機動戦士ガンダム 英雄黙示録   作:京勇樹

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JEU艦隊保護戦闘 葛藤

初音島沖合

 

そこでは、激しく銃火が瞬いていた

 

ユーラシア連合のMS部隊とJEU艦隊残存部隊、そして、初音島の部隊が撃ち合っていた

 

今もまた、一機のウィンダムがビームに貫かれて爆発した

 

そのウィンダムを撃破したアストレイタイプは、すぐさま機体を翻すとビームサーベルを左手で抜いて迫ってきていたダガーLを切り捨てた

 

その光景を見た新任少尉、織斑一夏は

 

(なんで……なんでそんなに躊躇いなく撃破出来るんだ……直哉っ!)

 

と自身が率いる部隊の隊員であり、年上の幼なじみに困惑していた

 

自分達は初の実戦であり、初めての殺し合いである

 

それは直哉も同様の筈なのに、一夏は躊躇いがあった

 

(あれに人が乗ってると思うと……っ!)

 

そう思うだけでどうしても、コクピット付近や直撃弾を当てられず、僅かに狙いをズラしてしまう

 

その証拠に一夏が放ったビームは、ダガーLの腕を吹き飛ばした程度だった

 

その時、コクピット内部に警告音が鳴り響き、一夏は条件反射でサブモニターを確認した

 

すると、主兵装のビームマシンガンのエネルギーセルが無くなっていた

 

残弾確認を怠っていたことを心中で叱責しつつ、一夏は口を開いた

 

「ストラトス1弾倉交換(マグチェンジ)! 援護願う(カバーミー)!」

 

『ストラトス5、援護了解(カバーヤ)!』

 

一夏からの援護要請に即座に反応したのは、僚機を勤めていたシャルロットだった

 

シャルロット機は下腿部から、新しく作られた連装式ショットガンを外して斉射した

 

それにより、一夏を攻撃しようとしていたウィンダムが蜂の巣にされて爆発した

 

補足すると、EU出身者組みは躊躇いなどなかった

 

祖国を落とされたという恨みや憎しみもあるだろうが、大きいの義務教育の内から軍事教練を受けていたことだろう

 

EUでは、徴兵制度を設けるにあたり、小学校、中学校で基本的な軍事教練を受けるのだ

 

そして、高校から上は選択式で軍事教練科目を選べるようになっている

 

ラウラはこの軍事教練において、優秀な成績を収めたので飛び級している

 

その差を考えるだけで、一夏は歯がゆい思いだった

 

ビームマシンガンの弾倉を交換し終わると、一夏は素早く状況を確認した

 

戦況は混戦模様となっていて、JEUの残存部隊を逃がしたいが、戦況がそれを許さなかった

 

故に、今回は義之の提案によりJEU残存部隊と連携を取ることにした

 

殿(しんがり)を勤めていたJEU残存部隊は日本帝国軍の帝都守備連隊を中心とした部隊らしく、烈空が多かった

 

一夏は確認が終わると

 

「誰か、08の援護出来ないか!?」

 

と声を張り上げた

 

理由としては、直哉機がいささか突出してしまい、孤立状態になりかけていたからだ

 

『難しいですわ! 彼の動きが速過ぎて、下手に撃ったら誤射する危険すら!』

 

セシリアの言葉を聞いて、一夏は唇を噛み締めた

 

直哉機が孤立状態に陥ったのは、直哉機の速さもあるが、一夏の指示ミスだった

 

今回は混戦になるだろうから、指示は各部隊長に任せると義之は通達していて一夏は直哉に、切り込んで敵の連携を崩してくれ。と指示していたのだ

 

それが仇となって、直哉が孤立状態になってしまった

 

一刻も早く、直哉の近くに行きたいが、敵部隊の数が多く、不用意に近づけば、あっという間に撃墜されるだろうことは容易に想像出来た

 

どうすればいいのか一夏が悩んでいると、サブモニターに通信画面が開き

 

『俺とレーヴァティン5が切り開く!』

 

という稟の声が聞こえて、一夏機の頭上を稟機が飛んでいった

 

『レーヴァティン5! 援護願う(カバーミー)!』

 

『レーヴァティン5、援護了解(カバーヤ)!』

 

稟が援護要請をすると、柏木は即座に了解した

 

二人のやり取りを聞いて、一夏は瞠目した

 

稟と柏木の二人は、敵を撃破することに躊躇いなど持っていなかった

 

だが、自分はどうだ?

 

躊躇って味方に負担を掛けている挙げ句、自分の指示ミスで直哉が孤立している

 

友人が動いているのに、自分が動かないでどうする!

 

一夏はそう思うと、操縦桿を強く握りしめて決意の光を込めた瞳で戦場を見据え

 

「ストラトス1よりストラトス隊各機に通達! これより、レーヴァティン5、6と連携してストラトス8と合流する! 前衛は俺と2、3! 中央に5と6! 後衛に4と7!」

 

と一夏が指示を出すと、サブモニターに顔が映り

 

『『『『『了解!』』』』』

 

という、全員の頼もしい斉唱

 

全員の斉唱を聞いた一夏は頷いて

 

「全員、連携は密に行え! 互いの背中を守れよ! それじゃあ、行くぞ! 全機、突撃!」

 

一夏がそう言って、ビームサーベルを右手に、ビームマシンガンを左手に構えて突撃すると、右側に箒機、左側に鈴機が並び、その真後ろにシャルロット機とラウラ機、最後方にセシリア機と簪機が並んだ

 

「オオォォォォ!」

 

