機動戦士ガンダム 英雄黙示録   作:京勇樹

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嵐の予感

「♪」

 

狭いコクピットの中、パイロットスーツを着た青年が鼻歌を歌っていた

 

青年の操る赤青白のトリコロールの機体、ストライクは廃都市を飛んでいた

 

ストライクに装備されているエールストライカーは、この2年の間に改良されて、以前は滑空しか出来なかった大気圏内でも、一級品の飛行能力を有している

 

「おっと」

 

青年、桜内義之はビルの上を飛んでいたストライクを一気に噴射下降(ブーストダイブ)させた

 

すると、先ほどまでストライクが飛んでいた場所を一本のビームが走った

 

「この狙撃は………風間か。なかなかやるな」

 

義之はストライクを少し上に上げた

 

すると、またビームが横切った

 

しかし、コクピット内では警告音が鳴っていない

 

「さてと、大体………あの辺りかな?」

 

義之は、ストライクの右手に保持されてるビームライフルを右斜め前方に向けると

 

「当たれよ!」

 

と言いながら、3発連射した

 

3発のビームは、地平線の彼方に向かって飛来していった

 

しばらくすると、遠方で黒煙が上がった

 

「ビンゴ!」

 

義之はそう言うと、ホバリングしていた機体の向きを変えて、再び高速移動を開始した

 

第三者視点sideOUT

 

?視点

 

「はぁ!? 風間が撃墜された!?」

 

あたし、速瀬水月(はやせみつき)は残った遼機のパイロット、宗像美冴(むなかたみさえ)の報告を聞いて驚いた

 

あたしは、風間祷子(かざまとうこ)大尉に、<気付かれないために、狙撃時にはロックオンをしないように>

 

と命令したのだ

 

そうすることで、機体からロックオンレーダーが照射されないために、相手は気付かない

 

筈なのだ

 

それなのに!

 

あいつは、持ち前の異常な勘で気付いて、あまつさえ、風間の位置をビームの発射方向と角度で特定して撃墜したのだ

 

『まったく。桜内大佐のあの勘は最早、異常の域ですね』

 

あたしの苦悩に気付いたのだろう、宗像も愚痴ってきた

 

「まったくよ! ……でも、予定通りに行くわよ!」

 

『了解!』

 

あたしの言葉を聞いた宗像が、機体を前に進めた

 

ふふふ………義之、いくらあんたでも、これには気付かないはずよ!!

 

あたしは、宗像の機体が位置に着いたのを確認すると、機体をある場所に向かわせた

 

今回は絶対に負けられないのよ!

 

負けたら、大台に行ってしまう。それだけは絶対に避けなければ!

 

水月SideEND

 

第三者視点

 

義之はあれから、機体を直進させていた

 

すると、レーダーに反応が現れた

 

「ようやくか……反応は1…」

 

義之はそれだけ確認すると、機体の速度を上げた

 

そして、反応に向けて十数秒飛んでいると

 

「おっと」

 

義之は機体をバレルロールさせた

 

すると、ビームが走り抜ける

 

「ふむ、この反応は……宗像か」

 

義之は画面に映った文字を読んで判断した

 

画面にはアテナ2の文字

 

「乗ってやるか」

 

義之は呟くと同時に、更にビームが来た

 

義之はそれを、機体を斜めにして避けた

 

そして、宗像機と横並びになって、着地した瞬間

 

蹴りを前に居る宗像機

 

ではなく、後ろに繰り出した

 

すると、そこには黒い装甲のアストレイ3型がビームサーベルを振り上げていた

 

義之の蹴りは見事に、アストレイ3型の胸部に直撃した

 

『くぁぁぁ!』

 

『少佐!!』

 

宗像機は味方誤射を恐れてか、横跳びしながらビームライフルを撃つが

 

「狙いが甘い!!」

 

義之は、それを難なく盾で防ぎ

 

「せい!」

 

右下大部の収納スペースから抜いた、アーマーシュナイダーを投げた

 

『しまっ!』

 

義之の投げたアーマーシュナイダーは宗像機の胸部に突き刺さり、宗像機は機能を停止した

 

『このぉーー!!』

 

気付くと、水月機が再びビームサーベルを構えて突撃してきていた

 

「ほい、残念賞!」

 

義之はそれを機体をバック転させて避けると、踵落としを水月機の頭部に直撃させた

 

『かはっ!』

 

「終わり」

 

義之はうつ伏せに倒れた水月機に、トドメとしてビームライフルを放った

 

第3者SIDEOUT

 

水月視点

 

「ちくしょう………」

 

あたしは赤い非常灯の灯ったコクピット内で、モニターを凝視していた

 

モニターには

 

<機体の致命的損傷により、パイロット死亡。戦闘シミュレーター終了>

 

