6月初頭
義之は統合軍本部の純一の執務室に呼ばれたために、向かっていた
そして、到着したのでノックすると
『入れ』
と促されたので、義之と麻耶はドアを開けて入った
そして二人は入ると、敬礼しながら
「特務部隊隊長、桜内義之大佐並びに、副官の沢井麻耶少佐、出頭しました!」
と名乗った
「うむ、よく来たな。お前ら」
二人が名乗ると、机に座っている純一が鷹揚に頷いた
二人は純一の近くに寄ると、近くに居た女性秘書官
伊隅やよいに軽く頭を下げた
彼女は義之達の部隊副隊長の伊隅みちるの姉で、純一の秘書官である
やよいは軽く微笑みながら、頷いた
そして、義之達は純一に視線を戻すと
「して、今日呼んだ理由はなんでしょうか?」
と、純一に問い掛けた
すると、純一は頷いてからやよいに視線を向けた
やよいは二人に近付くと
「これを」
と、茶色い封筒を手渡した
義之は受け取ると、封筒の封を解きながら
「拝見します」
と言って、中から書類を取り出して目を通した
すると、義之は目を細めて
「御剣財閥への教導任務……ですか?」
と、首を傾げた
「ああ。大佐、去年末に国際会議で決定された内容を覚えているか?」
純一がそう問い掛けると、義之達は頷き
「ええ。もちろん覚えてます」
今から半年ほど前、各国の代表が映像会議で決めたのは
《警備会社のMS保有の許可》である
これにはワケがあり、今から一年半ほど前に遡る
タイタン戦争が終結してから、約三カ月後から、海賊が出没するようになったのだ
当初はまだ重火器で武装して、改造したモーターボートや漁船に乗って、輸送船を襲撃するという、まだ可愛げがあるレベルだった
だがある日から、突如としてMSを使って襲撃してくる海賊が現れ始めたのだ
MSはかなり高額のために、本来だったら海賊程度が保有できるわけがないのだが、現に使用していた
これには輸送船を警護していた警備会社も太刀打ちできず、被害が拡大していった
これまで警備会社は、護衛艦や戦闘機などで海賊を撃退していたが、通常兵器では適わないのは明白である
これを各国政府も重く見て、話し合いの場を設けた
そして、警備会社にMSの保有を許可したのである
「しかし、なぜ、自分達が?」
「うむ、それなんだがな……」
義之からの問い掛けに、純一が答えようとしたら
「それに関しては、私がご説明します」
新たな女性の声が聞こえ、義之と麻耶は振り返った
部屋の入り口近くに設置してある応接ソファーには、赤を基調としたメイド服を着た女性が居た
その女性を見た義之と麻耶は、内心で驚愕していた
確かに、気が緩んでいたのは否めない
だが、応接ソファーの近くを通り過ぎたというのに、まったく気づかなかった
「あなたは?」
警戒を緩めずに義之が問い掛けると、女性は恭しく頭を下げながら
「申し遅れました。私は、御剣財閥会長秘書を勤めています、
と名乗った
その名前を聞いた義之は、気配を感じなかったのを納得した
御剣財閥の秘書官を勤める月詠一族は、忍者の末裔と杉並の情報にあったからだ
故に、こうして居るだけでも、隙がないのがわかる
御剣財閥
世界規模で手広く事業を行っている財閥で、衣類から果てはコロニーの建造まで行っており、後ろ暗い噂などは義之は聞いたことがなかった
「これは失礼しました。自分は初音島統合防衛軍特務部隊隊長の桜内義之大佐です。こちらは、副官の沢井麻耶少佐」
「よろしくお願いします」
義之は月詠に挨拶しながら、月詠と名刺交換をした
そして、義之と麻耶。そして純一の三人は月詠と対面する形でソファーに座った
すると、やよいが義之達の前にコーヒーと日本茶を置いた
そして義之は、コーヒーを一口含むと姿勢を正して
「それでは、聞かせてもらっていいですか? なぜ、そちらはMS部隊の教導を我々に?」
と問い掛けた
すると、月詠は神妙な面持ちで
「はい……我々、御剣財閥の警備部門、御剣セキュリティーサービスは、半年前の国際会議の決定を受けて、MS部隊を編成し、訓練を開始しました。ですが、警備部門にはMSに詳しい人物は居らず、シミュレーションによる訓練のみで、あまり連携なども出来ておりません」
とそこまで言うと、真剣な様子で
「そこで、教官殿と話し合い、世界で初めてMSを開発した初音島の方に教えてもらうことにしました」
と語った
「なるほど、得心しました。それで、自分なわけですね?」
頷いた義之がそう返すと、月詠は
「はい……ここ初音島で最強のMSパイロットと言えば、守護神たる桜内様ですから」
と答えた
それを聞いた義之は、数秒間黙考すると
「わかりました。その教導任務、引き受けましょう」
と快諾した
「ありがとうございます。それと、厚かましいかもしれませんが、MSも融通してもらいませんでしょうか?」
月詠は感謝しながら頭を下げると、そう言ってきた
「どういうことですか?」
麻耶が問い掛けると、月詠は恥ずかしそうに
「お恥ずかしながら、我々が保有しているMSは前大戦時に大破か中破したMSをレストアしたものでして、これからのことを考えると、心許なく、機種もバラバラなので統一化しておきたいのです」
と語った
それを聞いた義之は、視線を純一に向けて
「元帥、現在解体待ちのアストレイは何機ありますか?」
と問い掛けた
問い掛けられた純一は、視線をやよいに向けた
すると、やよいは頷いてから携帯端末を取り出して操作して
「現在、解体待ちは24機です」
と答えた
それを聞いた純一が視線を向けると、月詠は
