「唯依……なのか……?」
未だに意識が朦朧としていた直哉は、頭を軽く振りながら問い掛けた
すると、サブモニターに唯依の顔が表示されて
『ああ、そうだ……、直哉……』
唯依はそう言うと、直哉機を助け起こした
すると、一夏達が近寄ってきて
『悪い、ストラトス8。フォロー出来なかった』
と謝ってきた
それに対して、直哉も
「いや……俺も位置取りが悪かった。すまない」
と謝罪した
その直後、周囲に次々と白と黒の龍閃が着地し
『ホワイトファング2よりホワイトファング1。付近の安全は確保した』
と、オープンチャンネルで通信が入った
『分かった』
部下たる
『私達が君達を護衛する。だから、彼を連れて後退しろ。彼は機体の整備。そちらは、最低でも補給が必要の筈だ』
と告げた
『よろしいのですか?』
一夏がそう問い掛けると、唯依は
『構わない。我々は、恩に報いるために動いた。ならば、ここで貴官等を置いて離れて、それが理由で貴官等が全滅したとなったら、我々は我々を許せなくなる』
と返した
それを聞いて、一夏が迷っていると
「一夏……ここは、彼女の提案に乗ろう」
と直哉が言った
『直哉、だが……』
「確かに、俺達は特務部隊だ……他国に規模を知られる訳にはいかないだろう……だが、俺の機体は損傷し、色々とギリギリだ……それにお前達は推進材や弾を消費している……その状態で、俺という
直哉がそう言うと、一夏は数秒程黙った
そして
『貴女の提案に、乗らせてもらいます』
と返答した
『了承した。ホワイトファング1より
『了解!』
唯依が命令すると、ホワイトファング中隊は素早く陣形を取った
その動きだけで、ホワイトファング中隊の練度が自分達より上だと分かった
そして、ラウラ機が乗っていたSFSに直哉機を同乗させた
直哉機のストライカーパック
フライトパックが機体が倒れた拍子に壊れたらしく、エラーが表示されていたからだ
ストライカーパックをパージしたら、最高速度は大幅に落ちる
だから、SFSに乗ったのだ
少しでも、リスクを減らすために
そして、二隊は移動を開始した
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『ふっ!』
千冬機は短い呼気と共に、日本刀型実体剣
タイガーピアスを振り下ろした
その斬撃により、千冬達が布陣していた本島に居た最後のダガーLは真っ二つになった
今、彼女が乗っているのはガンダムアストレイ・レッドフレーム・レプリカである
この機体は、千冬の要請により、レッドフレームの予備部品を使って作られた機体だ
故に、その性能はオリジナルと遜色ない
元々、レッドフレームというのは近接戦闘に比重を置いて開発された機体である
そこに千冬の刀剣術が合わさって、並大抵のパイロットでは太刀打ち出来ない
そんな千冬機の近くに、緑色の機体
ガンダムアストレイ・グリーンフレームが着地してきた
『織斑中佐、そちらも終わったようだな』
『神宮寺中佐か。無事で何よりだ』
グリーンフレームに乗っているのは、神宮寺まりも中佐だった
彼女は前タイタン戦争、その初音島攻防戦の最中に被弾し負傷
本来ならば、パイロットを引退している筈である
しかし、軍は彼女の腕を惜しんだ
故に、彼女専用の機体を用意した
それが、グリーンフレームである
グリーンフレームは戦闘支援AIを搭載しており、パイロットの癖を学習し、例えパイロットの反応が遅れたとしても、最適な行動を取ることが可能なのだ
そんなグリーンフレームには、専用の武装が製作されていた
それは、ツインビームライフルである
これは、ビームサーベルを付けたビームライフルを二挺装備しているのだ
その専用武装と支援AI
そして、神宮寺まりもの技術の三つが合わさり、グリーンフレームは高い戦闘力を有しているのだ
その時、四機のアストレイ二型がグリーンフレームの前に着地した
『神宮寺中佐。ウォードッグ小隊、全機帰還しました』
『ご苦労、龍浪』
ウォードッグ小隊
それは、前タイタン戦争の時に彼女が自ら率いた精鋭部隊である
龍浪響大尉を小隊隊長に、千堂柚香中尉、美桜乃雫少尉、エレン・エイス少尉です四名で構成されている
彼等ウォードッグ小隊は遊撃部隊として行動していて、戦場を駆け巡っていたのだ
その時、千冬機の近くに居たアストレイ二型
山田真耶大尉が
『織斑中佐、こちらに接近してくる友軍機確認……これは……ストライクです!』
と報告してきた
それと同時に、千冬達も捕捉したらしく機体をある方向に向けた
そして思わず、息を飲んだ
ストライクが損傷していたからだ
『ストライクが……損傷!?』
『そんな……』
損傷しているストライクを見て、ウォードッグ小隊のエレンと雫両名が絶句していた
