機動戦士ガンダム 英雄黙示録   作:京勇樹

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今回は短めで、ドタバタです


新人歓迎会

新人が配属された二日後

 

ワルキューレ隊隊舎の大ホール

 

「まあ、固い挨拶は抜きにして……今日は無礼講だ! かんぱーい!」

 

「「「「「かんぱーい!」」」」」

 

新人歓迎会が行われていた

 

新人含めて全員、義之の号令の後にグラスをぶつけ合った

 

机の上には、様々な料理と飲み物が所狭しと並べられている

 

「にしても……この料理、美味しいわね」

 

「だな……誰が作ったんだろ」

 

涼宮の言葉に稟は同意して、誰が作ったのか疑問に思っていると

 

「それを作ったのは、義之と音姫さん。それに委員長だぜ」

 

「月島もですー」

 

と、二人の男女の声が聞こえて、涼宮と稟は振り返った

 

「板橋准尉に月島准尉!」

 

片方は着崩した軍服に茶髪。軽薄な雰囲気の男子、板橋渉《いたばしわたる》准尉

 

もう片方は、ちょこんと立ったアホ毛が特徴の女子、月島小恋《つきしまここ》准尉だった

 

「委員長とは?」

 

「あー、悪い。沢井のこった」

 

「わたし達の時の部隊長でね。雰囲気から皆、委員長って呼んでるの」

 

稟が首を傾げていると、渉と小恋が分かり易いように教えた

 

「というかこれ、大佐達が作ったんですか!?」

 

「おうよ! 後は月島もな」

 

「えへへー、頑張りました!」

 

涼宮が驚きながら聞くと、渉が頷き、小恋は自慢気に胸を張った

 

「プロかと思いました……」

 

稟は料理の美味しさに、驚愕していた

 

(まあ、楓もプロ並なんだがな……)

 

と思っていたら

 

「ゲファっ!」

 

吐くような声とともに、倒れる音が響いた

 

「どうしたー?」

 

「賢久先輩が、スペアリブ食べて倒れましたー」

 

義之が問いかけると、小柄な体躯にツインテールの金髪にメガネを掛けた少女。広原雪子《ひろはらゆきこ》中尉が答えた

 

「スペアリブ?」

 

料理名を聞いた義之は、倒れてる灰色の長髪に大柄な男、田島賢久《たじまたかひさ》中尉の手を見て首を捻った

 

「あれ? なぁ、音姉、麻耶、小恋。俺達って、スペアリブ作ったっけ?」

 

と三人に聞くと、三人は首を振って

 

「ううん、作ってないよ。沢井さんは?」

 

「私も作ってないです。月島さんは?」

 

「わたしも作ってないよ?」

 

と、否定した

 

それを聞いた義之は、腕を組んで首を捻り

 

「だよなー……あれー?」

 

と、不思議に思っていると

 

「あ、それ作ったの、あたし」

 

と、ショートカットの青髪にヘアバンドをした少女。椿原蓮《つばきはられん》中尉が手を上げた

 

それを見た設子が、必死な形相で

 

「いかん! 全員、スペアリブは絶対に食べるな!」

 

と、声高に叫んだ

 

「え? なんでですか?」

 

「こんなに美味しそうなのに」

 

設子の声を聞いた新人達は、皿に乗っているスペアリブを見て首を捻った

 

「だから、たちが悪いのよ」

 

「その見た目で、訓練生時代に悲劇が起きたくらいなんだし……」

 

と額に手を当てて呟いたのは、長い金髪が特徴の春日崎雪乃《かすがざきゆきの》大尉と、小柄な体躯にピンク色ツインテールが特徴の新城鞠奈《しんじょうまりな》少尉だった

 

「ひ、悲劇……ですか?」

 

「ええ……あなた達も知ってると思うけど、《死のお茶会事件》よ」

 

築地の問い掛けに雪乃が答えると、新人達に衝撃が走った

 

「お、俺、知ってます! 当時の訓練生の内の八割を病院送りにしたという、あの事件ですよね!?」

 

その事件を知っていた一夏は、顔を青くしながら叫ぶように言った

 

すると、雪乃は頷き

 

「そうよ。その犯人が蓮なの」

 

と、遠い目をしながら告げた

 

その時、部屋の隅では

 

「さて、椿原中尉。白状しようか」

 

「今回は、何をしたの?」

 

義之と麻耶の前で、蓮が正座していた

 

「え、えっと…………手近なものを適当に入れました……」

 