「充分でございます。価格に関しましては、そちらの言い値で構いません」
と答えた
そこからはとんとん拍子に話しは進み、ワルキューレ隊からは四人のパイロットが出向することになった
場所は変わって、市街地
月月火水木金金と言われる軍にも、月一だが、休暇はある
そして、日曜日のこの日に稟は休みだった
その休日に稟は、二人の幼なじみの少女達と街を歩いていた
稟としては、生活必需品や本などを買いにきたのだ
だが気づけば、二人の少女達
楓と桜と共に、買い物になっていた
「なあ、いいのか? 自分達の買い物を優先していいんだぞ?」
自分の買い物に付き合ってくれている二人に対して、稟は申し訳なさからそう言った
すると二人は、微笑みながら
「いいの!」
「稟くんと一緒に居るだけで、充分に楽しいですから」
と答えた
その答えを聞いて、稟は顔を両手で覆いたかったが荷物を持ってるので変わりに、顔を横に逸らした
すると、《シルキー》というゲームセンターの前に一人の少女が居た
(あの子……まだあそこに居る)
実を言うと、稟は買い物に行く時にこの道を通った時にもその少女を見ていた
その時は、さして気にしていなかったが、二時間以上同じ場所に居るとなると話は別である
軽く周囲を見ても、親らしき人物は見当たらない
そのタイミングで、楓と桜が稟が足を止めたことに気づいて声を掛けてきてから、稟の視線を追ってその少女に気づいた
「あの子は……」
「確か、来る時もあそこに居たよね?」
楓と桜がそう言うと、稟は意を決して近づいた
「どうしたの?」
稟は圧迫感を与えないようにと配慮して、少女と目線を合わせて声を掛けた
すると、少女は一回稟に視線を向けて
「ネコ……」
と言いながら、UFOキャッチャーの筐体を指差した
「ネコ?」
稟は首を傾げながら、少女が指差したUFOキャッチャーの筐体を見た
その中には、様々な模様のネコのぬいぐるみが入れてあった
「これに興味があるのか?」
と稟が問い掛けると、少女はコクリと頷いた
それによく見れば、少女の腕の中にはボロボロのネコのぬいぐるみがあった
「ふむ……少し待ってな」
稟はそう言うと、立ち上がってから財布を取り出して、中から小銭を出してUFOキャッチャーの筐体に入れた
すると、ピローンと軽い音がしてから音楽が鳴りだした
稟はそれを軽く聞き流しながら、様々な角度から筐体の中を観察した
「これで……どうだ!」
そして、ある一カ所でクレーンを止めると、降下のボタンを押した
すると、クレーンがゆっくりと降りていきアームが開き、ぬいぐるみの山に突っ込んだ
数秒後、クレーンが上がると、二体のネコのぬいぐるみが持ち上がった
しかも、そのままクレーンは動き、アームが開いて見事にゲットした
「ラッキー。二体もゲットしたぜ」
稟はそう言いながら、取り出し口から二体のぬいぐるみを取り出して
「ほい」
と、少女に差し出した
「……いいの?」
少女はチョコンと首を傾げながら、問い掛けた
「ああ、そのために取ったんだしな」
と稟が言うと、少女はぬいぐるみを受け取って
「ありがとう」
と微笑んだ
すると、そのタイミングで
「稟くん、昔からUFOキャッチャー得意だったもんね」
「流石です」
桜と楓がそう言ってきた
すると、少女が
「……りん?」
と聞いてきた
「ん? ああ、俺の名前は土見稟だけど……」
稟は最初なんのことかわからなかったが、少女が名前を聞いてきたとわかり名乗った
すると、少女は数秒間稟を見つめてから突如として抱きついた
「はぁ!?」
稟が驚愕していると、少女が
「……りん……会いたかった」
と呟いた
それを見ていた桜と楓は
「あはは、稟君って昔から小さい子供に懐かれてたよね」
「懐かしいです」
と呑気に語った
「その小さい子供ってのは、主に昔の二人だったよね!?」
稟が突っ込み気味にそう言うが、抱きついてきた少女はと言うと
「……りん……会いたかった」
まだ言っていた
その状況に、稟は深々と溜め息を吐いた
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
数十分後、稟達は自宅近辺まで戻った
しかも、少女は稟の服の裾を掴んだままである
それを見た稟は
(服が伸びそう……)
ということを気にしていた
そして気づけば、魔王邸の門前では魔王とネリネの二人が仲良く掃除をしていた
それを見た稟は、これ幸いにと
「ネリネー、魔王のおじさーん……」
と、二人に声を掛けた
ちなみに、魔王をおじさんと呼んでいるのは以前に嘆願されたからである
『せめて、おじさんって呼んで!』
と
これは、神王も同じである
閑話休題
稟が呼ぶと、二人は視線を稟達に向けて
「稟様、こんにちは」
「やあ、稟くん。いい天気だねぇ」
と挨拶してきた
稟がそんな二人に軽く挨拶を返すと、二人は首を傾げて
「稟様、どうしました?」
「なんだか、疲れてるみたいだが?」
と問い掛けてきた
その問い掛けに、稟は苦笑いを浮かべながら
「疲れたというか、憑かれたと言うべきか……」
と言いながら、視線を動かした
二人はそんな稟の様子に首を傾げると、稟の視線を追って、目を見開いた
「リムちゃん!?」
「プリムラ!?」
二人が驚いた直後、新たな人物が転移してきて
「魔王陛下、申し訳ありません! 新人がミスして、プリムラ様を見失いました……って、ここに居た!」
シオンは頭を下げなが謝罪していると、少女ことプリムラに気づいて驚いていた
「……どういう状況だよ」
三人の様子を見て、稟は首を傾げた