、私達がなんとかする!』

 

リエラとイムカの言葉を聞いたクルトは、少し悩むと

 

『頼んだ!』

 

と言って、先に進んだ

それを見たりディア機は、クルト機に複合ランチャーを向けた

だが、二機の砲撃に遮られて

 

『クルトの邪魔はさせない!』

 

『私達が、相手!!』

 

と二機が立ちはだかった

 

『邪魔よ、貴女達!!』

 

リエラとイムカの二機を見て、リディアは苛立たしげにそう声を上げた

場所は変わり、ジェネシス付近

そこでは、ダルクス側の防衛隊と帝国軍を中心とした連合MS隊が激しく交戦していた

そこに、大和型三隻が近づき

 

『ローエングリン、撃てぇぇ!!』

 

三隻からほぼ同時に、陽電子破城砲が放たれた

放たれた陽電子破城砲は、グングンとジェネシスに迫り、直撃した

だが、破壊どころか損傷を負ったようにも見えない

それを見たらしく、大和艦長の小沢提督が

 

『バカな!? 確かに直撃した筈だ!?』

 

と驚きの声を上げていた

そこに、オペレーターが

 

『ジェネシスの質量を大き過ぎるのと、ジェネシスのPS装甲の出力が、予想以上に高いようです!』

 

と報告した

戦略級兵器ジェネシス

核が爆発した際に発生するガンマ線を、幾度もコヒーレントさせて撃つという兵器だ

そのコヒーレントさせるのには、特殊な鏡を必要とする

しかし、ジェネシスサイズで用意するとなると、かなりのコストが掛かってしまう

そこで、ダルクス軍の科学者達は、PS装甲を代用することにしたのだ

PS装甲の表面を可能な限りまでその特殊鏡に近くして、相転移させることに成功

それにより、ガンマ線をコヒーレントさせることに成功

そして予想外の効果で、ビームに対しても強くなったのだ

そこに、ジェネシスのサイズと出力が重なり、陽電子破城砲すら防いだのだ

こうなったら、外からの攻撃による破壊は難しいと見るべきだろう

ならば、取れる方法は一つ

 

『誰でもいい! ジェネシス内部に突入し、内部の機関を破壊しろ! そのためならば、特殊爆弾の使用も許可する!!』

 

小沢はそう判断した

特殊爆弾

それば、JEUが共同開発した戦術核に匹敵する超高性能爆薬だ

それを内部で爆発させれば、いかなジェネシスだろうと破壊出来る筈だ

しかし、問題が一つ

やはり、ダルクス側もジェネシスを破壊するには内部突入しかないと分かっているのか、膨大な数のMSと艦隊が防衛線を形成していた

その防衛線を突破しないと、突入など出来ない

 

『勇猛なる全軍! ここが正念場だ! 一気呵成に攻撃! なんとしても、防衛線を突破せよ!』

 

小沢がそう指示すると、艦隊は次々と砲火を放ち、MS隊は一気に攻勢に出た

 

『もう一度、陽電子破城砲を撃つ! 全機、射線上に入るなよ!!』

 

小沢がそう言うと、大和型は砲撃を続行しつつ陽電子破城砲のチャージに入った

それを察知したのか、ダルクス軍のMS隊が攻撃を大和型三隻に集中させ始めた

しかし、それを阻もうと連合MS隊も更に苛烈に攻勢に出た

まさに、一進一退の攻防戦

地球の運命を決める戦いは、佳境に突入した


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。