と書かれていた

 

「ちくしょう………」

 

大台に行ってしまった………

 

あたしは脳内でその文字だけを繰り返しながら、コクピットを出た

 

水月sideOUT

 

第3者視点

 

水月がコクピットシミュレーターから出ると

 

「これで、299敗1勝だな。速瀬」

 

と、赤髪ショートカットの女性。伊隅みちるが話しかけた

 

尚、その後方には腰まで伸ばした緑髪が特徴の風間祷子大尉とセミロングの女性、宗像美冴少佐が居る

 

「言わないでください……」

 

それに、あたし的には300敗だ

 

そう水月は内心思った

 

最初の1勝は、義之はワザと負けたのだ

 

すると

 

「まぁ、作戦は良かったが、まだまだだな。水月」

 

と、1番コクピットから出てきた義之がヘルメットを脱ぎながら告げた

 

「義之~、あんた、あの反応はなんなのよ!」

 

「なんなのって、勘だが?」

 

「うがぁぁぁぁ!」

 

義之の言葉を聞いた水月は頭を抱えて、唸り声を上げた

 

「なんか、その余裕な態度がむかつく!! 一発殴らせろ!!」

 

水月は義之に飛びついた

 

「あー、それは痛そうだから、勘弁な」

 

義之は、水月の突撃を簡単に避けた

 

「避けるなーー!!」

 

水月は水泳で鍛えた身体能力を活かして、突進を繰り返すが義之は避け続けた

 

「水月、やめなよ。義之くんには当たらないよ」

 

そう忠告したのは、フワフワした印象の女性だった

 

名前は涼宮遥(すずみやはるか)少佐である。主に通信将校を担当している

 

速瀬や義之とは同期である

 

「遥、止めないで! こいつは一発殴らないと気がすまない!!」

 

水月はそう言いながらも、拳を繰り出し続けている

 

「それは危ないな」

 

義之はヒョイヒョイと避け続けている

 

「速瀬、その辺にしとけ」

 

伊隅が嗜めると、速瀬は渋々従った

 

「さてと、新型のアストレイ3型はどうかな?」

 

と義之は聞くと、宗像、風間、速瀬の3人の表情が引き締まった

 

「新型なだけあって、センサー範囲は流石ですわね。スナイパーパックと合わせると、かなりの物ですね」

 

そう告げたのは、風間でスナイパータイプへと改装したアストレイ3型を使用していた

 

VIS(音声入力システム)も2型と比べて、良くなっていますね」

 

「ええ、だけど。少し動きが硬いところがあるわね」

 

宗像、速瀬と風間に続いた

 

「そうか、まぁ、そこは追々改良されるだろ」

 

と、義之が言うと

 

「同志桜内」

 

天井の通風孔から1人の男が、ぶら下がって現れた

 

「「「「うわぁ!?」」」」

 

義之、麻耶、みちる以外の全員は驚いていた

 

「って、今は情報省外務2課に所属してる杉並くんか~。びっくりした~」

 

最初に気付いたのは、涼宮遥だった

 

「杉並……もう少し普通に登場できないのか?」

 

「ふむ、これでも普通のほうなんだがな。分かった、次にはもう少し趣向を凝らそう」

 

「「「「「しなくていい」」」」」

 

杉並の言葉に、全員の反論が重なった

 

「それで、杉並少佐。なにか話しがあるんじゃないんですか?」

 

麻耶が聞くと、杉並は手をポンと打って

 

「おお、そうだった。同志桜内よ」

 

「なんだよ」

 

「悪い情報が2つに良い情報が1つあるんだ。どちらから聞く?」

 

「それじゃあ、悪いほうから。良いほうを聞いてから落ち込むのは、勘弁だからな」

 

と、義之が言うと

 

「あい、わかった。では一つ目だが、ユーラシア連合が遂にGATーXナンバーの機体を開発した」

 

杉並の言葉に、その場の全員に緊張が走った

 

「それは本当か?」

 

「ああ、間違いない。だが、詳しい情報はわからない。俺より先に潜入した奴からの連絡が途絶えたからな」

 

連絡が途絶えた。

 

それは、つまり……

 

「そうか……遺族には遺言書と手当金は?」

 

「先日、既に……な。しかし、何度経験しても慣れんな。友が死ぬのは」

 

「同感だな。だけど、慣れないと壊れるぞ」

 

「わかっているさ。このUSBに、これまでのデータのまとめが入ってる」

 

杉並は義之に返答すると、懐からUSBメモリーを取り出して、手渡した

 

「確かに、受け取った。麻耶」

 

義之は受け取ると、副官であり、恋人である麻耶にメモリーを預けた

 

麻耶は預かると、それをアタッシュケースに仕舞った

 

