「はあ……はあ……はあ」
満点の星空と満月の月夜の下、広大なグラウンドのトラックを走ってる1人の影
すると目標を走り終わったのか、影はゆっくりとペースダウンしだして、止まった
少年は両手を膝に当てながら、肩で息をしていた
そして、息が整ったのか、星空を見上げた
彼の名前は土見稟である
ここ、初音島統合防衛軍の訓練生である
彼は日課のランニングを終えて休息するために、芝生に座った。すると
「む? そこに居るのは、土見か?」
と、凛とした雰囲気の少女の声
「ん? ああ、御剣か。遅かったな、どうした?」
稟は振り返って、背後に居た膝辺りまで伸ばした紺色の髪の毛をポニーテールにした美少女。
稟は、普段は彼女も自分と同じ時間にランニングしてるのを思い出して、遅く来たのを疑問に思って質問した
「……………武にすっぽかされた……」
質問された冥夜は、不満そうに呟いた
「あはは…それは、ご愁傷様」
稟は悪いと思ったが、笑ってしまった
武とは、本名を
稟は206訓練部隊だ
これは補足だが、冥夜と武は付き合っている。所謂恋人だ
稟はよっこらっしょと、立った
すると
「む? そこに居るのは、冥夜に稟か?」
と、冥夜と同じような凛とした声が聞こえた
稟と冥夜が声のした方向を見るとそこに居たのは、黒髪をリボンでポニーテールにした長身の美少女だった
「ああ、篠ノ乃か」
「おっす、箒」
その少女の名前は、
稟と冥夜と同じ訓練生で、210訓練部隊に所属している
「稟は上がりか?」
「ああ、御剣はまだだから、一緒に走ったらどうだ?」
稟はそう告げると、星空を見上げた
「どうした?」
冥夜は、稟が真剣な表情で星空を見上げたのを不思議に思った
「ん? もうすぐ、総合戦技演習だと思ってな」
「ああ、なるほど」
「それが終われば、私達は正規兵だな」
稟の言葉に、冥夜と箒は腕を組みながらうなずいた
「そういえば、一夏はどうした?」
と稟は、箒に聞いた
一夏とは、本名を
「一夏だったら、もうすぐ来るはずだが……」
と言った、その瞬間だった
「おわあぁぁーーー!?」
と、悲鳴が聞こえた
「ん?」
「今の悲鳴は一夏だな?」
3人は悲鳴の聞こえた方向を見た
そこには、足首に紐が絡まって、逆さづりになった一夏が居た
「ふはははは! その程度では、私の嫁にはなれんぞ! 一夏!」
気付けば、そんな一夏の近くに腰辺りまで延ばした銀髪が特徴の小柄な少女がいた
「ラウラ! お前が犯人か! てか、嫁じゃなくって婿だ! つか、下ろせ!!」
どうやら、同訓練部隊所属のラウラ・ボーデヴィッヒの仕掛けた罠に引っかかったようだ
まあ、それも仕方ないことだろう
彼女、ラウラ・ボーデヴィッヒは元ドイツ軍の特殊部隊の隊長だったのだ
「あいつが来て、もう3ヶ月か。随分やわらかくなったな」
「ああ、最初はギスギスしてたがな。今では、信用できる仲間だ」
「ユーラシア連合が、JEUを武力制圧したんだったな」
JEUとは、日本帝国とEUの同盟のことである
事は今から3ヶ月前の、新太陽暦73年3月
ユーラシア連合が突如JEUに対して宣戦布告
圧倒的な武力を持って、JEUを武力制圧した
ラウラは、その数少ない生き残りの兵士だった
「ユーラシアは戦火を広げるばかりだな……」
と、稟が唸ってると
「ちょっと! なんか一夏の悲鳴が聞こえたんだけどって、一夏!?」
気付くと、逆さづりの一夏の近くに金髪にエメラルド色の瞳が特徴の美少年に見える中性的な美少女、シャルロット・デュノア
それに、白髪に左目の眼帯に赤い右目の長身の男子、
「なんだ、楽しそうだな。一夏」
「楽しくねーよ! 頼むから助けてくれ!!」
「わ、わかった! ラウラ! 一夏を下ろしてあげて!!」
どんどん、騒がしくなってきている
それを見た稟と冥夜、そして箒の3人は顔を見合わせて笑うと
「さてと、助けにいきますか?」
「ああ」
「そうだな」
と、駆け出した
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「はあ……はあ……はあ……」
狭いコクピットの中、パイロットスーツを着て、ヘルメットを被った少年が荒く息を吐いていた
「くっそ……数が多すぎる……」
今、少年の乗っている機体の前には。6つ眼の醜い巨人<タイタン>の死骸が折り重なるように倒れていた
そして、一息吐いた。その時だった
コクピット内に、甲高い警告音が鳴り響いた
「な、なに!?」
少年は慌てて、周囲を見回した
すると、目の前にタイタンの死骸の山が盛り上がって、片腕のタイタンが現れた
「しまった! 仕留め損なってた!!」
タイタンはそのまま、手に持っていた大剣を少年の乗る機体に向けて振り下ろした
「くっ! このーー!」
少年は機体の右腕に保持されていた、ビームサーベルを振るったが
気付けば、タイタンは大剣を振り下ろした姿で固まっていた
すると、コクピット内の電気が消えて赤い照明のみが光って、メインモニターには
<搭乗機のコクピットブロック大破 戦闘不能により、状況終了>
