長かった
義之達が初音島から出航して、四日後
ある海域に存在する小島
その島は、御剣財閥が所有している島の一つだった
この島は主に、警備関係を纏めた島だった
その島のとある道を、二人の少年が歩いていた
一人は垢抜けた顔に、短く切りそろえられた茶髪が特徴の男子
名前は
もう一人は、中性的な顔と体格で、まるで女の子に見える男子
名前は
ちなみにこの島は、かなり赤道に近いために一年中暑い
そのために、二人が着ているのは白無地のTシャツとポケットが多めの長ズボン。そして、首に汗拭き用なのだろうタオルくらいだった
「今日も暑いね……」
「そうじゃのう……」
明久の呟きに秀吉は同意すると、二人揃ってタオルで汗を拭いた
その時、明久があっ、と声を上げて
「そういえば、確か今日だったよね……MSの教官が来るの」
と、秀吉に問い掛けた
問い掛けられた秀吉は、ズボンのポケットから携帯端末を取り出して確認すると
「うむ。何の問題もなければ、確かに今日じゃのう」
と肯定した
「はぁ……どんな人が来たのかなぁ……」
秀吉の言葉を聞いて、明久が期待の声を出した
その時
「……明久、秀吉」
「「うわぁっ!?」」
二人の背後には、いつの間にか一人の男子が居た
「って、ムッツリーニか……」
「脅かすでない!」
二人の背後に居たのは、少し目つきの悪い三白眼が特徴の男子
ムッツリーニこと、
ちなみに、ムッツリーニというあだ名はむっつりスケベから来ている
「で、どうしたの、ムッツリーニ?」
「なにがあったのじゃ?」
二人が問い掛けると、康太は懐からデジタルカメラを取り出して
「……十数分前に、艦隊が到着したんだがな」
と言いながら操作すると、画面を二人に見せた
そこに写っているのは、数十人の男女
「この軍服は……初音島じゃな」
「誰が来たのかな」
秀吉の言葉を聞いて、明久は期待の籠もった声を上げた
その声を聞いて、康太は再び操作してから画面を見せた
「……これがズームした写真」
画面には、三人の教官である西村が若い男と握手していた
「この人が代表なのかな」
明久が呟くように言うと、康太は三度操作しながら
「……次、驚くぞ」
と言ってから、画面を見せた
その写真は更にズームしていて、西村と握手していた男の顔が拡大されていたが
「っ!? こっちを見てるじゃと!?」
「ムッツリーニに気づいたの!?」
二人の驚愕の声を聞いて、康太は頷き
「……思わず、逃げてきた」
と悔しそうに、呟いた
その時、三人の耳に空気を切り裂くジェット音が聞こえてきた
「この音は……戦闘機かのう?」
「だね……でも、あんまり聞いたことない音だなぁ……」
秀吉の言葉に明久が同意すると、康太がある方向を指差して
「……アレだな」
と呟いた
康太が指差した方向を見ると、そこには白、オレンジ、黒の配色にリバースデルタの主翼が特徴的な戦闘機が飛んでいた
「見たことない機体だなぁ……二人は?」
明久がそう問い掛けると、二人は首を振って
「知らないのじゃ」
「……見たことない」
と言った
その直後、その戦闘機が急降下したと思ったら急上昇した
その瞬間、三人は驚いた
「変形した!?」
「可変式MSじゃと!?」
「……初めて見た!」
三人が見ていた矢先に、その機体は戦闘機形態からMS形態に変形したのだ
そのMSはしばらくの間、三人の上空を旋回していた
すると、康太が何かに気づいてデジタルカメラを向けてシャッターを連続で切った
その数秒後、旋回していたMSはある方向へと飛んでいった
「あの方向は!?」
「MS課の方角じゃ!」
明久と秀吉の二人が驚いていると、デジタルカメラの画面を見ていた康太が目を見開いて
「……やはりか!」
と驚愕の声を上げた
「どうしたの、ムッツリーニ」
「何が写っていたのじゃ?」
二人が問い掛けると、康太は興奮した様子で
「……この機体の左主翼を見ろ!」
と言いながら、デジタルカメラの画面を見せた
「このマークは!?」
「初音島じゃと!?」
デジタルカメラの画面には、先ほどの可変式MSが写っており、その左主翼には初音島を示すマークがペイントされていた
「ということは、あの可変式MSは初音島の新型機!?」
「MS課の方へ向かってみるのじゃ!」
「……それが手っ取り早い」
そう言いあうと、三人は自分達の本拠地の方角に走り出した
数分後、MS課のあるハンガー
「ふむ。MVF-11・ムラサメ、なかなかいい機体じゃないか」
若い男、初音島切ってのエース