一夏は雄叫びを挙げながらビームマシンガンを斉射して、それを盾で防いだダガーLの胴を通り過ぎ様に切り捨てた

 

数瞬後、背後で爆発が起きて、一夏は自分で撃破したことがわかった

 

それを自覚した瞬間、一夏を猛烈な罪悪感が襲ったが、それを歯を食いしばって耐えると

 

「これが……俺の選んだ道なんだよー!」

 

と叫んだ

 

その後、一夏達は稟と柏木機と連携しながら、一機また一機と撃破していき、長いようで短い戦闘を潜り抜けて、直哉機と合流した

 

一夏機が直哉機の隣りに止まると、直哉機から通信が開いた

 

『よぉ、ストラトス1。遅かったな』

 

「悪いな、ストラトス8。敵さんがしつこくって、手間取った」

 

そんな二人が始めたのは、戦場では不釣り合いな軽口だった

 

『そうかい。こちらは、奴さんから熱烈なワルツの誘いが多かったよ』

 

「そりゃ、お疲れさん」

 

だが、二人にとってこの軽口の応酬は互いの無事を確認するためだった

 

そして二人は、短い軽口の応酬で互いに無事を確認すると

 

「で、ストラトス8。機体は大丈夫かな?」

 

『まあ多少、間接にガタが来てるが、まだまだ大丈夫だ。そっちはどうだ?』

 

「こっちは、無駄弾を撃っちまったが、まだまだ行けるさ」

 

互いの機体の調子を確認すると、頷きあって

 

「そんじゃま、人様の土地に土足で踏み込んできた奴らに、お仕置きをしてやろうぜ」

 

『オーケイ、痛い思いをしてもらおうぜ!』

 

二人がそこまで言うと、通信画面が開き

 

『こちらレーヴァティン6! ストラトス8とは合流できたか!?』

 

と稟が怒鳴るように聞いてきた

 

「こちらストラトス1。無事にストラトス8と合流できた。支援感謝する!」

 

『なんの! 味方が困ってるなら、助けるのが仲間ってもんだろ? 気にするな!』

 

『その通りだよ、ストラトス1!』

 

一夏が感謝を述べると、稟と柏木がどうってことないと返した

 

『それでも、危険を冒して助けてくれたんだ。感謝する』

 

と直哉が言うと、二人は笑みを浮かべて

 

『ほんじゃま、これから敵を落とすぞ!』

 

『支援ならお任せ~!』

 

と、戦闘継続の意を示した

 

稟と柏木の言葉を聞いた一夏は頼もしさを感じて

 

「オーライ! 礼儀知らず共に、俺達の強さを教えてやるか! ストラトス1より、ストラトス隊各機に通達! レーヴァティン5、6の協力により、ストラトス8との合流に成功! これより、引き続きレーヴァティン5、6と連携し楔型陣形(アローヘッド)にて、敵の包囲網を食い破って離脱する!」

 

『『『『『了解!』』』』』

 

一夏の指示を聞いた全員が斉唱すると、一夏は頷いて

 

「行くぞ、全機……突撃ぃ!」

 

その一夏の号令を皮切りに、ストラトス隊とレーヴァティン5、6は突撃していった

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

ほぼ同時刻、伊隅あきら少尉は驚愕していた

 

(これが本当に、着任して1ヶ月未満の新人!?)

 

あきらは途中で軽く自己紹介しあい、新人達が着任したばかりと聞いていた

 

だが、一年先に着任したあきらに迫るか、下手したら、既に抜いている程の腕だった

 

だが、それも仕方ないだろう

 

新人達は着任してからほぼ毎日、義之達と模擬戦を繰り返してきたのだ

 

本人達にとっては、地獄のような模擬戦を何十回、何百回と繰り返した結果、今の腕になった

 

ただし、現在の新人達の戦歴は全戦全敗だが

 

一回の実戦は十回の訓練を超えるという、ワルキューレ隊の暗黙の了解を行ったまでである

 

使っているのは模擬弾やシミュレーターとはいえ、それは実戦さながらである

 

それを数時間も行い、負けた原因を洗い出して反省会を行う

 

それを何回も繰り返してきたのだ

 

腕が上がるのは当たり前である

 

だが、それを知らないあきらは

 

(一年だけとはいえ、先輩として恥ずかしい格好は出来ない!)

 

と意気込んで、気付かぬ内に自身の限界を超える速度で機体を操作し続けた

 

そして、あきらが放ったビームが一機の戦闘機を撃破した時、遠方に瞬く光が見えた

 

「大佐、あれを!」

 

あきらが近くで戦っていた義之に声を掛けると、義之はストライクを光の方向に向けた

 

『あれは……信号弾だな』

 

見えたのは右から赤白青という、発光弾だった

 

義之がそれを確認した数秒後、戦闘を行っていたユーラシア連合軍の部隊が転進していった

 

「撤退……!?」

 

あきらが驚いていると、義之は淡々とした様子で

 

『撤退してくれると言うのであれば、こちらとて手出しはしない。オーディーン1よりワルキューレ並びに帝都守備連隊に通達! 深追いはするな! 敵が領海に出るまで現状を維持し、警戒せよ!』

 

と、友軍に通達した

 

『『『『『了解!』』』』』

 

ワルキューレ隊と帝都守備連隊は返答すると、警戒態勢を維持したまま待機し続けた

 

その後、ユーラシア連合軍全部隊が領海から出たことを確認すると、義之達は帝都守備連隊を先導する形で初音島へと帰還していった

 

こうして、JEU艦隊保護戦闘は終結した

 

だがこれが後に、戦火を呼ぶことになる……

 

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