機動戦士ガンダム 英雄黙示録   作:京勇樹

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開戦

運命の12月31日早朝6時

 

初音島は未だかつて無いほどに、静まり返っていた

 

例年通りならば年末年始に行われるイベントにより、朝から街中に人が賑わっている筈だった

 

だが、ユーラシア連合からの事実上の宣戦布告により、年末年始のイベントは中止

 

全島民に避難勧告が発令された

 

後約一時間で、ユーラシア連合との戦争が始まる

 

そして、初音島統合防衛軍は既に、臨戦態勢に入っていた

 

臨海線ギリギリには、艦艇群と艦載MS部隊が集結

 

各部隊は配置完了

 

全防衛施設も稼働状態にあった

 

もちろんだが、戦わないで済むなら、それが一番良い

 

だが、待機している全軍人は、戦わないで済むとは思っていなかった

 

ユーラシア連合は初音島政府が再三会談を要請したというのに、全て無視してきている

 

この時点で、ユーラシア連合は戦う気だと分かっていた

 

だから、全軍人は家族や知人、恋人と思い思いの方法で過ごした

 

最後になるかもしれない、家族や知人、恋人との触れ合い

 

だが死ぬ気はなく、生きて帰ろうと思っていた

 

そして、ユーラシア連合を必ず撃退し、新しい未来(あした)を迎えると

 

それが、統合防衛軍全軍人の総意だった

 

場所は変わって、統合防衛軍総司令部

 

そこに、大統領の芳野さくらと統合防衛軍元帥の朝倉純一は詰めていた

 

なお、さくらはこの戦いが終結したら、引責辞任を表明するつもりらしい

 

なんでも、この戦いを未然に防げなかったからだとか

 

とはいえ、さくらにも無理だったのだから、誰にも防げなかっただろうというのが、純一の考えだ

 

そして、それまでモニターを睨んでいた純一はさくらに視線を向けて

 

「新型の進捗状況はどうなっている?」

 

と問い掛けた

 

すると、さくらは携帯端末を取り出して操作してから

 

「一番早く完成するのが、10かな。次に09で12は武装がね……」

 

と説明した

 

数字は型番だろう

 

さくらの説明を聞いて、純一は少し黙考してから

 

「その10の完成は、開戦には?」

 

と問い掛けるが、さくらは首を振って

 

「どんなに頑張っても、開戦には間に合わない……多分、戦闘中になると思う……」

 

と答えた

 

それを聞いて、純一は腕を組んだ

 

今、天枷研究所で建造されている三機の新型機

 

それら三機は、今のMSとは比較にならない性能を有しており、もし一機でも投入されたら、戦闘は有利に進む所か、勝つことすら可能だろう

 

だが、その希望の新型機はまだ完成していない

 

それどころか、それまで初音島統合防衛軍が保つのかどうか……

 

不安な考えに至るが、純一はそれを頭を振って追い出した

 

元帥たる自分が、そんなことでどうするのかと

 

なお、今回の顛末を知ったのか、JEU艦隊の斑鳩から軍を動かすと打診があった

 

だが、純一はそれをやんわりと断った

 

受け入れると決めたのは、我々なのだから、今回のことは我々が責任を取ると

 

なお、同盟を結んでいる神界と魔界からも同様の打診があったが、こちらも断った

 

いくら同盟を結んでいるとはいえ、要らない不安要素は無くすべきだろうと

 

本音を言えば、両方の申し出は嬉しく、戦力も喉から手が出るほど欲しい所だ

 

しかし、宣戦布告を受けたのは初音島であり、JEU艦隊と神界・魔界の双方には関係ないことだ

 

それに、無抵抗で負ける気も無いし、そもそも負けるつもりはない

 

だが、戦力差が有りすぎるのも事実だ

 

こちらの戦力はMSが約九百と少し

 

多脚戦車が約百二十少々

 

戦闘機も同様だ

 

それに対して、ユーラシア連合の戦力は,更に増えており、MSは約二千を超えているだろうと報告が上がってきている

 

戦闘機もかなりの数を投入してくるだろし、多脚戦車もそうだろう

 

何よりも、不安要素がユーラシア連合の旗艦と思われる黒いアークエンジェル級だ

 

性能はアークエンジェルと大差なさそうだが、恐らく艦載MSは、ユーラシア連合が開発したという新型のガンダムタイプだろう

 

報告によれば、5機も存在しているらしい

 

それら新型の性能は、天枷研究所の技術者達がある程度は予測しているが、どれも初音島の現ガンダムタイプを上回っていると告げてきていた

 

それを聞いて、兼ねてから発案されていたガンダムタイプ強化改修計画、少数生産を行おうとしていた

 

だが、その計画を起こす前に宣戦布告されて、計画は事実上の無期限延期になった

 

だから今唯一の希望が、開発されている三機の新型ガンダムだった

 

初音島の平和の象徴として、初音島が有するあらゆる技術を投入し、更に、一つの画期的技術を投入した

 

そして、そのフラグシップ機が件の10だ

 

だから、10の方は09や12よりも人数を多めに投入して開発していたのだが、それでも間に合わなかった

 

だが、諦めるにはまだ早い

 

この世の中、何が起きるのか分からないのだ

 

もしかしたら、新型ガンダムを投入せずに初音島が勝つかもしれない

 

幸いにも、新しい正式量産機にMVFー11・ムラサメが採用されて、すでに配備されている

 

採用されたムラサメは、量産型機としては世界で初めての完全可変式機だ

 

戦闘機としてもMSとしても使える有用な機体で、戦闘機の速度で肉薄し、あっという間にMS形態に変わって攻撃し、また離脱するという、一撃離脱戦法も取れる

 

そうこうしている内に時は経ち、間もなく運命の時間

 

午前7時になろうとしていた

 

場所は変わって、ユーラシア連合艦隊側旗艦

 

アークエンジェル級2番艦、ドミニオン

 

その艦橋(ブリッジ)に、豪華な装飾が施された軍服を纏った色白な男とそれに寄り添うように銀髪の美女が居た

 

男の名前は、マクシミリアン・ジーナス

 

ユーラシア連合現大総統の次男であり、今回のユーラシア連合艦隊の総指揮官だ

 

そして、その隣に立っている銀髪の美女の名は、セルベリア・ブレス

 

マクシミリアン・ジーナスの副官を勤めると同時に、MSパイロットでもある

 

セルベリアはモニターに表示されている時間を見ると、マクシミリアンに

 

「殿下、間もなく時間です。なお、初音島からは再三に渡って会談の要請が来ておりますが」

 

と告げた

 

が、マクシミリアンは眉一つ動かさずに

 

「会談要請など捨て置け……」

 

と告げた

 

そして、時計が7時を示した

 

その直後、マクシミリアンは右手を掲げて

 

「全軍、攻撃を始めよ」

 

と告げた

 

それを受けて、セルベリアは深々と頭を下げてから

 

「畏まりました……全軍、攻撃を開始せよ!」

 

と告げた

 

それを聞いて、マクシミリアンが座っている席の下の副艦長席に座っていたメガネを掛けた老人

 

ベルホルト・グレゴールが、メガネを上げてから

 

「ミサイル発射管、全門装填! 目標、初音島艦隊、発射ぁ!!」

 

と宣言した

 

こうして、初音島とユーラシア連合の戦争は始まったのだった

 

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