という文字が点滅していた
「あーもう! また負けた!」
少年は頭を抱えながら叫んで、コクピットを出た
少年はコクピットから出ると、ヘルメットを脱いだ
現れたのは、短く切りそろえた茶髪に垢抜けた顔だった
「うーん。あそこは攻撃じゃなくって、回避のほうがよかったかな~?」
と少年は、画面を見ながら悩んでいた
すると、空気の抜ける音がしながら扉が開いて2つの人影が見えた
「む、こんな所に
呼ばれた少年、
「あれ? 優子さんに秀吉じゃん。どうしたの?」
そこに居たのは、瓜二つの姉弟だった
名前は
二卵性双生児なのだが、何故か一卵性双生児並みに瓜二つなのである
「あれ? じゃないわよ、明久くん! 西村教官が探してたわよ!」
「鉄人が? なんで?」
一応補足すると、姉の優子は明久の彼女でもある
「明久よ。おぬしだけ未だに、今日のレポートを提出しておらぬじゃろ?」
と翁言葉で喋っているのが秀吉である
「やっべ! 忘れてた! 今何時!?」
明久は顔を青ざめながら、聞いた
「もうすぐで、7時半よ」
「急がないとご飯も食べられないじゃん!」
と、慌てた
レポートよりも先にご飯が出てきたあたりは、育ち盛りだからだろうか
「ほれ、急ぐのじゃ!」
「レポート書くの、手伝ってあげるから!」
「ああ! 待って! 今シミュレーターの電源を切るから!」
急かされた明久は慌てながら、シミュレーターの電源を切ってシミュレータールームを出た
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「うーん……」
走りながら、明久は首を傾げていた(パイロットスーツは既に着替えた)
「どうしたのじゃ、明久?」
明久の唸り声が聞こえたのか、秀吉が問いかけてきた
「ああ、なにね。ちゃんとMS用の教官が居てほしいなー、って考えてたんだ」
「ああ、なるほどね」
「そうじゃのう。流石に鉄人も、MSはそんなに得意ではないようじゃしのう」
鉄人とは、先ほど優子が言っていた西村教官のあだ名である
理由は別記とする
「自分たちだけでの独学じゃあ、限界は知れてるしね」
「そうじゃのう………」
と、明久と秀吉が話しながら走っていると
「ほらほら! それより急ぎましょう! レポートを書かないと、また罰則させられるわよ!」
「うぁ! それは、勘弁!」
優子の言葉を聞いた明久は、走る速度を上げた
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
約2時間後
「すいません! 遅れました!」
と明久は、頭を下げながら紙束を目の前のガタイの良い男性に手渡した
「………ふむ。確かに、受け取った」
男性は、浅黒い肌に、盛り上がった筋肉が特徴の男性だった。名前を
なぜ、鉄人と呼ばれるのか
理由は、彼の趣味にある
彼の趣味は、筋トレにトライアスロン、それとレスリングなのである
そのために、彼の受け持っている一部の生徒達からは、鉄人と呼ばれている
「まぁ、練習熱心なのは買うがな。吉井よ」
「は、はい……」
「シミュレーターを使うのは構わんが、誰かに一言告げてからにするように」
「すいませんでした……」
どうやら、明久は誰にも告げずに、シミュレーター訓練をしていたようだ
「あのー、鉄……西村教官」
「なんだ? それと、今、鉄人と言いかけなかったか?」
「気のせいです。それよりも西村教官。提案があるんですが……」
「なんだ? お前から提案とは、珍しいな」
「えっと、実はMS用の教官を呼んだほうが良いと思うんです」
「ほう………なぜだ?」
明久の言葉を聞いた西村は、目を細めて問いかけた
「はい。理由ですが、自分達のMS操縦技術は全てシミュレーターでの独学に過ぎず、連携も取れてません。ですので、これ以上の技術の向上が見込めないんです」
「……お前にしては、的を射てるな」
「恐縮です……それで、どうしましょうか?」
「安心しろ。先ほど、既に、本社の
そう言いながら、西村は机の上から写真を1枚、明久に見せた
「ここは……初音島ですか?」
「ああ。ここの人物を教官として、呼んでもらうように頼んだ。ついでにMSも、どうにかしてくれるようだ」
「本当ですか! やった! 僕の使ってたリーオー、もうボロボロだったんです!」
リーオーとは
それは、前タイタン戦争時に
そのために、NAUでは改修したリーオーmkーⅡが運用されている
そして、明久が使っているリーオーは前大戦時に大破もしくは、中破していた機体を
そのために、関節が弱かったり、スラスターがオーバーヒートを起こしやすかったりしたのだ
「それに、初音島といえば。僕は、ストライクが印象に残ってますね」
「ああ、初音島の守護神か。聞いた話だと、吉井たちとは、年齢的に差は無いようだ」
「ええ!? そうなんですか!?」
「ああ」
「はー、会ってみたいなー」
そう言っている明久の目は、子供のように輝いている
「ふむ。運が良ければ、会えるかもしれんぞ?」