昼食後、二人は新しい目的地に向かって歩いていた
「次は観覧車だっけか?」
「うん!」
二人が向かっていたのは、世界中で一番高いと噂の観覧車である
一番高い場所まで到達したら、初音島全体を見渡すことが出来るのだ
「凄い並んでる……」
「まあ、俺達には関係ないがな」
シャルロットは並んでる人数を見て呆然とするが、一夏はそれを尻目に係員に近づいた
「パスを拝見します」
係員に促されて、二人はパスを見せて入った
「どんな高さまで行くのかな?」
「案内板によると、高さ八百メートルまで行くらしいぞ」
シャルロットが疑問に首を傾げていると、一夏が入り口で見た看板の内容を見ていたので答えた
そう話している内に、観覧車は少しずつ上に登っていった
太陽は季節故かだいぶ沈んでおり、空は茜色に染まっていた
そして、茜色の太陽光が一夏の顔を横から照らしており、シャルロットからは見たら
(一夏、カッコイいなぁ……)
という風に見えていた
シャルロットがポーッと見惚れていると、一夏が外を指差して
「シャルロット、初音島全体が見えるぞ!」
と言った
「え、ほ、本当!?」
一夏の言葉でハッとしたシャルロットは、慌てて外に視線を向けた
その光景は確かに、初音島全体が見えていた
一年中桜が咲き乱れる、不思議な島
だけど、人と人の繋がりが強く、温もりが暖かい島
シャルロットは生活し始めて僅か一年足らずだが、心の底からこの初音島が好きになっていた
自分を受け入れてくれたことや、何よりも一夏に会えたからである
だから
「絶対に……守ろうね……この島を」
と呟いた
シャルロットの呟きを聞いて、一夏はキョトンとしてから
「ああ……」
と呟いた
数分後、二人が乗ったゴンドラは一番下まで降りたから、二人はゴンドラから降りた
そして、幾つかの遊具を回ってからホテルへと戻った
「お二人の部屋は最上階の1030号室です」
係員からカードキーを受け取ると、二人はエレベーターに乗った
そして、最上階のボタンを押すと、エレベーターは静かに登り始めた
だが、最上階の一階手前で止まった
二人は一瞬首を傾げるが、すぐに気付いた
ボタンの下に、カードリーダーがあった
一夏が自分が持っていたカードを通すと、エレベーターはまた動き始めた
そしてすぐに止まると、エレベーターのドアが開いた
二人が降りると、ドアはすぐに閉まった
二人が視線を左右に向けると、今まで見たことないほどに豪華な装飾の廊下が見えた
赤く柔らかい絨毯、シックで落ち着いた雰囲気の家具
額縁に納められた見事な絵画
それを見ただけで、二人は思わず
((場違いだなぁ……))
と思った
「と、とりあえず、部屋に向かうぞ!」
「う、うん!」
気を取り直して、一夏とシャルロットは廊下の壁に掛けられているプレートを見て、自分達の部屋へと向かった
そして、部屋に到着すると、今度はシャルロットが持っていたカードキーでドアを開けた
そして、中に入って二人は固まった
まず、二人だけで泊まるには過剰な広さの部屋
落ち着いた雰囲気ではあるが、明らかに高そうなインテリア
白く柔らかい絨毯
何よりも、キングサイズのベッドが一つに2つの枕
ベッドはそれだけだった
その光景に二人が固まっていると、チャイムが鳴った
「は、はい!」
チャイムで驚きながらも、一夏は返事した
すると、ドアを挟んで
『織斑様、デュノア様、御夕食の準備が整いました』
という声が聞こえた
「は、はい! わかりました!」
一夏がそう返事をすると、ドア向こうの気配は消えた
「何者なんだ……このホテルのボーイは……」
一夏はそう呟くと、隣でポーッとしていたシャルロットに視線を向けて
「シャル、夕食だとよ」
と声を掛けると、シャルロットはハッとして
「う、うん! わかった!」
と言うと、クルリとドアへと向かったが、すぐに止まると振り向いて
「レストランだよね?」
と一夏に問い掛けた
「ああ……確か、一階下だな」
一夏は頷くと、シャルロットと一緒に部屋を出た
そして、エレベーターで一階下に降りると、すぐに目的のレストランが見えた
だが、中に居るのは明らかにスーツやドレスで着飾った人達だった
その光景を見て、二人は
