アトラクションから出ると、一夏はマップを広げて
「次はどこにすっかな」
と首を傾げた
すると、シャルロットが一夏の服の裾を引いて
「時間も時間だし、ご飯にしない?」
と自分の腕時計を指差した
腕時計は正午少し前を示していた
「そうだな。昼飯にすっか」
一夏はそう言うと、視線を巡らせた
すると、すぐ近くにフードコートがあった
「そんじゃあ、俺が買ってくるから。何がいい?」
「それじゃあ、ピラフをお願い」
シャルロットの注文を聞くと、一夏はカウンターへと向かった
一夏がカウンターへと向かったのを見て、シャルロットは空いている席を探した
ほとんどの席が家族連れによって満席状態だったが、端のほうに一つだけ空いている席を見つけた
「良かった、空いてる」
シャルロットは安堵した様子で席を確保すると、空を見上げた
綺麗な青空を、鳥が飛んでいった
「考えてみたら、僕も遠い所に来たなぁ……」
シャルロットはそう呟くと、タイタン戦争前まで記憶を遡った
シャルロットは産まれてからタイタン戦争までは、母親とフランスでも片田舎で過ごしていた
裕福ではなかったが、母親と二人で静かに、幸せに暮らしていた
学校ではそれなりに友達も居たし、元気に遊んでも居た
それが崩れ去ったのは、タイタン戦争で母親が戦火で死んだ時だった
タイタン戦争終結後、シャルロットはどうしていいか分からず、途方に暮れていた
そんな時、父親の部下を名乗る男が現れて、シャルロットをデュノア社に出迎えた
そして、初めて出会った父親は涙を流しながら、シャルロットを抱きしめた
なんでも、父親がシャルロットが産まれていたのを知ったのは、戦後だったらしい
それまで父親は、方々手を尽くして母親を探したらしい
だが、母親は中々見つからず、軍需企業としてのツテで手に入った生存者名簿の中に、母親の旧姓と同じ名前を持つシャルロットの名前を見つけ出したのだ
父親は結婚した女性に気付かれないように、部下を動かしてシャルロットに迎えを寄越したらしい
その後は父親のおかげで、数ヶ月は平穏に過ごせた
だが、そんなある日
突如として、父親と結婚した女性
つまりは、正妻が自身の子飼いの部下を引き連れて、シャルロットの住んでいた家に押し入ってきたのだ
正妻子飼いの部下達により、父親の部下達は殺されてしまい、シャルロットも殺されそうになった
だが、それを父親がギリギリで止めた
その後シャルロットはまるで、奴隷のような扱いを受け、父親は全ての権限と部下を奪われて閑職へと追いやられた
そんなある日、正妻はシャルロットにパイロットとしての適性が非常に高いことに気づき、シャルロットをテストパイロットとして使うことを決めた
だがEU軍が求めていたのは、ビーム兵器を運用可能な新型機であり、デュノア社はビーム兵器の開発に失敗していた
中々成果を出さない開発陣に業を煮やし、母親はシャルロットを産業スパイとして使うことを決めた
産業スパイは見つかれば、ほとんどの場合で死刑になる
もし見つかっても、知らぬ存ぜぬを決め込めばいい
正妻はそう判断して、シャルロットを敢えて男装させて初音島に送り込んだ
だが誤算だったのは、シャルロットを男装させたスタッフのなかに、父親派の人間が居たことだった
しかもシャルロットが初音島で保護されて、父親派の人間が父親を軟禁されていた屋敷から解放
更に、シャルロットを産業スパイとして初音島に送ったことをマスコミや政府に流したのである
それにより、正妻は失脚
父親が社長の椅子に座ったのだ
だが、その矢先にユーラシア連合がEUと日本帝国に宣戦布告
父親はユーラシア連合の攻撃により、帰らぬ人となってしまった
「考えてみたら、僕にはもう……両親が居ないや……」
改めてそう思うと、シャルロットの目から涙が流れた
そのタイミングで、一夏が両手にトレイを持って現れた
「シャルロット、頼まれたピラフ買って……どうした!?」
一夏はシャルロットが泣いてるのに気づき、トレイを置いてシャルロットの肩を掴んだ
「え? なにが?」
シャルロットは泣いていることに気づいておらず、首を傾げた
「シャルロット、泣いてるぞ?」
「え? ……あれ、おかしいな……なんで?」
一夏に言われて初めて自覚したのか、シャルロットは目元を拭った
だがそれでも、涙は止まらなかった
「ごめんね、すぐに泣き止むから……」
シャルロットはそう言って、なんとか涙を止めようとしたが、中々止まらなかった
それを見て、一夏は少し考えると
「ん」
とシャルロットの頭を優しく抱きしめた
「い、一夏……?」
シャルロットが首を傾げていると、一夏はシャルロットの頭を優しく撫でながら
「泣きたい時は泣いていいんだ……そうじゃないと、壊れてしまうからな」
と言った
「ありがとう……っ、うあぁぁぁ……っ!」
一夏の言葉を聞いて、シャルロットは一夏の胸の中で泣いた
その涙は、シャルロットが初めて人前で流れた涙だった
一夏はシャルロットが泣き止むまで、シャルロットの頭を撫で続けたのだった