その時、ストライクがホバリングしたかと思ったら、赤い光がストライクに照射された
すると、ストライクがゆっくりと降下していった
そして、ストライクが見えなくなると
『今のは確か……』
『トラクタービーム……だな』
と千冬とまりもが呟いた
トラクタービーム
これは、照射した対象を安全に格納庫に収容するためのシステムである
無傷の機体なら、普通に着陸させれば済む話である
しかし、損傷しているとなるとバランスもおかしくなるし、何が起きるかわからない
以前は緊急着陸ネットを使用していたが、施設が壊れたり、パイロットが衝撃でむち打ちになる事もあった
それを無くすために考案・採用されたのが、このトラクタービームである
トラクタービームを採用しているのは、世界広しと言えど、初音島位なものだろう
『この付近で、トラクタービームを使っているのは……』
『天枷研究所だ』
龍浪が思い出すように呟いていると、まりもが場所を答えた
すると、千冬が
『とすると……噂のアレが完成したのか?』
と呟いた
『織斑中佐、アレとは?』
と真耶が問い掛けると
『私も噂で聞いただけだが、天枷研究所では現行のあらゆるMSを上回る機体を開発していると聞いたんだ』
と千冬が答えた
『そんな機体が、本当にあるんですか!?』
『見てみたいですねぇ!』
千冬の話を聞いて、エレンと雫が興奮した様子で声を上げた
『落ち着け、貴様ら! 無駄話している暇は無くなった! 新たなお客さんだ! 盛大に歓迎してやれ!』
まりもがそう言うと、全員は構えた
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「敵MS隊、多数接近! 対空レーザー機銃、追い付きません!」
とオペレーターが言うと、大和型三番艦信濃艦長、
「対MS近接防御、手動制御! 艦尾VLS並びに艦側ミサイルランチャー開けぇ!」
と号令を下した
その直後に、轟音が鳴り響いた
すると
「敵MS隊、散開回避! 本艦から離れます!」
とオペレーターが報告してきた
だが、そのオペレーターが矢継ぎ早に
「敵MS隊、チャフ及びフレア放出! 高密度………レーダーアウト!」
と報告した
しかし、安部は慌てることなく
「全艦データリンク照準! 全砲一斉射! 撃てぇ!」
と号令した
その命令に従い、信濃に付き従っていた艦隊はあらゆる砲を撃った
今彼等は、MS約一個中隊を率いてユーラシア連合艦隊に攻撃を仕掛けていた
数の差は圧倒的
だが、それがどうした
初音島とて、圧倒的数の差だというのに勇敢に立ち向かい耐えている
ならば、我等も水浮く屍の覚悟で奮闘するのみ
その為に、立ち上がったのだから
「重巡プリンツ・オイゲン、第一主砲大破! 火災発生なれど、戦闘続行!」
「駆逐艦リベッチオに打電、プリンツ・オイゲンのカバーに入れ!」
「了解!」
「戦艦ローマ、艦橋に被弾! されど、戦闘続行!」
「羽黒、カバーに向かいました!」
「右舷第一装甲板、廃熱追い付きません!」
「面舵一杯! 敵艦隊に左舷を向けろ!」
安部はそう指示すると、艦長席の受話器を取って
「小沢提督、安部です!」
と別行動中の大和に通信を始めた
『安部君か、戦況はどうなっているかね?』
「はっ! 全艦未だに脱落無し、奮闘中です!」
大和艦長、
『うむ……して、通信の理由はなにかね?』
「はっ……今こそ、我等の大和型の真の姿を見せる時と愚考します!」
小沢からの再びの問い掛けに、安部はそう答えた
そう、大和には最高機密があった
それを知っているのは、僅か一握り
『真の姿か……』
「はっ! 使える力を使わずに後悔するよりも、使って後悔した方が百倍マシであります! 何より、斑鳩殿下より『あらゆる力を使い、全力を尽くせ』と言われております」
安部の言葉を聞いて、小沢はしばらく目を閉じて黙考した
そして、意を決したらしく目を開いて
『良かろう。大和型の真の姿……今こそ、世界に見せつけよ!』
と告げた
「はっ!」
安部は敬礼すると、受話器を戻した
そして、オペレーターに視線を向けて
「駆動炉の出力、どうなっているか!?」
と問い掛けた
それに対して、オペレーターは画面を変えて
「駆動炉、出力100%で安定! 問題ありません!」
と報告した
それを聞くと、安部は再び受話器を取って
「艦内の全クルーに通達する! 本艦はこれより、世界中に真の姿を晒す! 各員の一層の奮闘に期待する!」
と告げた
そして受話器を戻すと、大声で
「信濃、離水上昇! ピッチ角60! 操舵手、以後の回避行動は任せる! 艦底部の主砲並びに機銃展開せよ!」
と矢継ぎ早に指示を出した
そして今ここに、その艦が真の姿を晒す