「で、悪い話の二つ目は?」

 

「ああ、L4コロニーで不穏な動きがある」

 

「L4コロニー? あそこは確か、ユーラシア連合の管轄ね」

 

杉並の言葉に麻耶は眉を潜めた

 

 

現在、広大な宇宙には巨大な人工居住地空間として、コロニーが数多く建造された

 

その内のラグランジュポイントの4番目、つまりはL4にコロニーを建造したのがユーラシア連合なのである

 

尚、初音島はL1にコロニーが浮いている

 

 

「L4コロニー………ユーラシア連合………っ! ダルクスか!!」

 

義之が叫ぶように言うと、全員の視線が集中した

 

「ふっ、流石は、同志桜内だ」

 

「ダルクス? って、ことはダルクス人? あの人たちがどうしたのよ」

 

水月は義之がなぜ、コロニーダルクスのダルクス人を挙げたのか分からなかった

 

「これは俺の予想だが……武装蜂起しようとしてるんだな?」

 

「「「「え!?」」」」

 

義之の言葉を聞いて、杉並以外の全員は驚いていた

 

「ふっ、流石の慧眼だな。その通りだ。新型機の存在も確認した」

 

杉並はそう言いながら、懐からプリントアウトされた1枚の画像を出した

 

その姿は、曲線主体の緑色の装甲の機体だった

 

「……でも、信じられないわ。あのダルクス人が武装蜂起なんて……」

 

麻耶は画像を見ても未だに信じられないのか、首を振った

 

「だが、俺は納得できる。ユーラシア連合はやり過ぎたんだ。だけど、武装蜂起したのは極一部だな?」

 

「ああ、確認したのは多くても師団くらいだ」

 

義之の言葉に杉並は頷いた

 

「そうだよね、ダルクス人さんだって、我慢の限界だよね……」

 

遥は悲しそうな表情で、俯いた

 

 

なぜ、ダルクス人の武装蜂起が起きそうなのか

 

ことの発端は、今から50年近く昔まで遡る

 

新太陽暦20年

 

人類が宇宙に進出し、コロニーを建造し始めた頃だった

 

あるコロニーの、ひとつのマンションから始まった

 

ある日、保育園の送迎バスが子供を向かえに行ったが、どんなに待っても現れなかったのだ

 

最初は、病気かと先生は思った

 

しかし、連絡もないのはおかしいと思い、その日の夕方、警察を伴い入室したのだ

 

そして、見つけたのは

 

家族全員の死体だった

 

その死体は、あまりにも綺麗だった

 

部屋にも争った形跡もなく、まるで、直前まで普通に生活していたように綺麗だった

 

当初、警察は一家心中と判断して深くは捜査しなかった

 

しかし、事件はそれで終わらなかったのだ

 

その翌日は、その部屋の隣室の家族が

 

その翌日は、近所の一軒家の家族が

 

と言った様子で、次々と死んでいったのだ

 

流石に、これはおかしいと気付いた警察は医療機関と連携して捜査した

 

そして、原因が判明したのは、最初に死人が出てから半年後だった

 

原因は未知の病原菌だった

 

その病原菌が見つかるまでの、半年間

 

犠牲者は、当時の全コロニーの総人口の半分にまで到達していた

 

世界中の研究者達は、その病原菌に対してのワクチンの精製に取り掛かった

 

が、成功したのは

 

初音島のみだった

 

当時、初音島は中立国家として名乗り挙げたばかりだったが、色んな分野で最先端を走っていた

 

それは勿論、医療でもそうだった

 

当時から、色んな分野の博士号を取得していた芳野さくらを筆頭に、ワクチンは大量生産されて、世界中に無償で配布された

 

そのワクチンのおかげで、事件は終息した

 

しかし、終息するまでに全コロニー総人口の内、約7割が犠牲になった

 

そして、そこから事態は思わぬ方向に進んでしまったのだ

 

ユーラシア連合が

 

『あの病原菌をばら撒いたのは、コロニーダルクスのダルクス人共だ!』

 

と、声高に叫んだのだ

 

そして、世界中の人々もそれに賛同してしまったのだ

 

世界はどうやら、事件に対してのはけ口を求めていたようだ

 

そして、ユーラシア連合の発言にも理由はあった

 

当時起きた、未曾有のバイオハザード事件

 

その時、コロニーダルクスでは、被害者がほとんど出ていなかったのだ

 

しかし、ユーラシア連合の発言に待ったを出した国があったのだ

 

それは、初音島とJEUだった

 

初音島とJEUが言ったのは

 

『人類が宇宙に進出する際に、未知の事件が起きるのは予想の範疇だった。宇宙は人類にとって、未開の地。故に、今回のようなことは、予想できた筈だ』

 

