そして、信じられる?
これ、一日で書き終わったんだぜ?
義之達が出撃して、数分後
ハンガー
「……機体はまだですか!?」
「原因がわからないのよ!」
出撃出来ないことにイラついて、明久は声を張り上げた
機体の不調の原因が分からず、虚も大声で返答した
ヘルメットの無線から聞こえる声を聞いて、明久は拳を握りしめた
無線で聞く限り、仲間達は空戦機のディンに苦戦している
アストレイは元々陸戦機であるために、飛行装備であるシュライクを装備しても最高速度ではディンに劣る
だが、旋回性能ではディンに勝る
その旋回性能の高さにより、なんとか戦えているようだ
だが、このままでは被害が出るのも時間の問題である
しかも、無線を聞く限りだが、ディンの動きがデータよりも早いらしい
ただでさえ、空戦機に慣れてないというのに、このままでは……
と明久は歯痒く思った
その時、明久の視界の端にある機体が入った
そちらに視線を向けると、そこに有ったのは戦闘機形態で駐機してあった初音島の最新鋭機
MVFー11C ムラサメだった
明久はムラサメを見ると、駆け寄って
「すいません! この機体を貸してください!」
と声を張り上げた
すると、明久の機体を点検整備しながら指示出ししていた虚は驚愕で目を見開いて
「何言ってるの! それは初音島の大事な!」
「無理はわかってます! でも、仲間達がピンチなんです!」
虚の言葉に被せるように言うと、明久は両手両膝を突いて
「お願いします!」
と土下座までした
「気持ちは分かるけど……」
と虚がためらっていると、空気が抜けるような音がして
「虚技術大尉、私が許可します」
という声が聞こえた
虚が声のした方向に顔を向けると、サブマシンガンを肩から下げた麻耶が居た
「沢井少佐! いいんですか?」
虚が問い掛けると、麻耶は頷いて
「今は非常事態ですし、動かせる機体があるのに動かさないで被害が出て後悔するより、動かして後悔する方がマシです。それに……義之なら、恐らくは許可するでしょう」
と麻耶は言うと、両手両膝を突いていた明久の肩に手を置いて
「吉井訓練生、君の気概を見せてもらいました。私の独断ですが、我が初音島の最新鋭機。ムラサメを貸します。ですが、条件が有ります」
麻耶がそこまで言うと、明久は真剣な表情で麻耶を見つめながら
「機体は必ず、無事に返します!」
と言った
すると、麻耶は首を振って
「それもだけど……必ず、あなたも無事に帰ってきなさい」
と言った
すると、明久は一瞬驚くがすぐに笑みを浮かべて
「わかりました!」
と頷いた
麻耶はそれを確認すると、ムラサメに歩み寄りコクピット付近のカバーを開けてキーをタッチした
すると、麻耶は振り向いて
「今、この機体に掛けてあった制限を解除しました。これで、吉井訓練生でも操縦出来るわ」
と言った
そして、視線を虚に向けて
「虚技術大尉、ムラサメのOS設定を吉井訓練生に合わせてあげてください」
と言った
虚は頷くと
「わかりました! 五分で終わらせます!」
と宣言するが、明久は首を振って
「そんなに待てませんよ!」
と言うと、梯子を登って飛び乗って
「吉井明久、ムラサメ! 出ます!」
と宣言した
「総員、退避!」
麻耶が命じると、明久の機体を点検整備していた整備士達は物陰に隠れた
その直後、ムラサメは高速でハンガーから出撃した
麻耶は髪を抑えながら、心配そうな表情を浮かべて
「吉井訓練生……無事に帰ってきなさいね」
と見送った
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ムラサメ……流石は初音島の最新鋭機! 凄い加速!」
明久はムラサメを操縦しながら、ムラサメの性能の高さに驚いていた
何よりも……
「この機体……凄い過敏だ!」
明久は機体の操縦に気を使いながら、OS設定をサブモニターで確認した
「バランサーの設定が……マイナス5!? なにそれ!?」
明久は機体の設定に驚いていた