義之はヘルメットを脱ぎながら、そう評価した
その直後、義之の耳が引っ張られて
「義之、わたし、あんな機動の許可はしてないんだけど?」
と麻耶が苦言を呈した
「痛ててっ!? 悪かった、悪かったって! つい、興が乗っちゃったんよ!?」
と、義之が悲鳴を上げた時
「あっ! さっきの可変式MSだ!」
「む、確かにそうじゃな」
「……間違いない」
という三人の声が聞こえて、義之達は振り返った
そこには、目をキラキラと輝かせた明久を筆頭に秀吉と康太が居た
すると、義之の耳から手を放した麻耶が
「君達、ここはMS課のハンガーよ? 関係者以外は立ち入り禁止になってるわ」
と念の為に、警告した
すると、三人は姿勢を正してから敬礼して
「失礼しました。僕達はMS課所属のパイロット候補生です。僕の名前は吉井明久です」
「ワシは木下秀吉じゃ」
「……土屋康太です」
と、三人は名乗った
その数瞬後、明久が一歩前に出て
「それで、先ほどの可変式MSのパイロットはあなたですか?」
と義之に問い掛けた
すると、義之は頷き
「ああ、確かに俺だ。だが、俺の専用機は……アッチだ」
と義之は、壁際に並んで立っている機体の一機を示した
その機体を見て、明久達は目を見開いた
「ストライクじゃと!?」
「……まさか、初音島の守護神!?」
「あなたが、桜内義之大佐なんですか!?」
と驚愕しながら、義之に視線を向けた
「おう。俺が桜内義之だ」
義之が頷くと、明久はどこからか色紙を取り出して
「僕、あなたのファンなんです! サインください!」
と、義之に差し出した
それを義之は受け取ると
「えっと、吉井明久君でいいんだよね?」
サラサラと書きながら、問い掛けた
「は、はい! そうです!」
「ホイホイ……ほれ」
義之は書き終わったらしく、色紙とサインペンを明久に返した
明久は感動した様子で、色紙を見つめて
「ありがとうございます! 宝物にします!」
と頭を下げた
「そんな大層な物でもないと思うけど……まあ、いいか」
明久の言葉を聞いて、義之はそう呟いた
すると、明久が
「教官があなた達ということは、僕達の機体はアストレイですか?」
と問い掛けた
「ああ。M1アストレイだ。ついでに、シュライクも有るぞ」
明久からの問い掛けに、義之がそう答えると秀吉が
「助かったのじゃ。ワシらの使っていた機体は、ボロボロで心許なかったからのう……」
と言った
「そういえば、君達の機体は前タイタン戦争の時に大破もしくは、中破した機体の再生《レストア》機だったな?」
秀吉の言葉を聞いた義之がそう問い掛けると、康太が
「……明久はリーオー。秀吉は烈空。俺はエアリーズです」
と、呟くように答えた
「なるほど、全て操縦性は高い機体だな。流石は、御剣財閥だ」
康太の言葉を聞いて、義之が感心していると麻耶が
「あなた達用のアストレイは、隣のハンガーにあるわ。見てきたらどうかしら?」
と提案した
「はい! そうさせてもらいます!」
「感謝するのじゃ」
「……そうさせてもらいます」
麻耶の提案を聞いて、三人が踵を返そうとした時
「ああ、そうだ。土屋康太くん」
と、義之が康太を呼んだ
「……なんでしょうか?」
康太が首を傾げると、義之は微笑みながら
「君だろ。さっき、俺を撮影してたの」
と康太にとっては、衝撃的なことを告げた
「……っ! ……なぜ、気付いたので?」
康太は一瞬驚くと、義之に問い掛けた
すると義之は、クックックと笑って
「なに。君の存在感の無さが決定的かな。それに、懐に入れてあるのはカメラだろ?」
義之はそう言いながら、康太の胸元を指差した
その位置はまさしく、康太がデジタルカメラを仕舞った位置だった
義之の指摘を聞いて、康太は軽く両手を上げて
「……降参です。確かに、撮影しました」
と白状した
「うむ。素直でよろしい」
義之は鷹揚に頷きながら、康太の肩をポンポンと軽く叩いた
「まあ、一応釘を刺しとくけどね。その写真は、あまり配布とかしないように。わかった?」
義之が凄みを効かせながら言うと、康太は押し潰されそうな感覚に襲われながら
「……約束します。絶対に、配布や販売はしません」
と宣言した
「よろしい。それじゃあ、機体を見ておいで」
義之は康太の宣言を聞くと、新しい機体を見てくるように促した
すると、三人は姿勢を正して
「はい、そうさせていただくのじゃ!」
「ありがとうございます!」
「……また後ほど」
と言いながら、新しい機体を見に行った
その姿を義之たちは、微笑ましく見送った