あの後、スイスにて会談が設けられた。
初音島、自由ユーラシア、日本、EU、NAU、ユーラシア連合、ダルクスによる会談だ。
後に、ザンクトガレン条約と呼ばれる条約により、ダルクスは独立する権利を得た。
なお当初は、ユーラシア連合は自由ユーラシアとダルクスに属国になるよう求めたものの、二国はこれを拒否。
一度会議は紛糾したが、司会を引き受けたスイスにより事なきを得た。
そして初音島は、ユーラシア連合に対して強化人間にされた二人
直哉と円夏に対する謝罪と賠償金。更には、以前の侵攻に対する賠償金を払うよう求めて、ユーラシア連合は苦渋の決断で承諾した。
直哉と円夏には、日本円にして五百億円が賠償金として支払われ、初音島には九千兆円が支払われることが決まった。
そして問題となったのは、ダルクスと自由ユーラシア連合の独立に関してだった。
日本とEUは、ユーラシア連合から復興に消費する物資の無償支援を引き出した。
ダルクスと自由ユーラシア連合は、元々はユーラシア連合の支配下だったのだから、支配下に戻るべきだ。とユーラシア連合は主張した。
しかし、勿論のこと両者はそれを拒否した。
両者は今まで、ユーラシア連合により長い間虐げられてきた。
不当に下位の者として、奴隷同然に扱われ、少しでもユーラシア連合に対する不満を漏らしたら、死ぬまで強制労働所で働かされて、死んでもただ無造作に焼かれて埋められるだけ。
おおよそ、まともに人間らしい扱いをされなかった。
それを両者は指摘し、それを更に参加国が擁護した。
結果、ダルクスに関しては独立が認められた。
しかし条件として、各国の大使館の設立と軍備の縮小が求められ、ダルクスはそれを承諾した。
そして、一番の問題となったのが、自由ユーラシアの独立。
ダルクスもだが、自由ユーラシアはクーデターにより分裂した国。
しかも、その殆どが一度は人口の爆発的増加にインフレが崩壊し、吸収・合併された中国系の人々。
その独立など、断固として認めないというのが、ユーラシア連合が最後まで突き通した意見で、結果、自由ユーラシアとユーラシア連合は物別れとなってしまい、戦争は継続する流れとなった。
だが、軍事を取り仕切っていたマクシミリアンの戦死が大きく響き、ユーラシア連合の士気は大きく低下していた。
その後、一年もの間戦争は続き、双方に疲弊の色が見え始めた頃に、自由ユーラシアが起こした電撃降下作戦により、ユーラシア連合の首都だったモスクワが陥落。
皇族は、全員死亡が確認され、戦争は終結した。
こうして、ユーラシア連合が発端となった戦争は終結し、世界は一旦の平和を取り戻した。
しかし、完全に平和になったわけではない。
一部では、民族による紛争や宗教による紛争が起きているし、海賊等もまだ居る。
そんな輩から戦う力の無い人々を助けるために、軍人が居る。
だけど、今は休憩の時だろう。
長い間戦争を駆け巡っていた軍人達は、愛しの家族の下に戻ったり、恋人と過ごしたりと寛ぎ始めた。
「はあ……平和だ……」
と呟いたのは、久しぶりに実家たる芳野家の縁側で緑茶を飲んでいる義之である。
その浴衣姿から、初見の人物は義之が軍人で英雄と呼ばれているとは、想像しないだろう。
「義之、お昼にしましょう」
「あいよー」
恋人の麻耶の言葉を聞いて、義之は縁側から立ち上がった。
近い内に、麻耶と結婚することになっており、麻耶の左手薬指には婚約指輪がされている。
あれからだが、フリーダムは無事に修理されたが、本当に緊急時以外はストライクEに搭乗することに決まった。
勿論だが、そのストライクEは義之用に改修された物になる。
一夏は、シャルロットに告白されたが、ほぼ同時期に部隊の女子全員に告白され、固まっている間にあれよあれよと、気付けば神界式に結婚することになっていた。(主に、とある悪戯兎が主犯格)
『何がどうして、こうなった……』
というのが、一夏の談だが、言わせてもらえば、お前が鈍感なのが悪いというのが、女子達全員の見解だ。
そして、直哉と円夏だが、さくらと束の研究が進み、投与された薬物の過半数の副作用を打ち消すことに成功。
円夏は、一夏の妹として織斑家に引き取られ、直哉は初音島からの駐在武官の一人として日本帝国に派遣されることになり、帝国に居る間は篁家で過ごすことに決まった。
そして篁家だが、唯依の異母兄と判明したユウヤ・ブリッジス改め、篁祐也が篁家の家督を継ぐことになった。
祐也は驚いたが、篁家を継ぐことを了承した。
今さら、国に帰っても帰る家が無い。だったら、まだ信じられる人物の居る篁家に居るというのが、祐也の談だった。
そして、そんな祐也の近くにはクリスカとイーニァが居る。
これは、監視という役割もあるらしい。
捕虜として帝国軍の監視下に入った二人だったが、二人に投与されていた薬物により体に酷い負荷が掛かっていた。
それこそ一時期は、命が危ぶまれた程に。
しかし、祐也が甲斐甲斐しく病院に行き話し合い、更に初音島から来た直哉から提供された薬により二人は快復。
祐也と共に居ることを決めた。
稟は普段は、教導隊にて指導をする地位に就き、新人をしごいている。しかしながら、タマに女子から告白されてしまうらしいが、そこはきっちりと
『すまんが、もう居るんだよな……』
と断っているらしい。
その首下には、楓や桜、シア達から貰った指輪を通したネックレスがある。
それを常に身に付けているようだ。
そうやって、各々は自分の時間を過ごしていく。
また何時か、戦場に立つことになる、その時まで……
END