しかし、それも仕方ないだろう
機体のバランサー設定は0を基本に、最大でプラス5からマイナス5まで設定が可能である
そして、マイナス5というのは、普通に立つのも精一杯の設定である
明久はそんな設定の機体を普通に操縦している義之を、改めて尊敬した
「流石は……初音島の英雄!」
明久は感嘆しながら、戦域へと急行した
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『このぉ!』
『墜ちろ!』
シャルロットと一夏は掛け声と共にビームマシンガンを放ち、一機ずつ撃破した
『こいつら……データより動きが速い!』
まゆきは焦りを含んだ声音で喋りながら、ビームライフルとミサイルを放ち一機撃破した
義之は無言でビームライフルを二連射して、ディン・レイヴンを一機撃破した
すると
「なるほど……こいつら……」
と呟いた
『大佐? 何か分かったんですか?』
一夏が問い掛けると、義之は機体のサブモニターを見ながら
「ああ……あいつらの動きから計算した結果……パイロットに対して、14Gの負担が掛かってることが分かった」
と言った
すると、一夏は驚愕から目を見開いて
『14Gって、直哉の機体と同じ位じゃないですか!』
『そんなの、普通のパイロットに耐えられるわけが!?』
一夏に続いて、シャルロットも驚愕の声を上げた
すると、義之は反対側のサブモニターを見て
「熱源探知を掛けてみろ……理由が分かる」
と言った
数秒後
『……え? コクピット内に人の熱源反応が無い?』
『無人機だとでも言うの!?』
シャルロットに続くように、まゆきも驚愕していた
すると、義之が
「恐らくだが……違法改造したμだ」
と言った
μは初音島の天枷研究所が開発、販売しているメイドロボットである
初音島が公式に売っている別売りのキットやソフトを使えば、介護等も手伝う汎用性の高いロボットである
しかし、時々ではあるが違法改造してテロに使われることも確認されている
そのことにより、時折天枷研究所に抗議の電話が掛かってくるのだが、天枷研究所はもちろん関与を否定している
そして、一番怒っているのは麻耶である
麻耶は故沢井琢磨博士の娘であり、μの基本設計は故沢井琢磨博士が関わっているのだ
ゆえに、麻耶にとってμは亡くなった父親の作品であり姉妹も同然である
そんなμが違法改造されて、テロに使われるというのは耐え難い侮辱なのだ
「まったく……ふざけた奴だよ!」
義之はそう言うと、ビームライフルを二連射して、また一機撃破した
その時だった
『ブラボー1! 雄二、後ろじゃ!』
という、木下秀吉訓練生の叫び声が聞こえた
義之がサブモニターに視線を向けると、雄二機を二機のディン・ラファールが狙っていた
雄二機の盾は左腕ごと無くなっており、雄二は必死に避けようとしていた
だが、一機は重機関銃で狙っていて、もう一機は対空散弾銃で狙っていた
「っ!」
義之も援護しようとビームライフルを向けるが、直感で間に合わないと分かってしまった
その時、彼方から一筋の閃光が走り一機のディン・ラファールの腕を撃ち抜いた
それに驚きながらも、義之はビームが来た方向に頭部を向けた
そこに見えたのは、戦闘機形態のムラサメだった
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「よし! みんなは無事だ!」
機体を全速力で飛ばした明久は、モニターとレーダーの表示を見て安堵した
だが、次の瞬間
「雄二が!?」
二機のディン・ラファールが雄二機を狙っているのに気付いた
回りの仲間は他のディン・ラファールやディンの対処で手が回らず、誰も援護が出来ないようだ
自分もまだロックオン出来ておらず、間に合わないのか? と思った
だが
「諦めて……たまるかぁ!!」
と明久は雄叫びを上げた
その瞬間、明久の頭の中で何かが弾けた
すると、明久の目からハイライトが無くなり、明久の思考は未だかつて無い程にクリアーになった