「「凄い場違い……」」
と呟いた
「というか、俺。スーツなんて持ってきてないぞ?」
「僕だって、ドレス持ってきてないよ……」
二人がそう話し合っていると、ボーイが近寄ってきて
「こちらでご用意してあります」
と言いながら、頭を下げた
「え、あるんですか?」
「はい……ドレスやスーツをお持ちでないお客様のために、当方で用意してあります」
シャルロットからの問い掛けに、ボーイは恭しく頭を下げながら答えた
ボーイの説明を聞いて、二人は顔を見合わせると
「「お願いします」」
と頭を下げた
そして数分後、二人はボーイに案内されてとある一室に通された
そこにあるのは、二つの大きなボックスだった
「こちらの端末に、身長とスリーサイズを入力してください」
ボーイに促されて、二人は端末にそれぞれ入力した
「それでは、デュノア様はこちらへ。織斑様はこちらへどうぞ」
ボーイの説明に従い、シャルロットは右側のボックスに、一夏は左側のボックスに入った
そして、十数分後
「うぉー……着慣れないから、凄い違和感……」
一夏は白いスーツを着て現れた
その十数秒後、ゆっくりとシャルロットが現れた
現れたシャルロットが着ていたのは、オレンジ色を基調としながらも華やかすぎずシャルロットの魅力を引き立てるドレスだった
「ど、どうかな……?」
シャルロットが問い掛けると、それまで固まっていた一夏はハッと気を取り直して
「に、似合ってるぞ!?」
と言うのが、精一杯であった
「ありがとう一夏!」
誉められたシャルロットは、輝くような笑みを浮かべた
そして、数秒後
「それでは、席にご案内します」
とボーイは案内を始めた
「こちらでございます」
二人が通されたのは、窓際の席だった
「凄い景色……」
「ああ……」
二人は窓から見える景色を見て、呆然と呟いた
すると、カートを押しながらボーイが現れて
「お飲み物と前菜です」
と言いながら、二人の前にグラスと料理の皿を置いた
「それでは、ごゆっくり」
ボーイは恭しく頭を下げると、静かにカートを押していった
「とりあえず、食べようか」
「だな」
シャルロットの言葉に、一夏は頷いた
数十分後
「美味しかったね……」
「ああ……」
二人はレストランから出て、部屋へと戻っていた
なお、着ているのはドレスとスーツのままである
これは、料理を食べ終わった二人は最初は返却しようとしたのだが、宿泊期間は貸し出すことになっているらしい
しかも、二人の服は既に部屋に届けられているとか
それを聞いた二人は、仕方なくそのままの服装で部屋へと戻った
そして、一つの事実を思い出した
((そうだった……ベッド、一つしかなかった!!))
この部屋には、ベッドが一つしかないという事実
とりあえず二人は、キャリーバックの中から寝間着を取り出して入浴を済ませて着替えた
だが、目の前のベッドが異様な存在感を醸し出している
二人はしばらく沈黙していたが、一夏が先に
「シャル。シャルがベッドで寝ろよ……俺はソファーで寝るから」
と言って、身を翻そうとした
だが、その一夏の手をシャルロットが握って
「ダメだよ! ソファーで寝たら、一夏が風邪引いちゃうよ!」
と引き止めた
「だけどよ……」
シャルロットの言葉を聞いて、一夏は躊躇いの言葉を口にした
すると、シャルロットは顔を赤くしながら
「だからさ……一緒に寝よ?」
と告げた
予想外だったのか、ビシリと一夏は固まった
「……一夏?」
シャルロットが上目遣いで名前を呼ぶと、一夏はようやく我に帰り
「い、いいのか……?」
と問い掛けた
すると、ゆっくりとではあるが頷いて
「一夏なら……いいよ?」
と告げた
シャルロットの言葉を聞いて、一夏は決意したのか、ベッドの方に体を向けて
「わかった……一緒に寝よう」
と言った
一夏の言葉を聞いて、シャルロットは笑みを浮かべて
「うん!」
と頷いた
そして数分後、二人は背中合わせではあるが、ベッドに入っていた
「お、おやすみ……一夏」
「お、おう……おやすみ」
二人は緊張感からか、顔を赤くしながら眠りに就いたのだった
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