「反乱か……やはり、酷いんだな。ユーラシアは」
そう言ったのは、愛機
烈空弐型の中に居た、ユウヤ・ブリッジスだった
ユウヤは反乱が起きたユーラシア連合を見て、まるで他人事のように思えた
しかし、彼にとっても他人事ではなかった
ユウヤの祖国、NAUでもユーラシア連合ほどでは無かったが、人種差別があった
白人至上主義者である
ユウヤが最初所属していた部隊は、その白人至上主義者が隊長を勤めていた
故に、ユウヤを含めた黄色人種や黒人は酷い扱いを受けていた
その部隊は、今は存在していない
その原因は、表向き事故として処理されている模擬戦にあった
それは、ユウヤを含めた有色人種による小隊対、その隊長率いる小隊による模擬戦
その模擬戦、ユウヤ達が勝った
その直後、その隊長を含めた全員が実弾を使ってユウヤ達の小隊を攻撃
ユウヤ以外全員死亡という、悲惨な事態になってしまったのだ
ユウヤは使えないと判断したライフルを捨てて、ビームサーベルを戦闘出力にして、鎮圧部隊が出るまで耐えたのだ
結果、隊長が率いていた小隊は全員撃破されて死亡
その後の調査で、隊長とその部下のしていた悪行が全て判明
全員の資産は全て凍結
部隊は解散となった
その後、ユウヤは技術試験隊へ転属
そして、若干の人間不信に陥っていたユウヤは、そこで喧嘩を多発
更にある事件を起こしてしまい、その部隊での居場所を無くしていた
そんな時に、その部隊の上官が烈空弐型開発計画への出向を打診してきた
そしてユウヤは、もう1つの祖国、日本を知った
当初は、最初の部隊での不等な扱いの原因と逆恨みしていた
しかし、度々ぶつかりながら唯依や整備兵達と接していく内に日本人の性質を知った
そして弐型が完成し後はNAUに帰るだけだった
そんな矢先に、ユーラシア連合からの宣戦布告
それにユウヤは、部隊と共に残って帝国軍と共に戦った
今となっては、居心地の良さすら感じている
それに少し考えてみれば、恐らくNAUでは死亡扱いされてるだろう
だからユウヤは、このまま帝国軍と共に戦おうと思った
その時ユウヤは、機体のレーダーとセンサーが自機に近付いてくるユーラシア連合軍機体が居ることに気付いた
その方向を見てみれば、両肩を赤く塗ったガンダム
ソードカラミティが近付いてきていた
「ユーラシアのガンダムタイプか!?」
そう確認したユウヤは、両手にビームサーベル
試製虎徹を構えた
そして、相手が振り下ろしてきた対艦刀を弾いて、肉薄
肘打ちを放った
しかしその一撃は盾で防がれて、腕を捕まれた
「野郎、放せ!」
とユウヤが声を上げた直後
『やっぱり、ユウヤだ!』
と聞いたことのある声が聞こえた
「その声……イーニアか?」
『ユウヤ!』
ユウヤが呆然とした声でその名前を呼ぶと、サブモニターにイーニアの顔が映った
「イーニア、お前……ユーラシア連合軍の軍人だったのか!?」
『クリスカも居るよ!』
ユウヤの言葉にイーニアがそう返すと、もう1つのサブモニターにクリスカの顔が映った
『戦場以外で出会っていれば、こんなことにはならなかっただろうにな』
「そうだな……今の俺は帝国軍預りの軍人で、お前らはユーラシア連合軍の軍人だ……だったら、やることは1つだ……」
ユウヤはそう言うと、ソードカラミティの腕を振り払い、虎徹を構えた
そして、ソードカラミティを見ながら
「行くぜ、
と言った
すると、弐型もそれに答えるように、駆動音が高まった
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
場所は変わり、ワルキューレ隊ハンガー
「何処の部隊でもいいから、整備要請を受け入れて! 倉庫から、使える部品は全部持ってきなさい!」
「ほら、そこ! ケーブルを出しっぱなしにしない! 直ぐに片付けて!」
「はい!」
と、ハンガー内では怒号が響き渡っていた
その時、麻弓が
「大尉! ストラトス隊が帰還してきます! 一機中破してるようです!」
と言った
それを聞いて、虚は