 

確かに、人類が宇宙に人口の大地であるコロニーを建造した際

 

色々な事故や事件が起きた

 

隕石の直撃、宇宙放射能による不治の病、既存のウィルスの突然変異、等々だ

 

初音島とJEUの発表を聞いた世界各国は、納得はしないまでも、引いてくれた

 

しかし、ユーラシア連合だけは頑なに引かずに、一方的な判断を下した

 

それは

 

1つ、コロニーダルクスのダルクス人は、本国の政治に一切の口出し及び、干渉を禁じる

 

2つ、ダルクス人は姓を名乗ることを禁じる

 

と、言うものだった

 

当然、ダルクス人たちは怒った

 

デモも起きたほどだった

 

しかし、ユーラシア連合はそのデモに対して、最悪とも取れる方法で対処したのだ

 

それは

 

デモ行進をしていたダルクス人に対して、一方的に武力による鎮圧を行ったのだ

 

しかも、それだけに飽き足らず、デモに参加したダルクス人の親族までも公開処刑したのだ

 

ここからだった

 

ユーラシア連合のダルクス人の迫害は、加速していったのだった

 

 

「あんなことでは、武装蜂起も仕方ないな………」

 

義之の言葉に全員沈黙した

 

「ユーラシア連合の人たちは気付いてるのかしら……私達の使ってるMSが、そのダルクス人の人たちのおかげで、完成して、発表できたのは……」

 

麻耶は悲しそうに呟いた

 

その理由は、初音島が採用した発泡金属とPS装甲がダルクス人の優れた金属精製技術によって、完成したのだ

 

逆に言えば、ダルクス人の協力なくして、アストレイの完成も無かったのだ

 

そして、アストレイの完成後に、世界中にMSを発表したのだ

 

つまりは、世界をタイタンから救った一端は、ユーラシア連合が迫害しているダルクス人が担っていたのだ

 

そして、しばらく沈黙していると

 

「んで、いい話ってのはなんだ?」

 

義之が杉並に問いかけた

 

「ああ、だが、その前にだ。同志桜内よ。なにか、ストライクに対して不満があるんじゃないのか?」

 

杉並の言葉に、義之はしばらく黙ると

 

「どうして、そう思った?」

 

「ふっ、簡単な話だよ。先ほど、お前がシミュレーターから出た時に、少し浮かない顔をしていたのでな」

 

「義之?」

 

杉並の言葉に義之が黙っていると、麻耶が心配そうに、見つめてきた

 

「……はぁ、隠しきれたと思ったんだがな」

 

義之は頭を掻きながら、呟いた

 

「それじゃあ?」

 

「ああ、確かに最近、ストライクの動きが遅く感じる」

 

「あらら、OSの設定ミスったの?」

 

「いや、それは無い。OSの設定はずっと変えてない」

 

「ええ、機付き整備長の私も、月に一回確認してますが、設定は一切変わってません」

 

速瀬の言葉に、義之と麻耶が言い返すと

 

「ストライクも最早、2年前の機体だから同志桜内の操縦技能に追いつかないんだろうな。さて、ここでいい話だ!」

 

「なんだよ、勿体つけずにさっさと言え」

 

「ふっ、今、天枷研究所で最新の機体が開発されている!」

 

「新型~? それって、アストレイ3型やムラサメじゃないの?」

 

杉並の言葉に、速瀬がいぶかしむ様に視線を向けた

 

「ふん! あんなの何処が最新鋭だ! 今、同志桜内の部隊で試験中ではないか!」

 

「いや……どっちも、最新型なんだけど……」

 

杉並の言葉に麻耶が呆れていると

 

「それに、聞いて驚け! 開発されているのは、GAT-Xナンバーの最新型だ! 開発にはかの、篠ノ之束博士も関わっている!」

 

杉並の言葉に、義之たちは眼を見開いて驚いている

 

「しかも、確認している限りで数は3機! こちらの調べでは、スペックはストライクの3倍以上だ!」

 

「ストライクの3倍以上だと!?」

 

「しかも、あの束博士まで!?」

 

篠ノ之束(しのののたばね)博士

 

彼女は初音島でも有数の科学者で、天才(災?)の名を欲しいがままにしている

 

その実力は大統領でもあり、科学者でもある芳野さくらも認めている

 

しかも、特にロボット関係ですばらしい技術力を有しており、MSの開発にも一役買っている

 

ただし、自由気まますぎるのと、一握りの人間としか会話しないので、コミュニケーションが難しいのである

 

以上、説明終了

 

「こりゃ、新型は期待できるな」

 

「ああ、なんせ、芳野博士と篠ノ之博士のコンビだからな」

 

義之と杉並の言葉に、全員頷いていた

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