明久はロックオンに頼らず、目視で狙いを定めて尾翼に内蔵されているビームキャノンの放った
明久の放ったビームは狙い違わず、ディン・ラファールの腕を吹き飛ばした
すると、そのディン・ラファールは後退してもう一機のディン・ラファールは明久の方に機体を向けた
その隙を狙い、明久は通信を開いて
「雄二! 今の内に体勢を立て直して!」
と声を張り上げた
『お前! その機体は!?』
「僕がこいつらを引きつけるから、早く!」
雄二が驚愕の声を上げるが、明久は遮るように言うと先ほどの二機を含めて五機のディン・ラファールとディンの混成部隊へと機体を突撃させた
もちろん、ディンタイプも待っているだけではない
ディンタイプは両手の火器を放ち、明久に対して濃密な弾幕を形成した
だが明久は、機体を降下させて回避し、機体下部のミサイルベイを開くと
「全弾……発射!」
機体を回しながら、ミサイルだけでなく機関砲も発射した
四発のミサイルは一番手前と近くのディンへと、空を走った
近くに居たディンは回避が間に合わず、ミサイルの直撃を受けて爆散した
もう一機は一発は重突撃機銃で迎撃したが、もう一発が間に合わず左腕を犠牲にして防いだ
次の瞬間、そのディンはコクピットを撃ち抜かれて爆散した
残り三機のディンタイプは機関砲を避けたが、爆煙でムラサメを見失っていた
周囲に目を向けていたら、爆煙の向こうから一発のビームが走り、ディンのコクピットを撃ち抜いた
そのことに固まっていると、MS形態に変形したムラサメが右手にビームサーベルを抜いて爆煙を突き抜けてきた
残っていたディン・ラファールは突撃機銃と対空散弾銃を向けるが、瞬く間に一機が切り裂かれ、もう一機は左腕の盾でコクピットを潰されて機能を停止させた
「はあっ、はあっ、はあっ!」
コクピット内で明久が息を荒げていると、警告音が鳴り響いた
「っ!」
警告音が指し示した方に視線を向けると、一機のディン・ラファールが明久に対してミサイルを放とうとしていた
明久はビームライフルを構えようとしたが、次の瞬間
『おらぁ!』
隻腕の雄二機が、ビームサーベルでそのディン・ラファールを切り捨てた
「雄二!」
『ったく、ようやく来やがって。遅いんだよ!』
雄二の威勢の良い声を聞いて、明久は笑みを浮かべながら
「ごめんね、機体がダメだったから、この機体を貸してもらったんだ!」
と言った
すると、通信画面が開いて
『吉井訓練生。間に合ったようだな』
と義之の顔が映った
「教官長! 申し訳ありません。初音島の最新鋭機を借りてしまいました」
と明久が謝ると、義之は笑みを浮かべながら
『構わない。その様子じゃあ、麻耶が許可したんだろ?』
と言った
そして、明久が頷くと
『それならば、俺からは何も言わないさ。さて、残りを片付けるぞ! 付いて来れるか!?』
「はい!」
義之の言葉に明久が返答すると、義之は頷いてから
『アサルト1より全機に通達! アサルト隊とブラボー2で敵機の頭を抑える! 他のブラボー隊は敵機を撃破しろ。いいな!?』
と命令を下した
命令を聞いて、雄二達は斉唱で返した
『全機、続けぇ!』
義之が突撃すると、アサルト隊や明久もディンタイプに突撃した
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「吉井訓練生のさっきの動き……あれは間違い無く、SEEDか……」
と義之は、目前のディンを撃破しながら呟いた
SEEDと言うのは、人なら誰でも持ちうる進化の可能性である
正式名称は長いので覚えてないが、義之もSEEDを覚醒したことがあった
そのSEED覚醒が有ったからこそ、義之は初音島の守護神と呼ばれるようになったのだ
「っと、今は目の前の敵に集中するか……」
義之はそう呟くと、戦闘に集中した
ふふふ……
右膝の靭帯か半月板を損傷……
しばらくは、強制的に休暇ですよ……
手術だったら、どうしよう