「上部ハッチ開放! 8班、退避!」
と指示を出した
すると、ハンガーの上部ハッチが開いて、そこからストラトス隊
更に、帝国近衛軍ホワイトファング隊が入ってきた
「帝国近衛軍? なんで?」
と薫子は困惑したが、直ぐに中破している機体
ストラトス8に気付いた
「大尉!」
「片腕を損失に、ストライカーパックが破損。それに、胸部装甲にも損傷が見られるわね」
虚はそう言うと、着地したストラトス8
直哉機に駆け寄って、端末を機体に繋げた
そして、インカムに手を当てて
「神埼少尉、聞こえる? 聞こえるなら、コクピットハッチを開けてください! 神埼少尉!」
と言った
すると、聞こえたのは
『ア……ガ……ギィ……』
と苦悶の声だった
それを聞いて、虚は顔を蒼白にして
「まさか……禁断症状!?」
と言った
すると、唯依機が直哉機に歩み寄り
『整備兵達、離れていろ!』
と言うと、直哉機の胸部装甲を掴んだ
それを見て、虚を含めた整備兵は離れた
それを確認し、唯依は直哉機の胸部装甲を無理矢理外し、シャッターを見るとコクピットから出て
「はあ!」
と刀で、シャッターを切り裂いた
その刀は帝国近衛軍で標準装備として採用された、高周波刀だった
その切れ味は凄まじく、強化外骨格の装甲すら切り裂くのだ
唯依はシャッターが落ちたのを確認すると、刀を放り投げて中に入り
「直哉! しっかりしろ、直哉!」
と直哉の肩を掴んだ
しかし直哉はそれに答えず、体を強張らせながら苦悶の肩を出していた
そんな直哉に肩を貸して、唯依は
「ストレッチャー急げ!」
と声を張り上げた
すると、登ってきた虚が肩から下げていたバッグの中から拳銃型の無針注射を取り出して
「すいません、ちょっと退いてください」
と言って、直哉のパイロットスーツの前を開けた
そして、無針注射の先端部を直哉の体に押し付けて、引き金を引いた
すると、装着していた薬剤が直哉に注入された
それから数秒後、直哉の体から力が抜けて、苦悶の声は途切れた
唯依はそれを確認して安堵しながら、虚に視線を向けて
「技術大尉殿、1つ聞きたい……彼、直哉が苦しんでいたのは……直哉に施された強化施術が原因だな?」
と問い掛けた
その問い掛けに、虚は一瞬驚いたものの
「ええ、そうです」
と答えると、外に顔を出して
「医療班、なにをグズグズしてるの! 早くストレッチャーを!」
と怒鳴った
その数十秒後、楓と桜の二人がストレッチャーを運んできて、それを確認した唯依は自機の掌に直哉を乗せると、ゆっくりと下ろした
そして、直哉をストレッチャーに乗せると虚が
「彼は、特殊治療室に搬送! そうしたら、束博士を呼んで!」
と指示を出した
「了解しました!」
楓と桜は敬礼すると、ストレッチャーを押し始めた
すると、機体から降りてきたらしい一夏が近寄り
「大尉……直哉に施された強化施術って……どういうことですか?」
と虚に問い掛けた
それに対して、虚は言いにくい様子で口をつぐんでいた
すると、ハンガーに麻耶が現れて
「神埼直哉少尉は……ユーラシア連合によって強化人間にされていたのよ……」
と言った
それを聞いて、一夏が言葉を失っていると
「その施術に使われただろう薬物……その禁断症状か?」
と唯依が麻耶に問い掛けた
その表情は、怒りに満ちていた
すると麻耶は、沈痛な表情で
「ええ、そうです……出た薬物反応は、全部で約十数種類……それら全ての類似パターンは、国際法で使用を禁止された薬物に似ていました」
と言った
その直後、唯依は拳を近くの柱に叩き付けていた
すると
「それと、あのガンダムタイプと戦っていた時、彼……左目の生態デバイスを使った形跡があります」
と麻耶が言った
「生態、デバイス……?」
「ええ……自身の脳の一部と外科的手術で繋ぎ、凄まじい演算能力を得るの……その変わり、脳に大きな負担が掛かるの……下手したら……廃人化するわ」
麻耶のその説明を聞いて、拳を握り締めて
「クソったれがぁぁぁぁぁぁぁ!!」
と怒鳴った