蓮の自白を聞いた義之と麻耶の額に、青筋が浮かび上がって

 

「「適当に入れるな!!」」

 

と、蓮を怒鳴りつけた

 

「ごめんなさい!!」

 

怒られた蓮は、すぐさまに土下座を敢行した

 

その横では

 

「賢久! 賢久、しっかりしろ!」

 

駆が必死に声を掛けながら、賢久を揺すっていた

 

「ああ……大丈夫だ」

 

「よかった……」

 

うつ伏せに倒れたまま賢久がそう言うと、駆は安堵の息を漏らした

 

 

「あの川を渡ればいいんだろ?」

 

賢久は三途の川を渡ろうとしていた

 

「渡るなぁぁぁ!!」

 

駆は思わず、大声を上げた

 

「なに? 六万だぁ? ふざけんな。船賃は六文と相場は決まって……」

 

「起きろ!」

 

「賢久先輩!」

 

流石に危ないと思ったのか、美鈴が腹部を蹴り、雪子がボディプレスを賢久に放った

 

「グフッ!? はっ!? 俺は一体、なにを……」

 

「よかった……」

 

賢久が無事に起き上がると、駆は胸をなで下ろした

 

「ふむ、よかったよかった」

 

その光景を見た義之が笑顔で頷いていると、義之の腕を音姫が掴んだ

 

「なしたん、音姉?」

 

義之が問いかけても、音姫は無言だった

 

その様子に義之が不思議に思っていると、気づいた

 

音姫の顔が、赤くなっていることに

 

そのことに嫌な予感がした義之は、先ほどまで音姫が飲んでいた缶を見た

 

側面には

 

カシスオレンジの文字が明記されていた

 

「飲み物買ってきたのは、誰だぁぁー!」

 

「確か、速瀬のはずですが……」

 

義之が大声を出したことに驚きながらも、みちるは飲料を買ってきた人物を指差した

 

「水月ー!」

 

義之が大声で呼ぶと、呼ばれた水月は缶チューハイ片手に

 

「えー、今日くらいいいじゃないー」

 

「未成年も居るんだから、自重しろ! てか、音姉に酒はヤバいんだよ!」

 

「そうですよ! お姉ちゃん、匂いだけで酔うのに、飲んだらどうなるのか分からないんですよ!」

 

義之に続いて由夢が言うと、流石にヤバいと思ったらしく、水月は汗を流した

 

その時、義之は掴んでる音姫の力が強くなってきてることに気づいた

 

「フフフ……弟くーん……」

 

義之から音姫の顔は見えないが、口元は笑い、掴まれてる腕がギシギシと軋んだ

 

「待とうか音姉……俺の腕はそっちに曲がらな……っ!」

 

義之が制止しようとしたが、それも虚しく、鈍い音が響いて義之は倒れた

 

「大佐ー!? 速瀬! お前が原因なんだ! 朝倉大佐をなんとかしろ!」

 

「り、了解!」

 

みちるに命令されて、水月は慌てた様子で音姫に飛びかかった

 

が、水月の身体能力を持ってしても、音姫は捕まらなかった

 

「あ、あれ? 朝倉大佐って、こんなに早かったっけ?!」

 

水月は鍛え上げた身体能力をフルに活かして、音姫を捕まえようとしているが、音姫はなかなか捕まらず、気づけば、逆に捕まり

 

「あ、待って待って、あたしの関節はそっちに曲がらない……っ!」

 

抵抗虚しく、水月も義之の後を追った

 

「水月ー!?」

 

「速瀬先輩!?」

 

「誰でも構わん! 全力で朝倉大佐を捕まえろー!」

 

水月の惨劇に幼なじみの涼宮姉妹は叫び、一人では抑えられないと判断したみちるは必死な様子で号令を掛けた

 

みちるの号令を聞いた全員は、決死の表情で音姫に飛びかかった

 

その後十数分間乱闘は続き、新人一人を含む四人が新たに犠牲になった

 

しかも最後は、暴れていた音姫が泥酔して終わるという呆気ない幕切れだった

 

事の顛末を聞いた純一は、額に手を当てて「かったるい」と呟いたとか

 

今回のことで、全員に《音姫に絶対に酒は飲ませない》と心に誓ったとか

 

翌日、音姫は二日酔いに襲われながらも、入院した人数分の書類を裁いていたとか……

 

楽しいはずの新人歓迎会は、恐怖と新たな教訓だけを残して終わったのだった

 

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