それは、上海と香港が壊滅した数日後だった
アメノミハシラ内に、甲高い警報音が鳴り響いた
『全MSパイロットは、大至急ブリーフィングルームに集まれ! 繰り返す! 全MSパイロットは大至急ブリーフィングルームに集合せよ!』
その放送が流れたのは、宇宙では分かりづらいが深夜一時
宿直以外は、軒並み寝ていた時間だった
だと言うのに、たった五分足らずで全員がブリーフィングルームに集まっていた
その理由は、備えていたからに他ならない
「集まったな」
と言ったのは、義之である
全員、真剣な表情を浮かべている
「状況を説明する。今から約30分前に、自由ユーラシア領の仁川にデストロイを含めたファントム・ペインMS隊が襲撃してきた。これを自由ユーラシア軍が迎撃を開始したが、長くは持たないと連絡が来た。これを受けて、我々は降下作戦を行う。何か、質問はあるか?」
義之がそう問い掛けて見回すと、明久が手を上げて
「配置はどうなってますか?」
と問い掛けた
すると、義之が頷いて
「それは、今から説明する」
と言って、パソコンを操作した
すると、スクリーンにその配置が映った
「突入部隊は、我々ワルキューレ隊とホワイトファング、アルゴスだ。MSSの諸君は、アメノミハシラの防衛の為に残ってもらいたい」
と義之が言った
すると、今度は麻耶が
「今、既に格納庫では各機体の地上戦仕様に換装を行っています。確認し搭乗した後に大気圏突入カプセルに機体を収容。アークエンジェルで突入コースに投入します」
と説明した
そして、義之が
「では、要員は格納庫に向かえ!」
「了解!」
義之の号令を聞いて、パイロット達は走り出した
そして、約10分後
アークエンジェルは、衛星軌道に到着していた
これから、MSが入った大気圏突入カプセルを投入するのだ
『投入開始!』
音姫の号令の直後、アークエンジェルのハッチから次々と突入カプセルが突入コースに投入された
突入カプセルは少しして赤熱化気流に包まれた
そしてカプセルは、大気圏突入を開始した
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
少し前、自由ユーラシア領仁川
そこでは、自由ユーラシア軍が防衛戦闘を繰り広げていた
とはいえ、その戦闘は押されていた
自由ユーラシア軍が使っているのは、ダガーLの改修機たる殱8型
そして、ウィンダムの改修機のチェルミナートルだ
両機は原型機よりも機動性と格闘性に比重を置いて改修してある
だがそれでも、ガンダムに押されていた
五機のガンダムと、MAデストロイに
『隊長! あのデカブツ、攻撃が効きません!』
『近づこうにも、回りに居るガンダムタイプに邪魔されて、近づけません!』
『分かっている! だが、今我々が下がるわけにはいかない!』
部下に反論したのは、中隊の隊長をしている
彼女の部隊は、市民が退避するまで時間を稼ぐことを目的としていた
しかし、展開したのは二個大隊の内、既に二個中隊が壊滅的被害を受けていた
彼女の部隊には、その生き残りも合流しているが、既に一個小隊が中破相当のダメージがあった
彼女自身は、進攻してきていたスローター・ダガーを数機撃破していた
しかし、それは焼石に水だった
それを嘲笑うように、デストロイを含めたガンダムが被害を拡大させていた
『今こちらに、各国の精鋭部隊が向かっている! その部隊が来るまで、何とか堪えろ!』
『了解!』
崔亦菲の指示を聞いて、部下達は気合いの声を上げて突撃していった
市民を守るために
ユーラシア軍の暴虐から、守るために