それは、突如として起こった。
ダルクス軍が守っていた、巨大戦略兵器たるジェネシス。それが、大爆発を起こしたのだ。
瞬く間に、ダルクス軍に動揺が広がった。
それは、前線指揮をしていたダハウの部下の一人たるジグ少佐も同じだった。
『ダハウ大佐……!』
しかも彼は、ダハウの識別信号が無くなっていることにも気付いた。
それだけでなく、ダハウ直下の三幹部も自分だけになっていた。
そこに、みちる機が近寄り
『投降してほしい……無用な犠牲は、これ以上は出したくない』
と投降を勧告した。
それを聞いたジグは、持っていた複合ランチャーを降ろして
『……ダハウ様の、御遺言を履行する……』
と悔しそうに、呟いた。
その直後、ジグ機のバックパックから信号弾が打ち上げられた。
色は、青、緑、白の三色。それは、国際条約で定められている停戦信号だった。
そして、ジグは完全オープンチャンネルで
『自分は、ダルクス軍カラミティ・レーヴェンのジグ少佐! こちらは、戦闘の意思は無い! 停戦した後、会談したい!』
と告げた。
こうして、ダルクス軍との戦争は終結した。
『だけど、あのジェネシスの爆破の威力と熱量は……核爆発……』
『……まさか……神埼少尉か……?』
とまゆきとみちるが話していると、山吹色の龍閃とストラトス隊が近づき
『伊隅中佐、高坂中佐……すいません、機体を失いました』
と直哉が謝罪してきた。
『神埼少尉!』
『無事だったか!?』
『……お恥ずかしながら、死に損ないました……どうやら、自分でも気づかない内に生きたいと思っていたようです……』
まゆきとみちるの問い掛けに、直哉はそう答えた。
その言葉からは、困惑した様子が伝わってくる。
『生きなよ……』
『強化人間と言えど、お前も人間なんだ……生きる権利は十分にある……』
『……はっ……』
まゆきとみちるの言葉に、直哉が頷いた。
そこに
『いやぁ……辛勝だったわ……』
と義之の声が聞こえ、大破レベルのフリーダムが小刻みにスラスターを噴かして戻ってきていた。
『大佐!!』
『弟君!!』
義之の帰還に気付いたみちるとまゆきは、義之機をしっかりと受け止めた。
『なんとか、ダハウは討ち取った……いや、機体が機能停止寸前だわ……』
『よく、ご無事で……』
『部隊の指揮は、私達がするから、弟君は着艦して……』
義之の言葉を聞いた二人は、そう言ってから義之機をアークエンジェルのほうにゆっくりと押した。
すると、アークエンジェルから
『義之機、着艦します! 緊急着艦ネット用意!!』
と音姫の指示が聞こえた。
その間、直哉は近くに来た一夏機のコクピットに入った。
すると、続々と仲間達が帰還してくる。
今回の大規模戦となると、流石に無傷とは言えないらしく、損傷機が多数確認される。
暫くは、整備班は大忙しだろうことは間違いない。
『ああ……終わったか……』
義之は着艦ネットに機体が包まれた衝撃を感じながら、自分の役目が一先ず終結したのを直感した。
後は、さくらや純一の役目になるだろう。
そう思った義之は、機体が固定されてからコクピットを出て、近づいてくる恋人を見上げたのだった。