機動戦士ガンダム 英雄黙示録   作:京勇樹

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狂気の中の涙

「あぁぁぁぁぁぁ!!」

 

『アハハハハハハハ!』

 

直哉は気合いと共に雄叫びを上げて、円夏は狂ったように笑っていた

直哉は円夏を解放するために

円夏は、直哉を殺すために全力で戦っていた

直哉は、戦いながらロート・フォビドゥンの性能を改修前と比較していた

 

(最低でも、三割増しは堅いか……もはや、別物の機体だっ!)

 

ロート・フォビドゥンの性能の高さを量り、直哉は驚愕した

 

(テスタメントでも、割かしギリギリか……特に、ゲシュマイディッヒ・パンツァーの出力が高いのが厄介だっ!)

 

その出力の高さは、ビームサーベルにも効果を及ぼしていた

流石にライフルの時のように曲がりはしないが、長さが僅かに短くなる

しかし、ライフルが効かないために接近戦を強いられていることには変わらない

だが元々、フォビドゥンは電撃戦を重視されて設計開発されているために白兵戦はかなり強く作られている

そのフォビドゥンに接近戦を挑むというのは、かなり分が悪いことになる

特にテスタメントは、近接戦闘ではビームサーベル位しかフォビドゥンに有効打を与えることが出来ない

しかしそれは、フォビドゥンにも言えることだった

フォビドゥンがテスタメントに有効打を与えることが出来るのは、フレスベルグしかない

しかしフレスベルグは、撃つのにタイムラグがある

だから、勝つためには近接戦闘しかない

だから直哉は、勝つためにテスタメントの全機能を解放した

自身に悪影響を与える、大G戦闘を

直哉の耐G体質は、第一期ファントム・ペインの中でも特筆して高いものだった

故に直哉が搭乗させられていたデュエルダガー・FS装備機はスラスターのリミッターが解除させられていて、高い機動性を発揮出来るようにしていた

だがそれでも、約8Gが限度だった

しかし、今のテスタメントの最大Gは16Gを叩き出している

約二倍

前に乗っていた三型は、安全のために約15Gにしていた

それ以上は、いくら強化人間の直哉でも危なかったからだ

だが、今の状況では悠長なことを言ってられなかった

防衛に出撃した自由ユーラシア軍は、実質壊滅状態

しかも、無線を傍受した限りではまだ避難中の民間人すら居る

自分の安全を優先している場合では無かった

軍人たる自分が、逃げ惑う民間人を守るために全力を尽くす

それは、当たり前のことと

だから直哉は、危険だから使わないでと言われた全力解放を使った

最善を尽くすために

 

「つあぁぁぁぁ!!」

 

『アハハハハハハハ!!』

 

二機の戦闘は、自由ユーラシア軍の兵士達からしたら人外の域だった

互いに激しく動き回り、死角に回り込んで武器を振るう

特にテスタメントの機動は、正しく人外と呼べた

だからか、一人のパイロットが

 

『ば、化け物だ……』

 

と呟いた

それは、直哉にも聞こえていた

 

(ああ、化け物でいい……俺は、生態兵器なのだからっ!!)

 

直哉は口端から血を吐き出しながら、ロート・フォビドゥンに肉薄し続けた

それに対して、ロート・フォビドゥンは繭の力を発揮

直哉の機動を読み、攻撃を回避

直哉機に対し、ニーズヘグ改を繰り出した

それを直哉は機動で回避したり、ビームサーベルで弾いたりした

その光景を、一夏達は他のファントム・ペイン隊と戦いながら見ていた

 

『あの機動……長くは保たないはずだ!』

 

『誰でもいい、直哉のカバーに!』

 

『無理よっ! こいつら、動きが今までの奴等よりいい!!』

 

『強化人間の成功個体か!?』

 

『……つっ、乱数(ランダム)機動! 回避っ!』

 

今彼等の戦っているファントム・ペインは、今まで戦ってきた強化人間よりも動きは速い

しかし、成功個体かと言われても答えは否である

それらの強化人間もまた、失敗個体だった

しかし、蓄積されたデータによりフィードバックされた技術は以前の比では無かった

結果、失敗個体とは言えどもその強さは高くなっていた

しかし、その強化人間にする為の人間は何処から確保しているのか

それは、π3計画の応用だった

π3計画のクローニング技術

それを使い、次々と産み出していたのだ

だからファントム・ペインには、数多くの強化人間が供与されているのだ

それは、π3計画を知る各国も予想している

だから今、その研究所強襲作戦を立案中だった

強化人間を産み出させないために

 

『アハハハハハハハ!!』

 

円夏は狂笑しながら、直哉機を撃破しようと攻撃を繰り出す

しかし、その両目からは涙が零れていた

それはまるで、彼女の心を現すように

 

(誰でもいい……私を止めて……この殺戮を、終わらせて!!)

 

未来予知と戦闘衝動、殺戮衝動に体を突き動かされながらも、円夏は祈っていた

狂気の終焉を

自身の死を

終わるには、死しかないのか

それは、まだ分からない

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